「え……?」
背筋に走る鋭い痛み。
レイフォンは未だに現状を理解できぬまま、驚愕に瞳を見開いていた。
「レイフォンが悪いんだからね……私の気持ちをわかってくれない、レイフォンが悪いんだから!」
泣き崩れ、張り裂けるような叫びを上げる幼馴染、リーリン。
彼女の手には血まみれのナイフが握られていた。
「りー、りん……」
わけがわからない。どうしてこのようなことになったのだろう?
レイフォンは薄れる意識の中、幼馴染の名を呼ぶが彼女は何も答えてはくれない。
暗く染まっていく視界。レイフォンには抗う術などなく、そのまま意識を失うことしかできなかった。
†††
「ヤッホー! レイフォン、生きてる?」
目が覚めた。その直後に聞いたのは、グレンダン最強の武芸者、女王アルシェイラ・アルモニス。
彼女に逆らえる存在など、ここグレンダンには存在しない。それは天剣授受者であるレイフォンも例外ではなく、むしろ天剣授受者だからこそアルシェイラに逆らうことなど出来なかった。
「陛下……はい、一応は」
「天剣授受者が一般人の女の子に刺されて重傷なんて笑えないわね。あんた、天剣としての自覚を持ってるの?」
「はぁ……」
笑えないといいつつ、アルシェイラは爆笑していた。ケラケラと笑い、ニヤニヤした表情でレイフォンを見詰めている。
ここは病院の一室。仮にも天剣授受者であるレイフォンが入院しているため、個室でそれなりに豪華だった。
「で、刺された原因は何? 痴情のもつれ? 痴話喧嘩? どうせあんたが原因なんでしょう」
「さあ、どうなんでしょう?」
問われても、レイフォンには首をかしげることしか出来なかった。
わからないのだ。何故、リーリンがあんなことをしたのか。
同じ孤児院で育ち、兄弟として、家族として過ごした少女。とても優しい彼女がどうしてレイフォンをナイフなんかで刺したのだろう?
「帰るのが遅くなっちゃったからかな? でも、その日はクララのところに寄るってちゃんと言ってたし……この間内緒でルナと映画に行ったことを怒っているのかな? でも、その埋め合わせとしてお土産はちゃんと買ってきたし。ならシェル? それともロウ? う~ん、なんなんでしょう?」
「レイフォン、あんたもげちゃいなさい」
その心当たりを語るレイフォンに、アルシェイラはとてもステキな笑顔で言い放った。
次々と出て来る女性の名前。原因は間違いなくそれだと確信し、アルシェイラは呆れたようにため息を吐いた。
「まったく、あんたは……いつの間に女の味を覚えたのよ?」
「僕も年頃の男ですし、いくら陛下とはいえプライベートに口を挟まれる覚えはありませんが」
「そりゃそうなんだろうけどね……はぁ、まさかトロイアット二号が現れるとは」
レイフォン・アルセイフ。彼はもてた。
史上最年少、十歳で天剣授受者となった武芸の天才。容姿にも恵まれ、女性受けはかなりいい。
また、レイフォン本人も女好き、アルシェイラ曰くトロイアット二号という性格をしていたため、近寄る女性には積極的にアプローチをかけていた。
それが災いし、レイフォンは天剣の中でトロイアットに匹敵するほど女遊びが激しく、今回のような事件に発展してしまったのだ。
つまり、レイフォンに好意を寄せる幼馴染が嫉妬に狂って刺してしまったのである。
「でも、それっておかしくないですか? 僕は一度もリーリンに手を出した覚えはないんですよ」
「え?」
「いや、だって、リーリンは家族のような存在ですから。異性としてみることが出来ないって言うか、女性としてみるのは違うなって感じで……それに、リーリンとは遊びじゃ済まない気がしましたから」
「……………」
レイフォンの言い分に、アルシェイラはむしろそれが原因ではないかと突っ込みたかった。だが、ここはあえて黙殺する。
言っても無駄だと悟ったのだろう。
「それはそうとレイフォン。今回、わざわざ私がここに来た理由なんだけどね……」
「はい?」
「ちょっと、六年くらいグレンダンの外に行ってきなさい」
「はィィ!?」
ここで話題が変わる。レイフォンが驚愕の声を上げるが、対するアルシェイラは平然と言葉を続けた。
「これもあんたの身から出た錆よ。むしろ少しの間グレンダンから姿を消すだけでいいんだから、ちゃっちゃと承諾しなさい」
「いや、待ってください。ちょっと待ってください! 身から出た錆ってなんですか? 僕が何をしたって言うんですか!?」
「心当たりは腐るほどあるでしょうに」
戸惑うレイフォンを見て、アルシェイラはもう一度ため息を吐いた。
「あんたの女遊びが激しいからでしょうが。痴情のもつれで天剣授受者が刺されたってグレンダンじゃ大騒ぎなのよ。それに、さっきあんたが出した名前、クララ」
「え、えーっと、クララがどうしましたか?」
「孫娘を汚されたってティグじいが物凄い形相で怒ってんのよ。このままじゃ天剣同士の潰し合いに発展するほどに」
「う、うわあ……」
レイフォンは自分の胸に手を当て、今での行いを振り返ってみた。
確かに、これはまずいかもしれない。トロイアットの紹介でクラリーベル・ロンスマイアことクララに手を出したが、彼女はグレンダン三王家のひとつ、ロンスマイア家のお姫様だ。
その上不動の天剣と呼ばれるティグリスの孫娘であり、そのティグリスご本人はレイフォンに対して大層ご立腹なようだ。
同じ天剣授受者という立場にいるレイフォンだが、それでも進んで天剣同士で争おうとは思えない。回避できる騒動は回避した方がいいに決まっている。
「そんなわけで、学園都市にでも行ってみる? 少しの間グレンダンから姿を消して、ほとぼりが冷めるのを待ちなさい」
「わかりました」
「素直でよろしい」
レイフォンはアルシェイラの言葉にあっさりと頷いた。レイフォンの返答も聞いたので、アルシェイラはそのまま病室をあとにしようとする。
だが、レイフォンはそんなアルシェイラに声をかける。
「あ、ちょっと待ってください、陛下」
「なによ?」
「ただ寝てるってのは暇なので、どうせなら一緒に寝ませんか?」
その言葉に、流石のアルシェイラも言葉を失った。けれど、すぐに立ち直る。
「あんたねえ、あたしの言ったことまるで理解してないでしょう」
「身を隠すことには賛成ですが、それでこの遊びをやめようとは思いません」
「一国の女王を遊び感覚で抱くつもり? レイフォン、あんた最低の男ね」
「自覚はあります」
「流石のトロイアットでもあたしに手を出そうとは思わないわよ」
「それはおかしいですよ。陛下はこんなにも美しいのに」
もはや爆笑だった。腹の底から声を上げて笑い、王家の気品なんてものはまるでない。
それに対してレイフォンも笑みを浮かべ、アルシェイラとの会話を交わす。
アルシェイラは笑いが一旦収まると、今度は妖艶な笑みを浮かべてレイフォンに言った。
「いいわよ。それなら一晩だけ遊んであげる。レイフォン、一滴残らず搾り取られる覚悟はあるかしら?」
「大歓迎ですよ」
それに呼応するように、レイフォンの笑みも深くなった。
あとがき
ちょっとしたリハビリを兼ねた一発ネタです。このリハビリという単語が洒落になってないこのごろ。
先日、2月の14日。アルバイトに行くため原付を走らせていたのですが、その時に停車していたトラックに激突。
雨でスリップし、その上眼鏡がくもったり、雨粒でよく見えなかったのが原因かと。
原付は廃車となり、その破片で左足の筋肉を断裂させるほどの怪我を負いました。そのために入院し、退院したのが昨日のこと。
この作品はその入院中に考えた妄想をSSとしたものです。
もしもレイフォンが肉食系だったら、的な。
レイフォンは元々へたれですし、自分の書くSSのフォンフォンはまぁ、肉食系でも一途ですし、クララはレイフォン未だにへたれです。
そんなわけで肉食系、イケメンで天才なのを自覚して女性を喰いまくるようなレイフォンを書いてみました。わかりやすく言うとトロイアットですね。
このレイフォンがツェルニに行くと、真っ先に被害にあうのはメイシェンでしょうね。こういってはなんですが、なんだか彼女はちょろそう(汗
ちなみにこのレイフォン、闇試合には出ていません。天剣授受者としての報酬で、自身の孤児院を潤して後は女遊びに没頭といった感じです。なのでガハルドとは一切関係なかったり。
その代わりリーリンには一切手を出さなかったので、彼女に刺されてしまいましたが……
このレイフォン、続くとしたらどうなるんでしょうね?
さて、最後におまけです。学園都市ツェルニへの移動中。
おまけ
「陛下、凄かったなあ……未だに勃起が収まらないや」
諸事情により学園都市へと行くことになったレイフォン。
現在は放浪バスの車内におり、交通都市ヨルテムを経由して学園都市ツェルニへと行く予定だった。
その道中、思い出すのはアルシェイラを抱いた感触。年齢不詳、最強無敵の女王だが、彼女は類稀なる美貌の持ち主でもある。
スタイルも良く、肉感的なエロさを存分に堪能したレイフォンは未だに余韻に浸っていた。
「むう……私がいるのにあの人の話ばかりというのは酷いです」
「いや、だって、クララも可愛いけど胸は陛下が圧勝だし」
「んっ……レイフォン様の意地悪」
「ごめん」
ふっと、レイフォンは思考を今へと戻す。そこにはクラリーベルがおり、レイフォンは彼女の胸を後ろから揉んでいた。
「あっ、んん!」
「あまり大きな声は上げない方がいいよ。外に声が聞こえるかもしれないから」
「で、ですが……」
「仕方ないなあ」
放浪バスの車内でも、ここはトイレの個室。狭いが隠蔽された空間なのをいいことに、レイフォンは共に学園都市に行くことになったクララに欲望を吐き出していた。
レイフォンはクララの胸を揉み続け、クララは熱っぽい呻きを上げる。その声が外に漏れることを懸念したレイフォンは、そのまま自分の口でクララの口を塞ぐ。
「ん、んむっ……ん!?」
「じゃあ、人が来るかもしれないからさっさと済ませちゃおうか」
クララの口から口を離し、レイフォンはにやりと笑った。
あとがき2
続くとしたらこんな感じで、直接的なXXX描写は書かないと思います。XXXシーンを書くのって本当に大変なんですよね(汗
ってか、これはセーフなのだろうか?
内容的にやばくなりそうだったら言ってください。XXX板へ移動します。