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No.31555の一覧
[0] 【チラシの裏から】機動戦士ガンダムワールドNG(ガンダム VRMMO)[ゆーたん](2012/02/22 22:54)
[1] ようこそ、機動戦士ガンダムワールドNGへ[ゆーたん](2012/02/14 22:14)
[2] 【大幅修正】サンダスタウン1 (旧1~4をまとめました)[ゆーたん](2012/02/19 19:47)
[7] 日常1[ゆーたん](2012/02/19 22:17)
[8] 日常2[ゆーたん](2012/02/22 22:50)
[9] 閑話「ガンダムJ」[ゆーたん](2012/02/23 01:46)
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[31555] 【大幅修正】サンダスタウン1 (旧1~4をまとめました)
Name: ゆーたん◆83e6744c ID:94309d45 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/19 19:47
 機動戦士ガンダムワールドNGを購入して3ヶ月。
 プレイヤーキャラクターを作成するときに、迷わず宇宙移民を選んだ俺は今コロニー……ではなく、地球フィールド上の宇宙移民側占領地域の荒野にある街、サンダスタウンで生活プレイしていた。

 このゲームに備わっている領地システムによって、自分が所属している側の領地と中立地域以外立ち入ることは出来ないと決まりがある。3年前に正式オープンされた直後は、地球人側は地球フィールド全てが領地。宇宙移民側は宇宙フィールド全てが領地となっていた。
 現在宇宙移民側は地球フィールドの2割程占領地域としているが、地球人側に宇宙フィールドの3割を占領地域にされている為戦況としてはやや押されている。


「ご苦労様。今日は上っておくれ」

 背後から掛けられた言葉は、ノンプレイヤーキャラクターNPCが発したパターン台詞1つ。今の台詞は現在実行していた仕事《クエスト》終了を告げるもので、この後成果を受け取りミッション完了となる。今行っていたクエストは、単純なNPCのMSモビルスーツを整備するという内容だ。整備を実行すると体が勝手に整備モーションを始めるので、そのモーションが終わるのを待てばいい。整備スキルが整備完了度に影響するだけでなので、やり方を工夫するとか気合を入れるとかする必要は無い。と言ってしまえば寂しいものだがそういう仕様だ。

「んん~……ふぅ」

 ゲーム内でネット上にある各種情報サイトなどを見られる機能がるおかげで、クエストも無事終了した俺は現実と同じ様に大きく伸びをして固くなった体をほぐす……いや、ほぐした気分を味わう。現実の体はベットに横になっているから、実際伸びをしているわけではないが、アミュスフィアの特徴として脳に直接働きかける為、似たような気分を味わうのだろうか。
 とりあえず手にした整備ツールを装備欄から外して、持参アイテム欄へと移動をさせる。アイテム欄等を表示させるメニューは、プレイヤーの好みで左右どちらかの腕に装着された時計型端末を利用してウィンドウを表示させる。このウィンドウは自分以外に見えない為人通りの多い通りでも安心して操作ができる設計だ。
 今の整備クエストは、短い時間で収入は5桁近くまで取得でき効率がいいので、回数はかなりこなしている。最初は上手く行かなかったこの整備クエストも、繰り返すことで上がった整備スキルのおかげでそれなりに稼げるようになったのはありがたい。

 プレイ直後にプレイヤが所持しているのゲーム内通貨10000クレジット。その他に半袖長袖2種類のシャツとズボン、それにスニーカーだ。各プレイヤーに最初からMSは所持していない。MSを入手する方法は軍に所属して支給してもらうか、自分で購入するの2つ。
自分の好きなMSを選んでカスタマイズする……そんな事を思い描きながらゲームを始めたのだが、現実と同様なかなか厳しいゲームだと実感させられた。軍に入隊すればMSをすぐに支給されるらしいのだが、俺はそうしなかった。軍属の場合、クエストや依頼《ミッション》をクリアすることで溜まるポイントがあるらしいのだが、そのポイントにより階級が上下し使用できるMSが増減するとの事だ。最悪除隊させられるとかなんとか噂もあるらしいので、軍には入らない事にした。
 最初から民間人でやれば気にすることないじゃん、というのが俺の素直な思いだ。そんな俺もクエストをこなしながら念願のMSを手に入れたのは今から2週間前になる。

 MS-06F――通称ザクだ。
 ガンダムの1作目、連邦軍の敵であるジオン公国軍の量産型兵器として登場したザクは、ザクⅡMS-06シリーズのMSだ。ザクの前身である旧ザクMS-05というMSもあり、ザクより価格は安い。プレイヤーの中には旧ザクをザクⅠ、ザクをザクⅡと呼ぶ人もいる。
 民間人としてプレイ開始して3ヶ月の俺に、新品MSを買えるお金が溜まる訳も無く他プレイヤーが売却した中古MSを買ったのだ。初めて手に入れたMSと言う事もあり、喜びは一塩だ。もちろん中古のMSは整備が必要で、整備が完了したのがだいたい一週間前になる。
 まさかMSに乗るまでにこんなに時間が掛かるとは思わなかったが、苦労が伴った分の感動は何物も及ばないだろう。たとえゲームだとしても、嬉しいものは嬉しい。

「さて、今日も操縦訓練でもやるか」

 そうと決めた俺は、サンダスタウンの住宅地区に借りている自室へ戻らず、街の中央に位置する他プレイヤーも利用するMS格納庫へと向かった。格納庫へ向かう途中に通りかかる屋台通り。道の左右に屋台が所狭しと並び、売り子のNPCや他の街から仕入れてきた食材や自前の料理を売るプレイヤー達が、声を張り上げお客を呼ぶ。ゲーム内では擬似空腹機能があり、ゲーム内である程度時間が経つを空腹を感じてくる。空腹は地味にやっかいで集中力等に及ぼす影響は小さくない。空腹など気にしないという精神力の持ち主ならば食べなくてもいい。大概我慢するのは難しく空腹を感じたら素直に食事をする事をおススメする。
 現状それほどお金に困窮している分けではないが、MS格納庫手前の屋台通り端の店に並べられている痩せ細ったりんごを左手に取り、売り子のNPCへ話しかけた。目の前に購入確認ウィンドウが表示され、右手でOKのボタンに触れた。購入完了したアイテムは、一度強制的にアイテム欄へと移動させられる仕様のため、端末を操作しアイテム欄ウィンドウから左手にドロップさせる。ドロップしたりんごの重さを左手に感じ一口かじると、なんともいえない渋みを帯びた酸味が口の中に広がり、俺は少しだけ顔をくしゃめた。

 なぜこのリンゴを買ったかだって?一番安いからさ。

 初めて食べた時は驚いたのだがあのすっぱさは、なぜかわからないが病み付きになる。かじるたびに現実と同じようにりんごが欠け、5度ほどかじるとりんごは無くなり先程まであった空腹感が解消された。まあ、りんご1個だけでは満腹には程遠いけどね。
 独特の歩行音と車両の走行音が入り混じる大通りは、MSの歩行が可能な道でその足元を縫うように車が走っている。ゲームということも有り、実際だったらそれなりに大きいだろうと思われる振動はあまり感じられない。街の東西南北の入り口から中央で合流する大通り以外はMSの歩行できない。その大通りであっても街中ではスラスターを使用した高速移動は禁止されている。噂ではクローズベータの時に、プレイヤーがMSに踏まれる事があったらしいが、製品版ではMSに踏まれる事は無くなった。原則街中での戦闘は禁止とされている事を付け加えておこう。

 格納庫に着いた俺は、つなぎを着た青年NPCに話しかけ表示されたウィンドウを指でタッチしていく。

「ちょっと待ってな。今準備するよ」

 威勢のいい声で青年NPCは、倉庫入り口についているパネルを操作し始めた。あのパネルをこっそり触ったことがあるが何も反応しなかった。恐らくただのオブジェクトなのだろう。
 格納庫の床のベルトがスライドし始めると預けたザクがその姿を現した。ベルトの動きが止まったらMSへ近づくことが可能になる。足元の部分へ移動し右足内円部にあるスイッチを操作し、胸側から乗り込むタイプのコックピットのハッチを開く。続けて捜査してパイロット昇降用のリフトを降下させた。
 リフトを上昇させてコックピットへ乗り込み座席へと腰を下ろす。端末を操作しアイテム欄よりキーを取り出してキー挿入口へ差し込むと、コックピットのドアが自動で閉まり、ヴゥゥンという音と共にメインカメラが外の映像を取り込み、コックピット前面と左右のパネルに外部映像を映し出した。足元のフットペダルに足を乗せ、二本の操縦桿を握り俺はザクを前進させ格納庫からでた俺は、街の入り口を目指し大通りを歩き始めた。

 俺のザクのコックピットは前面と左右のサイドパネルの3面がメインパネルに座席というオーソドックスタイプ。文庫本2冊分くらいの大きさのサブパネルが左右のサイドパネルの下に設置されており、ゲーム内でのログ等細かい操作を使用する時に必要となる。小さいパネルの種類や座り心地のいい座席など、お金に余裕があればコックピットを買い替える事もできる。非常人気のコックピットはほぼ360度視界のフルスクリーンモニタとリニアシートのコックピット。お値段はなんと新品ザクが数機買える程。人気の理由は市場流通数は少ないため入手機会が難しい。
 今のコックピットの場合、座席に座り膝くらいの左右に設置されている操縦桿、両足の所にフットペダルがある。
 基本的な操縦方法だが、操縦桿を握り双方を同時に前に倒と、機体が上下にゆれながらゆっくりと前進を始める。両方の操縦桿を同じ方向へ倒す事で後退、水平移動も自由自在だ。前進しながら右足のフットペダルを踏む事で、背中のスラスターが噴射を始めて機体を一気に前方へと押し出す。これがブーストアクションの一つ高速移動だ。
 メインパネルに表示されテイル情報についてだが、前面パネルの左下に機体のHPヒットポイントを表すエネルギーゲージと、高速移動や緊急回避などのブーストアクションで消費するブーストゲージが表示されている。エネルギーゲージが無くなれば撃破されるし、ブーストゲージが無くなればフルチャージされるまでブーストアクションが使用不可だ。高速移動はブーストゲージを消費し続けるため、ゲージの残りには注意が必要になってくる。戦闘ではブーストゲージのコントロールが必要とされているのだが、俺は相変わらず空になるまで使ってしまう為格好の的に良くなっている。
 慣れるまでは練習が必要。、街の外は戦闘エリアに入らない限り敵も出てこない為、機体制御の訓練ができる広い敷地と思っていいだろう。お陰でこのザクを買った初日は、練習と称して遠出をしてしまった為街に戻れず苦労した。その苦労があって目的地設定機能に気づいたのだから、プラマイゼロ……という事にしておきたものだ。

「そろそろ見えてくるはずだけど……」

 予め目的地設定をしている場所を示すマーカーが、サイドパネルに表示しているレーダーで点滅している。町の周辺に数箇所ある戦闘エリア、今向かっているのは街の東側にある対NPC戦闘エリアだ。このフィールドは宇宙側占領地の為、地球側前線補給基地という設定になっている。占領している側によって出現する敵と、参加できるプレイヤーが変化していく。
 今回の場合、出現するのはもちろん地球軍のMSや戦闘車輌で、比較的性能は低くザクでも問題は無い。ただ、複数同時に相手にする場面もあるため、油断していると背後からズドンと攻撃される可能性もある。自分の位置を敵の位置に数を、レーダーで確認する事を怠らない……ようにしなければならないのだが簡単に行くなら苦労はしないって事だな。

「あったあった」

 メインパネルに映る倉庫が複数並んでいるコンクリートの敷地を、薄らと白い光が囲んでいる。この戦闘エリアへ参加するには敷地内へ入る、それでけで戦闘エリアMAPへと転送される仕組みだ。もし戦闘エリアMAPへ転送されない場合、進入可能人数を越えている可能性がある。この戦闘エリアの参加可能人数は10人。そのMAPが10ルームあるため、最大100人までは来たプレイヤーから順番に部屋を埋めていくので、待たずに入る事ができる。

『俺達の手助けをしてくれるって義勇兵はお前か。上から聞いているぜ』

 戦闘エリアへ転送されると、正面パネルの通信ウィンドウが開かれ映し出された宇宙軍の軍服を来た無骨な男がぶっきらぼうに話しだす。声は豪胆、筋肉質な体には少しきつそうに見える軍服が少し可愛そうだ。

『地球の連中を撃退してくれればそれでいい、報酬は弾むからよ。ん?司令部よりお前にだとよ。ミッションクリアすれば追加で報酬が出るみたいだぜ。自分の力量にあったのをやるんだな』

 多少差異はあるものの、対NPC戦闘エリアではお馴染のやり取りだ。表示され他目の前のウィンドウには、ミッションが数種類ほど表示されている。この間、MSの操作は目の前のウィンドウ以外不可となっている。
 どれにしようか悩んだが……。


「とりあえず」

 今回は、敵MSを20分で20隊撃破のミッションを選択した。最終確認ウィンドウのOKをタッチすると、ミッションウィンドウが消えて、代わりに正面パネル上にカウントダウンを示す数字が表示される。10……9……、0になればいよいよ戦闘が開始だ。このカウントの間にサイドパネルを操作して、このエリアに参加しているプレイヤーに対してマナーの1つである、挨拶をするためにテキストチャットウィンドウを出す。簡易メッセージを選択して送信するとチャットログに、よろしくと表示されたのを確認してそのウィンドウを閉じた。

――よろしく――

 このエリアに何人参加しているかわからないが、6名からの返信は確認できた。

 3……2……1……。

 0、と同時に俺とザクはようやくシステム上の拘束から解放されたのだった。

 システム上の拘束が外れた俺は、、右足のフットペダルを踏むと同時に左右の操縦桿を前に押し出す。バックパックから噴出されるスラスターが、機体を強引に押し出し一気に最高速度へと加速させる。
 俺の体がGによってと座席に押し付けられて、少しばかり苦しい。今まで何回も味わっているが、この苦しさはむしろ心地よい。現実では体験する事は無いだろうこの臨場感が、俺の感覚を麻痺でもさせているのだろうか。
 本来、戦闘開始直であれば周囲の状況を気にするのだが、レーダーに何の反応も無かった。その為高速移動を即座に開始させた。どの方角からこの戦闘エリアへ入っても強制的にスタート位置は南に固定されている。

「さて……、まずは敵MSを見つけないとな」

 対NPC戦闘エリアの敵MSは、参加している人数により最大出現数と出現間隔が変動する仕組みだ。レーダーに引っかからないという事は北側でプレイヤー達が混戦しているのか、現在参加している人数が少ない……極端な話俺だけなのかもしれない。コックピット内設置されたスピーカーから銃撃音や爆発音といった外部音が聞こえてくるので、少なくとも戦闘は行われているはず。

「はやく撃破しないとなぁ」

 戦闘開始前に俺が選択したミッション、20分でMS20体撃破。単純計算1分で1体以上を倒さないと間に合わない。その為索敵に時間を取られるのは勿体無いと少し焦りを覚えている。残り時間は正面モニタ上部に表示されており、最初は青色で表示されるが時間経過と共に徐々に赤に変わっていく。目に付く赤と言う色が俺を追い詰めてくるのだ。ミッションをクリアし制限時間が残っている場合は、時間切れまでまでプレイすることが可能。ミッションを失敗したとしても、撃破したMS数分の通常報酬は取得が出来るので、初心者でも安心して失敗できる。しかし注意しなければならない点があって、戦闘後の結果画面リザルトで使用した弾薬については全弾補充をしてくれるのだが、補充した弾薬の費用が報酬から天引きされてしまう。無駄に弾を撃ち過ぎると赤字になる可能性もある。


[ピッ]

[ピピピピッ]

 コックピット内に響くアラーム音。連続で鳴る音が、自機が敵機にロックオンされたことを俺に教えてくれる。

「いつの間に!?」

 ちょうど出現時間だったのだろう、正面モニタ右下に表示させているレーダーに、赤い丸のマークが表示されている。位置的に俺の後方で、先ほど通り過ぎた倉庫の辺りだ。正面モニタ左下のブーストゲージに目をむけ残量を確認すると、ゲージはまだ3分の1程残っている。俺は、一度右足をペダルから離しスラスターの射出を止める。
 慣性が働き機体が前方へ流れているのを感じながら、左右の操縦桿を同時に右へ傾ける……と、同時に右フットペダルを踏む。左に向いたバックパックのスラスター射出口。射出時のエネルギーによって得た推進力が、機体を強引に右方向へとスライダさせる。敵の射線上から外れたことを祈りつつ、右ペダルから足を離し右操縦桿を前に、左操縦桿を後ろへ引く。反時計回りに機体が左旋回を始め、モニタに映る景色がそれに併せて流れていく。レーダーを見ながら敵機のマーカーがが正面に来た所で操縦桿をフラットに戻す。モニタに映ったMSはRGM-79、通称ジムGMだ。
 ガリガリという機体が地面を滑る際、足元を削る音が聞こえるのと同時にコックピット内を揺らす振動が妙にリアルだ。機体の動きが一瞬静止する膠着時間。ブーストゲージの消費量によって増減する為、対プレイヤー戦ではこの膠着時間をいかに狙うか、またはいかにカムフラージュするかが重要になってくる。もちろん対NPC戦でも、膠着時間を上手く使えば倒すのは難しくない。その逆もありえるのだが、この戦闘エリアの敵は鬼畜な強さではない為、下手な俺でも十分戦える……はずだ。
 極力慌てないように右操縦桿を操作し、敵に対し照準を合わせようとするのだが肝心な事を忘れていた。武器を装備して無い……、正確にはザクの両サイドとリアアーマーには装備設置可能部位マウントラッチがあり、所持したMS用武器を装備する事で実際にゲーム上に武器グラフィックが表示される。ライトラッチにはザクの代表武器の120mmザク・マシンガン。レフトラッチにはこれまた代表するヒートホークを装備。リアラッチには他に装備する武器を持っていないため、マシンガンの予備弾薬を装着している。予備弾薬に付いては、MS用アイテム欄に入れておけば装備しなくても装填リロードされるのだが、見栄えを良くする為だけに装備させていた。
 両方の操縦桿の人差し指側には装備選択のボタンが付いており、装備に対応したボタンを押しながら左右どちらかの操縦桿のトリガーを押す事で武器を手に装着でき、装備武器の各残段数に付いては、サイドモニタ下に並んで表示されており、今装備しているものは不透明で表示され、それ以外は半透明で表示されている。

「それでは……いくぞぉ」

 右の操縦桿を操作し、武器を装備させる事で表示させる照準マーカーを相手に向ける。拳2個分くらいの円形と、その中心に×マークの物が照準マーカーである。×マークは中心点を、円形は精度を表している。特にマシンガン系は集弾性能は悪い為ブレ易い。敵が射程距離内に入ると、照準が赤くなる。その時に装備した方の操縦桿のトリガーを引く事で攻撃を行う。
 120mmマシンガン――通称ザク・マシンガンから銃弾が連続で発射されると、それにあわせて右の操縦桿に振動が返ってくる。もちろんその影響で照準がずれる事があるので、これをコントロールしなければ効果的なダメージにはならない。集弾率を上げる為は、トリガーを押しっぱなしにせず発射弾数を区切るか、射撃によって暴れる銃身を制御するしか無い。他ファーストパーソン・シューティングゲームFPSの様に、マシンガン系の武器を使う場合はリコイルコントロールというテクニックを身に付ける事、これが上達への一歩であり覚えておかないと弾の出費がバカにならない。
 始めたばかりの初心者にはコントロールは難しい、なので俺は左手を使うのだ。添えるだけじゃない、左手も重要なんだ。
 ザクマシンガンのグリップより砲身側に、フォアグリップがついている。片手射撃できる武器で、両手持ち可能な武器に限り両手持ちアクションが可能だ。フォアグリップを左手で掴み構える事で、リコイルコントロールがし易くなる。初心者だからというわけではなく、上位のプレイヤーの中にも両手持ちしているプレイヤーは少なく無い。戦闘は避ける事と当てる事が重要なのだ。
 両手持ちにして格段に照準をコントロールしやすくなった俺の攻撃は、着実に相手のエネルギーゲージを削っていく。相手のエネルギーゲージは相手機体の上部に表示されるため、エネルギーゲージの減り具合を確認できる。
 今闘っているジムの装備は同じくマシンガン系、恐らく威力もザク・マシンガンと似たり寄ったりだろう。ビーム兵器等に比べ、マシンガン系は相手を怯ませるスタン値と言うものが少ない為、攻撃を当てても平気で動いてくる。恐らく連続で当て続けないと無理だろう。ジムの放つ銃弾を回避しつつ、片手時よりも狙いやすくなったザク・マシンガン照準を合わせてトリガーを引いた。

「よし!!」

 思わず叫んでしまったが、敵機であるジムの機体が動きを止め煙とスパークを出しながら地面に倒れた数秒後に、爆発のエフェクトを撒き散らしながら地面へと溶け込み跡形もなくなった。1機を倒すのに要した時間は90秒。15分で10体撃破のミッションはすんなりクリアできたのだが、今回……雲行きは怪しい。

「きびしいな……」

 そう呟いた俺は、次の敵MSを探すため移動を始めた。


***


「ふぅ……」

 サンダスタウンへと戻ってきた俺は、ため息を漏らしながら格納庫と戻ってきた。

『おう、今日はどんな用だい?』

 先ほどと同じ威勢のいい青年に話しかけ、メニューウィンドウを開く。整備とカスタマイズのボタンを押す。

『わかった。今ハンガールームを用意するからな』

 その直後、ハンガールームへ転送させられた俺は固定されたMSのコックピットを開いて、リフトに掴まり降下した。1つのハンガールームには最大10名まで入室でき、現在プレイヤーの姿が7名ほど見える。ガンダムWに出ていた赤茶色のトーラス以外はほとんどが俺と同じザクタイプだ。

「まぁ、プラスだから良しとするかな」

 アイテム欄に表示されるお金の数値を確認した所、先程より増えている為少し安心した。実際はプレイヤーMSの整備依頼を受けた方が稼げる。戦闘エリアのミッションをクリアできていれば、そんな事もなくおいしくなるのだがそう上手くはいかない。
 結局、制限時間20分で20体のMSを倒すというミッションは達成できなかった。3体に囲まれて数的不利な状況が何度かあり、1体を集中して攻撃しすぎて他のMSのケアができていなかったり、いろいろ考えながら操縦している内にタイムアップとなった。結果として13体までは行けたのだが、まだまだ操作に付いては未熟だ。いつかはプレイヤー同士の大規模戦闘も参加してみたいとは思う。

 週に1度行われる両陣営の陣地取りに影響する大規模戦闘は、ネット上でもゲーム内でもリアルタイムで配信が行われ、後日にはその映像がアップロードされる。多種類のMSがアニメさながらに飛び交いながら、攻防が繰り広げられている映像をゲーム内で見ていた俺は、身震いするほど興奮した。いや、興奮させられたのかもしれない。

対プレイヤー戦闘では、MSが撃破されたり宇宙では艦隊、地上では陸用艦を攻撃・撃破する事で敵の戦力ゲージを減少させられ、制限時間内に戦力ゲージを0にした方が勝利となる。制限時間内でも戦力ゲージが0にならなかった場合、ゲージが多く残っている方が勝ちというルールだ。このため、単独行動するより味方との連携が必要となる。
 そうなってくると必要となってくるのは、優秀なオペレータや指揮官という存在なのだが、このゲームには勿論存在する。
 俺の様にMSも乗るし機体整備もするプレイヤーもいれば、基本的にMSに乗らずに戦闘エリアで指揮を取るプレイヤーもいて、遊び方は色々だ。もちろん1人が全体の指揮を取るという事は実際難しいだろう。そこで搭乗するのが隊というゲームシステムになる。最大500名の大隊は5つの中隊、中隊は5つの小隊、小隊は最大20名での構成となり、プレイヤー間で作成できる分隊《チーム》の最大人数は小隊と同じ20名までとなる。指揮官は各隊をまとめるオペレータ補佐官へ情報を伝達する事で、大規模戦闘で指揮する事を楽しめると言うものだ。指揮官のプレイヤーは毎回ランダムのルーレット抽選となるため、毎回同じプレイヤーが指揮官になれるわけではない。
 さまざまなプレイヤーが集う大規模戦闘のは、このゲームの醍醐味の1つ。1度は経験しておく方が良いと情報サイトには必ず書かれている。ある意味このゲームの醍醐味であるし、病み付きにさせる魅力とやらがあるらしい。

「とは言うけどねぇ……」

 魅力とやらを味わうには、まだまだ当分先だろうとため息をついた。それよりもまずやるべき事がある。戦闘で減ったエネルギーゲージの修復と、各部位や部品に存在する耐久値の修復だ。必要なアイテムは整備ツールとエネルギーパック。エネルギーパックにも種類があり、基本回復量と金額に差がある。最大値の1割回復させるエネルギーパックが一番安い物で、一番高いのは5割回復させる物だ。
 俺が使うのは、もちろん1番安いエネルギーパック。節約するのは本当に大事。そうしなければMSを手に入れるのは当分先になっていたであろう。エネルギーバーを半分近く削られているが、整備スキルのおかげで3個ほど使えば満タンになる。あとは各部位のパーツと武器の手入れになるのだが、それぞれに耐久値というのが存在し戦闘をするほど徐々に減っていく。もちろんダメージを受ければその分さらに減ってしまう。この耐久値が減る事で、MSの動きが鈍くなったり、各武器の性能が低下していく。マシンガンの場合、集弾率はさらに悪くなり戦闘が不利になったりと良い事が無い。
 この耐久値の問題を改善する方法は2つ。耐久値を回復させるか新品を購入するか。後者の方が費用はかかるが即時に解決できる。前者はプレイヤーが耐久値を回復させるという方法だ。だがプレイヤーが耐久値を回復させるには条件がある。条件と言うのは整備スキルのオーバーホールが必要となる。その為、このゲーム内でオーバーホールのスキルを持っているのは主に整備士プレイをしているプレイヤーだろう。その為、オーバーホールを持つプレイヤーの所には耐久値修理の依頼が集まる為待たされる事が多い。ただ新品を買うより、はるかに費用は安い……はずだ。その整備士のプレイヤーのさじ加減1つだが。
 俺がMSを手にいれて実際に乗れるまで時間が掛かったのは、主にこれが理由だ。購入した当初、各パーツの耐久値のゲージが赤だったり最悪無い状態だったりで無残な状態だった。幸い、このサンダスタウンにもオーバーホールスキルを持つ整備士はいるのだが、やはり混雑している。なかなかチャンスがやってこなかったという事もあり、自分でこのスキルを取得する事を決めた。
 このオーバーホールのスキルは誰でも取得できるが、試験を受けねばならない。前提条件は一定以上の整備スキルを持っている事……それだけだ。それがクリアできているならば、あとは試験を受けられる街まで行き試験を受ける、たったそれだけでいい。もちろん受験料は初心者にはきつい初回5万C。しかも試験合格判定はなんとランダムという、非常に恐ろしい試験である。しかも試験を受ける回数が増えると、受験料もあがるという理不尽な試験なのだ。
 情報サイトでは、合格率15%~25%とも言われているが実際のパーセンテージは公開されていない。1回で合格するプレイヤーもいれば、20回受けても合格できないプレイヤーもいる。なんかブログで怒りまくっているのを見た記憶がある。
 もちろん俺は、そんな試験なんて1発……とはいかず5回目でようやく合格した。MSを買い、余った分でいろいろ装備を買おうと思っていた虎の子のお金が、この試験のお陰ですべて消し飛んでしまった。
 ただし、オーバーホールのスキルを持っている事がばれると、依頼が殺到しそうなので誰にも教えていない。

[ポーン]

 こっそり整備していた俺は、この音にビクっと体を強張らせた。

[1件の通信が繋がっています。通信を許可しますか?]

 腕に付けた端末の女性AIがたんたんと告げる。端末の画面を見ると通信者の名前と、顔写真が表示されている。『ガスパー10』という顔馴染みと言うか、サンダスタウンで3ヶ月近く整備の仕事をしていれば、自然と知り合いもできるというもの。通信のボタンを押し相手との通信を接続する。

『ようリブロフ。今平気か?』

 大丈夫、とだけ答えながら俺は整備を再開していた。非常に爽やかでいい声を持っているが、外見とのギャップがある。金髪オールバックの強面の顔は、俺の短髪で中年職人をイメージした顔とは違った意味で近づき難い印象を受ける。外見については人の事は言えないな、と思いつつガスパーの近況など他愛ない話をしながら、俺は整備モーションを続けている。

『それでよう、今度の日曜日は空いてるか?』

 空いている、というのはもちろんゲームにこれるかという内容だ。現実世界での知り合いではないし、お互い現実の情報は一切やりとりしていない。

「日曜日は問題ないよ。予定は今の所ないし」

 今週の日曜は確かバイトも休みだったはず。それに試験前でもないから特に大丈夫そうだなと記憶を探る。
 言い忘れていたが、俺は高校2年生だ。自分のバイトしたお金でアミュスフィアとゲームを購入し、さらに学校の成績も落とさないという約束を両親と交わし今に至っている。テストで成績を落とさないよう、テスト間近はゲームをやらない……など自分で制限を定めている。

『それなら、日曜日に東の小規模戦闘エリアに分隊チーム組んで遊びにいかないか?』

「あー、30対30の所?チームって後はガスパーさんの他に、コイおうさんとクラゲさん?」

『そうそう。だから4人でどうかと思ってね。リブロフもMSなれて来ただろうしさ』

「んー、まだ20分で20体のミッションクリアできないくらいの腕だけど」

『あー、いいからいいから。対NPC戦あんなもん、対プレイヤーとは感覚が全然違うから気にするな』

「おいおい」

『今週は防衛側だから、勝利できたら来週はチャンスになる』

「チャンス?」

『そうそう。今度はこちらから、地球側の領地へ進行できるんだ』

 まだ十分な操縦スキルは無いので渋っているものの、やっぱり対プレイヤー戦という魅力に俺の心は揺れ動いてしまう。いつかはと思っていた機会がこんなに早く訪れるとは……。

『深く考えずに行こうぜ。まずは楽しめばいいのさ』

 結局ガスパー10に押し切られてしまったが、それは良かったのだろうと思う。俺一人では、まだまだとか言いながらどんどん先延ばしになっていただろうから。
 今度の日曜日が今から待ち遠しくなっていた。



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