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No.31422の一覧
[0] 【習作】Dies irae(仮)【オリ主】[appory](2012/02/04 01:52)
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[31422] 【習作】Dies irae(仮)【オリ主】
Name: appory◆c175b9c0 ID:59998bda 次を表示する
Date: 2012/02/04 01:52



 1939年12月5日――彼は、ある男と出会う。
 ドイツ古代遺産継承局、通称アーネンエルベ機関に属する彼が局内の一室、昼寝場所として彼が勝手に使用していたホールの入り口に現れた男が一人。
 どこにでもいるようでどこにもいないような男は、彼が寝台代わりにしていた長椅子から起き上がるとその凡庸な面貌を笑いを堪えるように歪めた。

「なんだ、コレ?」

 男に対する彼の第一評価が声に出る。
 本来なら存在するはずのない、出会うはずのない彼の人生ジャンルに必要のない異分子。
 映像投影機に映し出される彼の物語ストーリーの見ることのできないフィルムのコマとコマの境界に落ちた滲み。
 運命の回転軸に付着した錆のようなモノ。
 男は異物であると明確に示す何かを纏っていながら、彼のセカイは正しくその存在を見ることができない。
 そこには何もない、そんなものはあり得ない、初めから彼の世界に必要のない余分でしかない。
 それが目の前にたった男の在り方なのかもしれないと彼は勝手に結論付けた。
 
「局長の客人かい?」

 見るからに、いや、見ようとしても視界に入らない男に対し、彼は差しさわりのない事務的な対応を取る。
 手近に合った新聞を手に取り、それまで寝床としていた椅子に深く座りなおした彼は、やはり霞のような異物を見ることもなく反応を待つ。
 ここで応答があればその用事を淡々と処理し、応答がなければただの白昼夢だったのだろうと忘れてしまえば良い。

「いやいや、こりゃあ馬鹿げてる。馬鹿げすぎてる、馬鹿丸出しってもんだ。こんな上等な馬鹿が俺に巡ってくるなんて泣けてくる、そう思わねえか?」

「まあ、泣けてくるな。主にアンタみたいな上等な馬鹿の対応をしないといけない俺の方が」

 泣いて、笑って、怒って、悲しんで。
 嘆いて、喚いて、呆けて、憐れんで。
 勝手な心を込めて、問い掛ける上等な馬鹿であるところの男は、確かにそこのいた。
 彼は、それを無為と知りつつ仕方なく対応をしてやることにした。
 こうした馬鹿は、喋りたいことだけ喋らせておけば勝手に満足して帰っていくに違いない、そうに違いないと面倒を空気として流せる余裕を心に持つことが、アーネンエルベで上手くやっていくコツである。

「言ってくれるねえ、この色男イケメン。どうやったらそんなモテモテ属性持てるんだ?」

「いけめん? もてもて? 悪いがアンタの言葉は、聞き難いみたいだ。というか、用がないんならさっさと返った方が身の為だ」

 そこまで言って、彼はひとつのことを思い出す。
 彼が仕事をサボって転寝していたこの部屋に入るまで、立ち入り制限の掛かった扉が幾つか設けられていたはずである。
 それをこんな俗っぽい輩が何の立場も目的も役目もまく、辿り着けるはずがない。
 もし、善からぬ企みを持って忍び込んだ馬鹿だというのなら、今この瞬間にも荒事専門班がやってきてしかるべきである。

「くっはー! いいね、俺を馬鹿だと思ってるな? そうだろ? ああ、それでいいんだよ、俺が望んだ役割キャラを演じてくれてるな」

「……大丈夫か、アンタ? なにか良くないモノでも見えてるんじゃないか?」

 こんな馬鹿がこんな場所で彼の前に現れる意味がない。
 無意味であり、無駄以外の何物でもないこの瞬間、その刹那はとても留めて置きたい世界ではない。
 そんな彼の思いを感じ取ってか、勘ぐってか、妄想したのか。
 男は、ふやけた輪郭を曖昧なままに自らかき消すように言葉を溢す。

「ああ、見えてんだよ。俺は此処に立とうなんて思っちゃいねえ、こんなプロローグなんて誰も望んじゃいない、上等な歌劇に唾を吐きかけるようなことをしてる俺は、見えちゃいけねえモンが見えるようになっちまった。そんで、こんな過去みらいを歩いちまってる。俺にアンタの言葉は必要ねえんだ」

 君の言葉は彼の黄金にくれてやれ、と。
 男は心からの羞恥を謳う。


隠してやろうHaj regö rejtemどこに隠してやろうhová rejtsem……


 馴染みのある言語のはずなのにそれを口ずさむ者の存在と同じようにその意味を彼の思考が理解を拒むように判然としない。

「なあ、アンタ結局何を……」

 意味の分からないことを繰り返す男に呆れと諦めを込めて紙面から顔を上げた彼の視界に男の姿はない。
 四方を取り囲む壁も唯一の出入り口たる扉も彼の意識が途切れる前と変わらぬままに如何わしげなアーネンエルベの空気を微塵も揺るがせていない。
 まるで彼の物語にあってはならない染みを抜き取るように、神の如き修正が加わり、彼のとって永遠となる刹那と刹那の隙間が削り取られたかのように男は消えた。

「……なんつうか、影の薄い奴」

 消えた男のことを異物と認識していながら印象として抱くことのない彼の心は、再び紙面へと戻される。
 彼には必要のない刹那として現れた男は、消えた。
 それが初めから決められていた運命だったのか、それが神の手による修正だったのか、それとも男が言うように羞恥のあまりに自ら刹那の中の狭間へと隠れたのか。
 例え、男がどんな存在であったとしても二度と同じ刹那はやってこないのだと彼は理解していた。
 意味のないことを記憶にとどめることはできない、する意味もない。

「ちょっと、ロートス。貴方、またこんなところでサボってるわけ?」

 紙面に戻した彼の視線を欲するように当然のように開かれた扉から現れたのは美しい赤毛をした妖艶な美女。
 アーネンエルベにおいて彼の先輩であり、局長さえ頭の上がらない年齢不詳のどこか魔性を秘めた女性の呆れた声に彼――ロートスは仕方なしに面を上げる。

「別にサボってるわけじゃないですよ、アンナ先輩」

 職場の先輩。それ以上でもそれ以下でもない相手である女に対し、ロートスはいつものように軽い言訳を並べる。
 そのロートスの言葉は、闇に染まりきった女のわずかに芽生えた温もりを育む。








 男は隠れた。誰も必要としない男は、手に入るはずもない、掌に包むことのできない、零れ続ける時の砂を舐めながら深淵の扉を閉ざした。
 それは終わりを失った男が自らに撃ち込んだ終止符の楔。
 手綱を失った暴走体は、終幕の鍵を飲み込んだ。

 現象か、心象かkint-e vagy bent悲劇も喜劇もKeserves és boldog人生につきものnevezetes dolgok



  謳ってみせよう。Ím szólal az ének.



    古い物語の真実をRégi rege, haj mit jelent.












 Chapter0-1 終幕と開幕の交錯 end





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