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No.31419の一覧
[0] 【真・恋姫無双】韓浩ポジの一刀さん ~ 私は如何にして悩むのをやめ、覇王を愛するに至ったか[アハト・アハト](2016/04/19 00:28)
[1] 立身編[アハト・アハト](2012/03/02 22:06)
[2] その2[アハト・アハト](2012/03/08 23:56)
[3] その3[アハト・アハト](2012/03/09 00:00)
[4] その4[アハト・アハト](2012/03/09 00:02)
[5] その5[アハト・アハト](2012/03/09 00:08)
[6] その6[アハト・アハト](2012/03/19 21:10)
[7] その7[アハト・アハト](2012/03/02 22:06)
[8] その8[アハト・アハト](2012/03/04 01:04)
[10] その9[アハト・アハト](2012/03/04 01:05)
[11] その10[アハト・アハト](2012/03/12 18:18)
[13] その11[アハト・アハト](2012/03/19 21:02)
[14] その12[アハト・アハト](2012/03/26 17:37)
[15] その13[アハト・アハト](2012/05/08 02:18)
[16] その14[アハト・アハト](2012/05/08 02:19)
[17] その15[アハト・アハト](2012/09/26 19:05)
[18] その16[アハト・アハト](2015/02/08 22:42)
[19] その17[アハト・アハト](2016/04/19 00:26)
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[31419] その8
Name: アハト・アハト◆404ca424 ID:053f6428 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/04 01:04
 
 とある休日、その午前に刺史府に付随された兵舎を往く華琳。
 その装いは年齢相応の女の子らしいものとなっていた。
 と、華琳の耳が多くの人間が武威を競っている音を捉えた。


「やっているわね」


 華琳は、楽しそうに笑うと足を練兵所へと向かった。



 練兵所では、休日であるにも関わらず、多くの兵が鍛錬に汗を流していた。
 剣を振るうもの、矛を振り回すもの、矢を射るもの、それぞれが体を動かしているのだ。
 精兵の呼び名は伊達ではない、そう思わせる熱心さであった。

 その中にあって一刀は、常通りに猿叫と共に立ち木を木剣で打っている。
 否。
 今はより実戦的な、複数の立てた棒を次々と打っていく、打ち廻りだ。
 薬丸自顕流にて一対多を目的とした鍛錬、戦場向けの修練を行っている。

 猿叫と共に、林の如く乱立した棒を打ってゆくその様は、狂的であり勇壮であった。
 木剣の一撃で打ち倒れる棒の様は、一刀に与えられた壊剣なる名が伊達ではない事を、見るものに感じさせる、正に暴力であった。


「北副長!」


 一通りの、立てた棒を一刀が打ち払った所で、声が掛けられた。
 振り返れば、共に汗を流していた兵が、少しばかり焦った顔で一刀を呼んでいる。
 と、その向こうに華琳が見えた。 


「曹刺史がお呼びです!」


「孟徳様が?」


 休日に何用であろうかと首を傾げながら、一刀は、声を掛けてきた兵に、急がねばならぬので悪いが、と自身が鍛錬で使っていた棒の片づけを頼んだ。
 練兵所は広いが、かといって使わないのに場所を占拠しているのは悪いと考えたのだ。
 兵は、その一刀の要請を笑って受けてくれたので、後は任せて急いで華琳の元へと向かった。


「どうされました、華琳様」


 兵の目があるのでと、必要最小限の礼を入れて挨拶をする一刀。
 対する華琳は、休日に熱心ねと声を掛けた上で、用件を口にした。
 それは、春蘭を探しているのだが、何処に居るかとの話だった。
 春蘭は暇であれば常に、この練兵所で鍛錬を行っているような武辺者なので、華琳はこの場に居るものとばかり考えていたのだ。

 が、今日ばかりは所要があったのだ。
 副官として春蘭の動きを把握している一刀は、素直にその事を告げた。


「春蘭様は、今日は朝から陳留へ行かれています」


「そう……」


 予想外の答えに少しばかり残念そうな顔をした華琳は、それから一刀をじろりっと見た。
 頭から爪先までを視線を動かしてから、おもむろに口を開く。


「一刀、貴方は今日、用事はあるのかしら?」


「いえ、今日は鍛錬程度しか予定は無いです」


「なら良いわね、供をなさい」


「はっ?」


「少し陳留市街を回る用事があるのよ。本来は春蘭を連れて行く予定だったのだけど、居ないなら仕方が無いわ」


「いや、なら秋蘭様でも ――」


「あの娘は今日も、自分の仕事を抱えているのよ? なのに、私の個人的用事に呼び出せる訳無いじゃない」


 だから暇なのなら供をしろと、華琳は堂々と宣言する。
 その覇者の風格に、思わず一刀は頷いていた。


「宜しい。では一刀、先ずはその汗臭い服を着替えて着なさい」





 陳留という街は、街を囲む城壁の一辺が5kmからある大きさを誇る街であった。
 陳留郡自体の人口が100万を数えており、でればその中心である陳留が巨大であるのも、至極当然の話ではあった。

 そんな陳留の街を、一刀を連れた華琳は刺史府からやや離れた繁華街、正確には屋台や店などが軒を連ねた区画を歩いていた。
 人ごみはそれなりと云った所だろうか。
 休日ではあるが、商売人達にとっては、そんな日こそが稼ぎ時なのかもしれない。


「で、華琳。今日の目的は?」


 先行する華琳に一刀は尋ねた。
 目的も無しに連れ出される筈も無いとの認識だった。
 甘い想定は、春蘭の代替として狩り出されたって事から、一刀の頭の中ではいの一番に排除していた。
 その事を、健全な成人男性として悲しい話ではあるとも思いながら。


「人を探しているわ」


「人、ですか。名前や相貌はどのような方で?」


「名は許子将、男よ。でも、顔は判らないわ」


「………」


 優に50万を超える人口を誇る陳留で、名前だけで1人の人間を探す。
 その事に眩暈に似たものを感じた一刀は、いっそ夏候元譲隊の手隙な人員を動員しようかとも考えていた。
 が、それを口に出す前に、華琳に止められた。


「見つからなくても良いわ。今日は気分転換も兼ねているのだもの。一刀、貴方も街を見聞するって程度の軽い気持ちで見てれば良いわ」


「気楽に、ね」


「そうよ、後は荷物持ち程度って考えておきなさい」


 華琳は身分を見せぬ為と、外套の頭巾で顔を隠しているが、少しだけ覗いている口元が、楽しげに歪められていた。
 だから一刀も、軽い調子で返していた。


「はいはい、仰せのままに」






真・恋姫無双
 韓浩ポジの一刀さん ~ 私は如何にして悩むのをやめ、覇王を愛するに至ったか

 【立身編】 その8






 探す相手である許子将なる人物を見つける当てなんて無いのだ。であればと、割と気楽な感じで陳留を見聞する事と一刀は割り切ると、華琳の背を追いながら街の様子を見ていた。
 というか、その華琳ですらも人を探すと云うよりも、街の様子を視察するという風が強かった。
 その事を素直に尋ねた一刀に、華琳は笑って返した。
 そうね、と。


「為政者たる者、報告などだけでは実感できない人の暮らし、その雰囲気を感じておく必要があるのよ。でなければ間違えた指示を出す事に繋がってしまうわ」


 現場主義と言うべき、華琳の言葉である。
 だが、それだけではない。


「尤も、現場だけを見ていては、事の全体や本質を見誤る事にも繋がるので、注意も必要だけどね」


 何事もバランスが重要だと言う華琳に、一刀は深く感心していた。
 そこまで良くぞ、と。
 であれば、と、一刀も意識を街へと向けた。

 陳留に来て1月余りが過ぎたが、仕事に慣れる事と、そもそもとしての仕事量の多さから街に出る事が殆ど無かったのだ。
 ある意味で、初めての見聞であった。

 そんな一刀の目から見て陳留の街並みは、人は多く、猥雑な活気があると感じられた。
 だが、同時に一刀から見て少しばかり、清潔とは言いがたかった。
 豚などが人間の生活区域と近い場所で飼育されており、公衆衛生の問題が見えていた。
 疫病対策等の意味で、である。

 清潔である事にある種病的なこだわりを持った現代日本人である一刀、その感覚を基準として見た陳留の清潔さとは、まだまだと言った所であった。
 無論、この世界で少ないとは言えない時間を過ごした一刀は、流石に現代日本では基準が高すぎるという意識も持ってはいたが。

 以前に求められた献策は、ここら辺からかな。
 そんな風に一刀は考えていた。
 公衆衛生の向上は疫病対策としえも意味があるし、それは軍事的側面から見ても、篭城時に大なる意味を与えるだろう。
 それに、上下水作りを公共事業と考えれば、民に仕事を与える事による就業率の向上、即ち治安の安定にも繋がるとも考えられるだろう。
 その意味では、悪くない献策の筈である。
 投資する予算という部分に目を瞑れば。


「………」


 嘆息する一刀。
 予算である。
 予算を考えない政策など無意味であるし、かといって今現在の予算にだけ拘っていては良好な政策を行う事は出来ないだろう。
 その意味で長期にわたった収支予測などを含めての献策となるだろう。
 であればこそ、その膨大な手間を考えて嘆息を漏らすのも当然であった。

 が、それを是としない人間が居た。


「そこの兄さん、女性と居るのにため息をつくのは失礼やでぇ」


 突然声を掛けられた一刀は、慌てて左右を見た。
 声の主は通りの脇の露店に座っている、なかなかに刺激的な格好をした若い女性だった。
 笑って手を振っている。


「なっ!?」


 思わず声を漏らした一刀に、華琳の意識も引き寄せられた。


「あら、カゴ屋の様ね」


 露店のむしろには、中々に見事な竹カゴが並んでいる。
 が、一刀の意識はカゴよりもその脇に置かれた、箱状のものに引き寄せられていた。
 箱の構造体、その隙間から覗く内部構造に木や金属と思しき歯車が大量に仕込まれているのが見えたのだ。
 但し驚きは、歯車自体にでは無い。
 この世界で年を越える時間を過ごしているのだ、製紙や製鉄などの技術面でのアンバランスさ、或いは奇天烈さは十分に知悉しているからだ。
 河内郡の寒村ですらも、歯車などを組み上げた水車を動力とする石臼などの機械構造が存在しているのだ。
 今更、である。

 が、この箱はそれらとは少し違う。
 大いに違う。
 石臼などであれば、構造からある程度の機能が読めるのだが、コレは読めなかった。


「なぁ華琳、あれは何の装置か判る?」


「………さぁ?」


 博識である華琳も始めて見る装置であった。
 そんな2人の反応に気を良くしてか、露店店主の女性は胸を張って応えた。


「そこのお二方、なんともお目が高い! こいつはウチが発明した、全自動カゴ編み装置や!!」


「全自動 ――」


「―― カゴ編み装置?」


 思わず揃って声を上げ、顔を見合わせた2人。
 特に一刀の驚きは多きかった。
 全自動と云う事は動力源までもこの装置の中に入っているという事だろう、ガソリン発動機はおろか蒸気機関すらも存在していない筈のこの時代に、何たる鬼才かと深く感心する。
 その反応に店主は気を良くしてか、益々もって笑みを深くすると、やおら実演を始めた。


「せや! このカラクリの底にこう、竹を細ぅ切った材料をぐるーっとなー ――」


 何と言うか、その手際の良さは何とも見事なものだと一刀が感心して見ていれば、やおら声を掛けられた。


「兄さん、悪いけどこっちの取っ手を回してもらえへん? グルグルっとなー」


「コレか……」


 人力の時点で全自動とはこれ如何に? と思うが、まぁノリと勢い的な命名なのだろうと、深く突っ込む事もなく、回していく。
 最初の感動を返せと思わないでもなかったが、露店なんてこんなものだよなぁと、日本の露店 ―― テキヤのくじ引きなどを思い出して、納得していた。

 そんな微妙な気分で一刀が取っ手を回すとどうだろう、綺麗に編まれたカゴが生み出されていく。
 見事である。
 華琳も感心した声を上げた。

 但し、出てくるのは側面だけであった。
 それは、カゴと云うより竹で編まれた筒だった。


「ねぇ、側面が出来るのは判ったけど、底と枠の部分はどうするの?」


「あ、そこは手作りで、ですわ」


「………そう」


 微妙にがっかりした表情で、でも納得している華琳。
 この時代の技術力を考えれば、側面を編めるだけでも立派である、そう一刀が考えたときだった。


「あっ!」


 女店主が声を上げた瞬間、一刀の手元の装置が爆発したのだった。

 破裂ではなく、爆発である。
 炸裂である。
 腹を叩く轟音と共に火柱が上がり、黒煙が吹き上がる。


「なっ!?」


 手元の編み上げ装置の暴発に、驚く一刀。
 奇跡的に怪我は負ってないし、周辺にも大きな怪我人は出ていないが、轟音と噴煙で驚いた人たちが慌ててしまい、阿鼻叫喚である。


「豪いことになってもうたなー」


 殆ど他人事の様な感想を漏らした店主に、一刀は思わず突っ込んでいた。
 感心している場合か! と。
 が、女店主の反応は違っていた。
 興味津々っと、装置の残骸を見ている。
 

「しかし、これ、どうやって爆発したんやろ?」


 技術屋の目つきだ。
 それに、一刀が突っ込む前に華琳が口を開いた。


「危険物は入ってなかったのよね?」


 そう言った華琳の目は、為政者の目であった。
 街へ、或いは市へ危険物を持ち込ませないのは為政者の仕事である。
 その仕事が失敗していたらとの思いだ。

 が、それには女店主、軽い調子で答えた。
 火薬や揮発油みたいな危険なモノは使っておらへん、と。


「ウチかて、そんな危険なモンをこんな場所へ持ち込む程に考え無しじゃあらしませんで」


 それに、と続けた。


「この陳留には曹孟徳ゆーおっかない刺史さんが居るんや。そんなおっかない人の足元で、物騒な事なんて出来るもんかいな!」


「あら、賢明ね」


「ウチみたいな一般庶民は、よー世の中の流れを見てへんと、エライ目にあいますからなー」


 機嫌よく笑っている華琳。
 その華琳が、件の曹孟徳とは気付かずに、女店主は飄々と言葉を紡ぐ。
 一般庶民と自らを言うが、媚びる所は無い。
 そこに面白みを感じた華琳は、ではと質問を口にした。


「そう。じゃぁその一般庶民の慧眼から見て、この兗州刺史、曹孟徳の施政はどうかしら?」


「ええよ。前の刺史さんの頃に比べれば賊は減ったし、アカン役人の連中も見なくなったし。まぁ徳を口うるさく言う連中は悪口を並べとるけどな」


「あら、そう言う事は貴方、儒者は嫌いなの?」


「余りかたっくるしいのは勘弁して欲しいですわ」


 儒教は、徳治主義であり道徳や礼儀を重んじている。
 一見すれば良い事であると思えるのだが、その思想が徳という曖昧模糊なものを基本としているので、その運用には恣意的な要素が大いに含まれていた。
 その上で重視されるのが礼であり、この礼に関して強く要求されれば、この女店主の発言の如く、堅苦しいものとなるのだ。
 多分。
 そんな風に考えを弄んでいた一刀は、ふと、自分の隣に人が立っているのに気付いた。


「星に誘われてみれば、ほっ、お主、面白い相をしておるな」


 それは若い様な老いたような、そんな不思議な声をした人物であった。
 


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