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No.31310の一覧
[0] 短編・一発・ネタ・チートなドラゴンが巣作りに転生したようです[rahotu](2012/01/29 19:17)
[1] 短編・赤き竜[rahotu](2012/01/28 23:47)
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[31310] 短編・一発・ネタ・チートなドラゴンが巣作りに転生したようです
Name: rahotu◆dfddba02 ID:b4f36931 次を表示する
Date: 2012/01/29 19:17
この作品にはチート・テンプレ・転生・厨二・原作未プレイ・設定無視が含まれます。

それらを注意の上ご鑑賞くださるようお願いいたします。









遥か彼方の別世界でその龍は死んだ。

夜の闇を思わせる漆黒の鱗、天を覆いつくす程の四つの大きな羽根、見るもの全てに畏怖と恐怖を与える紫の眼光。

その四肢は力強く強靭で一振りで何百もの命を刈り取り、闇夜に光る星々の煌きに似た鋭い牙は万物を根幹から貪った。

口から漏れ出す吐息は決して消えない炎で魂さえも溶かし神々の肉体さえも燃やし尽くした。

だが力と恐怖と絶望と常闇の象徴であり絶大な力を持つ龍が死んだ。

戦いに敗れたわけではない。

神々の陰謀で殺されたわけでもない。

ましてや人間などに闇の象徴である龍が破れるはずがない。

誰よりも狡猾で賢く姦計に長けた龍は人間を他の龍達とは違い、どの生き物よりも人間を警戒しまた見下してきた。

万物の根幹を成す龍族は他の生物よりも耐魔力が圧倒的に高く生命力も強い龍は病気にも呪いにもかからなかった。

唯一つ“老い”という呪いだけを除いて。









暗く深い地の底にある巨大な洞穴に一匹の巨大な龍が横たわっていた。

嘗ては地上と天界の空を我が物で飛び、気の向くままに生命を喰らい滅ぼしてきた龍は今はグッスリと眠るかのように体を丸めていた。

四枚の大きな羽根は途方もない年月で萎れ筋と骨ばかりになり、強靭な四肢は今では地に立つことさえ間々ならぬほど衰えていた。

見るもの全てを畏怖させてきた眼光は厚い瞼の裏に閉じ込められ、鋭く尖った牙は今にも口の端から抜け落ちそうであった。

そんな瀕死の龍は最早朽ち果てるのみの我が身を百年余りもの間、その肉体に蓄えた途方もない魔力で維持し続けていた。

だがそれは決して生きる為などではなく、唯こんな所で誰にも知られず朽ち果てるのが我慢ならずこの百年誰が来るとも知れずにいき続けてきたのだ。

だがそれも今日で終わる。

『嘗て世界の全てを手にした龍族も残るは我のみ、三千いた我子も討ち取られるか死ぬかで行方が知れぬ。ならば最早思い残すことは何も無い』

彼はそう心の中で呟いた。

彼は疲れきっていた、遥か太古の昔から生きてきたその長い年月が龍の不滅の魂を憔悴させていたのだ。

しかし最後を決めた彼にふと心の奥底に残る一つの記憶が蘇る。

             『卑怯者』

今よりも力がなくまだ生まれたばかりの時であった。

名前も顔も忘れた人間の女に言われたその一言が、何故か今になって龍の心に思い出されていた。

『ふん、癪だな。大いに癪だ、この私が人間に馬鹿にされたまま無様に死ぬなど』

ならば、と彼は残った絶大な魔力を使いある魔法の儀式を行う。

神々の時代、世界が神秘に包まれていた時代の中で神秘中の神秘と呼ばれた転生の術。

生きているものは須らく死ぬ定めである。

しかし転生は一旦死んだ魂を再び現世へと蘇らせる奇跡。

死者の魂を復活させる蘇生よりも更に上の神秘である転生を龍はその身に蓄えた絶大な魔力を使い更に工夫を施す。

自らの魂を輪廻から外れさせどこかと奥の次元へと転移しそこで再び新たな生命として転生しようというのだ。

龍にとって最早今の世に心残りは無い、だがこのままでは何かと癪なので今の世界との関係を断ち再び一個の生命として異世界に自らを召還しようというのだ。

それが可能かどうかはどうでもいい。

だが龍にとって久方ぶりの意味のある事に力を行使するのはそれだけで大きな意味がある。

『結果は問わぬ。だが望むべくは我魂の誇りを失う事がないように』

そして術を組み終え準備が整った龍は最後の力を振り絞り自らの体内から心の臓を取り出しそれを自らの顎で噛み砕いた。

龍の力の結晶である心臓が噛み砕かれたことで蓄えられていた途方もない魔力が開放され巨大な洞窟を大きく揺らす。

それと同時に地上では突然の地震に当局が慌てふためき地鳴りは三日三晩止まる事がなかった。

そして...

龍は誰にも知られぬことなくこの世での生を終えた。














「確かに我が身は輪廻を離れ転生をした。龍の魂を失う事がないように望んだ...だがしかしよもやこの様な事になるとは思いもしなんだ」

龍は見事転生を果していた。

それも前の世界と同じく龍の身で。

それ自体は喜ばしいことなのだが龍にとって頭を悩ませている事が一つそれは...。

「いいアンタは雄竜つまりは私達雌の種馬よた・ね・う・ま。雄は皆私達雌に尽くすの、貴方の父親も私に是非種馬にしてくださいと泣いて懇願し私が気に入るように素敵な棲家をプレゼントしてくれたわ。だから貴方も父親と同じ様に唯雌に尽くしていればいいの、分かったナース?」

目の前で私の首を絞めながらこの世界で私を生んだ?と思わしき母親がそう語りかける。

唯の女の力で首を絞められているだけの彼は別に苦しくは無いが生まれてこの方繰り返されてきた母親の言葉にウンザリしていた。

ナースと呼ばれている彼はこの世界に転生した龍が新たに得た名前である。

前の世界では大体通り名で通っていたがこの世界では自分を知るものはいない。

故にここでは母親が自分に付けた名前で呼ばれていた。

最もその言葉の意味は蛇竜(ナース)という竜族のなかで最下級の魔物の種族名である辺り母親の適当さが滲み出ていた。

兎に角この目の前の若干ヒステリックな女が我の母親になるらしい。

我は短く「はい、分かりました母上」と心にも思っていない言葉を言うだけでこの女は満足したのか、手に込めた力を抜き私を乱暴に地面に降ろした。

既に述べているが我は元の世界ではそれなりに名が通った龍だ。

今だ幼き子供の身とはいえ既にこの目の前の母親を軽く捻れるだけの力はある。

それをしないのはする必要がないのと別世界とはいえ哀れな同族に手をかけるのに躊躇しているからに過ぎない。

我の母親は親から随分と極端な教育を受けたらしく随分と捻くれていた。

そんな母と結婚した顔も知らぬ父親に我はよくぞ結婚したものだとしきりに感心していたのを良く覚えている。

私の父は我が転生せしめ我子を抱いた時今だ我が身に残る転生の余波を受けその身が崩れ落ちてしまったという。

それ以来母は狂った。

少なくとも父がいなくなることで狂うくらい母は父を愛していたのだ。

赤子の時から何かにつけて力を振るい我を地面に叩きつけ時に人の姿から竜の姿に戻り踏み潰そうとまでした。

それらを母親は教育といってこの年になるまでずっと我に行い続けてきた。

前世ではこの様な母親の事を家庭内暴力やドメスティックバイオレンスなど人間達はそう名づけて読んでいた。

ならば龍の身でそのドメスティックバイオレンスを経験している我は中々に貴重な事なのかもしれない。

「時に母上、何ゆえ我の頬に拳を当てているのです?少々喋り難いのですが」

我が考え事をしている間に母は渾身の力で我の顔を殴ったらしい。

我にとっては微風が頬に当たったに過ぎないが母にとっては岩に素手で殴りかかったかに等しく降ろした拳を体の後ろに隠しながら我の顔を今にも射殺さんばかりに睨んできた。

「母上、お手に傷がございます。直に手当を」

可愛げのない子供だと言う事は分かっている、だからと言って我は基本的に力の無いものはどうでもいいのだ。それがたとえ我の母親であっても。

「気にしなくていいわナース。こんなの直に治るのだから、それよりも貴方もそろそろお嫁さんを見つける時期よねいいえ見つけるべきよね」

先程までの表情とは違い母はまるで感情がこもっていない冷たい笑みを浮かべ私にそう切り出した。

成程嫁か。

この世界では雄と雌の比が圧倒的に雌が多くまた雄は雌に比べ力も弱いので成人するまで我のように親元で暮らすかそれとも竜の里で許婚と共に暮らすのである。

そして雄竜は成人すると許婚の為に棲家を作りそこを雌が気に入るように財宝を集め侵入者がこないようにトラップを仕掛け初めて雄は雌を迎え入れるのである。

そのとき雌が気に入るかどうかで雄の運命は決まる。

気に入れば同じ棲家で子供を作り余生をゆったりと過ごす、反対に雌が気に入らなければ作りなおしを命じられるか最悪殺されてしまうことになりかねない。

故に雄は雌に気に入られる為に必死になって巣作りに励むのである。

「成程我もそろそろ成人であるが故に今だ許婚がおりませぬ。どこぞ適当な嫁は居りませんかや?」

「それなら心配はいりません。母がとっても素敵な嫁(こ)を見つけてきたから貴方は唯馬車馬の如く巣作りに励んでいればいいのよ?」

成程既に手は回しているということか。

少なくとも我は母が我を疎んでいることはとうに知っておる。

最初は母だからと丁重に相手していたがそれで母の態度が変わることもなく我はとうに母を母としてみることをやめていた。

だから母が我を遠くに遠ざけようとするのも異論は無い。

「それは重畳。母上が選んでくだされたのならばきっと良い嫁子でしょう」

「ええそうよとってもいいこよ。だからいますぐここからでてすづくりをするのです。だいじょうぶあなたならひとりでできるは。なんたっておとうさまのこですもの。あなたがころしたおとうさまのこならきっとすてきすをつくれるわ。だからいますぐここからでていきなさい」

どうやら母は遂に完全に狂ってしまったようだ。

まあどうせここから出るつもりなのだから母の言葉は願ってもないことだ。

我はその日のうちに棲家から外の世界へと出た。

この世界に転生してから初めてみる外の世界は闇に包まれていた。

常闇の空を我が知っている星とは又別の輝きが旅立つ我を祝福してくれるかのように明るく照らしている。

一息に息を肺の限界まで吸い我は人の身から龍の姿へと戻る。

小高い丘のような体に闇夜を写し取った漆黒の鱗がびっしりと生え、鋭く尖った爪は大地へと確りと食い込みその健在ぶりを示し、背中に生える二枚の大きな羽根と小さな羽根を羽ばたかせナースは夜の空を舞った。

この世界で初めて経験する夜の空それに外の空気に野の臭い。

それら全てナースにとって取るに足らないだが素晴しい経験であった。

ナースは大きく羽根を羽ばたかせると共に天高く夜の空へと舞い上がり夜空の闇へと消えていった。






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