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No.31303の一覧
[0] 【チラ裏から】 IS<安価でIS学園に入学する> (一夏魔改造)[ウィンター小次郎](2012/04/16 17:11)
[1] 「安価するか」[ウィンター小次郎](2012/03/20 17:41)
[2] 「ったく、しょうがねぇな」[ウィンター小次郎](2012/04/04 05:23)
[3] 「よう、モッピー」[ウィンター小次郎](2012/03/20 17:43)
[4] 「ISの男性操縦者やってるけど何か質問ある?」[ウィンター小次郎](2012/03/20 17:42)
[5] 「ハンデをやると言っただろう」[ウィンター小次郎](2012/04/04 05:21)
[6] 「ごめんなさい」[ウィンター小次郎](2012/04/16 16:32)
[7] 「嘘をつけ」[ウィンター小次郎](2012/04/16 16:45)
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[31303] 「嘘をつけ」
Name: ウィンター小次郎◆81fc9858 ID:581ce14c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/16 16:45
IS学園第五整備室。

アリーナに併設されたそれは、第二学年から設置される整備課の居城の一つである。
ISを展開できるようにするためだろう、天井は高く、スペースは広い。
実用性が徹底的に突き詰められた空間は無骨で、IS学園の設備の中では一線を画していた。
この第四整備室は学園寮、校舎から最も遠い所にあるため普段から人は少ないのだが、夕食時である現在はそれが際立っていた。
室内は最低限の明かりのみが灯され、広々とした空間の所々に影が落とされている。
何かを作っている最中なのだろうか、雑多に置かれているパーツの数々を避けながら歩く。
そして部屋の隅に置かれた長椅子の前に立ち、そこに仰向けになって寝転がっている人物を見定めた。

「おい、マロ。人を呼んでおいて寝てるなんざ、どういう了見だ」

長椅子の足を蹴飛ばしながら、声をかける。
すると眠りから覚めたようで、薄らと目を開けた。
その体勢のまま横の地面に置いてあるスポーツバッグに手を突っ込み、何やらゴソゴソとやり始める。

「なんでそんなグロッキーなんだよお前」
「……君……マジ……ありえない……」
「ん?」
「確かに……協力するとは……言ったけど……」

ぶっちゃけありえない
そう言いつつ鞄をまさぐり続けていた。
普段の余裕のある面持ちは見られない、顔は少々青ざめていて、その金髪も輝きを失いどこかくすんでいるように見えた。
そしてどうやらマロのこの惨状は俺のせいらしい。
何がいけなかったのだろう?

ここ一週間、毎日毎日深夜にマロを訪ねては、訓練機の調整を頼んだことだろうか。
それとも思いついたアイデアを相談するために、暇があれば電話をしたことだろうか。
または、試合前日に例の反動回避のための設定を、思考操作で可能なように注文したことだろうか。

(うーん、いまいち思いつかないな)

なんにせよ、若さに任せた体の酷使はやめ、健康的な生活をするべきだろう。
健全な精神は健全な肉体に宿る、まさに至言である。

「僕は……ちゃんとやることがあって……IS学園にいるんだけど……」

マロは何やらブツブツ呟きながら、こちらにPADのようなものを差し出してきた。
もう話すことすら面倒なのか、ジェスチャーで操作を指定すると、すぐに眠りに落ちる。
お疲れ様です。

「さて」

流石に罪悪感が湧かなくもないので、お願いされた通りにしてやることにした。
PADを操作し、テレビ電話で一つしか登録されていない番号にかける。
数秒のコール音の後、画面が切り替わった。

『―――どうもこんにちは、いやそちらの時間帯だとこんばんは、かな?よろしく織斑 一夏くん。私はとある企業のCEOだ、気軽にBOSSと呼んでくれたまえ』
「…………………」

俺が思わず絶句したのは、初対面の人間に物凄くフランクに話しかけられたからではない。
更に言えば、いきなりCEOというラスボス級の人間が出てきたことに驚いたわけでもない。
更に更に言えば、BOSSってなんだ、普通に名乗れよ社長なんだから、などと思ったからでもないのだ。
ならば何故かというと
(なんでこいつは、バスローブなんだ……!?)

そう、画面に映っているのは、バスローブに身を包んだ、黒髪オールバックで肥満気味のおっさんだった。
ゴシック調の部屋に置かれたソファーに座っており、ご丁寧にも右手にはワイングラスを持っている。

「どうした?何か言いたいことでもあるのかね?」

逆に何も言われないと思っているのだろうか?

「あのさぁ……仮にも初対面の人間と会うのにその恰好はどうかと思うぞ?」

敬語なんぞ使わない。別に尊敬できる相手以外に敬語は使わないなどと、バトル漫画の主人公みたいなことは言わないが、それにしても限度があるだろう。

「俺は目をかけた人間に対しては、いつもこうして顔を見せている。喜ぶといい」
「社会舐めんな!」

俺は吠えた。

「仮にも一端の大人がそんなんでやっていけると思うのか!」
「やっていけてるから、社長なんだがな」
「ぐぬぬ……」

潰れろ、そんな会社。

「もういい。で、何のようだ?」
「お前の試合を観させてもらった」

試合は数時間前にやったばかりである。
どうやって観たのかはわからないがずいぶん早い。

「で?」
「いやいや、素晴らしく楽しませてもらったよ。
直接的に俺が話すのはもう少し様子を見てからの予定だったんだが、思った以上にウチ向きの人間のようだったからな。
こうして予定を前倒しにしたわけだ」
「中年太りしたおっさんに好かれてもなぁ……」
「はっはっは、そういうな。お前はもうその齢にして内定を貰ったようなものなんだぞ。
それも飛びっきりの勝ち馬だ」
「勝ち馬だ?てかそもそもお前らはなんだよ。ブラック企業の内定なんざ貰ったて嬉しくねぇぞ」
「んー。それには色々説明が必要になるな」
「いや、しろよ。企業説明会は就職活動には付き物だろうよ」
「よかろう。少し長くなるぞ」

BOSSはワイングラスを置き、組んでいた足を解いた。
それじゃあな、と前置きし

「少しばかり昔話をしてやろう」

そう言って、どこかで見たようなふてぶてしい笑みを浮かべた。
主従そろって胡散臭いやつらである。



………………



十年前、世界はISという名の流星が放つ光に包まれた。
軍事関係者だけでない、子供でも理解することが出来るISの異常性は、全人類の眼を射ぬいた。
各国政府はISを求め狂奔し、国際委員会の設置、アラスカ条約、軍の解体及び再編成など、ISを中心とした軍事パワーバランスが構築されるのにそう時間はかからなかった。
そしてそれに伴い女権運動は加熱し、行き過ぎたそれは、女尊男卑の波として世界を襲う。
女性の意識改革による、優秀な女性の社会進出は人類の可能性を広げたが、一方で政策としての過剰な女性優遇措置は、新たな社会的不和を呼んだ。
それは今なお続く問題であり、解決しなければならない課題でもある。
これが白騎士事件からの歴史の流れであり、誰の眼から見ても、世界は篠ノ之束という一人の人物により書き換えられたように思えた。

だが実の所そうではない。
とある賢者の言葉に“どんな天才でも一人では 世界を変えられない”というものがある。
世界は常に幾多の人間によって、その行く先を捻じ曲げられているということだろう。
これからの人類の歴史はISにより作られると信じ、ただただISを求めるものばかりではなかったのだ。
目を焼かれ、三寸先が見えない暗闇のなか、成り上がるためにあえてその暗闇に身を委ねた者がいた。
その者らは、ISが起こす激流を操り、自らの願う方向へと世界を導こうと鎬を削った。
このバスローブ姿の男、自称BOSSもその一人である。
そして同時に、この世紀の大ギャンブルの勝利者でもあった。



………………



「というわけでこの俺が、女尊ブームの仕掛け人だ」
「嘘をつけ」

一刀両断。
三十分ほど話し込んでいたが、やたら大仰なくせに冗長で内容が薄い話であった。
というか何一つ自分達については語っていない。

「おいおい、君だって似たようなことを言っていたじゃないか。その証人となる人物が目の前にいるんだぜ?もっと喜んでもいいだろう」
「OK。万が一あの荒唐無稽な話が、ある程度真実であったとしよう。いったいどんな手段を持ってそれを成すことができるかなんて問題にも目を瞑ろう。
だがな、もしそのブームが作られたものだったとして、その仕掛け人がこんな中年のおっさんだってことだけは信じらんねぇ!」
「……ひどい言いぐさだな。まぁ現実とは得てしてそういうものだ。
空想のような出来事が起こるかと思えば、奇跡なんてものはその実大したことでもなかったりする。俺はその一例にすぎないのさ」
「……」

確かにそうなのだろう。
思い当たる節がないわけではない。
虚構と現実、よくもわるくもその差は確かに存在するのだ。
だが、心情的に素直に納得できるかどうかは別である。

「質問をしてもいいか?」

というわけで、とりあえずしゃべらせて粗を探してみることにした。

「いいだろう、ある程度のことまでは話してやる」
「あんたの狙いはなんだ?なんで女尊男卑の世界を望んだ?別に度を越えたフェミニストってわけでもあるまい」

BOSSがニヤリと笑った。
たぶんこれはして欲しかった質問であろう。先程の話では意図的にここら辺の話が伏せられていた節がある。

「女性優遇の社会になって一番その煽りを受けた職種はなんだか分かるか?」
「……軍人」
「んー、惜しいな。それはISが出てきた時点で決まっていたことだ。それに扱いやすい、歩兵用の部隊は今だ残っている。正解は、軍事関係技術者だ」

ワインを一口飲み、BOSSは続けた。

「確かにISは新技術の宝庫で、既存の理論が通用しない代物だが、かといってそれまでの学問的積み重ねが丸っきり無に帰すわけではない。第一線で活躍する優秀な技術者が不要になるわけがないんだ。だが、多くの国々はそれをないがしろにした」

IS技術者のトップ層が女性で占められている。
その理由として挙げられるのが、ISの同調機能であり、女性はこれによってISの状態が確認できるだけでなく、IS技術の学び易さにおいても男性を大きくリードしているのである。
分かりやすくスポーツに喩えてみよう。野球のバッティングを研究する上で、実際に自分でバットを振る人間と、振らない人間、どちらがより研究を進めやすいかというと、前者であろうと思われる。ISの同調機能というのはIS側から働きかけでもあるため、さらにこの差を広げているのである。

「今だに下働きとして残っている男もいるが、優秀な人間ほどプライドは高いからな。おかげでここ十年間は、軍事技術者のバーゲンセールさ。そして現在までに、我が社が獲得したそいつらの数は、全体の二割だ」

二割……。口にすれば、小さく聞こえるが、実際の数は相当なものだろう。
しかもそれを一企業だけで持っているという。その上、流入したのは人だけではないはずだ。

「だがそいつらに価値を見出したのがお前だけってわけでもないだろ。そんな大人数の囲い込みなんざ、ただの一企業ができることか?」
「まぁ出来ないな。だからウチは半国営なんだよ」
「国営?どこの?」
「考えてみれば分かることだ。他国に働きかけることができる政治力を持ち、当初誰よりも強くISの価値を認めながらも、現在は国力に対し不自然なほど開発が遅れている国。そう、その国の名は――」

――アメリカ合衆国。

(……辻褄は合う)
確かにアメリカは白騎士事件当時、最も日本へ圧力をかけた国の一つだ。
アラスカ条約とはその名の通り、アメリカが呼びかけた第一回IS国際会議をアラスカで行った時に調印されたものである。
そしてその後のアメリカと言えば、大した女性優遇制度も作らず、肝心のIS開発も色々問題がおきているようである。
有名なのはイスラエルと共同開発をしているシルバリオ・ゴスペルだ。
第二世代開発の時、コアが盗難されたという噂が実しやかに話されたのは記憶に新しい。
世界最大の軍事大国の名が廃る有様である。
今思えばそのアメリカの凋落が、世界の女性優遇制度推進を後押ししたという見方もできるかもしれない。

「元々ISはウチの国向きじゃない。既存の技術の積み重ねが無に帰すのもそうだが、物量が売りの軍事大国に、少数精鋭の代名詞のようなISは合わないんだよ」

一時的な軍事的弱体を受け入れ、未来へ賭けたということか。
確かにISコアの総数という重い枷がかけられている以上、ISにおけるアメリカの大きな軍事的優位は二度と訪れないかもしれない。
それにしても割ととんでもない話である。
問題ない所まで話してやるとは言っていたが、本当に問題がないのだろうか?
もう大分お腹がいっぱいだ。
最後にもう一つだけ質問して終わりにさせてもらおう。

「で、結局お前らは何を作ってるんだ?」
「フフッ、知りたければ教えてやろう」

むしろもの凄く言いたそうだ。
BOSSはソファーから立ち上がり、拳を体の前で握った。
バスローブがはためき、需要のないチラリズムに俺は目を反らす。

「我々が目指すのは
ISによらないISの打倒
人呼んで“IS殺し”」

デブはドヤ顔でそう言った。






ナナ・デルモットは正面ゲート近くの道を歩いていた。
日は疾うに沈んだが、春特有の生温かい風が吹き、後ろで一纏めにした茶色の長い髪を揺らしている。
そのためISスーツの上にジャージを着こんだだけの服装でも、十分に暖かかった。

(遅くなっちゃったな……)

現在は第二アリーナからの訓練帰りである。
入学直後の自己紹介で目立ってしまったために、二組のクラス代表に選出され、それからこうして暇を見つけて自主練に励んでいるのだ。
といってもつい先日まではそこまで熱心にやっていたわけではなかった。
クラス代表といってもまだ入学したばかりの素人である。
入学前にシュミレーターの体験を何度かしたことがあるといっても、IS操縦に関してはまだまだ未熟だ。
本来ならば何も問題はない。
五月のクラス対抗戦も、毎年学年に一人か二人存在する代表候補生が優勝するのが定石である。
今年は1組のセシリア・オルコットが本命であると予想され、ナナ自身も“戦うことになったら瞬殺されないようにしよう”ぐらいの心持ちであったのだが……

(あんなものを見せられちゃね)

先日行われた1年1組クラス代表決定戦、セシリア・オルコットVS織斑 一夏。
話題を集め多くの観客が集まった試合であるが、前評判は当然セシリア勝利との予想一色であった。
だがしかし、結果として勝利したのは織斑 一夏だった。
試合内容を見れば分かる、セシリアは代表候補生として相応しい力を持っていた。
だが織斑 一夏は拙いながらもしっかりとそれに対抗してみせ、最後には誰もが驚く奇策で勝利をもぎ取った。
その事実は多くの人々に衝撃を与えた、代表候補生にISを動かしてまだ一週間の人間が、どんな形であれ勝利する。
ISに少しでも関わったことがある人間ならば、これに驚かないものはいない。
そしてそれを見たナナを襲ったのは焦り。
クラス対抗戦で自分だけが醜態を見せてしまうのではないか、という恐れであった。
もちろん全員が織斑 一夏レベルになるとは思えない。
四組は代表候補生がいるらしいが、少なくとも三組は同レベルのはずである。
だがそれでも心の底にこびりつく不安を拭い去ることはできなかった。

(はぁ……クラス代表、今からでも辞退したいなぁ……)

溜息をつきながら、肩を落とす。
その時、ふと視界の隅に人影が入り込んだ。
思わず立ち止まって注視する。
大きなボストンバッグを背負った少女が、正面ゲート前で立ち尽くしていた。
体格は小柄で、顔立ちは整っている。艶やかな黒髪を高い位置で左右に留めている、いわゆるサイドアップテールというやつだろう。
少女は綺麗に整えられた眉を寄せて、手元の紙を睨んでいた。

(誰?というか何者?)

見かけない顔である。睨みつけている紙は地図のようであるから、この学園の人間ではないようだ。だからといって企業や政府の人間にも見えない。
人一倍好奇心が強いナナは、思わずその少女に近寄り話しかけていた。

「えーもしもしこんばんわ、私はここの生徒なんですけど、良かったら案内しましょうか?」

すると少女はバッと顔を上げ、こちらを見た。

「あ、丁度困ってたとこだったのよ、ありがとう。総合受付までお願いできる?」

そう少女は快活に答える。
第一印象は大変サッパリとした性格、というところだろう。
ナナはその少女を連れ、指定された場所まで歩き出した。
簡単に自己紹介を済ませたところ、この少女の名前は凰 鈴音というらしい。
なんと中国の代表候補生で、この度IS学園に転入することになったそうだ。
それも自分と同じ一年二組である。もう少し早くこいよ、とナナは思った。

「凰さんはなんでまたこんな時期に?」
「鈴でいいわ。んー私もよくわからないんだけどさ、とりあえず第三世代機のトライアルをしてこいって上の奴がね」
「へー、でもやっぱり織斑くんの影響もあるのかな?」
「一夏……ね」

あれ?
急に鈴の様子がおかしくなった。

「もしかして知り合い?」
「ま、まぁね」
「織斑くん凄いよー、この前なんてイギリスの代表候補生を倒してクラス代表になっちゃったんだから!」
「……その代表候補生がよほど弱いのか、一夏がアレなのか。でも相変わらず無茶苦茶やってるみたいね」

何となく嬉しそうな雰囲気である。

「なんだか詳しいみたいだね。仲良いの?」
「そりゃあ幼馴染だしね。一夏とは小学生からの付き合いだし」
「へーもしかして彼女?」

ブッ、と鈴が噴出した。

「ち、違うわよ!いや、でも、うん、昔仲よく遊んだ間柄というかなんというか……」

顔を赤らめながら、慌ただしく弁解する鈴を見て、ナナは心の中でニヤリとほくそ笑んだ。
この年頃の女子特有の嗅覚で、甘酸っぱいものの匂いを嗅ぎ取ったのである。
三度の飯より恋話、それがナナ・デルモットの信条だった。
ちなみに当の本人の男っ気はまったくない。
なんにせよ、良い餌が入ってきたものである。

「すっごい仲良いんだね。織斑くんて昔はどんな感じだったの?」
「一夏はそうね、計算された暴走特急というかなんというか。無茶なことやって場をグチャグチャにするけど、最後にはなんとか纏めるタイプ、って感じかな。クラスメイトの隔壁や溝なんかもぶち壊すのが得意で、色々大変だけど悪いようにはしてなかった気がするわね。まぁそのせいで色んな所に衝突したりして――」

隣を歩きながらどことなく熱が籠ったような調子で饒舌に語る鈴を、ナナは微笑ましい気分で眺める。
これはぜひとも応援しなければ、と内心呟いた。

――その時、ナナの脳内にキュピーンという音が響き渡った。
名案の閃きである。
(これは……誰もが幸せになれる神の一手……!!)
私、天才!などと思わず自画自賛。
善は急げということで、早速その案を鈴に打ち明けることした。
鈴の話が途切れるのを待ち、ナナは意気揚々と口を開いた。

「ねぇねぇ鈴さん、私実は二組のクラス代表なんだけど――」









「織斑くんクラス代表決定おめでとー!」

寮の食堂にクラッカーの破裂音が響き渡る。
紙吹雪が舞い、饗宴の始まりが告げられた。
織斑一夏クラス代表就任パーティー。
それがこの宴の名前である。
俺が主役のように題されてはいるが、有体に言えばただのクラス親睦会だ。
お祭り好きの気風が感じられる一組らしいイベントといえるだろう。

広い空間に設置された複数のテーブルの上には、お菓子やジュースのたぐいが幾つも乗っけられている。既に女子たちはそれらを囲みながらの歓談へと移っていた。
ちらほらとこのクラスのものではない顔を見かけるが、まぁスルーしておくべきことだ。
幹事も俺ではないので、進行を気にする必要もない、好きに楽しませてもらうことにした。

「人気ものだな、一夏」

箒がどことなく不機嫌な顔つきで、こちらに話しかけてきた。
こういう賑やかな場所は性に合わないのだろう。
右手に持った紙コップのお茶を、先程から頻りに飲んでいる。

(……逆に箒に合った場所って何処だろう)

テーブルのお菓子に手を付けながら箒を眺め、考える。
ジッと見られてこそばゆいのか、更に居心地が悪そうになったが気にしないでおこう。
鍛え上げたられた日本刀のような美しさを持ち、性格は正に質実剛健。
外見的には清楚といえるかもしれないが、大和撫子というには目つきが鋭すぎる気がする。
家庭の台所が主戦場とも言えないだろう。
これらのことをひっくるめて考えてみると……
「関ヶ原かな……」
「何がだ」
「いや、なんでもない気にしないでくれ」

何かを感じたのだろうか、箒が睨んでくる。
俺はテーブルのお菓子に手を伸ばすことで誤魔化した。

「はいは~い、新聞部でーす。話題の新入生、織斑 一夏くんに突撃インタビュー!」

突然、箒と俺の間に割り込むように人影が飛び込んできた。
オー、と拍手交じりに周りが盛り上がる。
続けてされた自己紹介によると、この方は新聞部副部長の黛 薫子さんというらしい。
面倒な名前である。

「では、まずクラス代表になった感想をどうぞ!」

何か期待の籠った目を向けてきた。
とりあえず何か答えなければ。

「俺に触ると爆発するぜ!」
「キラークイーン!」

即座に返してきた黛さんとハイタッチ、この人とは凄い仲よくやれそうな気がした。

「それは良いとして、次の質問行くよー!」

いいのだろうか今ので?
それからは

「なんで届いていた専用機を使わなかったの?」
「IS学園での生活はどう?」
「千冬さんについて何か一言?」

等々、文字通りの質問責めにあう。
だがこれは貴重な機会なので、無駄にはしない。
織斑 一夏の宣伝はもちろんのこと、情報を吐き出し俺がどういう人物かということが知れ渡れば、よりIS学園に馴染みやすくなるだろう。
ある意味完全アウェイのIS学園においてそれは重要である。

「好きな女性のタイプは?やっぱり山田先生?」

お、この質問は。
待ってましたとばかりに俺は答えた。

「そうですね……やはり、こう、性格は穏和で控えめな、守ってあげたくなるタイプが好きですね。外見的なツボを言えば、ブロンド美人とか好きですよ。え?体つきですか?まぁ曲がりなりにも健全な男子ですから、それなりにふくよかな方が嬉しいですかね。でも大事なのは相性だと思っています」

この前と言っていることが違うじゃないかというものもいるだろう。
もちろん俺の好みが変わったということではない。
性格は気が強いクール系が好きだし、黒髪万歳だ。体つきはハニートラップのイメージ的に指定してみた。
というえわけでほぼ正反対と言ってもいいわけだが、これで問題はないのである。
あえて本命とは違う好みを主張する、それによりハニートラップの狙い目をズラすことができるのだ。

(ククク、これで年上のかっこよくてクールなお姉さんと、ある程度安心して仲よくできるぜ)

まぁ、ぶっちゃけその場で思いついた浅知恵にすぎないのだが。
それからも幾つか質問が続き
「んーこんな所かな。ご協力ありがとね、次の機会もまたよろしく!」
最後に写真をパチリと一枚撮り、黛さんは去って行った。
突然現れ、唐突に去る、嵐のようなお人である。



「い、一夏さん」
少しばかり口を休め、菓子を貪ろうとしたが、その前に背後から話しかけられた。
人気ものは辛い。
振り返ると、そこには一度見たなら忘れないであろう、金髪縦ロールの姿が。

(と、いうか一夏さん?)

友達は下の名前で呼ばなければならないという例のアレだろうか。

「ようセシリア、今更だが身体の方は大丈夫か?」

今日の授業には普通に出ていたが念のため。

「ええ、大丈夫ですわ、ありがとうございます。それよりも一夏さんは専用機には慣れましたか?」
「ちょっと動かしただけだしな、まだまだだ。ファーストシフトを済ませたぐらいだよ」

セシリアとの試合では出番のなかった白式は、今は俺の右腕にガントレットとして収まっている。
発言の通り、一度アリーナで試してみたのだが、中々ぶっ飛んだ機体であった。
機動力は非常に高い、動かしやすさもまるで体の一部のようで訓練機とは比べ物にならない、ただ問題は武装である。
試合前にも確認した事であるが、剣一本しかない。
そして拡張領域もない。
どう考えても誰かの趣味で作った狂気の沙汰にも程がある機体である。
剣撃で絶大な威力を発するために、リソースが全てその制御に充てられているのでは?という話であるが、そんなはずはないだろう。
どうにかして追加武装を入れてやろうと現在検討中である。

「で、でしたら、わたくしがISの操縦を教えて差し上げてもよろしくってよ」

チラリと、顔を背けつつも横目でこちらを覗ってくるセシリア。
正直教官役は先輩方で既に足りている。だがこれはセシリアなりの友好を示す行為なのだろう。こんなキャラ作りを優先した性格で、友達が多いとも思えない。友人関係を保つにあたって、どうすれば良いのか必死に考えた末この提案に至ったと考えると、中々心を動かすものがある。よって俺はこの提案をありがたく受けることにした。

「おお、マジか。それはありがた――」
「待て、一夏の教官役は足りている。私だけで十分だ」

箒が俺とセシリアの間に割り込むように押し入ってきた。
だがお前こそ待て箒。お前にISの操縦を教えてもらったことは一度もないはずだが。

「あら、あなたはISランクCの篠ノ之さんじゃありませんか。ISランクAのわたくしに何かご用かしら?」
「くっ……ランクなど所詮は目安だ。それよりも一夏のISは近接特化型らしいじゃないか。中距離射撃型のお前に用はない」
「ふん、浅い考えですわ――」
「世迷いごとを。所詮――」

何やらバトルが始まってしまった。
ぼっちVSぼっち。箒も一緒にセシリアに教わるのが良いのではと思ったが、聞きそうにもないので放置することにした。ぶっちゃけ面倒である。
(さて、今度こそブラックサンダーでも食うか)

「お、織斑くんがやっとフリーになった」
「織斑くん!何か一発芸やってよ!」
「私も見たーい」

(……)
隣のテーブルの女子から声がかかった。
(ふぅ、どうやら今日は休めない日のようだな)
ならばいいだろう、せいぜい騒ぐとするか。

「よっしゃー!第一回一年一組一発芸大会だ!一番!織斑一夏物まねします!
題して、初めて日本に来て納豆を食べた英国人の反応!」

――臭いですわ!粘つきますわ!縦ロールに絡まりますわ!
――ちょっと一夏さん!やめてください!
――おい、まだ話は終わっていないぞ

そんなこんなで祝賀会は大賑わいであった。
そのせいで就寝時間を過ぎてしまい、千冬姉が怒鳴り込んで来たのはまぁお約束というところだろう。







…………………………



ギャグ成分薄め。
てーんしょんがーあっがらないー
BOSSとの会話シーンは改訂や加筆がされる模様。
マロに関する話とか入れます。



どう考えても作品には不必要だけども作者がやめられないいつものアレ

・BOSS
オリキャラは数名出す予定ですが、レギュラー化はしません。
オリ展開に関しては基本的に変更のつもりはありません。
あとついでにこの物語はフィクションです。実在の人物、団体、国家、とは如何なる関係もございませんので悪しからず。

・アメリカ
作者の思考ルート
“アメリカの第三世代ISが共同開発ってらしくなくね”→“あまり力を入れていない理由があったりしたら面白いな”→“よしならアメリカを別兵器開発に使わしてもらおう”→一通り書き終わる→ISwikiを見る→“ファング・クエイク……だと……”→“このイケメン機体を忘れてたアル”→“さらなる理由付けが必要だな”→“イスラエル関連でもう一つ入れとくか”←今ここ
マジでこの物語はフィクションです。実在の人物、団体、国家、とは如何なる関係もございません。
あまり政治関係の話は書きたくなかったんですが、避けきれず。
大人しくラブコメだけしてろっつー話ですね。

・ナナ
二組のキャラ視点で二組の登場シーンを書きたかったのですが、ティナ・ハミルトンしかいなかった……。クラス代表にするにはティナは無気力そうだったので、オリキャラを投入することに。鈴陣営の軍師役として活躍してくれるかもしれません。

まさか鈴とコンタクトとれないとは思いませんでした。
地獄(悪くはない意味で)の鈴編をこのペースで進んでいくのかと思うと……。
目指せ一日千文字、二週間一本ペース!
それと感想には本当にモチベを保ってもらっています。大感謝。


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