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No.31282の一覧
[0] 【ネタ・処女作】ブレイン・バースト・バックドア【アクセル・ワールド・オリ主】[カヱン](2012/01/22 16:43)
[1] [カヱン](2012/01/23 00:45)
[2] [カヱン](2012/01/23 15:30)
[3] [カヱン](2012/01/24 09:21)
[4] [カヱン](2012/01/25 11:25)
[5] [カヱン](2012/01/26 11:57)
[6] [カヱン](2012/02/07 23:36)
[7] [カヱン](2012/02/08 20:33)
[8] [カヱン](2012/02/10 16:28)
[9] 10[カヱン](2012/02/11 19:09)
[10] 11[カヱン](2012/02/12 19:40)
[11] 12[カヱン](2012/02/13 14:20)
[12] 13[カヱン](2012/02/16 11:43)
[13] 14[カヱン](2012/02/17 23:39)
[14] 15[カヱン](2012/02/18 23:29)
[15] 16[カヱン](2012/02/19 21:22)
[16] 17[カヱン](2012/02/21 17:24)
[17] 18[カヱン](2012/02/22 15:45)
[18] 19[カヱン](2012/02/24 02:52)
[19] 20[カヱン](2012/02/24 19:10)
[20] 21[カヱン](2012/02/25 17:45)
[21] 22[カヱン](2012/02/27 01:57)
[22] ブレイン・バースト・バックドア第二部[カヱン](2012/03/11 01:08)
[23] [カヱン](2012/03/11 22:13)
[24] [カヱン](2012/03/12 23:37)
[25] [カヱン](2012/03/15 14:37)
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[31282] 10
Name: カヱン◆bf138b59 ID:1e77003e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/11 19:09
 世界から青い色が抜け落ち、元の灰色っぽいコンクリート色に包まれた。同時に人々や自動車が消える。
 朝の明るい空は消え去り、暗雲低く垂れ込む夜空に変わった。そんな空には、広告パネルで光り輝く飛行船が浮かび、バブリーで品のないレーザーによるイルミネーションが地上から発射された。
 隣のビルがピカっと光る。広告パネルが点いたからだ。そこからは東南アジア系の言語が宣伝として流れ始め、この場所をカオティックな空気で満たしてきた。
 とはいえ、その光景に見とれているわけにはいかない。なぜなら、シアン・パイルを倒さねばならぬからだ。ぼんやりしているうちに逃げ回られたら、目も当てられない。
 視界中央の小さな水色のカーソルの示す方向に大通りを走り始めた。通りの左右のビルはケバケバしく煌びやかだが、人っ子一人おらず何とも言えない寂しさがある。

 走っているうちに、カーソルが消え、ターゲットへの接近を知らせた。
 シアン・パイル、どこにいる――と思うも、通りの突き当りの広場で、背の丈ぐらいの光り輝く立て看板を壊している青いアバターが見えた。
 ブレイン・バーストゆえの臨場感のせいか、コペン・ミリタントの足音はシアン・パイルに届いていたようだ。距離を置いて立ち止まった瞬間、こちらを向いてきた。
「朝はバトルなんて気分じゃないんだけどな」
 随分と爽やかな雰囲気の声だが内容はトゲを感じる。コウジはやっていたであろうことを瞬時に判断して言い返した。
「その割には必殺技ゲージを貯めるのに一生懸命だったようですけど」
「万が一ってことですよ。あーあ、ちょっとグローバルネットの接続が早かったのかな。でも、新宿までオフなのはかったるいしね」
 シアン・パイルの言葉にコウジは疑問に思った。
「ちょっと待て! なんで新宿だったら、挑まれないんだ?!」
 鼻で笑って、シアン・パイルはこちらに近づきながら答えた。
「やれやれ、完璧に初心者(ニュービー)ですか。新宿は我々レオニーズの領土です。そこならレギオンメンバーは対戦拒否できるんですよ」
「レオニーズはレギオンで、レギオンはMMORPGでいうギルドみたいなものか?」
「そうですよ」
 やっぱり、こういう肝心な情報が抜け落ちている。詩音先輩め。やっぱり、これは残念先輩にもコンタクトを取った方がいいな、と余計なことを考えていると、シアン・パイルは快活な声を発した。
「じゃ、レクチャーの対価にポイントをポイントを貰おうかな」
「残念だけど、僕もポイントが必要でね。ちょっとレベルが高くて、勝てそうな奴を倒さないといけないんで」
 コウジの挑発にシアン・パイルは乗ってきた。
「レベルの差がこの加速世界でどういうものなかのか、教えてあげるよ!」

 その時、コウジはシアン・パイルのと距離が思いの外、詰められていることに気づいた。
 右手が引かれるのが見えた。確か何か機械が装着されていたはずだ。相手の名前はシアン・パイル。杭打ち機か、と仮説を立てれば、杭が飛び出すという点で射程が長いパンチを繰り出すことが読めた。
 ガシュン!という音と共に、シアン・パイルの右腕のパイプの末端から炎が見えた。
 あとは自分の回避操作で体を逸らし避けにかかる。それを追いかけるように右手は動かされ、目にも留まらぬ速さで鉄針は撃ち出された。
 チートアシストの無いコウジでは起こることを読み切っていても、その攻撃の完璧な回避はできなかった。左肩に装着されている板切れに突き刺ささり、同時にその衝撃でまずほんの少し体力が削れた。だが、それは始まりに過ぎず、直後、左腕に激痛が走った。構造物は貫通し、腕をえぐるようにダメージを受けた。
「ハハハ! 随分、脆い盾だね!!」
 バカにしたような笑い声と共に、再び鉄杭が使われるために収納されようとしていた。
 体力ゲージは減りは二割に満たないぐらいだが、それ以上にコウジはダメージを受けていた。詩音のレクチャーも学内の敵との戦いもダメージの中心は打撲だ。貫通の痛みはそれと比べ物にならなかった。
 そう思えば、二発目を食らったら体力ゲージ以上にまずい。ファースト・ターン・キルされるために対戦を申し込んだわけではない。苦痛を飲み込み、姿勢を立て直し、健常な両足でシアン・パイルへの距離を縮める。
 こちらがこんなに速く復帰し、突っ込んでくると思わなかったのか、シアン・パイルはとっさの対応が取れなかった。元から素早さは低いのかもしれない。
 そんな奴を拳の射程距離に収めた所で、両足を踏ん張り、全体重を預けたパンチを繰り出す。右拳は盾的な板の隙間を抜けて脇腹に入った。
 打撃が効いたようでシアン・パイルの姿勢が少し崩れる。その隙を見逃さずに左回し蹴りを腹に打ち込んでやる。さらにパンチを打ち込むと、よろめきながらもシアン・パイルは右腕の発射筒を高く掲げた。筒から肩までが青い光に包まれ、低い音を立ててそれは三倍ぐらいの太さに変化した。
 その奥から姿を見せたのは杭ではなく、先端が平らな巨大なハンマーだった。だが、その挙動自体は予想の範疇に過ぎない。
 マッチョイズムな胴体の動きは大きく読みやすい。右手の杭打ち機も発射方向が読み安い、射線に入らなければ回避可能な攻撃だ。
 あとはタイミングを読み切るだけだ。
 直後、ハンマーの先端が輝いた。
「――《スパイラル・グラビティ・ドライバー》!!」
「ッ、《カウンター》!」
 重々しい駆動音と同時に回転がかかりながら撃ち出されたハンマーに対して、その最大衝撃が走る一点に向けて拳が放たれる。
 今まで試してきた《カウンター》の的中率は微妙であったが、テレフォンパンチとも言えるコイツの攻撃なら、今までほど難しくはない。
 その瞬間が訪れた。轟音を伴って青いアバターはハンマーと共に後方に吹き飛んだ。灰色に近いコペン・ミリタントは衝撃で半歩ばかり、後ろに押し下げられていた。
 思わぬ反撃だったのか、シアン・パイルは毒づいた。
「ゲームだけは得意な僕の知り合いにそっくりだ」
「そう褒められるほどゲームは得意じゃないんだけどね」
 コウジはそう言いながら、チラリとゲージを見やる。コペン・ミリタントは体力ゲージはまだ七割ちょっと残っている。今の必殺技を完璧には打ち消せなかったらしく、体力は減った感じがする。無論、必殺技ゲージは空である。一方のシアン・パイルは今のカウンター攻撃が効いたようで、体力ゲージは六割ほど減っていた。だが、必殺技ゲージは七割ぐらい残っている。
 意外とゲージを使わない必殺技なのか、と分析する。だが、そのことはこちらにも読みやすさをもたらす。他の必殺技は杭なりハンマーなりの構造物をシアン・パイルの名の通り、杭打ち機から発射してくるのであろう。それは読みやすく、カウンターで迎撃可能な技だ。
 ならば――至近距離で仕留めるのが必勝法だ。
 コウジは懐に潜り込むかの勢いで一気にシアン・パイルとの距離を詰めた。
 その瞬間、シアン・パイルは両腕を思い切り広げた。じゃきっ!と機械音がしたと思うと、ボディースーツの小孔から十本以上に及ぶ杭の先端が顔を覗かせた。
 必殺技か――走りを急に止めれはしないが、なんとか飛び退こうと動いた。
「――《スプラッシュ・スティンガー》ァァァッ!!」
 空気を轟かせて、多数の杭がコウジに向けて発射された。
「うおおおお!!」
 必殺技という見立ては正しかった。無理やり体を逸らすも、杭の多くが自分に飛んでくる。コペン・ミリタントの周囲の構造物がこれに耐えれるはずがない。ほとんど全ての杭が構造物に突き刺さる。そして、僅かにその勢いを殺しただけで、構造物はその役目を終える。
 腹を中心に十数本の杭を全身に受け、コペン・ミリタントはボロ屑のように空中を舞った。そして、大通りをまっすぐ後ろに転がった。
「ぐはっ……!」
 痛みが酷い中、ゲージを見る。今のダメージだけで必殺技ゲージは半分弱ほど溜まっていた。だが、体力ゲージは残り三割ほどしかない。
 まだ、カウンターを打てるのか?そう自問した瞬間、まだ無傷であった右手に激痛が走った。ゲージがググっと減る。
「攻撃を打ち消してダメージを与える必殺技なのかな?」
 シアン・パイルはうつ伏せのコペン・ミリタントの手を踏みつけながら、優しさ交じる声をかけてきた。
 単純な近接キャラではなかった。自分の読み違えゆえのこのザマだ。
 だが、負けるつもりはさらさらない。腕は動かさず、左手だけを小さくサッと動かしながら、チート行使に必要なほんの僅かの時間を稼ぐために会話する。
「そういう技ですね」
 ジェスチャーが認識され、視界にはブレイン・バースト固有のものではない、コマンドラインコンソールが表示された。
「ずいぶんと地味な必殺技ですね」
 シアン・パイルの言葉を聞きつつ、左手片手でホロキーボードで操作し、コンソールに入力した文字列履歴を選び、Enterを叩く。
「レベル1ならこんなものでしょう。現にあなたもレベル1の必殺技は使っていない」
 同時にコウジの視界には深紅の文字列で【DISCONNECTION WARNING】と表示された。
 コウジのセリフが癪に障ることだったのか、シアン・パイルは返事をしなかった。
 直後、後頭部にハンマーが当たる感触がした。が、それと同時に訪れた暗闇がその感触を打ち消した。

 コウジは加速した交差点に帰ってきた。
 今の操作のせいで交通予測ナビの表示は消えていた。加速前、信号が変わるのにあと三十秒とか通知していたはずだ。あまり重要な情報とは言えない。
 信号が変わり、ある程度歩いた。レベル3狩りは失敗したが、負けはしなかった。何分かの時間が経ったことを見計らって、再びグローバルネットに接続した。今度、挑んでくるのには勝ちたいとコウジは思っていた。

「で、学外は二勝五引き分け。学内は三敗一引き分けでした」
 リンカー部の部室には詩音しかいなかった。午前授業で昼食を食べずに来たので、他の人はまだいなかった。
 そんなわけで、コウジは加速を断って、適当に腰掛け今日の状況を説明していた。
 詩音は軽く拍手をしながら、明るく言った。
「学内初ドローおめでとう!」
 三日も経つと何とか慣れてはくる。カーマイン・アーテラリから三十分逃げきる事でドローに持ち込み、今日は18ポイントの損失で済んだのだ。
 ついでに言えば、エンパイア・スタッフには勝てそうではあったが、結局押し切られた。これで戦闘を遠慮してくると嬉しいがそうもならないだろう。
「ありがとうございます」
 コウジがそう返事をした瞬間、詩音の表情は不満そうなものに変わった。
「で、二勝おめでとー」
 棒読みである。
 シアン・パイル戦の後、四回もレベル1が挑んできたのだ。再開発が進んで人口が多いゆえ、プレイヤー数も多いのかも知れない。で、そんな奴らに頑張って立ち向かった結果、二勝できたのだ。シアン・パイルに挑む前にも二回レベル1に挑まれていることを考えれば、六戦二勝である。引き分けが本当は負けであったと考えれば、普通の結果である。
 ちょっと強張りながらも、お礼する。
「ああ、ありがとう」
「何あれ」
 詩音にしては怖い表情だが、怯まずに答える。
「チート」
「えー。アレは絶対ズルイ。無し」
 詩音も、チートアシストによる最適化済み操作は許せても、こういう手法はやはり気に食わないようだった。
「いや、仕方ないし」
「えー。だってさ、ピンチになると全部【DISCONNECTION】で落ちるんだよ?! シアン・パイル戦なんか観戦者多かったから、みんな怪しんでいたよ」
 そう。コウジのブレイン・バースト初チートは、ゲーム中のリンカーの操作である。それを利用して、ゲーム中にリンカーのグローバルネットから切断したのだ。
 グローバルネットからの切断にハードウェアボタンが利用されるのはユーザインターフェースの問題に過ぎない。人間はまだ画面上で操作したことに対し、全幅の信頼を置いているわけではないからだ。それはある意味、いまだに有線接続が残っている理由と同じとも言える。
 とにかく、グローバルネットの切断は、当たり前だがリンカー上からもできる。だから、コウジはそれをブレイン・バースト上からもできるようにしただけである。
 ハードウェアボタンによる切断だと長押しに必要な数秒、XSBケーブルの引き抜きだとコンマゼロ秒かの通信が発生するが、システム上での強制切断はマイクロ秒単位で切断が完結する。それゆえ、ブレイン・バースト上でも数秒で離脱が完了するというメリットがあった。
 ただ、学内ローカルネットからは切断すると学校に警告されるので、これで逃げることはできない。それゆえ、グローバルネットで負けないためにしか使うことができなかった。
「いや、シアン・パイルはちょっと欲張り過ぎたと思う。勝ったら一気に収支が釣り合うと思ったんだけどねぇ」
 コウジはそうお茶を濁すような言い方をするしかなかった。が、詩音の可愛らしい不満顔は解消されそうになかった。
「ま、こういうのがベースにあった上で、色々なチートって作られるから、待って欲しい」
 その言葉を最後まで続けさせる前に、詩音はいつも通りの顔で言葉を重ねてきた。
「ま、いいんだけどね」
「え、なんで?」
「ちゃんと、このゲームにハマってるじゃん」
 そう言いながら、彼女はニッコリと笑った。なんか、遊ばれているような気もしたが、詩音先輩のことだから、何も考えていないに違いない。
「それなら、そのうち変態駆動が見れるじゃん」
 変態駆動は残念先輩の命名である。
「変態駆動言うな。それにまだちょっとやっているだけですから」
「え? でも、これからマサミンと会うんでしょ?」
 コウジは部室に来た時、「ブレイン・バーストのこと聞きに残念先輩に会いに行くので、手短に」と言っていた。どう考えても、夢中になっていることがバレバレである。
 そんなコウジに詩音は再び笑みを返した。
「ま、そうなんだけど」
 とっさに目を逸らしながら言うと、時計アプリの時間が目に入った。 
「っていけね、もう行かないと」
「じゃあ、いってらっしゃい。また、来週ね」
 そう言いながら、詩音は小さく手を振った。コウジも手を振り返しながら答えた。
「では、また」


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