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No.31282の一覧
[0] 【ネタ・処女作】ブレイン・バースト・バックドア【アクセル・ワールド・オリ主】[カヱン](2012/01/22 16:43)
[1] [カヱン](2012/01/23 00:45)
[2] [カヱン](2012/01/23 15:30)
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[18] 19[カヱン](2012/02/24 02:52)
[19] 20[カヱン](2012/02/24 19:10)
[20] 21[カヱン](2012/02/25 17:45)
[21] 22[カヱン](2012/02/27 01:57)
[22] ブレイン・バースト・バックドア第二部[カヱン](2012/03/11 01:08)
[23] [カヱン](2012/03/11 22:13)
[24] [カヱン](2012/03/12 23:37)
[25] [カヱン](2012/03/15 14:37)
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[31282]
Name: カヱン◆bf138b59 ID:1e77003e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/10 16:28
 現実世界で詩音は椅子の上で回り続けていた。いや、過ぎ去った時間が加速下にあったことを考えれば、現実においては限りなく短い時間であり、回った分量なんて極僅かに過ぎない。
「助かりました、ありがとうございます」
「うにゃ」
 コウジはお礼に、詩音は気の抜けた返事をした。
 傍から見れば、わけのわからないやり取りではあるが、自分たち以外に誰もいないから気にならなかった。
「今日は帰って作業します。明日も多分休みます」
「りょーかい。期待して待ってるぞ」
 詩音はそう言いながら、まだ椅子の上で回りながら、《完全ダイブ》と唱えた。
 回りながらダイブとか酔うぞ、と思い、詩音の方に向かい、そっと肩に手を掛けて、回転を止めてやる。
 珍しいな、と思う。女子生徒なら、神経質な場合は周囲一メートル以内に接近したり、せめて誰かに触れられたら、リンク・アウトする設定が多い。詩音もそんな設定をしていたような気がする。
 だけど、詩音は現実に復帰することなく、意識は学内ローカルネットのどこかに消えているようだった。コウジは学内ローカルネットへのダイブなんて、授業で指示されない限りしない。だから、そこにどんなコミュニティーがあるかなんて全く知らなかった。いや、リアルの学校ですらどこのコミュニティーにも属していない自分には関係無いだろう。
 世界の全てに理解されるなんて不可能だ。
 だから、僕はグローバルネットのリンカー技術関連コミュニティーで理解されればいい、そう思って振る舞ってきた。でも、現実でごく何人かは理解してくれた。
 その一人が詩音だ。彼女はチートプレイに対して昔から珍しい反応をしてきた。普通はずるいという感情が来る中で、彼女だけはすごいと喜んだ。そして、それから数日いや数週間かけて、コウジの作ったチートプレイを手動で再現してきた。
 僕が見ているものは人と違う気がする。無論、彼女が見ているものもまた違う気がする。だけど、僕のゴールを楽しみにしてくれている。それがあまり望ましくない方法だとしても。
 コウジは詩音からそっと離れて、部屋の扉に向かった。振り向くともう回っていない椅子に座って、眠ったような表情をしている詩音がいた。
「じゃ、また今度」
 口の中に音を留めるように言葉を残すと、何か返事をされたような気がした。でも、そんなありえないことは気にせずに部室を後にした。

 ナビの無い家路も二日もすれば、慣れてしまう。数十年前まではこんなものなんて無かったということを考えれば、無しで歩けて当然である気もする。
 あまりにぼんやりしすぎれば、もちろん危ないが、思考の妨げとなる通知が出てこないので考え事には向いている。
 何の気なしに、うーん、とコウジは唸った。
 コウジのお家芸とも言える操作のアシストチートをブレイン・バーストで実現するのは二つの難しさがある。
 一つ目はゲーム中にチートジェスチャーを混ぜる方法がわからないことだ。とはいえ、こちらは今日の戦闘で幾つかの検討がついたことから方針は立っている。一番の問題は試すたびにポイントが取られるので、実際にこの機能を作る前の設計に多くの時間を割かないといけないことだろう。ただ、最速で今晩、恐らく数日あれば、プロトタイプは作れると、コウジは経験的に考えていた。
 問題は二つ目だ。即ち、ゲームが千倍で動作するため、チートも千倍で計算をしないといけない点である。FPSでの最適な投擲は対象への投擲軌道を0.25秒で計算する。だが、それは加速下においては、四分強である。使い物になるはずがない。現状のリンカーのリソースを限界にまで使って、カリッカリッにチューニングしたところで二倍速くなるかどうかである。千倍速くなるには、ブレイン・バーストで実現していることを割り出し同じ事をするか、コペルニクス的転換でアルゴリズムの改善するか、百年近く続いているムーアの法則を信じてリンカーの性能向上を二十年待つかしかない。最後の項目は時間的に選択の俎上からは外れるけど。
 となると、興味的にも得意分野的にもアバターの能力的にもアシストは実現したいが、現状は無理だと割りきるしかない。
 それに今日の減損は14ポイント。毎日、詩音先輩にお世話になれて七日。と言ってもポイント供給できる余裕なんてあるはずがない。今日の戦いも先輩にすごい負担を与えたことだろう。そうなると残りは世話にならないとすると、グローバルネットから切断を続けても、あと四日の命である。今日は木曜であるから、一度日曜を挟むが、それでもアシストが完成どころか調査中に落ちる可能性が高い。
「どうにかして勝たないとな……」
 ため息と共にそう呟いた。ナビのせいで普段見ることのない、歩道用の信号が目に入る。赤なので立ち止まった。
 赤信号は渡るな。青信号は渡ってもよし。だったかなと、コウジは昔、父親が言っていた雑学を思い出していた。青信号は渡りなさいじゃないんだよな、と思った瞬間だった。
 勝つ方法じゃなくて、負けない方法であればいい。その負けない方法もグローバルネットでの対戦に限定すれば、バカバカしいやり方で実現できる。グローバルネットで負けなければ、ある程度のポイントは稼げるはずだ。
 「よし」と小声で呟いた。ゲーム本体の解析もチートの高速化も必要ない。チートジェスチャーを混ぜる仕組みさえ実現できれば、何とかなる。むしろ、それだけを何とかする。
 嬉しくなって、目の前の車道に車が走ってこないことを確認して、赤信号を突っ切った。コウジは家に向けて、軽く駆け出した。数分後に息切れしていた。結局、いつもと同じ時間に家に着くことになった。

 家に帰ると制服も脱がずに、自分の部屋のメッシュの椅子に腰掛ける。右手を軽く振って、黒い画面に白文字表記のコンソールを立ち上げる。
 今から作るものは仮想環境の汎用解析プログラムだ。
 アイディアの元は、詩音が教えてくれた宿題ファイルのコピーロックが外れる話、極端なところを言えば、宿題ファイルが開ける話だ。どんなファイルのコピーロックでも解除できるのも興味深いが今はその解析をしている余裕はない。重要なことは千倍の世界でも、既存の任意のアプリの実行が可能であることだ。
 となると、やるべきことはブレイン・バーストの初期画面がある種の仮想環境だと仮定し、解析を行うことで、自作のチートアプリが戦闘時もバックグラウンドで起動する状況に持っていくことである。
 そこまでこれば、あとは戦闘中でのジェスチャーによる機能呼び出しだけである。その実現もブレイン・バーストが千倍で動いていることを考えれば容易だ。VRゲームがあくまで仮想現実だと思える程度の質感しか実現できないのは、リンカーのスペックが足りないからではない。確かにリンカーの性能向上と共にVR空間は美しくなっているが、それは脳に送るデータのCPUでの振り分け性能が向上したからに過ぎない。単純に言えば、古いVR機器は視界全体をデータとして送っていたが、新しいものは焦点の当たっているところを繊細に、それ以外をボカして送っているからと言える。これはリンカーが安全のため、量子的意識体への接続深度を制限しているためである。
 だから、逆に言えばあの少ない実行リソースのブレイン・バーストが高密度・高精細を実現しているのは、通常より深い接続深度で量子的意識体へのアクセスを行なっているぐらいしか想像がつかない。
 つまり、ジェスチャー認識のプログラムを動かすには、量子的意識体の深深度接続における意識情報に対応させ、なおかつ処理時間を通常の千倍とすれば良い。
 それゆえ、ここまできたコウジは開発に丸一日かかることが読めた。アプリケーションの開発はコンピュータの時代からリンカーの現代に至るまで変わらない。設計に全体の三分の一、テストに半分の時間を掛け、実装には六分の一の時間しか掛けない。だから、そんな想定ができた。
 人間の進歩ははるかに遅い。それはブレイン・バーストの開発者とて同じ事だろう。だから、僕はこのゲームに挑める。
 ひとまず、やることは決まっていた。対戦の危険を冒しても、グローバルネットに接続する。そして、量子的意識体への深深度接続の研究で有名なアメリカ西海岸の大学の研究室の論文を入手する。で、一秒でも速くグローバルネットから切断することだ。

 木曜の午後から調査と設計を初め、金曜日は矢のように過ぎ去り、二日後の土曜日を迎えた。
 論文調査のためのグローバルネット接続時に対戦がふっかけられなかったのは運が良かった。金曜には学内がりで前日と同じく24ポイント奪われた。帰宅後の実験のための加速で5ポイント、さらに検証のための対戦での敗北で30ポイント失った。
 残り26ポイント。だが、手元には一つのチートアプリ《ブレイン・バースト・ブリッジ》が完成していた。
 想定している用途では、グローバルネットでしか使えない制約があるので、これでまずはポイントを稼ぐことを考えたい。
 だから、今日は二日ぶりにグローバルネットに接続し、交通情報ナビが懐かしい。そんなことにふける間もなく、既に二回対戦を挑まれたが、このアプリのお陰で無敗である。正直、このブレイン・バーストをゲームとして見た場合、相性の問題が非常に大きなウェイトを占めているように思える。だから、挑んできた赤系プレイヤー(それも見えないところからヒットしてくることができた奴らだ)に対しては早々とチートを行使した。
 今日の目的はポイントの獲得。そのためには相性が良い相手と戦うことだ。こちらがポイントを使えるのは、学内で狩られることを考えると僅かに一回。だが、そのチャンスを物にしてみせる。
 交通量の多い交差点で、視界右上には「信号が変わるまであと32秒」とナビの通知が表示された。
 コウジは覚悟を決めて呟いた。
「バースト・リンク」
 水面が突如凍るが如くのバシイイイッという音と共に、世界の風景は青色で固まった。だけど、その世界には用はない。
 灰色うさぎのコウジのアバターは右手でブレイン・バーストのコンソールを呼び出し、マッチングリストの更新を待った。自分からの対戦は初めてだが、よくあるゲームインターフェースなので、慣れで使える。
 自分のアバター名《コペン・ミリタント》に続いて、十人近い人数が出てくる。新宿区と目と鼻の先の距離だからプレイヤーが多いのかもしれない。
 負けないためのチートを持つコウジが挑むべきは勝てるか勝てないかぐらいの相手。1レベル差はある意味コンディション次第だ。3レベル差はさすがに実力差が出る。となると、ポイントを使って挑むべきは2レベル上の相手だ。その上で、自分のアバターのカウンターが最大限に効く相手、即ち、遠距離の赤ではない色のプレイヤーである。
 金曜日の対戦で目撃できた、セルボーことセルリアン・ボーアが近接であったことは、詩音の言葉の裏付けとなった。なんだかんだで、昨日は青いコイツと緑のエンパイア・スタッフとは、カウンターが的確に当たってくれさえくれれば、悪くない勝負になったのだ。
 今日は決める。
 直後、リストの中から該当するプレイヤーを見つけた。
 《シアン・パイル LV3》。
 青系レベル3だ。願わくばそんなに動きが速くないことを祈りながら、コウジは名前をクリックし、ポップアップしたウィンドウのデュエルコマンドを押した。


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