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No.31282の一覧
[0] 【ネタ・処女作】ブレイン・バースト・バックドア【アクセル・ワールド・オリ主】[カヱン](2012/01/22 16:43)
[1] [カヱン](2012/01/23 00:45)
[2] [カヱン](2012/01/23 15:30)
[3] [カヱン](2012/01/24 09:21)
[4] [カヱン](2012/01/25 11:25)
[5] [カヱン](2012/01/26 11:57)
[6] [カヱン](2012/02/07 23:36)
[7] [カヱン](2012/02/08 20:33)
[8] [カヱン](2012/02/10 16:28)
[9] 10[カヱン](2012/02/11 19:09)
[10] 11[カヱン](2012/02/12 19:40)
[11] 12[カヱン](2012/02/13 14:20)
[12] 13[カヱン](2012/02/16 11:43)
[13] 14[カヱン](2012/02/17 23:39)
[14] 15[カヱン](2012/02/18 23:29)
[15] 16[カヱン](2012/02/19 21:22)
[16] 17[カヱン](2012/02/21 17:24)
[17] 18[カヱン](2012/02/22 15:45)
[18] 19[カヱン](2012/02/24 02:52)
[19] 20[カヱン](2012/02/24 19:10)
[20] 21[カヱン](2012/02/25 17:45)
[21] 22[カヱン](2012/02/27 01:57)
[22] ブレイン・バースト・バックドア第二部[カヱン](2012/03/11 01:08)
[23] [カヱン](2012/03/11 22:13)
[24] [カヱン](2012/03/12 23:37)
[25] [カヱン](2012/03/15 14:37)
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[31282] 16
Name: カヱン◆bf138b59 ID:1e77003e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/19 21:22
 ソースコードがないアプリケーションを挙動から解析する。それは慣れていても大変なことである。
 夕食を早々と済ませ自室にこもったコウジは、BBコンソールを操作しながら、その都度起こるリンカー上での電子的な変化を示すコンソールとにらめっこをしていた。
 コウジが一つ操作をする度にメモリーに乗っているアプリケーションの状態が変化する。一つ操作をする度にブレイン・バーストのサーバーにデータを送り、受け取る。そんな結果から、勘を働かせて、アプリケーションがどんな挙動をしているか読み解こうとしていた。
 だが、その解析はもちろん困難を極めた。それは、それがブレイン・バーストであるから、というわけではない。そんな言い訳をするほど、コウジは諦めがいいわけではない。
 もっと一般的な理由、単純にブレイン・バーストがネットワークを利用するアプリケーションだからだ。通信をしないアプリなら、その状態の変化、ある種の電子的エコシステムと言える機能の全てはリンカー上で完結する。だが、通信が入るとエコシステムのうち、ネットワークの向こう側は観測不可能な領域に組み入れられてしまう。それゆえ、スタンドアローンなアプリケーションよりも、経験的な勘といつまで続くかわからないトライ・アンド・エラーが重要になっていた。

 コウジは徹夜の価値を信じていない。だから、土曜日も日曜日もちゃんと寝た。また、食事を抜くことも良しとはしていない。だから、日曜日に三度朝昼晩と食事を取ったし、月曜日の朝も出かける前にトースト一枚食べた。
 それはきちんと覚えていた。だが、それ以外の記憶がない。
 と言えば、嘘になる。ただ、一生懸命に通信データの構造を調べ、それを利用したチートを作ろうとしていた。
 ゴールは土曜日に思っていたことにあった。他のプレイヤーのリンカーをクラックして、自分のいるところに遠隔接続させる、そんな無意味に近い想像だ。
 他の人のリンカーをクラックするなんてことは、自分がリンカーのOSのセキュリティとネットワーク周りで膨大な知識があるクラッカーであるか、リンカー利用者がどうしようもなく甘くてOSの定例パッチを当てずにセキュリティホールが放置されたままであるかしないと無理である。
 では、そのリンカーが既にクラックされていたらそれは可能なのか、という話となる。それは土曜日の時点ではNOだった。だけど、日曜日の時点ではNOとは言えないに変わり、月曜日の朝の時点ではYESかもしれないというものに変わりつつあった。
 クラックしなくともブレイン・バーストが入っているリンカーは一つ持っている。自分のリンカーだ。自分のリンカーから他のリンカーかサーバーに遠隔接続する。マッチングリストは自分のいる場所ではなく、その遠隔接続側で登録される。そうすれば、学内のマッチングリストに登録されなくなる。

 はじめはローカルネットにしか接続していないのに、グローバルネットに接続されるはずがないと思っていた。だけども、挙動はローカルネットであってもグローバルネットに存在するマッチングサーバーに繋がっている、としか言えないものだった。
 ――本当に馬鹿げたアプリだ。
 コウジは心の中で本気でそう思った。
 ブレイン・バーストがインストールされた時にリンカーに入ったファイルの一つ、それは動的結合が行われるオブジェクトコードであり、ブレイン・バーストの特殊な通信を担っていた。
 それはローカルネットであっても、色々な迂回手段を講じて、グローバルネットのマシンに接続する。つまり、その通信の機能を自分のリンカーと接続先のマシンに入れたプログラムを作ってやれば、その二つはグローバルネットに繋がっていなくとも結びつき、ブレイン・バーストは接続先のマシンのネットワークで表示されるので、今いるネットワークでの対戦を拒否できる。
 無論、その通信の使い方が文書で用意されているなんてことはない。だが、今までいくつものVRゲームを解析してきたコウジは、自身のリンカーに関する解析知識を総動員して、それの使い方を挙動だけから読み解いていった。

 そして、月曜日の二時間目の数学の時間だった。数学と物理がとんでもなく得意なコウジにとっては、バカみたいに簡単な小テストの時間中だった。
 早々に小テストを終わらせて、さまざまな起動・閲覧制限の外れた自分のリンカー上でその通信機能を利用するアプリのテストを行なっていた。何十度目になるかわからないテストとして、そのアプリ、ファイル名はまだ素っ気なくmain.exeだった、を起動した。
 表示されたウインドウは利用しやすさなどは考えられていない、適当に必要な機能がただ羅列されて表示されたものである。
 一番上の状態表示を行う領域に、アプリの内部状態がメモリー中の数値と簡素な英語でザザッと表示された。ブレイン・バーストの通信用のオブジェクト・コードと動的結合が行われたところまでは動いた。それは既に昨日の段階で完成していた部分である。
 そして、その機能を利用して、学内ローカルネットを通り抜けて、グローバルネットに接続しようとする。画面には「connect: try」と素っ気なく文字が表示される。待つこと数秒。その結果は昨日からずっと「fail」と表示され続けていた。これがダメだとあともういくつかしか試すことがない。だが、世の中そううまく行くことばかりじゃない。コウジは達観したかのように、想定していた画面が表示されるのを待った。
 その瞬間だった。「success」という七文字が表示された。
 叫んで喜ばなかったのは自身の性格だろう。コウジの心拍数は跳ね上がっていた。ブレイン・バーストをインストールして、初めて緊張していた。そして、小さく口を動かして、コマンドを唱えた。
「バースト・リンク……」

 バシイイイという音が、雷鳴によく似ていることに気づくほど、新鮮な感情で満ちていた。教室で皆がテストを受けている光景がスナップショットとして、青い世界に落とし込まれていた。
 そのとき、初めてソーシャルカメラがその風景を作っているという確証を得れた。ソーシャルカメラの影になっていたのか、ロッカーの僅かな隙間が質感が感じられないのっぺりとしたもので構成されていた。目線を下げると、椅子や机の裏側も同じような形になっているのがわかった。
 だが、それが目的ではない。燃えるBのアイコンをタッチし、コンソールを起動する。そして、マッチングリストが更新されるのを待った。
 表示されたのは自分の名前と見知らぬプレイヤーの名前の二つだけ。学内で戦いを仕掛けてくる四人のアバターの名前も詩音先輩のオペラ・プロテーゼの名前も無かった。一人しかいないのは、今が授業中だからであろう。もちろん、ブレイン・バーストのプレイヤーの年齢の上限が十五歳であることを信じるならば、の話ではあるが。
「よしっ」
 コウジである灰色のウサギのアバターは小さくガッツポーズを作った。
 学内のローカルネットにいながら、ブレイン・バーストの接続先のみグローバルネットになった瞬間だった。
 コウジは青い世界に一分もいずにバースト・アウトと唱えた。こんな無駄なポイントの使い方は初めてだった。だけども、その価値がある結果だった。

 現実に戻ると、すぐにさっきのウインドウに戻る。小テスト中に先生は何をしているかは知らなかったが、そんなことは気にせずに腕を少し持ち上げて、状態表示の画面の下に存在する「generate」と書かれたボタンを押す。ファイルの保存先を問い合わせるダイアログが表示され、コウジは適当な場所に生成したファイルを保存した。
 それを終えると、黒い背景のコンソールを立ち上げて、コマンドを入力して外部マシンへの遠隔接続の機能をこのテキストベースの画面に呼び出す。外部マシンへの遠隔接続自体はパソコンが登場した頃からある機能だ。自宅のローカルネットでホームサーバーに接続するときも裏側ではこの機能が使われている。コマンドを使って立ち上げたのは、今起動しているブレイン・バーストの機能を利用したグローバルネットへの接続を用いて、その機能を使うためである。
 コウジは三十文字ほどの数字とローマ字を入力した。他人が見たらランダムな文字列に見えるそれは、グローバルネット上でコウジのホームサーバーを示す住所に当たる文字列である。入力し終えるとリンカーに格納されている個人認証用の量子暗号鍵をが利用されたことが画面に示され、自宅のホームサーバーに接続されたことが示された。
 ――学内から繋げてしまった。
 そんな思いでいっぱいであったが、今はやることがあるので手を動かす。さっき生成したファイル。それはグローバルネットを通じて、相手側マシンが接続を受け入れるために必要な通信受け入れ用実行ファイルである。それをホームサーバーにコピーして、実行した。実行されたことしか画面には表示されなかったが、それを見るとコウジはホームサーバーとの接続を切って、さらにグローバルネットに繋げた作ったばかりのアプリを終了した。
 コウジは一度息を吐いてから、再びコマンドを小声で唱える。
「バースト・リンク」

 数分前と同じ音が再び青い世界を提供した。
 今は学内ローカルネットに接続されているという認識で間違いない。それの確認が目的だ。マッチングリストの更新が終わり、自分とオペラ・プロテーゼを始め、学内にいるべき六人の名前が表示される。
 納得したかのようにバースト・アウトと言う。さっきより短い、加速時間で僅か十数秒という勿体無い使い方をした。
 そして、現実に戻って、再び、アプリを再起動する。
 プログラムが接続機能を呼び出して、グローバル接続を行う。そして、さっきのプログラム生成ボタンのさらに下の接続先一覧の更新が行われる。すぐにグローバルネットが接続先として表示される。さっきも、それは表示されていた。
 そして、すぐにその下に数字とローマ字で書かれた三十文字ほどの文字列が選択肢として出現する。コウジの知っている文字列、自宅のホームサーバーの住所だ。
 それを叩き、接続確認が表示されると同時にまた唱えた。
「バースト・リンク」

 あの独特の接続音がしたが視界の印象は全く違った。教室という風景とそこにいた生徒たちや先生は消えた。代わりに四畳半ほどの四角い何も置かれていない部屋が表示された。
 もちろん、コウジはその部屋を知っていた。物が全く存在しなかったが、自分専用のホームサーバーが置かれている、自宅マンションの自室である。ソーシャルカメラが存在しないので、間取り図などから適当に構成されたのであろう。
 ほとんど成功とも言える状況だったが、まだ、安心はできない。アイコンを叩いて、マッハでコンソールを呼び出し、マッチングリストのサーチングを凝視した。
 一番上に《コペン・ミリタント》と自分の名前が表示された。
 そして、それだけで表示は終わった。
「よっしゃー!!」
 今度こそ、コウジは、コウジたるウサギアバターは叫んだ。
 一時間目にセルリアン・ボーアに負けて、小テスト開始直後のついさっきオスミウム・ストレイトに負けた直後の完成だった。さっきの実験のための加速と合わせて、17ポイントの損失だったが、残り31ポイントも残っている。それだけのマージンを残して、学内でのバカバカしい戦いからの離脱を成功させたのだ。
 青い世界の自室のベッドがある場所の床に寝っ転がりながら、ウサギなコウジは伸びをした。
「このアプリに名前をつけないとな」
 一人そう青い天井を見ながら呟いた。
 裏口を使って抜け出るという意味でバックドアという単語が頭によぎったが、そんな安直な名前を付けたいとは思わなかった。
 一つ目のチートに使っているアプリは強制切断にしか使っていないが、ブレインバーストから自身のリンカーで提供されるコマンドベースの操作を行うのが目的のものだ。だから、ブレイン・バーストとリンカーの橋渡しという意味で《ブレイン・バースト・ブリッジ》と名付けた。
 そんな名付けを思い出して、このアプリが学内の下らない戦いから逃げるための「隠れ家」を提供することに気づいた。《ブレイン・バースト・バロウ》。そんな名前にしようと決めた。
 コウジは一人クスリと笑った。
 Bridge(ブリッジ)にBurrow(バロウ)だ。チートアシストを作ってもAssist(アシスト)という名前はつけれないな、などと思ったが故の笑いだった。
 というか、接続できたことがあまりにも嬉しくて、バーストポイント二回分を今までの自分から見たら相当に無駄遣いしたことに気づいた。
 さすがに三回も無駄遣いすることはしない。バースト・アウトではなく、三十分制限で落ちるまで何かする。アシストを作るための情報収集をする。と決めた。
 上機嫌で思いついた改造を施したアシスト機能を起動した。三歩目で転んだ。そう簡単にうまく行くはずがなかったが、コウジは一つアプリが完成して気分が良かった。

 昼休み。購買で買ってきた焼きそばパンを教室で頬張っていると視界の右上に黄色い手紙のアイコンが点滅した。
 自然に右手を宙に上げて、メールアイコンを指先で叩いた。
 詩音からのメールだった。何度かやり取りしたときは、絵文字いっぱいの可愛らしいものだったが、今日のシンプルな一行だった。
【ブレイン・バーストって覚えてる?】
 そのメールでコウジは全ての状況を理解した。そして、返信の画面を呼び出しながらも、笑ってしまった。
 やはり、二時間目以降、学内ではマッチングリストに表示されていなかったのだ。それゆえ、詩音はコウジが全損したと思って、このメールを送ってきたのだ。それが想像できてしまったのだ。
 コウジはそれなりに早いホロキーボードのタイプで返信を書いた。
【覚えていますよ】
 即座にそう送り返した。


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