<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.31282の一覧
[0] 【ネタ・処女作】ブレイン・バースト・バックドア【アクセル・ワールド・オリ主】[カヱン](2012/01/22 16:43)
[1] [カヱン](2012/01/23 00:45)
[2] [カヱン](2012/01/23 15:30)
[3] [カヱン](2012/01/24 09:21)
[4] [カヱン](2012/01/25 11:25)
[5] [カヱン](2012/01/26 11:57)
[6] [カヱン](2012/02/07 23:36)
[7] [カヱン](2012/02/08 20:33)
[8] [カヱン](2012/02/10 16:28)
[9] 10[カヱン](2012/02/11 19:09)
[10] 11[カヱン](2012/02/12 19:40)
[11] 12[カヱン](2012/02/13 14:20)
[12] 13[カヱン](2012/02/16 11:43)
[13] 14[カヱン](2012/02/17 23:39)
[14] 15[カヱン](2012/02/18 23:29)
[15] 16[カヱン](2012/02/19 21:22)
[16] 17[カヱン](2012/02/21 17:24)
[17] 18[カヱン](2012/02/22 15:45)
[18] 19[カヱン](2012/02/24 02:52)
[19] 20[カヱン](2012/02/24 19:10)
[20] 21[カヱン](2012/02/25 17:45)
[21] 22[カヱン](2012/02/27 01:57)
[22] ブレイン・バースト・バックドア第二部[カヱン](2012/03/11 01:08)
[23] [カヱン](2012/03/11 22:13)
[24] [カヱン](2012/03/12 23:37)
[25] [カヱン](2012/03/15 14:37)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[31282] 15
Name: カヱン◆bf138b59 ID:1e77003e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/18 23:29
「ただいま」
「おかえりー」
 母親の声は奥からしただけだった。コウジは顔も見ずに自室に向かった。
 制服をベッドの上に脱ぎ捨てて着替えた。長時間の考え事に制服のようなキツい服は向かない。高校は私服の学校に進学したい。だけども、そんな学校で自分を受け入れてくれるところは数えるほどしか無い。ただ、それは今深く考えることではない。
 繊維が痛んで白さが目立つジーンズに首元が緩くなったボーダーのシャツという出で立ちで、勉強机の前に置かれるメッシュの椅子に深く腰掛けた。

 今日の二回のレベル3との戦いは自分の実力を思い知らせた。いや、実力を知るのは六戦二勝の同レベル対戦の結果で十分だ。二人のレベル3、ついでに一人のレベル4は戦闘経験の違いを理解させるためにあったと言うのが正しいだろう。
 一般的なVRゲームであれば、レベル上昇ははじめのうちは容易になっている。というのも最初を容易にしないとプレイヤーがのめり込むきっかけを与えることができず、一人用なら売れず、MMOならば過疎化を招くからだ。
 一方でブレイン・バーストはプレイヤーを惹きつける要素を《加速》という形で提供している。それゆえ、ゲームとしての親切さどころか、説明書すらないアプリケーションとしての親切さが排除されながら、プレイヤーを取り込めていた。
 そのため、レベルキャップは9と低く設定され、初回レベルアップも20戦勝ち越し、と言ってもあの仕組みだと安全マージンを考えれば30戦勝ち越しというかなり厳しい条件となっていた。勝率五割五分、でも嘘ではない気がするが、もう少し甘めに見て勝率六割だとしても、レベルアップには同レベル対戦のみで三百戦を必要とする。レベル2から3に上がるときはいくらポイントが必要なのかは知らないが、同じぐらいは必要と見るのが当然だろう。一対戦当たり二十分かかるとして三百戦を二回する。
 瞬間的に二百時間という答えが出る。そんな二百時間ものアドバンテージがある奴を自分が倒せるか。無理である。そんな結論を出した。
「はあー」
 ため息をついてから、かなりそれが大きかったことに、ついてからコウジは気づいた。普通のゲームでのレベル差のノリで考えていた自分が本当に馬鹿みたいだった。
 それに戦闘の状況を自分自身がその瞬間に認識し分析はできていても、その操作の実現は不可能なのだ。シアン・パイル戦など特にそう言えるだろう。攻撃が来た瞬間の知覚はできても、その回避はおぼつかなかった。
 だからこそ、勝利には動作アシストが必要なのだ。が、その目処は全くついていなかった。
 昨日作った初めてのチートアプリ《ブレイン・バースト・ブリッジ》を作っていたときだ。自らバースト・リンクコマンドを唱えて実験しているときに、加速してせっかく青い世界に来たのだから有効活用しないと、という思いから、昔作った移動最適化アシストを実行してみた。
 それはいきなりは動かず、改造に改造を重ねた結果、直線を走るという形に限定して「動く」というレベルであった。「走る」ではなく「動く」である。最初の一歩目を踏み出すまで一分近くかかり、二歩目以降は地面接地時のフィードバックの計算が間に合わず、足の動きを進めど進めど、どんどん動きが微妙になってきて、結局五歩目で転んで、その転倒したと判断してアプリが自動停止するのにまた一分かかる、無論、その間も転んだまま足を動かし続けるという有様だった。
 そんなカッコ悪い結果を思い出せば、ちょっとやそっとでは実現できない。
 ただ、技術的に完全に不可能という感じではなかった。どちらかというとテストが足りない。それも時間ではなくポイントが足りないゆえ起きている問題だった。もし、無制限にポイントがあり、コード変更とテスト実行を容易に行える環境であれば、数日あれば完成する、そんな気はしていた。
「となると、やっぱりポイント稼がないといけないよなー」
 コウジは机に突っ伏すような姿勢で顔を上げながら呟いた。
 だけども、任意切断機能でポイントを稼ぐ戦略には問題がありすぎる。チートを作って使う自分であっても、あまり使いたくない方法だと思った。他のプレイヤーに疎まれる、ぐらいならコウジは気にしない。人に嫌われるのは慣れている。それよりもそう思われたゆえにシステム的に対戦拒否をされたり、ブレイン・バーストの運営側にアカウントロックされるかもしれない。そちらの方が問題だった。
 結局、新しい方針を立てなければならない。どんな敵にも汎用的な性能で戦えるチートアシストよりも作りやすく、グローバルネット上で敗北を回避する回線切断よりもチートと疑われない方法だ。
 と悩んで数秒で思いつくなら、もう手を動かして作っているはずである。
 その問題に頭を悩ませながらももう一つの問題が浮かんだ。
 フロスト・ホーンはこちらより平均レベルが高くなったことを嫌がった。
 冷静に考えればそうである。多少は勝ちやすくはなるかもしれないが、ポイントの実入りを考えると全く持って美味しくない。レベルが1高ければ、通常よりも1ポイント少ない9ポイント入る。だが、負ければ倍の20ポイント取られる。高いレベルながらの対戦は普通は選択しないはずのオプションだ。
 だからこそ、他のメリットが無いとありえない。ホーンの場合は残念先輩と戦いたいという点に価値を見出して挑んできた。戦いを楽しむという部分では理解できる。
 では、学内のあの四人はどうなのか。
 彼らとはただ無言で戦った。だから、何を考えているのかわからない。いや、四人というのも定かではない。一人一人バラバラの考えのが四人いるというのもあり得る。だが、少なくとも、今日かなり押して戦ったエンパイア・スタッフに関しては、奴は勝利した瞬間に安堵している印象があった。
 この理由を読み解ければ、戦いを言葉で抑えこむことも可能なのかもしれない。だけども、コウジはそれを理解することは難しかった。同じ人の心を扱うものでも、ソーシャル・エンジニアリングの方がよっぽど簡単だろうな、と試したことはなかったがコウジは思った。

 しかし、それにしてもそろそろ本気でグローバルネットが恋しい。
 興味深いブレイン・バーストのためとはいえ、チートを弄るという意味ではオンラインFPSのFoM(フィールド・オブ・マーサネリー)も楽しかった。連邦軍の《GK》としてあの戦場でまだやることはある。同盟軍の《HAL》に一矢報いるぐらいは最低でもやっておきたい。
 などとぼんやり考えていたが、冷静に戻る。タッグ戦で20ポイント貰ったものの、残りポイントは48ポイント。学内で一日24ポイント奪われることを考えれば、火曜日の時点でどうにかなっていないとコウジのブレイン・バーストはジ・エンドである。
 そうは言っても、グローバルネット切断生活は寂しい。自レギオンの支配下地域ではマッチングリストの登録拒否ができるそうだが、あいにく、自宅と学校は中野区から数十メートルしか離れていないが杉並区のため空白地帯だ。
 これも全て中野駅南側の再開発というか乱開発のせいである。高層マンションが山ほど作られて、子供が増えたにも関わらず、学校の余裕がなくて、中野区にほど近い杉並区に中学を作って越境入学を認めるという形で行政が対応したからだ。そして、コウジの家はその中学が作られたときに、ここも売れるだろと言った具合に杉並区に作られた高層マンションであった。これのせいでさらに中学が過密になったのは言うまでもない。
 とにかく、家も学校ももうちょっと東側にでもあればレオニーズに入って、あの酷い対戦は拒絶するという選択肢があったのに、と愚痴ったところで仕方がない。残念先輩曰くは数年前にそこにレギオンがあったが、今は解散してなくなった、にも関わらず、六大レギオンは分割支配で領土拡張ができていないという。バカじゃねーかと思ったが、先輩も表情を読む限りはどう意見なのだろう。それゆえ、ソロプレイというか非六大レギオンプレイをしているのだろう。
 そうなれば、いっそ自分がレギオンを作って、この近所を支配しようと思ったがそうもいかない。《領土》を維持するにはその両隣の赤のプロミネンス、青のレオニーズという巨大レギオンと毎週戦い半数以上の勝利を収めないといけないが、相当高度なアシストを作ってようやく可能になるような話である。結局、アシストができないと意味がないが、アシストできたらレギオンはいらないという堂々巡りになってしまう。
「あー、でも、別に僕が全部勝つ必要はないのか……」
 コウジはぼんやりと当たり前のことを呟いた。
 チーム戦であることを考えれば、仲間がいればどうにかなる。と言っても、本当に自分についてきてくれる仲間なんているはずがなかった。ああ、いないだろう。そこは割り切る。
 結局、勝率五割という数字を上げればいいだけだ。都内で千人いると言われるブレイン・バーストのプレイヤーのうち、六大レギオンに所属するのは六百人。青と赤のレギオンの最大動員が二百人。だったら、四百人が所属するレギオンを用意して、同時に戦闘挑んだら全敗しても領土維持できるんじゃない?などと考える。四百人の集め方はなんか無所属プレイヤーのリンカーがクラックできて、全員、自分のいるところに遠隔接続。自分が歩く最強レギオンなんてバカなことを考える。
 はーっと息を吐いて、余計な考えを頭から追い出す。そもそも、レギオンを作るためにはレベル4以上という条件も必要になるらしい。考えても無駄なことの一つだ。結局、現状を整理したところで、何も良いことなんて思いつかない。
 仕方なしに今日知った加速せずに使えるBBコンソールを起動することにした。プログラミング用、プログラム解析用、ネットワーク解析用と様々な開発用アプリのアイコンの下に、燃えているBをかたどったアイコンが登録されている。気づいてはいたが、マニュアルも無かったので起動するのを避けていたのだ。
 摘む動作を行うと起動し、ステータス確認、観戦登録、それにタッグ登録の機能を持ったウインドウが表示された。適当に観戦アバターの登録を開き、詩音先輩のオペラ・プロテーゼの名前をクリックする。すぐに登録されたが、観戦に呼ばれても仕方ないので、もう一度クリックして解除した。
 ふーん、と思いながら、タッグ登録を開いてみようと思いクリックしようとした。が、何か変なジェスチャーをしたようで、全く違うウインドウが表示された。いつも起動しっぱなしの解析用アプリだった。
 既にブレイン・バーストの通信は解析がそれなりに面倒だということがわかっていたので、コウジは画面を消そうとした。ぼんやりとその画面を眺めながら、閉じるために右手を持ち上げて、振ろうとした。
 が、持ち上げたところでコウジは手を止めた。その通信解析アプリに表示されていたデコード済みの通信データは、穴が開くほど見たブレイン・バースト本体の通信とよく似ていながら、結構違うところがあった。
「あれ? コンソールの通信、おかしくね?」
 コウジはかなり大きな声で呟くほど不思議なものであった。
 それは非加速下であり、完全なゲームの機能の部分であるがゆえに存在した、ブレイン・バーストのセキュリティーホールらしきものだった。穴があると穴らしきものがあるというのは、セキュリティの分野においてはかなり近い。穴らしきものは工夫すれば広がり穴となる。
 それにコウジは気づいてしまった。
 ――もう少しマシなチートが作れそうだ。
 そう思うに十分なデータだった。
 カレンダーを見なくとも、明日は日曜日である。自分のポイント的には火曜日が締め切りだった。残り二日。いけるかもしれない。
 そう思った時には日はとっくに暮れていた。母親が食事を呼ぶ声が聞こえた。反抗するがごとく無視して無駄な時間を使うべきではない。コウジはすぐに立ち上がってリビングに向かった。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.021546125411987