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No.31282の一覧
[0] 【ネタ・処女作】ブレイン・バースト・バックドア【アクセル・ワールド・オリ主】[カヱン](2012/01/22 16:43)
[1] [カヱン](2012/01/23 00:45)
[2] [カヱン](2012/01/23 15:30)
[3] [カヱン](2012/01/24 09:21)
[4] [カヱン](2012/01/25 11:25)
[5] [カヱン](2012/01/26 11:57)
[6] [カヱン](2012/02/07 23:36)
[7] [カヱン](2012/02/08 20:33)
[8] [カヱン](2012/02/10 16:28)
[9] 10[カヱン](2012/02/11 19:09)
[10] 11[カヱン](2012/02/12 19:40)
[11] 12[カヱン](2012/02/13 14:20)
[12] 13[カヱン](2012/02/16 11:43)
[13] 14[カヱン](2012/02/17 23:39)
[14] 15[カヱン](2012/02/18 23:29)
[15] 16[カヱン](2012/02/19 21:22)
[16] 17[カヱン](2012/02/21 17:24)
[17] 18[カヱン](2012/02/22 15:45)
[18] 19[カヱン](2012/02/24 02:52)
[19] 20[カヱン](2012/02/24 19:10)
[20] 21[カヱン](2012/02/25 17:45)
[21] 22[カヱン](2012/02/27 01:57)
[22] ブレイン・バースト・バックドア第二部[カヱン](2012/03/11 01:08)
[23] [カヱン](2012/03/11 22:13)
[24] [カヱン](2012/03/12 23:37)
[25] [カヱン](2012/03/15 14:37)
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[31282] 14
Name: カヱン◆bf138b59 ID:1e77003e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/17 23:39
「というか、コイツだよー」
 トルマリン・シェルが気の抜けた口調で言った。何が?と言わんばかりに注目が集まったところで次の句が続いた。
「今朝の負けそうになると切断するヤツ!」
「レオニーズで話題になっているアイツか!」
 フロスト・ホーンが大げさな動きでコペン・ミリタントを指さしながら言った。
 コウジはチートに気づかれたかという思いから、こちらを見てくるアバターから視線を逸らそうとした。が、考えればそれは自らの行いを認めることになる。そのため、目線を固定して、どのような弁解を紡ぐか考えた。
 だが、それより早くアンバー・ウォーリアが口を挟んだ。
「仕方ねーじゃん。コイツのリンカー、ボロいんだもん」
 コウジが自動RMTの収益で年に一度のペースで最新機種に買い替えてることを、マサミは知っているはずだ。だから、ボロいはずがないことはわかりきっている。
 そして、チートであることは説明していなかったが、マサミならこれがチートであることに気づいているはずだ。
 チートは嫌いと言っていた。それでも、マサミはコウジの行いを秘密にする方向で動いていた。
「でも、そんないいタイミングで落ちるとかねーだろ」
「ボロイから負け犬根性が染み付いているんだ」
 詩音先輩とは異なるベクトルの意味不明な説明で、残念先輩は無理やりこの話題を締めくくった。
 これ以上、突っ込まれてもいいことは一つもない。明らかにコウジのために動いてくれていた。
「てか、こっちがタッグ組んでいるのに、なんでわざわざタッグ組んで挑んでくるんだよ」
「忘れたとは言わせねーぞ。オメーに俺は今週全敗したんだ!」
 フロスト・ホーンの発言に、ゲームさせたらさすが残念だな、とコウジは感心した。
「土曜日はまだ今週! 今日、勝って、オメーの全勝記録を止めてやるわ! うはははは!」
 歓声の中から、連敗記録が続いているのはお前の方だろ、残り二十分だぞ、早くやれー、とヤジが飛び交った。
 フロスト・ホーンは太い両腕を構えながら言った。
「バグパイプ野郎! いや、アンバー・ウォーリア! 今日こそ土をつけてやるわ!!」
 この流れだと、自分の相手はトルマリン・シェルとなるだろう。今朝と同じレベル2差の戦いだ。コウジは気合を入れて、青緑のアバターを睨みつける。
 フロスト・ホーンの指示が飛んだ。
「トリーはあのオンボロリンカーの灰色の奴をやっつけるんだ!」
「了解! ホーンくぅーん!」
 トルマリン・シェルは敬礼のようなポーズを取ると、その指先が自身の装甲を軽く叩いた。同時に装甲にパチンとスパークが這った。
 ブレイン・バーストには学内の《オスミウム・ストレイト》のように色以外に金属がある。ここ数日、授業中のコードを書いていないときは、化学の電子参考書をパラパラ見たのが幸いだった。
 トルマリン…確か、電気石だったはずだ。ただ、その別名は焦電効果が由来だったとあったはずだ。今の反応はそれとは違う。なんだ、と一瞬で頭を働かせると、圧電効果、と脳裏によぎる。ダメージを電気に変えて、軽減するのか?と予想しながら構える。
 直後、アンバー・ウォーリアは指示が入った。
「よし! こっちはシェルを二人で潰すぞ! 行くぞ!!」
 非対称な作戦か! そこは臨機応変に切り替え、既に駆け出していたマサミに続いて動く。
「わかりました!!」
 二人してトルマリン・シェルの方に突っ込んだ。
「……え!!」
「ままま待った! それは無いだろ!」
 そんな叫びも虚しく、アンバー・ウォーリアの大剣は、トルマリン・シェルに襲いかかった。装甲は乾いた音を立てて、少しのダメージを与えて弾かれる。
 そんなファーストアタックの大剣を振り下ろしたまま、アンバー・ウォーリアはフロスト・ホーンの方を向いて言った。
「え? そうか?」
 そんな中、コウジはトルマリン・シェルに一気に距離を詰め、先ほどの攻撃で少しよろめていてた隙をついて、パンチとキックを次々繰り出す。やはり、衝撃と同時に熱が発生しているが、こちらにダメージが返ってくるほどではない。何か効果はあるのかもしれないが、とりあえずは今は押せばいいと割り切る。
「だって、一対一二つ作っても、俺の組は俺が勝つぜ? その時点でいつも通りだから、つまんねーじゃん」
 マサミはそう言いながら、足を持ち上げてる。
 機関銃の発射だ。その掃射はコペン・ミリタントに反撃しようと中国拳法っぽい構えで向かってきたアバターに何発も当たった。コウジの視界からトルマリン・シェルは横向きに倒れて消えた。
「せっかく二対二のタッグ戦だぜ? 乱戦みたいにしようぜ」
 言いながらも、アンバー・ウォーリアは機関銃を発射した後に持ち上げていた大剣を、薙ぎ払うように目の前にいたフロスト・ホーンに振るった。
 ホーンは意識がちょっと追いついていなかったのか回避が遅れた。分厚い装甲が軽い音を立てて、幾分か体力ゲージを削られた。
 無論、コウジも機関銃でよろめいたトルマリン・シェルに追い打ちの攻撃を仕掛けていた。
「もっと楽しく戦おうぜ」
 マサミは笑いがこもった声で言いながら、フロスト・ホーンに背を向けて、大剣で後ろからトルマリン・シェルを斬った、というかブッ叩いた。
 軽い音がして、弾けるようにトルマリン・シェルは前のめりに倒れた。巻き込まれないようにコウジは横に避ける。すると、観客の話し声が聞こえた。
「やっぱ《孤高の狂戦士(ソリタリー・バーサーカー)》パネーぜ」
「あの乱戦はやっぱ《上》仕込みだな」
「まだ無所属だろ。ウチに来て欲しいぜ」
 コウジがそれに気を取られた隙だった。
「だったら! 俺もやってやるぜ!」
 ホーンの声が斜め後ろから聞こえた。その瞬間には全身に衝撃が走っていた。タックル攻撃を受けたようだった。
 そう長くはないツノのダメージは無かった。コペン・ミリタント後方の構造体に刺さったからだ。無論、その構造体は設定されている耐久値をあっという間に失って霧散した。だが、タックル自体の衝撃が吸収されるわけではない。防ぎきれなかった衝撃で、コウジの体は軽々吹っ飛んだ。そして、その先にはアンバー・ウォーリアがいた。衝突までの一瞬にホーンの声が聞こえた。
「二人まとめてぶっ飛ばされろ!」
 だが、それを打ち消すようなウォーリアの叫びも聞こえた。
「させるかーッ!」
 ウォーリアは剣を握ったまま右手を前に突き出した。それは自然に左手の握りこぶしが後ろに引かれる姿勢となる。
「ハッ!」
 その拳は飛んできたコペン・ミリタントを正確に全力で殴り落とした。そして、コウジが地面に激突する前には、既に殴った勢いでマサミは駆け出していた。ゲーマー的な人種が持っている超絶的な反応速度だった。
 一度目の地面との衝突で、コペン・ミリタントはほとんど全ての構造体を失うことになった。もちろん、吸収しきれない分のダメージはきっちり受ける。それでも、勢いは削がれずもう一度宙を舞った。そんな二度目の落下の前に、アンバー・ウォーリアはフロスト・ホーンを前に剣を両手で握ってジャンプしていたのが、コウジからも一瞬見えた。
 自分を殴ったこともあって、必殺技ゲージが完全に溜まっていた。
「食らえ! パーフェクト・《ヘヴィー・カッター》・改!」
 剣が発光し、必殺技が入力されたことがわかる。
 ジャンプの落下エネルギーも加えて、ウォーリアが剣が振り下ろすと、フロスト・ホーンの額のツノは叩き折られ、さらにそのまま装甲に大打撃を与えた。
 うおぉぉぉ!とステージの観客が沸き立った。
 同一レベル同ポテンシャルとは残念先輩が加速世界の原則とは言っていたが、中の人間のスキルはどう考えても同じじゃない。
 管楽器独特の高い音が聞こえる。圧勝かのようにアンバー・ウォーリアはバグパイプを吹き始めていた。もちろん、まだ終わったわけでは全くないが、ステージに直立しているプレイヤーはアンバー・ウォーリアただ一人である。
 ウォーリアのみ一割も削れていない中で、フロスト・ホーンは体力の三割を削り、トルマリン・シェルは半分ちょっとを削っていた。ついでにコペン・ミリタントは四割削れている感じであった。
 フロスト・ホーンもトルマリン・シェルも順にガバッと立ち上がった。
「くーっそぉ!! 先に攻撃しやがって!」
「先に対戦挑んだのは僕たちだよホーンくぅーん!」
 シェルのツッコミに場が沸いた。一撃の被害が甚大だったコウジもようやく立ち上がった。どう考えても、先輩に殴られた影響が大きい気がする。
「うるせえ! 俺たちの本気を見せたるわー! 行っくぜぇ……」
 額のものは失ってしまったが、残っている両肩のツノが派手に輝きはじめた。
「フロステッド・――」
「さーせーるーかっ!」
 アンバー・ウォーリアはコウジが見た他のアバターとは比べ物にならない速度でフロスト・ホーンに接近し、右手で剣を振り下ろす。と、見せかけて左の拳でフロスト・ホーンの装甲を殴る。
 ホーンは少しよろめいたが、それだけだった。
「うはははは! 俺ちゃんはそんな軽いパンチでぶっ飛んだりしないわ!!」
「ああ、そうだろうな」
 アンバー・ウォーリアはそう言いながら半歩下がって、剣を握る右手に力を込めた。
「今の一撃はゲージの補充だ! 喰らえ! ストロング・《ヘヴィー・カッター》!!」
 光りながら振られた剣が今度こそフロスト・ホーンを跳ね飛ばした。

 はぁ、と小さく息をついて、コウジはリンカーのボタンを長押して、グローバルネットから切断し、天井を見上げた。美しい形状のカバーがついたLED照明が明るくこちらを照らしていた。
 思い出したように正面を向くと、対戦前と変わらない表情で、残念先輩は仮想デスクトップを何やら操作しているようだった。注視している自分の視線に気づいたのか、先輩はこちらを向かずに言った。
「タッグが解消されているか確認しているだけだよ」
 ブレイン・バースト上でのフィルタが掛かったような音ではない声を聞くと、現実に戻ってきたことが強く感じられる。
 結局、アンバー・ウォーリアは一人でフロスト・ホーンとトルマリン・シェルを蹴散らした。自分はトルマリン・シェルを抑える役割に終始していたが、反撃を食らいそうになるとウォーリアの機関銃の助けが入っていた。とはいえ、結構な割合で自分にも当たっていたが、ウォーリアの必殺技ゲージを溜める役には立っていたと思う。
 フロスト・ホーンはなんかトルマリン・シェルとコンビの時のとっておきの技があったようだが、実行前にアンバー・ウォーリアの全力でやっつけられてしまった。今度こそ、俺らの本気を見せてやるからな!という捨て台詞が本当に気の毒に思えた。
「……マサミ先輩強いですね」
 コウジの悟ったような言葉に、すぐにマサミは反応した。
「そりゃ、やっている時間が違うからな」
「いつ始めたんですか?」
「一年前かな。何、熱中し始めたのは今年に入ってからだよ」
 受験というイベントがあったが、それが終わってからもリンカー部に残念先輩はあんまり顔を出さなかった覚えがある。その当時は受験で抜けたから居づらくなったのかな、と思っただけであったが、もしかするとそれが原因だったのか、と考えた。
「何でハマったんですか?」
「どうしてだろうな」
 マサミ先輩はどこか遠くを見るような横顔を見せながら言った。そのとき、対戦前、先輩が大声で言った内容との繋がりに気づいた気がした。でも、コウジはそれを追求する気にはなれなかった。
 コウジは、コップに残っていた水を飲みきって、空にする。
「とりあえず、話と、それとタッグ戦ありがとうございます」
「お前が嬉しいのは20ポイントだろ」
 マサミはニヤニヤと笑いながら言った。
「それとチートのこと黙ってくれてありがとうございます」
「ん、あれ、お前のリンカーボロかったと思ったんだけどな」
 コウジのリンカーすら見ずのその言い方はあまりにもわざとらしかった。マサミはチートが嫌いであると言い切りながらも、コウジを尊重した。そんな先輩にコウジはこれ以上うまく言葉を言えなかった。そんなコウジを見てか、マサミが言葉を続けた。
「ま、あれだ。なんか作るならもっと役に立つもの作れよ」
「何ですか? 全損プレイヤーの救済ツールとかですか?」
 コウジの意見にマサミは笑顔で流した。
「無制限フィールドでリンカーゲームを遊ぶツールが欲しいな」
「どうしてですか」
 理由はわかりきっていたが、コウジは聞いておいた。
「わかるだろ? 普通の加速は三十分だけだ。だから、無制限に入りたい。だけど、そっちではリンカーのアプリが開かねー」
「だから、それ使ってゲームを千倍遊びたいってことですか?」
「そうさ」
「考えておきます」
 コウジは苦笑いしながら言った。残念先輩もまた本当のことをはぐらかそうとする自分と同じような人間だからだ。
 紙ナプキンで口元を軽く拭いて、席から立った。
「澄田正己先輩、ありがとうございます」
「あ、おごりはしねーぞ」
「わかっていますよ。じゃあ、先帰ります」
「俺はもうちょっとゆっくりしてから帰るわ。ちょっと気分ワリーわ」
 あんだけ食えば誰でもそうなるに決まっている。そんな当たり前の光景をコウジは一瞥して、一人先に店から出た。


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