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No.31282の一覧
[0] 【ネタ・処女作】ブレイン・バースト・バックドア【アクセル・ワールド・オリ主】[カヱン](2012/01/22 16:43)
[1] [カヱン](2012/01/23 00:45)
[2] [カヱン](2012/01/23 15:30)
[3] [カヱン](2012/01/24 09:21)
[4] [カヱン](2012/01/25 11:25)
[5] [カヱン](2012/01/26 11:57)
[6] [カヱン](2012/02/07 23:36)
[7] [カヱン](2012/02/08 20:33)
[8] [カヱン](2012/02/10 16:28)
[9] 10[カヱン](2012/02/11 19:09)
[10] 11[カヱン](2012/02/12 19:40)
[11] 12[カヱン](2012/02/13 14:20)
[12] 13[カヱン](2012/02/16 11:43)
[13] 14[カヱン](2012/02/17 23:39)
[14] 15[カヱン](2012/02/18 23:29)
[15] 16[カヱン](2012/02/19 21:22)
[16] 17[カヱン](2012/02/21 17:24)
[17] 18[カヱン](2012/02/22 15:45)
[18] 19[カヱン](2012/02/24 02:52)
[19] 20[カヱン](2012/02/24 19:10)
[20] 21[カヱン](2012/02/25 17:45)
[21] 22[カヱン](2012/02/27 01:57)
[22] ブレイン・バースト・バックドア第二部[カヱン](2012/03/11 01:08)
[23] [カヱン](2012/03/11 22:13)
[24] [カヱン](2012/03/12 23:37)
[25] [カヱン](2012/03/15 14:37)
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[31282]
Name: カヱン◆bf138b59 ID:1e77003e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/01/23 00:45
 ニューロリンカーの交通予測ナビは劇的に事故を減らした。
 横断歩道を赤信号で渡ろうものなら、ポップアップとアラート音が全力で注意してくる。そんな警告が歩きながらの二度寝をしているコウジを叩き起こした。ふぁー、っと間抜けなあくびをしつつ、向かう先は学校である。
 ナビに文句を言われるほど、ぼんやりしているのは寝不足のせいだけはない。未明の敗戦で頭がいっぱいだからだ。的確に飛んできた手榴弾を回避し、機関銃の連射も捌いて、ピストル一丁で相手に突撃して、ゼロ距離射殺で大勝利!(HAL視点)という結末は、正直なところ納得できない。
 しかし、一方で理解はしている。限りなく速い反応速度があれば、回避は不可能ではないし、敵との武器差が大きく、相手が回避を得意としていれば、先手必勝で突撃し接近戦とすることでイーブンの戦いに持ち込む戦略は悪くない。
 それにしても、あんなに強かったのは想定外だ。あれに勝てるようにするチートは何だろうな、と自問するが答えがパッと出てくるわけではない。
 そんなことをぐるぐると考えているうちに、教室の自分の席に着いた。
 腰掛けた瞬間、綺麗サッパリ忘れていた一時間目に提出しなければならない宿題を思い出した。
 コウジは右手を動かし、何日か前に教師が送ってきた宿題の圧縮ファイルを開いた。十枚近いプリントが目の前にどどっと出現する。どう考えても、あと十五分では終わらない分量だ。
 困った気分で顔を上げると、クラスで真面目で通じるオタクが既に来ていることに気づいた。
 コウジは斜め前に身を乗り出す。
「りーやん、りーやん。スマンが宿題コピらせて」
「あ、おはよう、ご、五島君。い、いいっすよ」
 ちょっとキョドったチビな彼は学内ネットを通じて、回答済みの宿題ファイルを送ってきた。
 普通の学校であれば、宿題にはコピープロテクトがかかっている。だが、コウジの学校ではかかっていない。去年のゴールデンウィーク前、つまり入学して三週間後、コウジは宿題のプロテクト解除アプリを作ってバラ撒いた。その後の三度のアップデートを物ともせず、プロテクト解除アプリを配り続けた。結果、今ではプロテクトをかけるのを諦めたのだろう、というのが現状だった。
「サンキュー、マジ助かる」
「で、できれば、今度発売されるゲームの、プロテクトを解除して欲しんすけど」
 コウジは「いいよ」と二つ返事で返した。ゲームに限らずリンカー用アプリのプロテクトは、固有脳波のチェック等、いくつかのポイントを誤魔化すだけで大抵の物はどうにかなる。それはコウジにとって、ごく短時間で片付けねばならないこの宿題より楽な作業であった。

 コピーした宿題を提出した後、コウジは授業なんて聞いているはずがなった。授業なんてバカバカしい。ニューロリンカーの登場が中途半端な勉強の不要にしてしまった。
 暗記はデータベースから引っ張ればいい。会話レベルの語学や教養レベルの数学はグローバルネット上から無料で利用できるAIサービスに肩代わりさせればいい。
 それなのに、旧態依然とした学校は木を使った火の起こし方を教えるような錆びた知識のつめ込み工場をやっている。それに反発する奴らも、巨大企業の言うリンカースキルの重要性を唱えるばかりで、それが所詮、リンカーの利用者であり従順な消費者であることに気づいていない。
 人が本当に伸ばすべきところは、リンカーから触れられない世界、外見や腕力、それかリンカー提供側になれるだけの頭脳だ。だけども、そういう風な尖った才能を伸ばそうという本気さは学校に存在しなかった。
 そんなことを思っているからか、無意味だと思っている授業は上の空に、コウジは電子ノート上でせっせと、HALを倒すために必要なチートの検討とソースコードの設計を行なっていた。
 気づけば、帰りのホームルームが終わろうとしていた。日直の号令が聞こえ、慌てて立ち上がり周りにあわせて礼をする。
 坊主のやる気ある運動部の生徒を先頭に、部活に熱心な順に教室から出ていく。それを追いかけるように教室から出た。
 コウジは中二で身長は170ちょっとある、ひょろっとしたモヤシっ子だ。もしも、去年の入学時に運動部に入ったりしておけば、今とは違った生活が送れたのかな、とも思う。ただ、あんな事件の関係者の関係者ぐらいの立場になってしまった、ということを考えれば、目立つのを避けるためにも仕方がない、という言い訳で自分を納得させていた。
 これ以上は親への愚痴になりそうな思いが充満したところで、キューッとお腹が鳴った。集中して考え事をすると昼飯ぐらい簡単に忘れる。それ故の貧相な体かもしれない。
 購買で何か買うにしても、部室に先に行った方が荷物を持って階段を昇り降りしなくていい。そう考えて、階段を一つ上がったところの三階のリンカー部部室に向かった。

 リンカー部は三年か四年上の先輩が作った「最先端技術のリンカーを使いこなすことで技術リテラシーの向上を目指す」という名目でリンカーゲームを遊ぶクラブ活動である。
 特に卒業した残念先輩(もちろんアダ名だ)が部室に密かにグローバルネットを引きこんでからは、ゲーマーの巣窟と言える環境が特に強くなった。
 部員に配布されているインスタンスキーを使い部室という名の完全ダイブ室のロックを解除する。
 電気はついておらず、誰もまだ来ていないようだった。スイッチを入れてから、一番近くの椅子に体を預け、床に落ちている赤いXBSケーブル(校則破りなグローバルネット接続用)を拾い上げた。自分の首元のニューロリンカーに手早く挿し、視界のバーチャルな画面にグローバルネットの巡回先を表示した。
 完全ダイブでないため空腹は感じるはずだが、遅い昼飯を買いに行くことすら忘れて掲示板を読み漁った。
 真っ先に目に入ったのはHAL最強伝説とタイトルが付いた文章だ。箇条書きの最後に「手榴弾の空中爆破は余裕。機関銃連射の全回避も華麗にこなす←New」なんて書かれていた。でも、それは目的とするものではなく、さらにコンテンツをめくった。
 すぐに目的のものは見つかった。
 未明のHALとの対戦の操作ログだ。全世界のプレイヤーから大量の返信がついていた。日本語翻訳AIを起動しつつ眺めていく。自分の無駄に華麗な銃撃回避について、いくつか言及されていた。「ここまで技能があるなら勝てよ」という意見には納得するしかなかった。
 だが、それ以上にもっとも言及されていたのは、やはり、手榴弾回避から始まる一連のHALのプレイだ。既に手榴弾回避部分を切り出したMODが作られていたが、それをプレイした人からは「あれを回避はマジキチ」「来るとわかっていてもノーダメージは無理」という意見が投げ込まれていた。
 ――そのはずだよなぁ。
 正直、あの正確な投擲を完全に回避することは考えていなかった。
 一瞬、HALもチートかと考えた。だが、その考えはすぐに捨てた。ゲームチート制作で世界トップクラスの技能を誇る自分が作った、最適な回避ですら瞬間的にリンカーの性能限界まで使っているのだ。もし、手榴弾の空中爆破のような攻撃的防御を操作補助AIで実現しようとすれば、計算量が爆発的に増えるので、現状不可能と表現できるほど実現は困難なはずだ。
 ただ、仮にHALがチートであったところでやることは変わらない。より強い攻撃で叩き潰すまでだ。それが自分の実力を見せる最良の方法だからだ。
 ガラっと扉が開く音が聞こえた。「おーっす」とか「うぃーす」という間抜けな挨拶が聞こえたので、視線だけ向けるとリンカー部の野郎二人がいた。挨拶として軽いお辞儀で返すと、二人はテーブルを挟んで向かいにある適当な椅子に腰掛けた。それぞれが《完全ダイブ》とコマンドをつぶやくのが聞こえた。
 再び、自分の世界に戻る。
 相手が回避できない攻撃、例えば、相手の回避行動をも予測(という名の全行動シミュレーション)した上での、最適攻撃を算出するなどは、HALがチートでない理由同様、リンカー上ではまず無理だろう。専用計算機を使えばリアルタイムでできるのかもしれないが、そんなものを持っているわけもない。
 ふと、一つのアイディアが閃いた。同時に複数投げればいい。それも投擲時に工夫して異なる軌道で投げ込む。確率的手法を用いれば、敵の移動先推定は高速に計算可能であり、それを踏まえた上で投擲軌道を選択すれば、完全回避はさらに難しく実質不可能になるはずだ。
 これなら、今の手持ちのコードと授業中に検討したいくつかの要素の組み合わせですぐ作ることができる。さすがに、これすら回避されたら、そのときこそはゼロからの再検討となるが、現状の費用対効果を考えればベターな作戦である。

 すぐにプログラミング用の黒背景のコンソールを立ち上げる。視覚の右には授業中に作った電子ノートの計算メモ、左には関係者が流出させたゲームエンジンの仕様書を表示させる。
 その時、何か、というか誰かが自分の前に来たことに気づいた。ニューロリンカーの拡張現実情報表示エンジンの表示するウインドウは視覚の全てを埋めていたが、ウインドウはうっすらと半透明であり、おぼろげながら向こうの様子がわかるからだ。
 そいつは人がぼんやりしているかを調べるがごとく、目の前で手の平を振っているようだった。ちょうど作業に入るところだったので、ウインドウを退けようとは思わなかった。反応がなければ、待つのがマナーだ。コウジはひとまずそれを後回しにすることにした。
 その直後だった。その人物はコウジの首元にすっと白い細い指を伸ばした。
 あっ、と思った瞬間、セキュリティソフトによる不正な切断操作を通知する警告ダイアログがポップアップする。その後、その手はリンカー本体に手を触れ、揺らし始めた。リンカーの安全機構が働き、開いていたウィンドウが全て落ち、ピンぼけした現実が目に映る。
 リンカーを触る手をパンと払いのけると、リンカーはその機能を取り戻したかのように、目の前にいる奴にピントをあわせるように視覚を調整し始めた。
 コウジの視力は悪い。だから、リンカーで補正された視覚でなければ、人の顔もわからない。だけども、こんな無茶苦茶なことをする奴は一人の「先輩」ぐらいしか想像できない。コウジは視覚補正の数フレームを待たずに言った。
「いきなり抜くアホがどこにいるんですか!」
「ここにいるよ?」
 疑問形で返してきたコケティッシュな声をあげた人にピントが合う。予想通りだった。
 黒のローファー、紺のハイソックス、濃い緑のチェックのスカート、白いシャツ、紺のブレザーに彩りの赤いリボン。学校指定の制服を「オシャレを考えるのが面倒だから」という周りに恨まれそうな理由で指定通り違反なく着ている、生まれながらの大いなるアドバンテージによって、飛び切り可愛いと評される女子生徒。リンカー部部長で一年上の先輩、上城詩音(かみしろしおん)が引っこ抜いたケーブル片手に立っていた。
「そうですよね……詩音先輩、アホですもんね……」
 コウジが視線を外しながら、ため息混じりに言うと、詩音は言い返してきた。
「この前、ヒザをアゴに入れたら、『二度とそんなことすんな!』って怒ってたから、今日は素直にケーブルをひっこ抜いたんだよ?」
 セミロングの髪をふるりと揺らしながら、可愛らしい声が発した内容はいつも通りの滅茶苦茶さであった。
 コウジが以前指摘したのは、「緊急時以外に他の人のリンカーに不正な操作の類はするな」という内容だったはずだ。
 膝蹴りとの比較は常識でなくてもおかしい。とはいえ、そのおかしさに気づかない先輩なのだから、「作業中の相手にはメールで連絡するように」と言ったところで無駄であることに気づくべきだったのだ。
「……だから、アホって言われるんですよ」
 プーっと膨れてくるが、コウジは相手にしなかった。以前、「狙ってやっているわけじゃないよー」と嘘か本当かわからないことを言っていたが、どうであれ、こういう仕草の先輩は普通に可愛い、なんて思ってしまう。
 少し緊張しながら、コウジは言葉を付け加えた。
「ま、まあ、完全ダイブ中じゃなかったんで、別にいいんですけどね」
「え? 完全ダイブしていなかったの?」
「なもん、目開けてやる奴とかいませんよ!」
 先輩は自分の返答に心底驚いた様子で、目を丸くしてこちらを覗き込んできた。顔が少し近い。
「でも、五島君、割と目開いてフルダイブしているよ?」
「マ、マジすか?」
 そんなコウジの答えを聞いて、詩音はパッと離れて、首を傾げて、満足そうな表情を浮かべた。
「嘘ぴょん♪」
 いつも通り平常運転の上城詩音に、コウジはそれはそれで安心した。


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