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No.31226の一覧
[0] 【ネタ】『シュピーネさんの聖杯戦争』 Fate×dies irae[ドリルスキー](2012/01/17 18:59)
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[31226] 【ネタ】『シュピーネさんの聖杯戦争』 Fate×dies irae
Name: ドリルスキー◆ba2a9607 ID:6026a5e8
Date: 2012/01/17 18:59
※シュピーネさん無双(笑)or蹂躙(笑)モノにつき注意。なお、シリアス(笑)モノです。



 サーヴァントによるサーヴァント召喚。
 そのルール違反による召喚は、やはりルール違反の存在を呼び出した。
 それは英霊ではなく、亡霊でもなく、ただの死に損ない。
 いや、それが”ただの”の筈がない。
 聖遺物と融合し、何百もの人間を殺し、その魂を喰らった存在を”ただの”と評すべきではないだろう。
 だが、そんな事は召喚者であるキャスターには分からない事であったし。
 実際、ツァラトゥストラに敗北し、聖餐杯にとどめを刺されようとしていた彼がただの死に損ないだったのは間違いの無い事実だったのだから。
 その男は、瀕死の重傷で、人の身を持ったまま冬木市に召喚され。
 その有様にキャスターは露骨に失望の色を浮かべたのだった。



   『シュピーネさんの聖杯戦争』Fate×dies irae



 柳洞寺山門の石段を駆け上がってくるセイバーを見下ろし、
 「っクッ」
 掠れる笑い声を男は漏らした。
 あぁ、恐ろしい、恐ろしい。
 ”この世”の理に選ばれた古き英雄ども。
 多くの命を魂を贄に、悍ましく鍛え上げられた英傑ども。
 かつて集めた魂を喪い劣化した今の私で、果たして互角に戦えるかどうか。
 「アハハハ…」
 ああ、しかし、現界した彼等は所詮、偽の聖杯に召喚された英霊という英雄の複製品でしかない。
 能力は古き日の英雄に勝るのかもしれない。
 だがしかし、所詮は偽者だ。ただのシステムに過ぎない。
 私は英雄を恐れる、死してなお魂を奪い続ける英雄こそを恐れる。
 私は真の恐怖を知っている。
 黄金の獣、ソレに付き従う三騎士、そして水銀。
 あの怪物どもに比べれば、たかが英雄の複製なぞ如何程のものか。
 「ィヒャハハハ」
 ああ、実に恐ろしく、素晴らしい。
 あの怪物どもが存在しない、”この世”。
 喪われた魂は、英雄の複製どもを喰らい、補えばいい。 
 その偽の魂は、百の凡夫に勝るだろう。
 その全てを喰らえば、あるいは創造位階にも至れるかもしれない。
 ああ、自由だ。
 自由を寄越せ。”この世”での自由を。
 私はもはや誰の下にも付きたくない。
 偽の聖杯など要らぬのですよ。
 恐ろしい、恐ろしい英霊ども、
 その偽物の魂をワルシャワ・ゲットーに捧げ、私を”この世”に留まらせなさい。

 Yetzilah―――



 キャスターに操られた衛宮士郎を追って柳洞寺に駆け付けたセイバーの前に、黒い軍服を着た痩せた男が立ち塞がっていた。
 爬虫類じみた異相の、しかし、サーヴァントとは思えない貧弱な男だった。
 得体の知れない何かが、そのまま突破する事をセイバーに躊躇させた。
 あるいは男に染み付いた血臭と死臭を感じ取ったからかもしれない。
 「初めまして、剣の英霊どの。私は此度アサシンとして召喚されたシュピーネと申します」
 両手を後ろで組んだまま、慇懃無礼に軍服の男―――シュピーネは一礼した。
 「英雄の皆様方と相対するには役者不足の、英雄でも英霊でも無いただの軍人崩れではありますが、
 召喚主であるキャスターどの命令故、ここを通す訳にはまいりません」
 「……」
 「まあ、正直な話、先程の勢いのまま私を無視し突破して頂いた方が有り難かったのですが」
 止めようとしたが、止められなかったと言い訳が出来ますから、と首を振る。
 「…ほう、私がキャスターを倒した方が都合が良いと?」
 不可視の剣を構え、セイバーが皮肉気に口元を歪めた。
 何故、この男はマスターであるキャスターが不利になる事を漏らすのか?
 「ええ、見てのとおり私は人の身を持っていますから、常時この門を守れと言われても困るのですよ」
 確かにそれは色々な意味で大変だろう。
 「正直に言えば、キャスター殿には早く退場して頂き、私を自由にして貰いたいものです。私はもはや誰の下にも付きたくない」
 「では、今からでもそこを退きなさい」 
 「いやいや、不本意ながら命呪にて縛られておりますからな。今更それは出来ません」
 心底嫌そうにシュピーネは首を振った。
 「そうか、ならば貴公を切り倒して進むだけの事だ」
 もはや躊躇はない。
 僅かとはいえ話をして分かった。
 目の前の男には信義という物が欠けている。
 セイバーにとっては情けを掛けるに値しない。
 「おお、怖い怖い」
 クヒャっとシュピーネが笑いの呼気を漏らした。
 それは嘲笑だった。
 「改めて自己紹介をいたしましょう。
  私はシュピーネ、聖槍十三騎士団黒円卓第十位 ロート・シュピーネ。
  ここで貴方の魂を刈り取るモノです」
 「そこを退け!」
 最早問答は無用と、不可視の剣を振り翳しながらシュピーネへの間合いを潰すセイバー。
 が、しかし。
 不可視の剣を振り下ろすよりも早く、地面、石段を切り裂きながら跳ね上がった極微の糸が、彼女を絡め取る。
 罠は、セイバーが門に到達するよりも早く仕込まれていたのだ。
 「さあ、これで、貴方は我が蜘蛛の巣に囚われた羽虫に過ぎない」
 それが唯の糸の筈が無かった。
 「くっ」
 サーヴァントの動きを封じる糸が唯の糸であろう筈がない。
 「霊体化して逃れようとしても無駄です」
 セイバーが霊体化出来ない事を知らないシュピーネが勝ち誇った様に口元を歪めた。
 「我が聖遺物『辺獄舎の絞殺縄(ワルシャワ・ゲットー)』、歴史こそ浅いものの、これに捕らわれたら使い魔如きでは抜け出すことが出来ない逸品だと自負しております」
 ぎちりっと糸がセイバーの身体を締め付ける。
 『辺獄舎の絞殺縄』―――ワルシャワ収容所において数百の捕虜を絞殺した縄。
 エイヴィヒカイトによりロート・シュピーネと一体化し、魂を喰らう毎に彼を無敵の怪物に仕立て上げる人器融合型の聖遺物。
 「―――さあ、その魂、ワルシャワ・ゲットーに捧げなさい!」

 かくして、既知感たっぷりのフラグを建てつつシュピーネさんの聖杯戦争は始まった。


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