<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.31193の一覧
[0] 【ネタ】第六天魔王と第六天魔王様々様!(織田信奈の野望 × ドリフターズ)[確変](2012/07/16 14:10)
[1] 2[確変](2012/01/16 16:28)
[2] 3[確変](2012/01/30 00:10)
[3] 4[確変](2012/02/22 15:34)
[4] 5[確変](2012/02/22 15:07)
[5] 6[確変](2012/07/09 01:18)
[6] 7[確変](2012/07/16 14:10)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[31193] 5
Name: 確変◆563cbb8b ID:c9b6435b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/22 15:07
 思いの外、難産でした。同じ場所に、同じ人物を書き続けるのは難しいですね。何度か途中書きなおしたりしたのですが、皆様のお眼鏡に適っていれば幸いです。





「して、その方が先程、云っておった?」
「ええ、こいつが狒狒よ、名はノブ。残念だけど、今日雇い入れたばかりで氏素姓は不明よ」
「何と?! 織田は、そのような者まで受け入れるのか?」
「あら、有能“そう”なら、わたしは何だって使うわ。今時、血筋だの家柄だのに拘(こだわ)っていたら、この乱世では生きていけないし」

 そこまで聞いて、道三は「ふぅむ」と、顎をつるりと撫でながら、改めて信奈の隣に座る男を見やる。
 主君に紹介を受けたにもかかわらず、この隻眼の男『ノブ』は、頭一つ下げようともしない。あまつさえ配下に加わったばかりの者が、なんの躊躇いもなしに主の真隣に胡坐をかいている。
 確かに、道三も「近う寄れ」とは言ったが、何もここまで近くに寄れとは言っていない。普通なら、縁側の傍までで自重する者である。

 主も主で、こんなドコの馬の骨とも知れぬ者を雇い入れ、自身の隣に座ることに何の異も唱えない“うつけ”ときた。

「(ワシの視込み違いじゃったかのう……?)」

 天才と“なんとか”は、紙一重。
 やはり眼だけで、人を推し量るというのはアテにならない。織田の姫もこの男も所詮は後者だろう。いくら歳を重ねたところで人の審美眼というものは“勘”の域を脱することなど出来ないのだ、と道三は改めてそう感じた。

 だが、うつけも使いようである。聞けばこの男は織田家の新参者。上手く吹っかれば織田の姫に赤っ恥をかかせるやも知れぬ、それに無礼を口実にこの同盟を御破算にすることも可能である。
 結局、力量 云々についても『うつけの力量』での図り損ないだろうと、道三は双方ともうつけと決め込んで、会話を切りだした。

「ノブと申したな。そち、何故、主君に紹介を受けて頭も下げずにおるのだ。無礼とは思わんのかね?」

 勝者の笑みを崩さずに尋ねてくる道三に対し、信長は然も当たり前のように応える。

「お館様の命とあらば、そうしようぞ。必要とあらばこんな頭の一つや二つ、俺ぁ幾らでも下げる。……だがな、美濃の蝮。俺はお主のような『無礼者』に下げる頭は持ち合わせてはおらなんだ」

「……は?」

 無礼千万もここまでくれば、却って清々しさを覚えるまでに太太(ふてぶて)しく。信長の予期せぬ返答に思考が固まり、ポトリと道三の手から扇子が抜け落ちた。
 「何を云うか、無礼者はお主の方であろう」と、道三は云いたいところだが、驚きのあまりか声が詰まり言葉が出ない。
 信長は更に拍車をかけるように云う。

「お解りにならぬか? お館様はこの場に正装を身につけて、同盟の会談に参じている。だが道三、お主は『隣の八っつぁん』の家に茶でも貰いに行くような軽い着流しときた。これを無礼とせずに何と捉える!?」

 腰になにやら、ワケの判らないものをジャラジャラと身に付け。着物には袖を通さずに垂らしたまま襦袢のみを着込み、腰下には裾がボロボロの黒い袴。月代(さかやき)も剃らなければ、髷も結っていない。そんな男が信奈ですら「無言の威圧」で止めた、道三の服装への指摘に庭の兵子は恐恐、信奈も唖然とし。道三は、絞り出すように驚きと怒りの入り混じった声で云う。

「じゃ、じゃがお主とて、その格好は」
「無礼だ、とでも? 同盟という重要な対談の場に、突如儂のような『草履持ち』程度の者を呼んだのは、他ならぬお主では御座らんか?」

 それに“理さえ適えば”どんな奇天烈な格好も織田家では許される。と信長は付け加えた。
 まるで虚構の塊のような男。この男の口から吐き出される言葉の端々に掛れば、虚が真となり真もまた虚に感じられ、その言を聴く者の判断を鈍らせる。

「う、うぅむ……。で、“理”とは?」
「理とは“利”でもある。その事は我が主君が常日頃から実証済みである故」
「ふむん……、確かに織田の姫はうつけ姿で町をうろついておるというが、そこにどんな利が在るというのだ?」
「ハン、堅苦しいだけの正装なんてもんは、所詮はただの御飾りよ。特に女子の着物なんぞは、いざって時に刀も満足に振れない足枷に他ならん」
「されば、下人のような茶筅髷にも利があると?」

「うむ。これより織田家は、天下盗りを行う。その筆頭であるお館様ともなれば、一日一刻でも時が惜しい程に、忙しいのは必定。故に、一々髷なんぞ結っておられる暇は無いのだ」

 道三が徐々に戸惑いを見せている中、信奈は驚いていた。
 今の今まで、全く周囲に認められず、奇異の眼で見られてきた自分の行動の根本を、こうもポンポン言い当てるのだから驚きも当然である。まるで頭の中を覗き見られているような不気味さも感じる半面、初めて誰かから認められた嬉しさから、信奈の頬が軽く微笑む。

「天下か……、大きく出たものじゃの」
「これはこれは、異な事を。『天下を狙って』美濃を奪い盗った蝮がなにを言う?」
「な、何故、ワシが天下を狙ろうておると、云い切れる?!」

 ニィィイ、と信長の得意満面の笑みがこぼれる。こうまで人を虚仮にする笑みは、中々に出来るものではない。有る意味、この『笑み』は信長の才能といっても過言ではない。その証拠に信長の笑みを向けられた道三も表情こそ崩さないものの、硬く握りしめられた扇子からミシリと音が立っている。それ程までに信長の『笑顔』は人を不快にさせるのだ。

「んな事ぁ、地図を広げりゃあ一目瞭然よ。美濃ってのは、日ノ本の中心。周囲を丸っと敵に囲まれた一見不利な地に見えるが、その実、険しい山々が連なる天然の要害となれば、護りに適した地とも云える。そこで、勢力を蓄えれば一気に京まで上洛できるって腹積りであったのだろう、蝮よ?」

 家臣にも話したことのない、道三の天下盗りの筋書き。それを正確に言い当てられ、「只のうつけではない」、と道三の信長に対する評価は変わっていた。
 度を超えた怒りが却って、道三の冷静さを呼び戻す。鼻から思い切り肺臓まで空気を吸い込み、口から吐き出す……。道三はこれでも僧侶の出でもある。雑念を捨て去り、明鏡な思考でもってして、目の前に居座る男の虚構の壁を打ち破り、その内側を覗こうとする。

「(口先三寸だけの男という訳でもなさそうじゃの)」

 角度を変えれば、見えてくるものもまた変わる。口ばかりが達者な者は幾度となく眼にしてきた。だが、今の道三の目には、今までまみえた事のない信長の内に秘めたる“何か”が見え始めていた……。

「(ぬぅっ?!)」

 ゾワリと肌が粟をうつ。
 自身の内に在る“毒”すらも凌駕せんとする、どろどろと信長が放つ底なし沼のような“それ”に、思わず引き込まれそうになる錯覚を覚え、道三は他に気付かれぬように尻込みする。

「(藪を突いて、蛇ならぬ鵺が出よったかッ?!)」

 最早、この男は老骨である自身の手にすら余る存在だと感じ取ると、道三は居住まいを正すとともに、この対談に本腰を入れる。

「織田信奈殿。非礼な振舞を謝罪させていただきたい。…………すまなかった」

 下衆な茶化しや詮索などは捨てて、道三は頭を下げる。しかし、態度が一変したのは、何も道三だけではない。

「先の無礼千万の数々、真に申し訳御座いませぬ。しかしながら、美濃国国主殿を“この場に参じて頂く”為となれば、致し方なく。…………斉藤道三殿、此度の対談への御足労、恐悦至極に存じまする」

 道三が視線を戻すと、信長もまた同じように深々と頭を垂れており、畏まった口調で互いに非礼を詫びることで、この同盟の場を仕切りなおしたのだ。
 道三は眼を見開く。道三の態度から心意を汲み取ったかのようなその立ち振る舞いと、先の先まで読み切った思考は、道三を驚嘆させた。

「(成程のぅ、これは完敗じゃわい……)」

 ―――― つまりはこの男の掌の上で踊らされていたという事。道三に同盟に対し真摯に取り組んでもらうための無礼者を装った猿芝居。その為だけに、手討ちを覚悟で即興を演じて織田の姫をたてるばかりか、道三を同盟の席へと無理矢理座らせたのだ。
 老齢に差し掛かり、戦場で刀を振るう膂力も失せた道三。唯一残っていた策を張り巡らせる智謀と腹芸すら織田の新参者に『してやられた』。だが、不思議と敗北感や卑屈な気分は沸いてこず、寧ろ清々しい程であった。

 ―――― パン!

 小気味の良い音が響き渡る。道三が膝を叩いた音で、その表情にはスッキリと、それでいて安堵したかのような朗らかな笑みが浮かんでいる。まるで憑物でも落ちたかのように道三は張りのある声で宣下する。

「決めたぞ! ワシは美濃を信奈殿に譲り、―――― 隠居する!!」

 同盟から一転。まさかの美濃国譲渡と、隠居の宣言に周囲はざわめきを立てるが、道三は一点の迷いすら見せてはいない。この事からも、道三の本気具合が推し量れる。

「いいの、蝮? まぁ今更、返せたってもう遅いけど」
「ぬふふふ……、男に二言は無い。ワシの義息子のような六尺三寸のようなブ男に、美濃を譲るより“信奈ちゃん”みたいに可愛ゆい愛娘に譲るわい」

 美濃国主ではなく、ひとりの親バカな爺となった斎藤道三は云う。

「ノブ殿」
「……は」
「そう、畏まらんでもよい。そちとワシは、歳もそんなに変わらんじゃろうて?」

 それを聞き、いつの間にか部屋の隅で控えていた信長は、「それもそうだな」と云って、態度を改める。

「何用かな、道三殿?」
「うむ……、ワシはこの通り年老いた爺故、天下盗りの野望を愛娘に託す。だが、そこには幾多の壁が待ち構えておろう。何卒、何卒……我が娘を支えてやってくれまいか」

 お頼み申す。と、道三は頭を下げて懇願する。

「元より俺ぁ、お館様の天下盗りにこの身を捧げておる。なぁに、心配せずとも直ぐに天下を盗って、お主に『世界』を見せてやる。茶ぁでも啜りながらゆるりと待っておれ」
「『世界』、か。それは、楽しみじゃ……。じゃが、最後に一つだけ聴かせてはくれぬか?」

 ―――― お主自身が天下を治める気はないのかね?

「(狒狒ほどの才があれば、他に幾らでも仕官することが出来た。いや、それどころか一刻を治めるくらいは容易な筈……なのに、何故ここを選んだというの?)」

 この問いに信奈は戦慄する。今回の同盟の場で、『ノブより劣るかも知れない』と道三に突きつけられた時から気に掛っていた事だけに信長の返答、『何故、織田信奈に仕えるのか?』という問いの答えを、信奈は固唾を飲んで待つ。

「そうだのう、強いて言うなれば……」

 ポン、

 と、信奈の頭に信長の手が置かれた。ゴツゴツと硬く大きい、それでいて温かい掌の感触。信奈はその手を払わず、下から覗き込むように信長の顔を窺う。

「織田信奈という者の行く末に『公案』の本当の答えがあると儂は考えておる。儂はそれが見たくて見たくて、仕方がないのよ」

 信長らしくもない、凝った言い回し。
 仏教徒が悟りに至る為に用いられる公案。それには、千差万別の解釈はあれど、真に答えなどは無いとされている。だが、信長は別に仏教に傾倒している訳ではない、あくまでものの喩(たと)えで用いていた。
 信奈も仏教に対してあまり興味は無いので信長の返答を理解し難かったが、元僧侶の道三は、唯一人だけ信長の言葉に満足したかのように微笑んでいた。

「うむ、あい解かった。信奈ちゃんよ、ノブ殿は腹の中に一物も二持つも抱えておるように見えるが、そなたを大いに助けてくれるに違いない…………ワシが保障しよう」


* * *


 その後、道三は「譲り状をしたためる」と言って、正徳寺を飛び出し美濃へと帰った。信奈も清州城へ帰ろうと正徳寺の一室で“普段着”に着替える。その間中も、信奈の脳裏には先程の遣り取りが離れず、不機嫌というよりは、悶々と考え込む様子である。

「(狒狒がわたしの天下盗りを助けてくれる……か)」

 義父となった道三の言葉とはいえ、俄(にわ)かに信じ難い。どちらかと言えば、あの男、狒狒の巧妙に張り巡らされた罠で、寝首を掻かれそうな気がする。


 腰紐に使っている荒縄をいつもより、少々キツ目に巻き付けて太刀を射し込み、着替えを終えて部屋を出ると庭先に続く縁側に立った。

「狒狒、わたしの草履は?」
「は! こちらに」

 ―――― スス、

 縁側の踏み石に置かれる草鞋……ではない、全く別の何か。革袋のような物体がそこにある。

「狒狒、わたしは草鞋を出せと言ったのだけれど……これは、一体何?」
「うむ、儂が先程、魔改造して造った、『靴』だ!」

 そこの部分に草鞋を用い、その周りを覆うように鞣革があてがわれている。靴紐の代用として、草鞋の鼻緒が簡単に編み込まれている。有体に言えば靴と呼べなくもない代物である。

「き、きき、貴様ぁっ! 信奈様の草鞋を何だと心得ている?!」

 これに激昂する柴田勝家こと六(またの名を『オッパ家』)が、信長に斬り捨てんばかりに喰って掛る。

「なんだ、オッパ家。靴を知らんのか? こいつぁ、使えるぞ! 何たって、雨の日にも足袋は濡れんし、走りやすい。見ろ、儂と『お揃』じゃ!!」

 見れば、信長も紐なしの革靴を履いている。

「こんなこと仕出かして、許されると思っているのか?! もう我慢の限界だ、信奈様! お下知を、この不届き者を勝家が成敗してみせます!」
「んだとコラ、オッパ家! 斬られる前に、俺がおめぇの乳を“直に”揉みしだいてやんぞ!」
「ひ、ひぃぃいっ! や、やめろぉ、そんなことされたら、本当にお嫁にいけなくなる!」

 ギャーギャーと騒がしく信長と勝家が言い争う中。信奈は試しに、信長お手製の靴に足を通してみると、驚くほどに寸法があっている。靴底に元々履いていた草鞋を使ってはいるが、信奈の足を包む鞣革もピッタリとしている。

 丁寧に作られている証拠だろう。信長の手を見れば、慣れない作業の所為か手の所々に傷を負っている。

「ぷっ! ―――― アッハッハッハ!!」
「どうされました、信奈様?!」
「見ろ、オッパ家! お館様も喜んで笑ってるじゃねぇか」
「それは、絶ッ対に違う!!」

「あ~、笑ったわ。なんだか、ひとりで考え込んでるのが、馬鹿みたいになっちゃった」

 目尻に溜まった笑い涙を拭い、信長の造った靴を履いて庭に出て馬に跨る。


 起こり得るかどうか、解からない事を考えていても仕方がない。そんな事をする奴は、おじゃが池の龍神を信じていた者たちと同じではないか。
 信奈は、神は信じないが、人を信じることは出来る。ならば、信じてみよう、道三の言葉も、狒狒のことも。もし、それで裏切られるようであれば、信奈自身が『それまで』の人間であっただけのことだ。信奈は「それじゃあ、帰るわよ」と告げて、胴を蹴り、馬を清州城へと進ませた。

「…………姫さまがあんな風に笑う顔、久しぶりにみた」

 置いてきぼりを喰う、信長と勝家。そんな中でひとり蚊帳の外だった犬千代が、ポツリと呟いたのだった……。




 古い言葉遣いってムズイですねぇ。大河ドラマなどで仕入れた中途半端な知識なので、もし間違いがあったら御指摘など、お願いいたします。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.025940895080566