『ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第十四話』
≪そういえば、こちらへ来る途中暗闇に包まれた部屋があったであろう?≫
「はい、僕等は松明を持って着ていないので壁伝いに進んで来たのですが・・・。」
≪そうか、それなら私の後についてこちらへ来なさい。≫
エリックはリュカとビアンカの前に進み、二人を促した。
来た道を戻り、炊事場が見えるとエリックは二人にここで待つ様言い、奥へと消えていった。
しばらくして戻ってきたエリックの手には一つの木が握られていた。
≪これは、その昔我が王家の先祖が、レヌール城建築の際に、この地の精霊から贈られた魔法の松明と呼ばれる物だ。これを二人に貸そう。どちらかメラの呪文は使えるかな?≫
「あ、私が使える!」
≪そうか、ならこの木を持って先にメラをイメージして唱えるといい。そうすれば、この木の先に明るい火が灯る。消したいときは、火が消えるイメージすれば火が消える。≫
「えっ…えっ?よくわかんない…。リュ、リュカ!どういうこと?!」
「えっと…、木の先に向かってメラを唱えればいいってことかな?多分ビアンカならあれこれ考えるより、まずやった方がいいと思うよ。エリックさん、その松明お借りしてもよろしいですか?」
≪我が王家にはもう子孫もいない、その松明はそなた達に贈ろう。この様な物しか贈れずに申し訳ない。≫
「そんな…、王家に伝わる物をこの様ななんて。大切に使わせていただきます。ビアンカ、こっちに来て。」
リュカはエリックから松明を受け取り、ビアンカに渡した。
「それじゃビアンカ、その木の先を前に向けて?」
「こう?」
「そうそう。そうしたら、その木の先に魔物をイメージして、メラを唱えてみて。」
「魔物をイメージして・・・メラ!」
ビアンカがメラを唱えると、松明の先に暖かい光が灯った。
「きれい…。」
≪無事灯った様だな。この松明には魔物を遠ざける働きも持っている。強い魔物には効かないが、弱い魔物であればこの火を見るだけで逃げていく。≫
「エリックさん、ありがとうございます。必ず、僕達はこの城を…お二人を解放してみせます…!」
≪あぁ、期待して待っているよ。リュカ、ビアンカ、気を付けて。≫
「うん!私たちにまかせなさい!」
二人はエリックと別れ、元来た道を引き返す。しばらく進むと、階段が見えて来た。
「この階段を上ると、さっきの暗い通路に出るね。ビアンカ、松明の準備は大丈夫?」
「まかせなさい!もう点けたり消したりはすぐできるわ!」
「わかった、それじゃ行こう。」
ビアンカに向かいリュカは手を差し出した。
「わ、私は怖くないけど、リュカが、どうしても怖いっていうなら、手を繋いであげてもいいわよ?」
そう言い、ビアンカはリュカの手を握りしめた。
リュカは繋いだビアンカの小さな手が震えているのを感じ、強く強く握りしめた。
ビアンカは僕が守る。リュカはそう自分に言い聞かせ、心を落ち着ける。
二人は階段を上り、暗い暗い闇へ進んでいった。
そしてしばらくして
「リュカー!!」
ビアンカの悲鳴がレヌール城に響き渡った。