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No.31004の一覧
[0] 【惑星のさみだれ】ネズミの騎士の悪足掻き(日下部太朗逆行強化)[へびさんマン](2015/01/25 16:30)
[1] 1.宙野花子(そらの はなこ)[へびさんマン](2013/03/02 15:07)
[2] 2.師匠、登場![へびさんマン](2013/03/02 15:07)
[3] 3.山篭りと子鬼[へびさんマン](2013/03/02 15:07)
[4] 4.しゅぎょー!![へびさんマン](2013/03/02 15:08)
[5] 5.神通力覚醒!?[へびさんマン](2013/03/02 15:08)
[6] 6.東雲家にて[へびさんマン](2013/03/02 15:08)
[7] 7.ちゅー学生日記[へびさんマン](2013/03/02 15:09)
[8] 8.再会、ランス=リュミエール[へびさんマン](2013/03/02 15:09)
[9] 9.初陣[へびさんマン](2013/03/02 15:09)
[10] 10.結成、獣の騎士団![へびさんマン](2013/03/02 15:09)
[11] 11.『五ツ眼』と合成能力[へびさんマン](2013/03/02 15:10)
[12] 12.ランディングギア、アイゼンロック[へびさんマン](2013/03/02 15:02)
[13] 13.カマキリは雌の方が強い[へびさんマン](2012/02/26 23:57)
[14] 14.VS『六ツ眼』[へびさんマン](2013/03/02 15:03)
[15] 15.受け継がれるもの[へびさんマン](2013/03/02 15:03)
[16] 16.束の間の平穏[へびさんマン](2013/03/02 15:04)
[17] 17.不穏の影・戦いは後半戦へ[へびさんマン](2012/05/28 21:45)
[18] 18.魔法使い(アニムス)登場[へびさんマン](2012/05/28 18:26)
[19] 19.夏、そして合宿へ[へびさんマン](2014/01/26 21:06)
[20] 20.精霊(プリンセス)アニマと霊馬(ユニコーン)の騎士[へびさんマン](2013/03/02 23:50)
[21] 21.対決! メタゲイトニオン・改![へびさんマン](2015/01/14 22:26)
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[31004] 19.夏、そして合宿へ
Name: へびさんマン◆29ccac37 ID:a6a7b38f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/01/26 21:06
 魔法使い(アニムス)が現れてから、騎士たちの一部は自主的にパトロールを始めた。
 アニムスを見つけて成敗するためだ。

「師匠の仇! 絶対に見つけてぶっ飛ばす! じゃあ今日も行くわよ、リー!」
「もちろんだ! ぶちかましてやろうぜ、スバル!」

 気炎を上げるニワトリの騎士ペア。

「……魔法使いを見つけても、先走らないように見張っててもらえるか、月代」
「はい、南雲さん。でも私も、約束はできませんよ。復讐心は、抑えられないと思います」
「それもそうか。……じゃあロン、頼むぞ」
「ほいほい。わかっておるぞい」

 年長者である南雲は、暴走しないようにと昴のペアである雪待に頼む。
 短気でイケイケのリー(ニワトリ)に比べて、ゆったりおっとり年の功なロン(カメ)の方がストッパーとしては頼りになるだろう。
 ……それでも、この少女たちは時折無性に男らしい一面を見せたりするので、心配ではあるのだが。

(戦士としては好ましいが……)

 意気軒昂なのは良いが、先走らないように大人たちが気を配る必要があるだろう。
 だが選ばれた戦士である以上、地球をビスケットハンマーから守るために命をかけるのは当然だ。戦場に立つな、とは決して言えない。
 それでも南雲は、戦場では極力子供たちを守ろう、と決意している。何故なら彼らには未来があるのだ。それを守るのが、あのカジキマグロの騎士であった仙人、秋谷の遺志を継ぐことにもなる。

 それに南雲は元は刑事であったこともあり、人々を守ることに対しては並々ならぬモチベーションがある。
 その熱意が、かえって警察組織の中で生きるのに邪魔になったこともあった。そしてまあ、指輪の騎士の力に目覚めてから、色々あって南雲は仕事を辞めた。
 おかげで今は無職である。……いや、毎日パトロールしているから、職業:正義の味方と言えないこともないかもしれない。

「そういえば、半月はそんな名刺を持っていたな」

 正義の味方、スーパーヒーロー 東雲半月。
 本人はジョーク名刺だと言っていたが、なかなか案外当たっているだろう。
 自分も作っても良いかもしれない、と考えたが、戦いの最中であるのにそんなものを作るのもどうかと気が咎める。
 ヒーローを目指すよりも、泥に塗れても多くの人を守るのが、南雲の目指すところであった。

「昔はヒーローに憧れたものだが。まさか本当に悪の魔法使いと戦うことになるとはな」

 昔の特撮ヒーロー「インコマン」の敵役の中の人(スーツアクター)をやったこともある。
 懐かしい思い出だ。アフリカ拳法のヒポポタマス男。
 あの時は本気でやって、インコマンの中の人をK.O.してしてしまった。勿論リテイクだ。

 雪待が聞きなれない単語に首を傾げる。

「インコマン? ですか?」
「古い特撮作品だ。良い作品だから見ると良い」
「へえ、そうなんですか。そう言えば、三日月さんが雨宮さんに昔の特撮のDVDを貸してたみたいですね。それかも知れません」
「ほう、いい趣味をしてるな、三日月も。あるいは半月の趣味か」

 インコ頭のムキムキのヒーローが描かれたDVDだったというから確定だろう。
 やはり名作は色褪せないものなのだ。
 そんな風にうむうむと南雲が感慨深く頷いていると、

「さ、パトロール行くよ! ユキ!」
「あ、うん、分かった! じゃあ、行ってきます、南雲さん」
「行ってきます、南雲さん! 魔法使い見つけたら連絡します!」
「ああ、気をつけてな。決して無理はするなよ」

 女子中学生コンビが、騎士団の訓練に使っている廃墟から飛び出すように駆けていった。
 この廃墟は、あの結成式をした場所であり、訓練場でもあるのだ。騎士団は時間があるときにここで訓練をしている。
 騎士団の中でも風巻などは、大学の仕事があるのでなかなか顔を出せないが、その代わりにイイものを置いていってくれている。

「うひゃひゃっひゃはひゃひゃ!! とりゃあーー!!」

 三日月の笑い声が、周辺の森から響く。
 同時に何か重量物がぶつかるような、ドンドンという音も。
 恐らくは三日月の掌握領域『封天陣』で木の間を飛び回って戦っているのだろう。

「おー、三日月さんすげえっすね、やっぱ」
「まあそこは同意する、すごい奴だよ、本当。しかし、よくもまあ楽しそうに……、やはり戦闘狂だな」

 その戦闘音を聞きながら、太朗と雨宮が木陰で涼みつつも、三日月の戦いについてあれこれ言っている。

 そうこうしていると、三日月が追いかけていた重量物、それが吹き飛ばされて、空き地の周囲のフェンスを突き破って入ってくる。

 ごろごろと転がるそれは、土色をした首無し巨大猿といった形の異形であった。両肩あたりに二つの目玉がある。
 風巻の掌握領域『地母神(キュベレイ)』によって作られた、二体目の泥人形だ。名前はモンターク、月曜日という意味だ。
 その首無し巨猿の太くて長い尾の先は刃物のように鋭く、それに当ってはただでは済まないことは、誰が見ても明らかだ。だが殺傷能力が高い剣尾は訓練には使わないことになっている。

「ひゃひゃひゃっ、ひゃ~ひゃっひゃっひゃ! あー、これすんげー楽しー!」
「三日月さ~ん、そろそろ交代して下さいよー」
「いい加減疲れただろう、こっちは休んで回復してきたから代わってくれ」
「えー、どうしようかな~。きししししし」

 三日月が順番を守らないことは、割とよくある。
 そしてそういう場合はどうなるかというと――。

「代わって欲しくば――オレを倒してから行けぇい!」
「またそれッスか」
「いいから代われ」
「へへーん、やなこった!」

 ――リアルファイトに発展するのである。
 むしろ三日月は、その騎士団同士の模擬戦(リアルファイト)の方を心待ちにしているようにも思える。
 根っからの戦闘狂なのだ、三日月は。それは東雲三日月個人の資質もあるだろうが、東雲一族が戦闘民族であるゆえではないかとも考えられる。

 ちなみに東雲兄の方は朝日奈姉とデート中である。仲の良い話だ。
 とはいえ、色恋方面で充実しているのは、イヌの騎士・半月だけではない。今訓練場に居るメンツだってそうだろう。姫と花子もこの場所には居るので、ある意味夕日・三日月、太朗たちもデートと言えないこともないのだ(さっきまで女子中学生二人組も居たし、割と華やかだ)。
 それに思いを寄せる少女と一緒に戦闘訓練というのも、変則的ではあるが青春の一ページだといえるだろう。

 全く若いというのはそれだけで素晴らしいことだ、と南雲は思う。く、羨んでなどいないのだ、断じて……。



「ゆーくんたちも、毎回毎回よーやるわ。私闘禁止やって言うとるのに」
「一応、模擬戦らしいから良いんじゃないのかなー」
「まあ本気でいがみ合っとるわけじゃないし、怪我せん分にはええんですけど」

 ちなみに女性陣も、一通りはモンタークと模擬戦はしている(姫がやるとオーバーキルになるからやってないが)。
 今現在は、花子が家庭教師役になって、姫と一緒に学校の勉強している。

「まあまあ、さみちゃん。怪我しても良いように、さっき茜くん呼んだから、大丈夫だよ」
「それだとむしろ、怪我して欲しいように聞こえる不思議ー」
「だって、茜くんにも練習してもらわないと、いざって時に治癒能力が使えないと困るし」
「それはそうですけど」

 太陽の能力『時空乱流(パンドラ)』は時間をかき混ぜる能力だ。
 だがそれはそのままでは大雑把な能力でしかなく、傷を治すにはそれ専用の訓練を積む必要があるのだ。人体は繊細なのだから当然だ。
 目指すべきところは、“致命傷を一瞬で完治させる”レベルだ。そうでなければ、戦闘には役に立たない。実用レベルを目指して、太陽は必死にサイキックの練習をしている。やはり、自身が『六ツ眼』の狙撃で死にかけたことと、師匠が死んでしまったこと、そして次の『八ツ眼』ことメタゲイトニオン・改に対する危機感が、太陽の必死さを煽っているのだろう。

「茜くんの治癒能力が洗練されれば、もう、誰も死ななくて済むんかなー」
「……ええ、きっと」

 もっとも、秋谷の時のように、太陽が居ないところで致命傷を負ってしまえば、流石に助けられないだろうけれど。
 それについては極力団体行動を心がけて、敵の不意打ちを避けるくらいしか対処がないだろう。

「『八ツ眼』はかなり体がおっきかったし、そうそう街中で不意打ちは受けないと思うんだけど」
「確かに。あれだけでっかいと、戦える場所も限られて来る……。この前の山、とかくらい?」
「そうかも。そういえば雨宮さんは、山に落とし穴しかけてるらしいけど、それって案外悪くないかもしれないね」

 受け身ではダメだ。それだと後手後手に回って、主導権を握れない。
 主導権を握るためには、戦場を整えたり、こちらが有利に運べるようにしないとならない。
 例えば山にトーチカや塹壕なんて作るのはどうだろう。風巻の泥人形を使えば、案外簡単にそういった戦場構造物も作れるんじゃないだろうか。実際問題、太朗と花子は掌握領域で弾幕張ったり狙撃したりするので、遮蔽物があると助かるのだ。

「掌握領域を使った防御も、もっと練習しないとね」
「多重領域の障壁かー。まあ段々堅くなっては来てるから、けっこう行けるかも知れへんですよ」
「でもいつも遠慮なく打ち抜くよね、さみちゃん」

 騎士団二人以上の多重領域の練習に、障壁でさみだれの攻撃を受け止めるという訓練をしている。
 とはいえ騎士団側が攻撃を防げた試しはないのだが。
 それに障壁が破られると大幅に体力を消耗するという欠点がある。それゆえ費用対効果に優れているとは言いがたいが、緊急回避手段の一つとして練習するのに越したことはないだろう。

「展開速度は割りと早くなってきたけど、防御しちゃうと、それだけで体力尽きちゃうのが問題なんだよね」
「やっぱ攻撃は避けて、機を見て集中砲火、ってのが現実的かもわからんですね。障壁防御は最後の手段で」
「そうね。さみちゃんみたいに、みんな頑丈なら生身で受け止められるんだけど。……ねえ、それってやっぱり超能力で強化してるの? 私たちにも出来るかな?」

 カマキリのキルから花子が聞いたところによると、今回の姫(プリンセス)は特に規格外らしい。
 だって普通は姫が泥人形を撃破することなど出来ないはずなのだ。少なくとも、今まで獣の従者たちが経験してきた戦い(ゲーム)はそうだった。
 だいたい、姫が泥人形を倒せるなら、騎士はいらないだろう。

「んー、どうやろ。大元はあたしのも、騎士たち(みんな)の掌握領域も変わらんみたいやけど」
「へー、やっぱりそうなんだ」
「やっぱり?」
「ああ、うん。師匠も掌握領域以外の超能力使えてたし、元からの能力と合わせて領域使ってたりしてたし」

 師匠こと秋谷は、元から卓越したサイキッカーであり、未来視やテレポートまで使いこなしていた。
 そのサイキック運用方法の中には、元から持っていた念動力と掌握領域を合わせた使い方だって当然存在していた。
 他にも例えば、太朗の掌握領域『綿津神』と彼自身のサイコメトリー能力の合わせ技による管制能力だって、そういった合成運用の一つである。

 秋谷のように、本来であれば、超能力は非常に多彩な能力を持ちうるのだが……。

「でも、騎士の掌握領域は、なんつうか、この、デチューン? されとるわけなんです」
「劣化?」
「そうそう、あたしのサイキックは自由自在に手を動かすのに似てるけど、まあ、騎士のやつはまるでクレーンゲームやっとるみたいな不自由な感じらしいですよ」

 つまり即席品は、所詮即席品ということなのだろう。
 いくら騎士たちに多少は素養があるとはいえ、一気にチートじみた能力を与えることは、さすがの精霊アニマにも出来ないということだ。

「それでも、筋肉と同じように、使えば使うほどにサイキックは強力になるんでしょ」
「せやから騎士たちだって、アニムスとかあたしとかに匹敵するまで成長できるかも知れん……」
「あー、確かに雨宮さん、かなり強くなってますもんねぇ、うふふふ」

 にやにやと意味深に花子が笑う。
 好きな男が自分のために強くなってくれるのは良いことだよね? 乙女として嬉しいよね? とでも言いたいのだろう。

「あー、いやそれは……、あはは~」

 言外の意を汲んで、姫がちょっと顔を赤くする。

「ていうか、それやと宙野さんのとこの日下部さんかて、そうやないですかー! いつやったか『花子を守るー!!』なんて絶叫しとりましたよ、日下部さん」
「うふふ。頑張ってる男の子っていいわよねー」
「何故にそんなに大人の余裕……。はっ、まさか!?」
「大人の階段のぼーる?」
「の、登ったん?」
「いやん、清い身体のままよ? さみちゃんのえっちー」

 愚にもつかない他愛ないやり取り。一瞬顔を見合わせて、きゃはははと二人は笑い合う。
 私もだいぶ変わったものね、と花子は自己分析する。柔らかくなったというか、何というか。きっと勉強一辺倒ではなく、視野が広くなっているせいだろう。
 その辺りは太朗の影響というより、秋谷の教育の賜物だろうか。仙人・秋谷は超一級の教育者であり、尊敬すべき大人であったのだ。……当然、太朗の前世を垣間見たことも、花子の思考に多分に影響しているだろうけれど。

 などなど考えつつも、花子とさみだれは話を続ける。
 向こうでは、男たちの模擬戦が佳境に入っているようで、土煙が上がるのが時折視界に映る。

「ふふふ、まあ好きな人が居るのは良いことよー」
「……いや、まだ戦いの最中ですし。色恋にうつつを抜かすのはちょっと。あと、ゆーくんとは別にそんな関係じゃ……」
「ええー。良いじゃない、いつ死ぬかわからないから燃え上がる恋もあるわ。それ言ったら、さみちゃんのお姉さんと半月さんの関係にも突っ込むことになるけど?」

 騎士たちの間でも、東雲半月に彼女ができて、それがさみだれの姉だというのは既に有名な話だった。

「あー、それ、もう聞いてくださいよー!」
「うん、なにー? おねーさん聞いちゃうよー?」
「あのね、もうね――、姉の幸せアピールがすごすぎて、ちょぅ勘弁して欲しい」

 いや、幸せなのは別に良いんですけどね、喜ばしいんですけどね? ああも毎日だと辟易する、とさみだれは吐露する。
 しかし花子は、それを聞いて少しだけ安堵する。特に、『別の世界の結末』を知っている花子からすれば、氷雨と半月の二人が幸せなのは、良い兆候のように思えたし、太朗と花子の足掻きが無駄ではなかったことの証明でもあるのだ。
 ……まあ、聞いている方が砂糖を吐くような甘々カップルなんて、現実ではあんまり関わりたくないけれども。まあだいたい彼らは放っておけば二人だけの世界を勝手に作ってくれるので、触らぬが吉だろう。残念ながらさみだれは家族ポジションなので、そこ(ノロケられポジション)からは逃れられないが。

「え、でも日常生活に支障が出てるわけじゃないんでしょ? たかがノロケじゃない」
「それは、せやけど」

 確かに悪いことではないのだということくらい、さみだれも重々承知だ(多少鬱陶しいだけで)。
 姉は幸せそうだし、プライベートが充実し始めて、姉の家事の腕はますます上がっている。何も悪いことはないのだと、さみだれは認識している(多少鬱陶しいだけで)。
 いつまでも姉に心配をかけていた身体の弱い妹(さみだれ)……その自分から離れて、氷雨が自分の幸せを掴むのは、決して悪いことではないのだ。それはさみだれだって分かっている(多少鬱陶しいだけで)。


 ――――問題は、自分が最終的に、姉たちの幸せを壊してしまうということ。

 どうしてもそれを考えてしまう。考えざるを得ない。思い至らざるをえない。

(地球を壊せば、みんな、死ぬ)

 そう、みんな、みんな、さみだれが連れて行く。
 この青い星ごと、魔王が連れて行く。騎士たちも、母も、父も、姉も。そしてひょっとしたら、未来に生まれるはずの甥か姪も。
 全てが全てあの世への副葬品だ。だってこの惑星を、彼女は欲しいと願ってしまったのだから。

 だからそれは避けられない結末なのだ。

 地球は彼女のもの。
 だから、彼女が砕くのだ。
 それこそが、所有の証明だと信じているがゆえに。

 ……さみだれは、ここに及んで地球破壊を迷っているわけではない。
 申し訳ないという気持ちもあるが、一方で、人類道連れを『当然の権利』だと思っている傲岸不遜な自分もいるのも、さみだれは自覚している。
 だって、宇宙からあの綺麗な青い地球(ほし)を眺めた時に、思ってしまったのだ。

 ――――欲しい。 

 そう思ってしまった。
 だから仕方ないのだ。

 暗黒に浮かぶ青い宝石。
 あれが欲しいのだ。
 何かを欲しいと思ったのは、さみだれの短い人生で初めてだった。

 それは実際、彼女の最初で最後のわがままなのだ。




「ねえ、さみちゃん」
「ふえ?」
「話し変わるんだけどさ」

 花子に急に話しかけられて、さみだれは思索から帰ってくる。

「な、なんです?」
「この戦いが終わったら、どうするか決めてる?」
「え?」

 話し変わってないです宙野さん、とは思ったが、口には出さない。

「私はさ、たろくんと一緒に料理屋さん……定食屋さんかな? やりたいなって思って。
 たろくんは料理の専門学校に進学するみたいだけど、私はどうするか迷っててね。
 学校の先生は大学進学を勧めてくるけど……。そこで経営とか経理とか勉強したほうがいいのかなーって」
「へ、へえ~」

 さみだれは曖昧に相槌を打つ。さみだれにとっては、微妙に話しは変わってないので反応が不自然になっている。

「やっぱりたろくんだけには任せておけないし! 私がしっかりしないと。勘定方、的な?」
「あー、それは、確かに花子さんに任せたほうが、安心かも? なんかどんぶり勘定というか、お客さんにオマケしまくりそうな感じかも」
「あはは、やっぱりそう思う? それでさ私の夢的なものはそんな感じなんだけど――――さみちゃんは、どうするの?」
「…………」

 そう言って何気ない様子を装って訊いてくる花子。
 だがその瞳の底は、見通せない。
 未来の希望を語っているはずなのに、どこかその瞳は糾弾するような色があるようにも見える。いやそれはさみだれの被害妄想か。直前まであんなことを考えていたから……。

(そんな未来なんて、あたしには、無い)

 そんな内心を隠して、さみだれは曖昧に笑う。彼女の余命は、彼女に取り憑いているアニマのサイキック無しでは幾許もなく、故に未来の展望などもってはいない。ただただ『地球を砕く』というそこまでしか考えていないのだ。
 だがしかし、まだ、この体の抱える病について明かせるのは、魔王の騎士・雨宮夕日だけである。それ以外の騎士は、信用が置けないからだ。
 特に花子のように、未来を語る騎士になんて、自分の望みを明かす訳にはいかない。なぜなら未来を志向する騎士にとって、さみだれの破滅的な望みは間違い無く敵となるのだから。

「そんな先のこと、よう分からんですわ。先ずは、この戦いに集中せえへんと」
「……、あはは、そうだね。真面目にやらないとね」
「いや、花子さんが不真面目やと責めとる訳やなくて……」
「分かってる分かってる。でもこれでも戦いのことは真面目に考えてるよ。騎士の『願い事』は私もたろくんも自分の能力強化に使っちゃったし、かなり本気だよ? そこは信じてね」

 そうだ、太朗と花子が願ったのは自己強化。
 太朗の射程延長と拡散特性。花子の威力強化と連弾能力。
 既にそれは騎士団の戦いに無くてはならないものになっている。

「あ、やっぱりあれは、『願い事』での強化やったんですね」
「さみちゃんほど天才じゃないからね~。二人で話し合って、そのくらいやらないと生き残れないと思ったの」
「『願い事』を自己強化に使ったのは、あとは風巻さんと、茜くんも、ですかね?」

 風巻の泥人形作成能力。
 そして茜の時空操作能力。
 どちらもサイキックに目覚めたばかりの素人には荷が重い高度な力だ。つまり何かの助力が必要なはず。さみだれはそれを『願い事』の効果だと考えている。

「『願い事』残してる人もいるのかしら。半月さんとか三日月さんとかは、あっさり人助けに使ってそうだけど」
「あ、それは想像できるなー」
「半月さんは、さみちゃんのお姉さんのために使ってそうかも。『氷雨さんが幸せになりますよーに』とか」
「それありそー。みーくんは……『強敵と戦えますように!』とか?」
「あは、それっぽい! でも三日月さん、さみちゃんにベタ惚れだから、さみちゃん関連かもよ?」
「んー、そうかなー」
「かもかも。でも誰か一人くらいは、最後まで『願い事』残しちゃうかもね、優柔不断でさ。そして最後に願うの、『世界が平和になりますよーに』って。『みんなが笑えるハッピーエンドになりますよーに』って」

 それはとても幸せな未来なのだろう。
 花子がそんなことを言うとは思ってなかったのだろう、さみだれが目を丸くして見つめる。

「クールかと思ったら、意外とロマンチスト……」
「恋する乙女ですから?」

 ふふふ、とどちらともなく笑う。
 会話が一段落したのを見計らっていたのか、太朗が花子を呼ぶ。

「おーい花子ー! 次、一緒に模擬戦やろうぜー!」
「あ、呼ばれてる。はーい! たろくん、今行くよー! じゃ、また後でね、さみちゃん」
「……怪我せんように、気ぃつけてください」
「うん。じゃあ『将来の夢』、話せるようになったら、教えてね?」
「んー…………」
「その内でいいからねー」

 花子は太朗が待つグラウンドの方へと向かう。
 それを見送り、さみだれは内心ほっと溜息を吐いた。 
 将来についての話を追求されなくて、さみだれは安心していた。

(ナイスタイミングや、ネズミの騎士……)






「おい、花子、何やってんだよ。地雷原でタップダンスみたいな捨て台詞残してさー」
「あれ、あんな遠くからでも聞こえてたんだ。『綿津神』の探知の応用?」
「まあそんなとこ。で、何であんな酷なこと言ったんだよ。姫の事情は知った上でのことなんだろ?」
「……ちょっと揺さぶり、かな」
「えげつないことするなー。ちょっと引いた……」
「まあ、雨宮さんにだけ任せるのもアレだし。一つの未来を知ってるがゆえの責任というか」
「……考えすぎだぜー。何とかなるって!」
「たろくんはほんとおばかだなあ(棒)」


  ◆◇◆


 ネズミの騎士の悪足掻き 19.夏、そして合宿へ


  ◆◇◆


 『少し休め』という魔法使いアニムスの言葉通り、泥人形の襲撃もなく、日々は過ぎた。

 もちろん、過ぎ行く日々の中で、色々なことがあった。

 例えば、朝日奈家の母娘の確執に夕日が一石を投じたり、半月がそれについての氷雨の相談に乗ったり、半月が更に情勢をかき回して夕日がフォローに回ったり……。
 他にも風巻がアニムスに勧誘を受けるものの、それを突っぱねて軽く戦闘して、その結果、『地母神(キュベレイ)』で作る泥人形は、前のが壊されなくても次のを作れることが判明したり……。
 そのアニムスと風巻の戦いに、茜太陽もアニムス側の騎士として加わったり。そのことを茜は太朗たちに相談して、相談を受けた太朗たちが風巻に対して、茜の二重スパイ状態を説明したり。

 まあ、ともかく色々あったのだが、それらは概ね良い方向に動いたと言えるだろう、恐らくは。

 そして――

「夏だ!」

 三日月が快哉を上げる。
 太陽燦燦と照りつける赤の季節。
 生物がその生命を謳歌する夏がやってきたのだ。

 そして夏といえば。

「海だ! 水着だ!」
「合宿だ! 特訓だ!」
「釣りも忘れるな!」
「バーベキューは?」
「太朗任せた!」
「うっス! ひゃっはらー!」
「はいだらー! やっぱ夏は海だよな!」

 という訳で、一部よく分からんテンションになっているものの、何はともあれ騎士団揃っての特訓合宿である(テンション高いのは誰かは言うまい)。

 場所は、大勢の人が集まる場所からは離れた、少し寂れた砂浜。
 発案は東雲兄弟、スポンサーは南雲氏、企画は風巻氏、専属料理人は日下部太朗という布陣だ。
 学生等も夏休みに入ったということで、丁度いい時期だった。

 その砂浜のそばに立つ旅館を半ば貸切っての合宿ということだが、まあ半分は親睦会も兼ねているようなものだ。

 海に戯れ、砂浜に遊び、バーベキューを堪能する獣の騎士団たち。ひと夏の青春である。







 その彼らを、遥か天上――ビスケットハンマーの上――から見下ろす者が居た。
 それは誰あろう、魔法使いアニムスであった。

「じゃあ、そろそろ行こうか、メタゲイトニオン。こないだ風巻くんの『三ツ眼』にやられた傷も癒えたよね」

 アニムスの後ろで、メタゲイトニオンが咆哮を上げて答える。

 その姿は、ケンタウロスの爬虫類型重戦士といったところか。
 剣尾を備えた恐竜のような四足の下半身に、巨人の上半身と、八ツ眼+一ツ眼を備えた竜の顎。
 体の各部に開いた目玉は、頭部の九つと六肢の付け根の合計十五個。

 今までで最強の泥人形が、騎士団に襲いかかろうとしていた。

「アニマはしかし、何処に隠れてるんだか……。寝坊でもしてるのかな?」

 プリンセスであるさみだれを見つつ呟いたアニムスの言葉に、答えるものは居なかった。


=============================


ご無沙汰してます。

小説で水着回とか無理なので、さくっとカットする予定。ちなみに乳くらべするなら、白道(巨)>花子(普)>さみだれ(普・成長中)>雪待・昴(微・成長中)だと思われ。
いやでも、ほのぼの合宿シーンは書くべきか? 太朗ちゃんが、風巻さんが釣り上げた魚をしゅぱぱっと即座に活け造りにしたりとか。あと白道さんに、魔王主従の企みがバレるところとかも書かなきゃならんし……。うーむ、その辺をやるなら次回だな。

朝日奈家の話はさらっと流してますけど、原作より前倒しになってます。八ツ眼が早く登場してる関係上ですね(アニマも早く出さんと、メタゲイトニオン改に対抗できんので)。この辺はたまたま朝日奈母の帰国日程がずれたんだと思ってくだせい。
それにしても朝日奈家の母娘の話に半月を加えた場合の話も、掘り下げるべきだったかな? せっかくの再構築もののSSだし……。あ、半月がさみだれの持病知ったのかどうか書いてねえや。今後どこかで断片的に回想を挟むか? うーむ。あるいは番外編挿入か。あー、それならアニムスから騎士たち(風巻さんとか太陽くんとか、ひょっとしたら今後は花子に対しても?)へのアプローチのイベントも書かなきゃだなぁ。書くこと多くて話し進まねえ、でもここは書くべきポイントな気がする。
それと太朗と各騎士の絡みもピックアップしないと……。

と、ともかく!

次回、「合宿と八ツ眼、精霊(プリンセス)と霊馬(ユニコーン)の騎士」(仮タイトル)の予定です。

次回も気長にお待ちください。

2012.10.07 初投稿


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