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No.30862の一覧
[0] 【ネタ】境界線上のなにか(境界線上のホライゾン オリ主最強)[クリス](2011/12/14 08:12)
[1] 第2話[クリス](2011/12/14 23:28)
[2] 第3話[クリス](2011/12/19 01:13)
[3] 第4話[クリス](2011/12/31 00:10)
[4] 第5話[クリス](2011/12/31 00:09)
[5] 第6話[クリス](2012/01/03 23:15)
[6] 第7話[クリス](2012/02/07 11:56)
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[30862] 【ネタ】境界線上のなにか(境界線上のホライゾン オリ主最強)
Name: クリス◆e4b16b22 ID:59998bda 次を表示する
Date: 2011/12/14 08:12





 遥か昔の話。
 荒廃した地球を捨て、人類は天上へと昇った。
 人類が天上に昇って生活している間に地球環境は回復するが、とある出来事が起きたことで人類は地球に帰ることを余儀なくされた。
 しかし、環境神群の居る極東以外、地球環境は全て過剰修復され、人が住めなくなっていた。
 かろうじて極東には住めたものの、帰還した人類が生活するにはあまりにも狭い領域だった。
 これにより、自然と土地問題が発生し、人類は再び母なる大地にて滅亡しかける。
 神州の民以外は重奏世界へ移住し、神州の民は現実世界に残ることでとりあえずの問題を解消することにした。
 この時代に聖譜を開発し、再び天上に戻ることを目的とした歴史再現が開始された。

 それから数百年。
 現実世界の神州で南北朝戦争が勃発。
 1443年に南朝が帝から神器奪取を決行し、1457年に神器を取り返すまでの間に地脈の制御が失われ重奏世界が崩壊してしまい、重奏統合争乱に流れ込む。
 南北戦争を経た神州は疲弊しており、降伏を余儀なくされた。
 これにより、神州の土地は極東と名を改められ、土地も分割されて重奏世界にいた各国によって暫定支配されることとなった。
 神州の民は各国の居留地もしくは建造された武蔵に住み、結成された聖連の下で新たに歴史再現が開始された。


 そんな世界でとある人物は、この歴史再現が是であると思えなかった。
 人類が天上へ戻ることを目的として過去の歴史を再現する、ということはその先に在る挫折による帰還という歴史も再現してしまうのではないか。
 歴史とはその時代を生きる者たちによるひとつひとつの選択の積み重ねであるのだから。






『市民の皆様、準バハムート級航空都市艦・武蔵が、武蔵アリアダスト教導院の鐘で朝八時半をお知らせ致します。本艦は現在、サガルマータ回廊を抜けて南西へと航行、午後に主港である極東代表国三河へと入港致します。生活地域上空では情報遮断ステルス航行に入りますので、御協力御願い致します。―――以上』

 空に発生させた波を砕いて進む八艦の内、中央後艦 奥多摩から時報の鐘と共に艦の制御をしている艦と同じ名前を持つ自動人形 武蔵のよる市民への連絡が行われる。
 時を同じくして、武蔵の学生達の中心地にして極東代表校、武蔵・アリアダスト教導院の校庭でへんてこ集団が学業を始めようとしていた。
 正確には、校庭の上を通る橋上にアリアダスト教導院の中心メンバーを全員含んだ三年梅組の生徒と担当教師のオリオトライ・真喜子が集合していた。
 あまりにも濃すぎるために「混ぜるな危険」のレッテルを貼られても可笑しくないメンバーであり、それが単なる偏見ではなく、現実であるのだから始末に終えない。

「これより、体育の授業をはじめま~す」

 オリオトライ・真喜子はそう言うと全員を見る、三年梅組の濃すぎる生徒達を物理的に纏め上げることができるでたらめなスペックを持った女教師。
 計り知れない戦闘力と昔かたぎな理論による自由過ぎる授業は、退屈とは程遠い破天荒な内容が多い。

「先生これから品川の先にあるヤクザの事務所まで、ちょっとヤクザ殴りに全速力で走っていくから、全員着いてくるように。そっから先は実技ね。遅れたら早朝の教室掃除よ。はい、返事は?」

『Judgement!』

 オリオトライの言葉に行儀良く応答する生徒達。
 そんな生徒達の中で青い空を見上げながら一見して痩身で血色の悪い少年が呟いた。

「……どんな世界になっても、人は変なことばかり考えるもんだと感想一つ」

 やれやれ、と肩を竦ませて首を左右に振る少年は大きなため息をオリオトライに向けた。

「どうやら授業開始前から死にたい子がいるみたいね~」

 教師を嘲るかのような少年の態度にオリオトライもまた教職者らしからぬ言葉を口にする。
 微笑みを湛えながら言うオリオトライの姿に少年は、「怖い怖い」とわざとらしく他の生徒の後ろに隠れた。
 少年とオリオトライのやり取りに緊迫した空気となった授業の中で一人の少年が手をあげた。

「教師オリオトライ」

「はい、シロジロ」

 オリオトライにシロジロと呼ばれた少年は、シロジロ・ベルトーニ。
 アリアダスト教導院の生徒会会計を担っている無表情な金髪の少年である。
 商業系の神と契約しているためか、万事を金銭に換算する守銭奴であり、極東の聖譜記述に則った交渉術である土下座の達人でもある。

「体育とちんぴら、どのような関係が? 金ですか?」

 無表情でありながらキラリと瞳を輝かせつつ言うシロジロに、隣で待機している少女が問いの答えを説明する。

「ほら、シロ君。先生最近地上げにあって、最下層行きになって暴れて壁割って教員課にマジ叱られたから」

 長い金髪の常に笑顔を絶やさない少女は、生徒会会計補佐のハイディ・オーゲザヴァラー。
 物腰は柔らかいが、シロジロと同じく守銭奴であり、シロジロより多弁な分腹黒さはある意味でシロジロ以上のものがある。

「後半は自業自得な気もするが……報復ですか、教師オリオトライ?」

 ハイディの説明で呆れたようにシロジロがオリオトライに問う。

「報復じゃないわよ。ただ単に、腹がたったんで仕返すだけだから」

 まるで悪びれた様子もなく笑顔で答えるオリオトライ。

「完全に公私混同ッスね。このダメ教「オーバーキルするわよ?」……ダメ教師という評価を一つ」

 生徒達の一番後ろに隠れていた血色の悪い少年が再び悪態を吐いている途中にオリオトライが割り込むが、恐れを知らぬ少年は結局悪態をやめなかった。

「よ~しっ! 今日は血の雨を降らしてみせるわ!」

 恐れを知らぬ少年に笑顔のまま米神に青筋を立てるオリオトライの宣言に原因たる少年以外の全員が戦慄した。
 再び訪れた静寂をしばし堪能した面々にオリオトライが何食わぬ顔で授業を進行する。

「休んでいるの誰かいる? ミリアム・ポークウと東は仕方ないとして」

 そう言われて互いの顔を見渡す生徒一同。

「ナイちゃんが見る限り、正純と総長が来てないかな?」

「あ~正純なら、小等部の講師のバイトで午後から酒井学長を送りに行くから今日は自由出席のはず」

 皆を代表して墜天と堕天の少女達がオリオトライに報告する。
 金の髪と六枚翼をした墜天の少女は、総長連合第三特務のマルゴット・ナイト。
 黒い髪と六枚翼をした堕天の少女は、総長連合第四特務のマルガ・ナルゼ。
 二人とも術式に頼らない飛行能力と稀少な魔術を使用する稀有な存在である。

「じゃあ、トーリについて知っている人はいない?」

 本多・正純の不在は報告されたが、残る総長 葵・トーリの所在が不明であった。
 オリオトライの問いに応えたのは、豊満なバストを強調するポーズをとっている少女だった。

「フフフ、皆、うちの愚弟の事がそんなに知りたい? 聞きたいわよね? だって武蔵の総長兼生徒会の動向だものね?」

 少女の名は、葵・喜美。
 アリアダスト教導院の総長兼生徒会長である葵・トーリの実の姉である。
 この中で唯一トーリの所在を掴んでいそうな喜美の言葉に皆が耳を傾けるのだが。

「でも、教えないわ!」

 喜美の予想外な言葉に生徒一同驚愕する。

「だって今朝8時過ぎに、このベルフローレ・葵が起きたらもう居なかったから。しかし、あの愚弟。私の朝食作らずに早起きとは、地獄に堕ちると良いわ!」

 実に弟を愚弟と呼び、自身を賢姉と自称する喜美の言動はいつもエキセントリックかつサディスティックだった。

「……アオイキミの「私をその名で呼ぶなんて! 耳掻きの遣り過ぎで自分で脳みそ引きずり出して死ぬがいいわ!」……アオイキミの芸名がまた替わっている件について、問いを一つ」

 暗黙の了解で葵・喜美をフルネームで呼ぶことはタブーとされているが、血色の悪い少年には関係なかった。
 むしろ意図して人を苛立たせるような発言を好んでいるような節さえある。
 掴みかかろうとしてくる喜美を少年はふらふらと交わしながら生徒達の間を移動している。

「でも、キドジんが言うとおり、三日前はジョゼフィーヌじゃなかったかな?」

「あれは、三軒隣の中村さんが飼い犬に同じ名前をつけたからナシよ! 良いいっ?」

 血色の悪い少年をキドジんと呼びながらマルゴットが少年を追い回す喜美に尋ねると捲くし立てるような剣幕で喜美が新しい芸名を皆に強制させた。
 そんな生徒達のやりとりを普通にながしながらオリオトライは、出席簿の出欠の有無を入力していく。

「んじゃあ、トーリは無断遅刻かな? ま、聖連の暫定支配下にある武蔵の総長はそれくらいじゃなきゃね」

 受け持ち生徒の無断遅刻を大したことがないように言うオリオトライ。
 歴史再現の名のもとに各国の代表が教導院の学生に姿をかえて極東を分割支配している現在、極東の代表には聖連の支配に都合のいい人物。
 葵・トーリのようにもっとも能力の無い者が選ばれるのが通例となっていた。
 現在の葵・トーリは『不可能男インポッシブル』というアーバンネームまで冠せられている。
 オリオトライの言葉と説明にメガネの少年が補足するように説明を始める。

「もう160年前からそうだもんね。本来この神州の大地はすべて僕たち極東のものなのに、ずっと頭下げたり、協力したり、金払ったりで、この武蔵が極東の中心になろうにも移動ばっかりの権力骨抜きでどうしようもない。なにしろ各国の学生は上限年齢が無制限なのにこっちは18歳で卒業。それを超えたら政治も軍事もできないんだから……」

 オリオトライの説明に補足と嫌味を交えつつ続けたメガネの少年は、生徒会書記兼軍師であるトゥーサン・ネシンバラ。
 若干、オタク気質の厨ニ病の気がある作家志望の少年だ。

「小生、あまりそういうことを言っていると危険ではないかと」

「大丈夫だよ。あいつら僕たちの声をいちいち拾っている暇はないさ。なにしろ、もうすぐ三河圏内だからね」

 分かりきったことを誰に向けて捕捉したのか不明なネシンバラの言葉に小太りな少年がお菓子をほおばりながら注意するが、ネシンバラは気にする様子もなく事実を口にした。

「へ~、大人ぶって」

 ネシンバラの言葉に対して挑発するような笑みを浮かべたオリオトライは、再度生徒達の目を見渡した。

「でもまあ~そんな感じで面倒で押さえ込まれたこの国だけど……」

 一拍の間をおいてオリオトライはいつでも動けるように腰を落として構えながら生徒達に問う。

「君らこれからどうしたいか、わかってる?」

 オリオトライの問いに生徒達の目付きが変わった。
 約一名を覗いては。

「いいねえ、戦闘系技能を持っているなら今のでこないとね~。例外も一人居るみたいだけど、まあ毎度のことだから実技で矯正してあげるわ」

 生徒達の態度に満足したオリオトライは、姿勢だけは正して他の生徒と同じように自分を見ている血色の悪い少年に脅しをかける。

「ルールは簡単! 事務所にたどり着くまでに先生に攻撃を当てることができたら出席点を5点プラス。意味わかる? 5回さぼれるの」

「マジで!? と確認を一つ!」

 オリオトライの言葉にそれまで完全にやる気を見せていなかった血色の悪い少年が非常に珍しいことに挙手して声を上げた。

「マジも、マジ。そうね、【どんな相手も傷付けられない】キドジは、特別に攻撃じゃなくても私に触れたらOKにしてあげるわ」

「っし! やる気が漲ってきた、と鼓舞を一つ!」

 やる気がないのがデフォルトな少年イバラ・キドジがヤル気を出すということほどよくない現象はない。
 さきほどオリオトライが処刑宣告しているということをキドジは忘れているのではないだろうかと生徒達は思った。

「先生!攻撃を通すではなく当てるで良いでござるな?」

 キドジに引き続いて挙手にて質問したのは、常に覆面&黒尽くめで表情を現す帽子と紅いマフラーで口元を隠し、素顔を晒さない少年である。
 彼の名は、総長連合第一特務の点蔵・クロスユナイト。
 幼少から忍者としての修行を積んでおり、浮ついた印象があるものの戦闘能力はそれなりに高い。

「戦闘系は細かいわね~、それでいいわよ。手段もかまわないわ」

 点蔵の問いに呆れつつも即答する。

「では、先生のパーツでどこか触ったり、揉んだりしたら減点されるとこありますか?」

「または逆にボーナスポイントでるようなとことか?」

 至極まっとうな青少年的な発言をしつつ宙を揉む点蔵に続いて航空系・半竜である総長連合第二特務のキヨナリ・ウルキアガが下心丸出して問う。
 そんな健康的な少年達の問いを豪快に笑い、大人の余裕でオリオトライは微笑んだ。

「授業始まる前に死にたい?」

 微笑みの中にも明確な威圧を込めるオリオトライの視線に怯える青少年たちだった。
 点蔵たちが黙ったのを確認すると改めて生徒全員を見渡したオリオトライは、バックステップで橋から飛び退いた。

「んじゃ授業開始よ」

 ほんの二、三回のステップとばく転で100m近くも移動したオリオトライは、挑発するように生徒達に言葉を送る。

「遅いわよ!」

 オリオトライの言葉に点蔵を先頭にして、近接戦闘系の脚力自慢たちが駆け出し、その後を他の面々が追う。
 そんな中、一番最初にやる気を見せた血色の悪い少年のイバラ・キドジは直立不動のままオリオトライやクラスメイトたちが駆け下りていった階段を眺める。

「俺が此処に流れ着いて、もう3年も経っているが、あそこで“殺された痛み”は忘れられない、と憎悪を一つ。――糧とする」

 表情にやる気は見られないが、キドジが語尾の言葉を結ぶと同時にその足元からぷくぷくまんまるな体形の猫科の生物が現れた。

「注意、一秒! 怪我、即死! 安全快適最高最速の旅を同胞にプレゼンツゥな【瞬神“鈍豹”】様の顕現でい!」

 ハイテンションな自称“神様”で“豹”な不細工太猫がキドジの足元に侍る。

「運転は任せる。限定起動――オリオトライ・真喜子への接近、と命令を一つ」

 そんな“鈍豹”の広すぎる額を軽く撫でてキドジは、“鈍豹”に跨る。

「試して合点、承知の助三郎でい! 目標、リアルアマゾネスを舐めたおすでい! ベベベベッ!」

 奇妙な掛け声&鳴き声?と共に動き出した“鈍豹”。
 その背に跨るキドジは、わりと本気なやる気を起こしていると誰が気付いているだろうか。

「5回のさぼり権。俺が貰う、と本気を一つ」

 そんなキドジの呟きを残して一人と一匹の姿が橋の上から消失した。





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