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No.30844の一覧
[0] 【習作】アンリエッタの途方も無い憂鬱【憑依・TS】[だぼわん](2011/12/14 19:33)
[1] 二話:「穴掘り」のルイズ。[だぼわん](2011/12/13 19:43)
[2] 三話:ペガサス級戦艦[だぼわん](2011/12/14 22:18)
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[30844] 三話:ペガサス級戦艦
Name: だぼわん◆609b579b ID:db34f440 前を表示する
Date: 2011/12/14 22:18
     【アンリエッタの途方も無い憂鬱】

      三話:ペガサス級戦艦

      作者:だぼわん











「♪~~♪~~若さ?若さってなんだ?振り向かない事~さ♪ロリってなんだ?正義ってこ~と~さ~♪」


・・・・・マザリーニに、尻と背中をお仕置き用の乗馬鞭で100叩きにされた翌日がこれだった。

手加減しているとは言え本気で泣きじゃくるまで叩かれ、
脹れあがった背中とお尻がまだ痛むだろうに既にケロッとして素っ頓狂な歌を歌っている。

────ああ、だれもこの姫さんには叶わないな。と誰もが再確認した瞬間である。


あれから。
ルイズとアンリエッタの発掘した鉱山は結局、王領と言う形になり王家が直々に管理する事と相成った。

流石にヴァリエール公も領地惜しさにこんな危険物を抱え込みたくない。純利益の1割であっさり鉱山を手放した。

自分の領地内に王家の飛び地が出来るのは面白くないが、その分王家との繋がり等も出来た事でよしとするしかない。

それに一割でも、予想される収益は殆ど公爵領で徴収される税金と同額である。

否やがあろう筈も無かった。・・・・これ以上だだを捏ねると今度は首が飛びかねないし。

よってマザリーニの手腕も合って、紛糾すると思われた話し合いは、その実1日であっさり片が付いた。

鉱山の名は、そのまま「アンリエッタ鉱山」と命名されて現在国を挙げて開発中である。

あと鉱山予定地があまりにもヴァリエールの屋敷に近かったので、公爵は屋敷ごと引っ越すつもりらしい。

さすがファンタジー、メイジを集めれば出来ない事なんぞ殆ど無い。


「もう!マザリーニったら酷いんだから!いいことしたアンをこんなになるまで打たなくてもいいじゃない!」

「でも、危ないことしたのは本当よ。お仕置きは覚悟してましたし。」

「アンも律儀に傷をそのままにしないで、さっさと治しちゃえばいいのに。得意なんでしょ?」

「それじゃ、お仕置きにならないわ。只の軟膏でしばらくは我慢します。」

「アンは立派ね。あんな鳥の骨の言いつけなんて守らなくていいのに。」


アンリエッタの真っ赤に脹れたお尻と背中に、軟膏を塗りながらルイズは答える。

部分的に無事な真っ白な部分と充血して真っ赤になっているところ、
それに青紫に内出血している所がまだらになっていてとても痛々しい。

背中からお尻と言ってもそれは広範囲に渡り、背は肩甲骨のあたりから、尻は膝上のふとももの裏まで叩かれている。

実は見た目ほど酷い傷では無いのだが、確かに見た目は酷い。

自分も母にこっ酷くお仕置きされたものだが、こんなに酷くは無いとルイズは憤った。

精々お尻を手のひらで何度もぶたれて、納屋に丸二日放り込まれたくらいだ。

(女の子の肌をこんなになるまで打つなんて、なんて酷いヤツなんでしょう。許せないわ。)

メラメラと燃え上がる義憤。

ルイズの中では、「マザリーニはアンを苛める悪いヤツ」という公式が出来上がりつつあった。

それもこれもルイズは母上の鬼教官振りを知らぬが故であるが・・・・知らぬが仏と言うものである。


・・・・ルイズはカリーヌを人一倍自分に厳しい母親だと思っている。

しかしアンリエッタの視点から見れば身内びいきも良い所で、愛娘にダダ甘なのは一目瞭然であった。

王命もあり、教官である権限で(後ろ側はもう打つ所が無いから)今度は胸と腹・太ももを打つと宣告されている身としてはつくづくルイズが羨ましい。

まぁ自分の愛娘を途方も無く危険な事に巻き込んだ怒りも大きいのだろうが。

あと、そんなに打たれる原因はあまりにも懲りない自分にあるのだが、それには気付いているのだろうかコイツは?

実際、最初は皆優しかったと言うのに・・・・。


「それにその倍誉めてもらったし、いいのです。」

「はぁ、凄いわねアンは。」


マザリーニがこれほど怒った事からも解る様に、今回の件は後から調査するとかなり危険な状態であった事がわかった。

アンリエッタの膨大な精神力で、「固定化」をかけられ崩壊を免れていた縦穴。
しかし深部の方に行くにつれて、自重で固定化の限界許容量を越えていた事が解ったのである。

上部は完全に固定されているので、上下の圧力が釣り合って安定していた。
しかしルイズの爆発の威力を考えるといつ崩落していてもおかしくは無かった。

腕の立つ鉱山技師の土メイジは、そのように説明した。
無論、完全な縦穴をここまで掘った事例が既に前代未聞なので正確なところはわからないが、恐らく正しいだろう。


マザリーニとカリーヌは途方も無い深さの坑道を見てようやく現実感が湧いたのか、熱心に技師の言葉に耳を傾けていた。

そして二人の血の気の引いた真っ青な顔は、二人を心底愛しているが故であっただろう。

仮に崩落しても何とかなる目は大きかったのだが、流石にこうも心配をかけたと思うとアンリエッタもばつが悪い。

なにがなんでも懲りないアンリエッタではあるが、今後はもうちょっとだけ大人しくしようと思った。


「「穴掘り」ルイズの二つ名も随分有名になったわね。伯爵位も授けられて、名実ともに三姉妹で一番の出世頭よ。」

「そうね。エレ姉さまも、悔しそうだったけどいっぱい誉めてくれたわ。それに、お小遣いもいっぱいよ。」

「いっぱいなんてものじゃないわよ?」

「どうせ大きくなるまで使わせてくれないんだから、いいの。それに正直な所「穴掘り」なんて二つ名、優雅じゃなくて嫌なのよね。」


そう言いながらも、まんざらでもないようだ。

それはまぁ魔法の使えない落ちこぼれから一転、稀代の爆破魔法の使い手と持て囃されればそれは悪い気はしないだろう。

やはり、多少の危険はあっただろうがルイズを巻き込んだ事はいい方向へ転がったようだ。

自信のついたルイズはこれまで以上に、魅力的な笑顔を見せるようになった。

そして精神的に安定したおかげか、徐々に爆発の威力も精度も上がりつつある。

相変わらずコモンスペル一つまともに発動はしないが、時が来れば始祖の祈祷書と水のルビーで正しく目覚めるだろう。


・・・・個人的にはこの小さな友人が戦火の中心に立つようなことが無い様な展開が望ましいのだが。

コンプレックスもある程度解消されたことだし、できるなら祈祷書は白紙のままにしておきたい。

だがそれで国民を多く死なせるような事があっては本末転倒なので、難しいものがある。

アンリエッタは途中で切ってしまったため、聖地には何があるのかまだ読んでいないのでそれが虚無に関わる何かしらだった場合、
立場上ルイズを使わざるを得ないのだ。


同様に、誰かに王位継承権を譲るという選択肢も現状では無理だ。

宮廷内はだらけきっているし、最近多少はマシになってきたとは言え王の求心力は相変わらず弱い。

未だ姫は姫でしかなく、いくら破天荒とはいえ、宮廷貴族たちにとって自分は外交のカードの一枚に過ぎないのだった。

そして自分が成長して力をつけていっても常にその事実は付きまとうし、国家を掌握した後でも、中々実現は出来ない問題である。

王位継承権を放棄したところで自分に外交的な価値があるのは変わらない。
出家した所で、いつ神輿に担ぎ出されるかわかった物ではない。

そうなると下手をすれば国が割れる結果となりかねないので、何とかしてトリステインを中央集権制にしてから譲らねばならないのである。

国が割れれば、多くの民が死ぬ。たかが自分一人の問題で多くの人間を死に追いやるほどの胆力はアンリエッタには無かった。

加えて、既に彼女にも王女としての誇りというものがある。

もしそれが出来ないのであれば、アンリエッタは秘薬で心を壊して嫁入りするという選択肢も辞さない覚悟であった。


(あちらを立てればこちらが立たず、か・・・・ウチの社長も公と私の問題でいつも苦しい選択を迫られるって言ってたな。)

所詮課長に過ぎなかった前世の彼ではわからなかったが、
自分の決断一つで部下が路頭に迷うかもしれないと言うのは相当なプレッシャーだったことだろう。
それが人死にに関わるようなら、尚更。

(中央集権制を実現するためには、裏切り者か・・・・強大な敵が必要になる。)

皮肉な事に、レコンキスタや原作で起きた多くの動乱はトリステインを一つに纏め上げるために必要なファクターであった。

だがだからと言ってアルビオンの王家・・・・はどうでもいいが罪無き人々を見捨てる事は出来ない。

水の精霊に盗難の警戒を呼びかけたのはそのためだ。無論、どういった手段で盗んだのかわからない以上は安心は出来ないのだが。

(だけど、心のどこかで、原作通り事が起きる事を願っている自分がいる・・・・浅ましいな。)

良識と大義、そして私情の間で揺れる心は酷く不安定である。

国や友人がどうなってもいいと言うのなら、父王が死んだらルイズの虚無を目覚めさせ公表し全てを押し付けて逃げればいい。

だがそれが出来ないからこそ、何もかもをこの手に掴める嘘の様な最善の一手をアンリエッタは探し続けているのだった。


アンリエッタの常に落ち着き無く、動乱を巻き起こすための原動力はここに端を発しているのかもしれない。



*


「あ~やっと終わった。」


・・・・カリーヌのお仕置きと説教が。

これで晴れて、両面赤だるま人間の出来上がりである。

それにしても、すっぽんぽんにされてビシビシと鞭打たれる自分は本当に王女だったかと疑問に思わざるを得ない。

手加減はされてるとは言え、絵的にアレである。

胴体部分は殆ど無事な所は無く、背中尻胸腹太ももと容赦なく痛めつけられた。無事な所といえば、顔と腕と膝から下くらいのものか。

ズキズキと痛む全身が熱を持って、意識が朦朧としている。

出血している所や、致命的に痛むような所が無いのは流石に仕置き慣れしていると言うかなんというか・・・。

良い具合にギリギリの所で止められていたのだった。


が、この懲りないアンリエッタが口調を取り繕う事もしないと言うのは、実際相当な消耗であったのは確かだ。

(でも、やっぱりお仕置きされるならマザリーニよりカリーヌの方がいいなぁ。美人だし。だんだん痛いのが気持ちよくなってきちゃったぞ。)

・・・こんな事を考える辺り、まだまだ余裕があるのも確かだが。


「でも、叩きながら、泣いちゃうんだもんな・・・・・卑怯だよカリーヌ。」

そんな事されたら、逃げるわけにもいかないじゃないか。と。

今更ながら、自分が愛されている事を実感する。

両親は手放しで誉めてやる事もできず、お仕置きももう過分なほど家臣がやってしまっているので複雑な顔をしていたが、
とても心配をかけたようで、帰るなり痛いほど抱きしめられた。

自分に付けられたメイド達は、冷静を装いながらも皆調子がおかしかった。

おべっかばかり言いに来る貴族達だが、中には本気で顔を顰めている者も居た。

マザリーニだけは本当に何時もどおりだったが、一度空のカップに気付かずに紅茶を啜ろうとしていた。

皆、自分の大切な家族だった。

そしていずれその大黒柱とならねばならないのが自分なのである。


「でも、止める訳にはいかないんだよな・・・・・。」

危険な橋を渡るのは本当に必要な時だけだが、どうしてもやらなければいけない事と言うのもある。

強力な航空戦艦の準備のために、造船業の強化と船乗りの増員。

そしてそれらを運用するための資源の確保は急務であった。

世界が浮き上がってしまうのを防ぐには、アンリエッタが考える限りあの大量の風石を消し去るくらいしか方法が無いので、
原作が終わった頃にはもう掘り出すことも出来ないのかもしれない。

それはつまり、原作終了時点で自分の大量生産した船乗り達は風石の価格高騰によって路頭に迷う事も意味していたが、
今確実に必要な事である。

空の彼方から来襲するアルビオンの艦隊に対抗するためには、そう。確実に必要な事だったのだ。

国のため、そして自分の為に。

そのためになら、多少身を削ってでもやらなければならない事はある。

アンリエッタはそう覚悟を決めていた。

凛々しい顔で、ベッドの天幕を仰ぐ。


(あー、カリーヌにちょっと濡れてたの気付かれなかったな?恥ずかしいなぁ・・・・・うは、ちょっとゾクゾクする・・・・。)

アンリエッタはお仕置きが病みつきになりつつあった。

────台無しである。



*


───8歳の頃である。


「ほほう。これが今仕上げている二重双胴艦ですか。アイデア自体は出しましたが、実物は初めてみました・・・・・凄いものですね。」

「はい。姫様がいつもムチャクチャをやらないのであれば、安心して工廠につれてこれたのですがね。
結局、ほぼ現場の安全が確保できてからという事になりました。」

「嫌味を申すな。流石に私もこんな所で暴れたりしません。」

「そうですな。流石に友人を巻き込んで地の底まで行った姫様は言う事が違います。」

「済んだことをグチグチと・・・・・。」

「それが私の仕事であれば。王様からもくれぐれも言われておりますぞ。」

「むぅ。」


俺達は一年前から着工が始まった、航空空母構想のための試験艦。

ペガサス級、通称ホワイトベースの工廠内に視察に来ていた。

マザリーニ主導で行われているこれ等が、まさかこの私がゴリ押ししたものだとは誰も気付くまい。


「しかし、本当に大きいですな。」

「只でさえ大きいロイヤル・ソブリン級を4基連結させているわけですからね。いや、接合部の艦を合わせれば五基ですか。
これほど大きければ、快速小型艇を優に40機は搭載できるでしょう。」

「しかしそうなると、本当に竜騎士が要らんですな。コイツが空に浮いてるだけで補給の心配がなくなるから、
空軍史上最小の戦闘艇が実現するわけですか。・・・2人乗りの小型艇のほうが安上がりで強いのは証明されましたからなぁ。」

「いいえ、まだまだ銃や砲の精度が低い以上、攻撃はメイジ頼りです。操縦者と後部に座るメイジの連携訓練も厳しい以上、
まだまだ竜騎士の需要も無くなりません。」

「竜を食わすより管理は遥かに楽ですがな。」


連結用に再設計した全長200m超のロイヤルゾブリン級を前後に連結させ、全長400m超。

高さ90m超の艦4基の上に載るように、専用に設計した連結部艦が載り、高さ130m超。

巨大なカヌーのように細長くなった艦を二基連結させて、中央のスキマ合わせて幅180m超

ヨットのような艦載機を40機以上搭載。


既存の造船施設で作れる最大の船である。

そして、ドッキング部分の精度向上には部品の規格化が必須のため、そのためのノウハウ作りという側面もある。

現在は巨大になりすぎて何処のドックにも入れないため、常に浮かせた状態で工事は進んでいる。

国内の大手3つの造船ギルドとアルビオンの引退した平民技師官を大量に呼びつけての大工事あった。

対外的には極秘で通しているものの、進水式前には既に各国に知れていることだろう。


だが、費用そのものはそれ程多くは掛かっていない。

むしろ、この艦を作る過程で流れた金は流通を活性化し、税収を引き上げているほどだ。


「姫様の考案された『ウォーター・カッター』の魔法ですか。あれが大きかったですなぁ。」

「水のトライアングル以上しか使えず、それも日に何度も使えるものではありませんが・・・・。」

「それでもあのブラックウッドをこうもスパスパ斬れるとは、恐ろしい。
ブレイドの魔法ですら両断するには骨が折れると言うのに、まこと姫様は天才ですな。
あとは、もう少し落ち着きというものを身に付けてくださればなぁ・・・・。」


『ウォーター・カッター』。

皆さんお分かりだろうが、ようは水流で物体を切断するアレだ。

ただし、フィクション等ではよく穴からプシュっと出ては遠くにある的を両断するが、実際はそこまで便利なものではない。

そもそも水滴よりも細い水なので、空気圧で拡散して霧になってしまうのだ。

よって射程にも、斬れる厚さにも限りがある。

さらにはそれを魔法で再現しようとすると、非常にシビアな現実の壁に直面する。

厳密に極細の水を発射し続けるなど並みのメイジに出来る事ではなく、素でそんな事ができるメイジは王宮守護隊にも殆どいない。

実際考案者のアンリエッタも、器具無しでは日に3発も撃てないのだ。

なので、実用上もコスト上も太い丸太を切ったりするには甚だ不適なのであるが、
しかしこの魔法の世界にはそれを使った方が安上がりになる恐るべき「木」が存在していた。


それが、「ブラックウッド」。

凡そ鉄と同じ硬度を持ち、木と同じ軽さ。しかも木だからしなるという夢のようで悪夢のような木なのである。

その強靭さから、繁殖力は若干弱いようだがある程度の大きさになるともう人の手でも天災でも容易くは折れず、
途方も無い巨木になっていることが多い。

山師等はこれの幼木を見つけると、必ず引っこ抜いて枯らすと言う。・・・・ようは邪魔なのである。

しかも呆れるほど耐火性が高く、山ごと焼いても何本かはしぶとく生き残っている有様。

その上天敵がいないので他の植生を圧迫する非常に厄介な植物であった。

この植物が世界を制することの出来ない理由は単に、病原菌に耐性が低く罹ると枯れやすいという理由からだ。


古来城門や戦艦などに使われた事もあるが、加工性が悪くコストが掛かりすぎるために大々的に用いられる事は無い。

その上、この木は頑丈だが死ぬと腐りやすいという重大な欠点があって、耐用年数は軽く20年を切るのである。

コストパフォーマンス上、割に合わないにも程が合った。

それならば、多少無茶でも鉄で作った方がマシというもの。固定化も掛かり難いので、まさにウドの大木である。


ただし現在は固定化で強化しまくった、口の長い漏斗のような器具を用いて水流を加速させる事で、
ラインクラスのメイジでも最大50cm厚の板を切れるようになっている。

この場合対象の硬さはあまり問題ではなく、如何に水の粘性を上げ射程を伸ばすかと言う問題になるので、皆必死に訓練しているものだ。

・・・・外見は固定化の掛かりやすい金属で出来た、便所のキュポキュポするアレにしか見えないので、
内心アンリエッタは笑いを堪え切れそうにないのだが。

(本当に、大真面目にアレの中に杖突っ込んで呪文となえてるんだからな。くくく・・・・。)

そんな酷すぎる姫様はさておき。

このブラックウッドと言う材料が実用化される事で、ペガサス級戦艦は通常の木材を用いるよりも大幅なコストダウンを実現できた。

素材自体の強度も呆れるほど上がったので、設計上の余裕も出来、多少の無茶も効くのである。

造船技術の遅れているトリステインでは実に有難い事だった。


造船所は沸きに沸いた。

なにせ自らが6000年の歴史の中で、最も大きな艦であるロイヤルゾブリン級を遥かに越える艦を作れるのである。

それも空の覇者、アルビオンを出し抜いて。

これに奮えぬ空の男はいなかった。

また、もともと大艦巨砲主義に傾倒しやすい民族性でもあるので、アンリエッタの狙いはほぼ正鵠を得ていたといえるだろう。

各ドックで一基づつ作って連結させるという構想も連帯感を増すのに非常に良く、
意図したことではないが挙国一致体制の下地がこの時出来上がっていたと言える。

無論、この戦艦製造の立役者たる魔法の存在はトリステインの秘中の秘とされ、厳重に情報管理されている。


「それにしても、何というか、積み木を重ねたような外見ですわね。」

「下手に凝った設計だと、我がトリステインの技術力では造りきれませんからな。極限までシンプルにする方針ですぞ。」

「合理的ですけどねぇ・・・・。」

「五基の戦艦を組み合わせると言う時点で、既に歴史上類を見ない奇抜な設計なのです。これ以上面白味を求めても仕方が無いと思いますが。」

(・・・・本当に、足の丸いホワイトベースだよな、これって。)

「色は希望を聞いてくれたんですのね。」

「はい。一応旗艦には華も必要ですからな。少々派手かと思われますが、言われたとおり白をベースに赤・青で纏めました。」

「よろしい。・・・・って言うか、何故宰相のじーじが戦艦の設計を取り仕切っているんですの?」

「身の程を弁えずに無駄なものを付けたがる馬鹿が多いからでございますよ姫様。」


疲れたように溜息を吐くマザリーニに、俺は「ああ成るほど」と納得した。

良くも悪くも伝統と格式あるトリステインである。ゴテゴテと無駄なものを付けたがるのは貴族の常か。

固定化をかけた貸し出し用農具にまで妙な装飾をつけようとしたのには呆れたものである。

仮にも王家のものなのだから、貧乏たらしいのでは示しがつかんというのだ。

結局その騒ぎは、焼印を豪華にすると言う事で片が付いたが、アホ丸出しの議論であった。


それを思い返すと、自分の国の技術レベルも弁えずに、変に凝った艦を作ろうとする貴族共が目に浮かぶようである。


「それはそれは。・・・・大変でしたねじーじ。」

「そう思うなら姫様も少しは私の仕事を減らしてくれると有難いのですが。」

「うむ。・・・・なら、私のマッサージを週に一度から3日に一度にすることで手を打ちましょう。
この国最高位の水メイジのマッサージなど早々受けられるものでは無いですよ。」

「それは畏れ多くも有難いのですが、せめて善処するとでも言ってくださらんか・・・・。」

「このアンリエッタ、嘘はあまり付きとうありませぬ故な。」


がっくりと肩を落すマザリーニ。

一体なにをすればこのお転婆姫は懲りてくれるいうのか。

彼の苦労はこれで終わりそうは無かった。












・・・・続いちゃう?







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