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No.30610の一覧
[0] 【習作】ZガンダムにニュータイプLv9の元一般人を放りこんでみる[ア、アッシマーがぁぁ!!](2011/11/21 17:15)
[1] 2話[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/02/24 23:53)
[2] 3話[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/02/25 00:39)
[3] 4話[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/03/22 02:04)
[4] 5話[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/05/10 05:57)
[5] 6話[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/05/26 06:30)
[6] 7話[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/06/07 06:44)
[7] ※お知らせ※  10/23 別板移行[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/10/23 11:02)
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[30610] 7話
Name: ア、アッシマーがぁぁ!!◆a9b17cc5 ID:f5fa12d2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/06/07 06:44
「ヘンケン、私を出して!!」
『お前、なんでそんな所にいる!?』

とんでもない事になった。カミーユの両親がティターンズの人質になったのだ。
いや、「なーんか忘れてる気がするんだよな~」とは思ってたんだよ!?断じてわざと放ったらかしにしてたわけじゃあない。
しかし、これはヤバイ。相当ヤバイ。
艦内は大騒ぎだし、カミーユはMK-Ⅱに乗ってすっ飛んでいってしまうし。
というか、カミーユはどんだけテンパってるのか。人質に向かって全力突撃とか、交渉とか以前の問題だ。
カミーユがこのまま人質もろとも宇宙の塵に……なんて事になったら地球圏がヤバイ。ひいては俺が超ヤバイ。
……この後どうなるのか。そしてカミーユがどうするのか。大雑把とはいえ、俺はそれを知っているには知っている。
だからこれから何が起ころうと、大局に大事は無いだろうとタカを括る事も出来るのだが――――

――――逃げなさい、カミーユ!!早く、早く逃げなさい!!

出来るかボゲェェェェ!!!さっきから何か聞こえてくるんですけどォ!?
何なのこれ!?何なのこれ!?ニュータイプってこういうことなのか!?
さっきからずっと俺が聞こえている、カミーユの母親らしき女性の身を切るような必死の声。
大局がどうとか、そういう問題じゃない。こんな悲惨な思念を感じていながらじっとしているなんて、まともな人間の感性じゃ無理だ。

「このままカミーユを行かせちゃ駄目!放っておいたら、取り返しの付かないことになる!」

ヘンケン艦長が返事をするのも待たずにガンダムMK-Ⅱを発進態勢に入らせる。
このMSに乗るのは正直勘弁して欲しかったが、今は使える機体があるだけ御の字だ。
流石にティターンズの機体だけあって、操縦系はジム・クゥエルと殆ど変わらない。
本来どうなるんだったにせよ、カミーユを連れてきてしまったのは俺なのだ。
いい加減、覚悟を決めてカタパルトから飛び出そう。そう考えた時だった。



うわああああああああああああああああっっっ!!!!!!!



その声を聞いた瞬間に俺を襲う、命に関わりかねないんじゃないかという程の強烈な頭痛。
この一大事だというのに、俺の意識は一瞬で真っ白になって、消えた。







『どうした、ナナ!出るんなら早くしろ!』
「――――ごめんなさい、アストナージ。MK-Ⅱ2号機、出ます」

本当に久方ぶりの肉体の感覚に、少しぼんやりとしながらもアストナージへ生返事を返す。
"彼"の意識は眠りについてしまった、だがそれも仕方のない事なのだろう。この世界の誰よりも"彼"は、戦争とは無縁だった。
その彼が、カミーユの深い悲しみ、絶望。一瞬で心が壊れてしまってもおかしくはないそれを、鋭敏化した感覚でそのままに受け止めてしまったのだ。

「……カミーユ・ビダン」

彼の記憶の中にあった少年。ニュータイプと呼ばれる、私の同胞。
カミーユの事に関しては、彼がもう少し上手くやってくれていれば、という恨み言がないと言えば嘘になる。
でも、それを責める権利は私には無い。そもそも彼が私の中に現れなければ、私はあの冷たいシリンダーの中に入れられたまま処分されていただろう。
ほんの僅かな時間だとはいえ、こうして外の世界に干渉出来るのも全ては彼のおかげなのだ。
……その代償に、彼には日頃から少々不便な思いをさせているのは申し訳ないと感じてもいるが。

私に出来ることは、本当に些細なことしか無い。けれど、それでも何かしなければならない。
カミーユ、シャア、アムロ。世界を正しく導くことの出来る優しき同胞たち。
彼らを守らなければならない。本来、朽ちて消える事しかできなかった私が生き永らえる意味は、きっとそこに在るのだから。








「貴様だ、貴様が母さんをやったんだ!貴様がぁっ!!」
「なんだコイツは、母さんだと……!」

ジェリドのハイザックに、カミーユは怒りのままにMK-Ⅱを組み付かせた。
母を殺した敵兵を絶対に逃さないと、背面から押さえ込んだハイザックを武器さえ構えずに、MK-Ⅱの腕で殴りつける。
当然、そんな程度の事でモビルスーツがどうにかなる訳がない。
だが、それが意味の無い行動だったとしても、カミーユの激情はそれを止める事を許さなかった。

「ぐぅっ……こいつ、いい加減にしろ!」

殴られる度に揺れるコックピットの中で呻くジェリドは、機体のバーニアを全開にした。
背後に組み付くMK-Ⅱは尚も追いすがるが、至近距離でのバーニアの噴出を受け、後方に流される。
ジェリドが拘束を抜けた事に安堵したが、すぐにそれがつかの間の喜びだったことに気がついた。
ハイザックに振り払われたMK-Ⅱは、背部のバックパックからビームサーベルを抜き放ち、ハイザックへと肉薄した。

「許すものかっ!お前だけは、母さんを殺した、お前だけはっ!!」
「何なんだ、コイツは……!?何故こうも感情のままに機体を動かせる、死ぬのが怖くないのか!?」

迫るMK-Ⅱにハイザックはライフルの照準を合わせるが、発砲には至らない。
焦りがジェリドを支配する。地球では感じた事のない、何か得体の知れない力がジェリドの邪魔をしている。
ジェリドは、この宇宙空間に自分が一人取り残されているという事実に、今初めて気がついたのだ。

「何だあれは。ティターンズ同士の内輪揉めか?」
『いえ、どうやら例の交渉が決裂したようです。ガンダムにエゥーゴの兵士が乗っているのは間違いないとの事です』

戦いとも呼べぬ粗雑な戦闘行為に、ライラは訝しむ気持ちを抑えられなかった。
部下の報告に誤りはないだろうが、あのガンダムMK-Ⅱに乗っているのがまっとうなパイロットだとは、とても思えなかったからだ。
しかし、これは先の戦闘での失態を取り戻すチャンスでもあった。

「……よし。ハイザックを援護し、ガンダムを叩く。遅れるな!」
『了解!』

部下たちと共に二機の戦闘に介入しようとしたライラは、反射的にガルバルディに回避行動を取らせる。
直後、ライラの機体が進む筈だった進路上にビームライフルの火線が走る。
見ればエゥーゴの艦船、アーガマから一機のMSが飛来してきていた。
ガンダムMK-Ⅱの2号機。エゥーゴに奪取されたもう一つの機体だ。

「アレキサンドリアのパイロットじゃないのか!?ええぃ、紛らわしいったらない!」

ライラの悪態は、次の瞬間に掻き消される事になる。
敵機を捕捉するための一瞬の思考の間に、ガルバルディの右腕に持つライフルを閃光が貫いた。
ライフルの残存エネルギーの爆発に巻き込まれるのを瞬時に躱したライラ。
その背中に冷たい物が走った。2号機に乗るパイロットが普通ではない事に気がついたのだ。

「この感じ、さっきの赤い機体のパイロットじゃない……!エゥーゴめ、次から次へと」
「どいてッ!」

MK-Ⅱは速度を緩めることなく、ライラの隊を摺り抜けるように通り過ぎた。
無視された事以上に、一瞬でも相手を畏怖した自分自身にライラは苛立ちを憶えた。
しかし、ライラのガルバルディがMK-Ⅱ2号機を追うことは叶わなかった。
アーガマからの後続部隊、ジオニック系統の意匠を残すMS、リックディアスが接近してきていたのだ。
そしてアーガマから来たもう一機、エマ・シーンのガンダムMK-Ⅱ1号機がガルバルディの前で停止した。

「ティターンズです。即刻戦闘を中止し、撤退してください。この場の指揮は私が預ります」
「冗談ではない!これ以上そちらの都合に振り回されてたまるか、既に戦端は開かれているんだぞ!」
「敵に考える時間を与える必要があると言っている!そちらにも言い分があるでしょうが、我々ティターンズがバスク大佐の命令でこの作戦を行なっている事実を理解して頂きたい!」

ライラは激昂しそうになる精神をかろうじて押し留めた。
ティターンズの横暴にも怒りを感じるが、何よりまたあの船を取り逃がす事になった。
あのホワトベースに似た船を、見えない力が守っているような感じさえする。
赤い彗星モドキに先程のガンダム。ライラは自分が戦場で意味もなくセンチメンタルを感じるような女ではなかったと思いたかった。
その直後だった。赤い機体から、宙域全体にまで届く停戦信号の光が放たれたのは。






「こいつ、落ちろよ!」

ジェリドのハイザックは3号機に対し防戦一方だった。
任務の性質から必要最低限の装備で来た事が災いし、頑なに距離を詰めようとする3号機に対応できないのだ。

「やられる、このままでは……!」

ビームサーベルを滅茶苦茶に振るう3号機の動きを押し留める度、ライフルの砲身がひしゃげていく。
ジェリドは恐怖していた。単純な死にではなく、自分を呑み込まんとする敵の存在そのものにだ。
己の錯覚か、3号機のカメラアイが灼熱の輝きさえ放っている気さえする。
しかしそんな時、3号機の動きをその後ろから抑えこむ機体が現れた。

「もう止めて、カミーユ!怒りを静めて、戦いはもう終わったんだよ」
「ナナなのか―――?離してくれ、あいつが殺したんだ!俺の目の前で、母さんを!!」

現れたガンダムMK-Ⅱに抑えられる3号機。
やっとエマが戻ってきたのかとジェリドは安堵するも、それが違うことに気がついた。
エマの機体は1号機だ。しかし、今3号機を抑えているのは2号機だったのだ。

「ジェリド中尉、下がって!3号機に乗っているのは子供なのよ!」
「1号機、エマか?ならあっちに乗っているのは、まさか―――」






「もうよせ、カミーユ!」
「クワトロ大尉か!?邪魔しないでくれ、あいつを!」
「停戦命令だ!君の怒りは解るが、そのために君が死んではならんと言っている!!」

クワトロのリックディアスが、2号機と一緒にカミーユの3号機を押さえつける。
母を殺された怒り、悲しみ。それはキャスバルと呼ばれた事もある男には、痛いほど解る感情であった。
親を殺めたティターンが憎いだろう、自分の手で仇を討たなければ気が済まないだろう。クワトロにはそれが理解できた。
しかし、かつて復讐に取り憑かれ、己の可能性の芽を摘み取った男と同じ道を、カミーユに歩ませてはならないのだ。

「エマ・シーン中尉、MK-Ⅱは渡す。部隊を引き上げさせて貰えるか」
「……はい、クワトロ大尉。ですが、よろしいのですか」
「准将の許可は得ている。でなければ初めから停戦信号など出さんよ」

クワトロはそのままシートに取り付けられていた携帯用のバーニアをスーツに取り付けると、ハッチの外へ出た。
3号機は抵抗を止めたが、中にいるカミーユが冷静になれたなどという希望的な考えなどは、到底抱けなかったのだ。
MSの装甲をつたって3号機のハッチへ辿り着くが、そこが開かれる様子はまるでなかった。

「開けろカミーユ、大丈夫か?」

クワトロの声への、カミーユからの返事はなかった。
ショックのあまりに自閉してしまったのなら無理なからぬ事だが、今それでは拙いのだ。
エマのお陰でMK-Ⅱの引渡しだけで事が済みそうな所が、このままではカミーユごと機体を返さなければならなくなる。
やむを得ないのか、という思考がクワトロによぎった時。その隣に小さな影が近づいた。

「シャア、代わって」
「ナナか――――?」

クワトロよりも二回り以上小さなノーマルスーツ。そんなものを着ているのはナナしかいない。
だが、クワトロは言いようのない違和感を感じていた。
少女の突拍子の無い行動は何時もの事だが、何故か目の前の少女がクワトロの知っているそれとは違っている気がしてならなかったのだ。

「開けて、カミーユ」

カミーユは返事を返さなかった。何時も通り、ナナは最低限の言葉で話す。
だが明らかに違うのは、その言葉に明確な意思の力が感じられるのだ。
うっすらとぼやけ、雲のように捉えどころがない。それがこの白い少女への印象だった筈だ。
クワトロはそんな筈がないと思いながらも、目の前の少女が別人なのではないかという疑念に駆られていた。

「……ごめんなさい、カミーユ」

反応の無いカミーユに向かい、ナナは独白のようにMK-Ⅱに向かい語りかけた。

「私がカミーユを連れてきたから、私のせいでこんな事になって……カミーユ、貴方からお母さんを奪ってしまって本当にごめんなさい。許されることではないけれど、それでも―――」
「――――ナナのせいじゃあ、ない」

軽い空気の抜ける音と共にハッチが開き、中からカミーユが出てきた。
弱々しい動きで、ヘルメット越しに覗ける顔色も、とても良いとは良いとはいえないだろう。
それでもカミーユはナナの声に応えたのだ。クワトロは安堵の息を漏らさずにはいられなかった。

「最初からこうなるって、分かってたんだ。でも母さんたちなら大丈夫だって勝手に思い込んで。母さん死なせたのはナナじゃない、俺なんだ」

カミーユの言うことも間違いではないだろう。
ビダン夫妻は軍の中でも有数の技術者であり、階級以上に相応の人脈を持っていた筈だ。
実際に逃げおおせたかはともかく、本気で逃亡しようとしたのなら、そうする伝手もあっただろう。
しかし、そうはせずアレキサンドリアに乗り込んだということは、やはりビダン夫妻も自身らに危害が及ばないとタカを括っていたのは間違いない。
事の原因がカミーユの行動なのは間違いないが、人質の死などという事に至ったのはやはりティターンズの非道さが大きな理由だといえよう。

「アーガマに戻ろう……いいな、カミーユ」
「……はい。ご迷惑をお掛けしました、クワトロ大尉」




「ジェリド中尉、撤退よ。いい加減になさい!」
「待ってくれ、エマ中尉。俺はまだ――!」

3号機に赤いスーツのパイロットと一緒に取り付く、もう一つの人物。
間違いないくジェリドから機体を奪ったあの白髪赤眼の少女に間違いはない。
ジェリドは確かめなくてはならなかった。何故あの少女は自分から機体を奪ったのか、なぜジェリドの名を知っていたのか。
そうしなければ前に進む事が出来ないと、ジェリド自身でも理解していたからだ。
初めて彼女とぶつかったあの瞬間から、一秒たりとも時を進める事ができないと、分かっていたからだ。

「アレキサンドリアからも帰艦命令が出ているでしょう!貴方の勝手で部隊そのものを危険にさらしていると自覚しなさい!」
「くそっ、目の前に居るってのに、むざむざと……」

手を伸ばせば届きそうな少女への未練がジェリドを支配する。
迎えに来た少女とエゥーゴの士官に連れられ機体を降りるパイロット。
確かカミーユといった筈だと、ジェリドは記憶を辿った。
ジェリドが感じる焦燥感は、少女と連れ添うカミーユへの嫉妬じみた敵愾心が混じっている事に、ジェリド本人すらも気がついていなかった。










作戦直後とあって、人気のないアーガマのフリースペース。
MK-Ⅱを引渡し、クワトロのリックディアスで戻ったカミーユは、今後の話し合いをするというヘンケンらからは離れて休ませて貰うことにした。
父フランクリンは未だ人質として囚われているが、それを考えている余裕は今のカミーユにはなかった。
こうなってしまった以上、悪いようにはしないと言ったクワトロたちの言葉を信じての事ではあるが。
全ての力を使い切ったのではないか、という程に疲れきったカミーユの隣にはナナがいた。

「ナナが居なかったら。俺は多分、機体から降りようともしなかっただろうな」

そのままティターンズの戦艦に乗り込んで、敵のパイロットを殴り倒してやろうとしたはずだ。
ついでとばかりに母を助けてやらなかった父に嫌味の一つも言ってやっただろう、とカミーユは自嘲した。
ナナが近くにいてくれるのは有難かった。でなければ、自分はみっともなく泣き喚いていたかもしれなかったからだ。

「本当に馬鹿だ、俺。母さんに、ちゃんと俺の気持ちを分かって欲しかっただけなのに。迎えにきた母さんを無視して、あんな怖い目に合わせて……最期に俺のこと見てくれなかったのも、当然だよ」

地球の引力のような、ナナの不思議な気配に身を委ねながら、カミーユは独りごちた。
この小さな少女の存在が、荒んだカミーユの心に平常心を与えてくれる。
カミーユはナナのこの気配が好きだった。
クワトロからも似た感覚を感じるが、彼はカミーユに自己を重ねている節があり、それが行動に現れるとどうしてもカミーユの反抗心を煽るのだ。

「そんな事ないんだよ、カミーユ」

ナナが、そっと口をひらいた。






結局、悲劇は回避されなかった。
私が"彼"の意識を押えてまでカミーユにしてやれたことは何一つなかったけど、後悔は無かった。
人は分かり合えるのだ。失敗しても、とりかえしが付かなくても、生きていればやり直せる。
カミーユはきっと大丈夫だろう。彼がいるのならきっと。私はそれが分かっただけで満足だ。

「カミーユのお母さん、最後までずっと叫んでた。逃げなさいカミーユ、早く逃げなさい――って」
「……聞こえたのか?ナナには、母さんの声が」
「うん。あの人はずっとカミーユを見てたんだよ……子供が大事じゃない親なんて、いないんだから」

いままで張り詰めていた物が切れてしまったように、カミーユは顔を手で覆った。
その手の隙間から、小さく押し殺されたカミーユの嗚咽が聞こえてくる。
私はカミーユの肩をそっと抱きしめた。これで、もうカミーユと会うことは当分ないだろうから。

「大丈夫。カミーユは私が守るから。だから、大丈夫」

そろそろ時間だ、後のことは彼にお願いしよう。きっと私なんかより、余程上手くやるだろう。
私では少しばかりカミーユに感情移入しすぎる。たったこれだけの時間でもそうなのだから。
彼はきっと驚くだろうが、それも楽しそうだ。気付いて貰えないのは少し寂しいけれど。
まどろむように目を閉じると、身体の奥底に意識が沈んでいく。
どうか彼と、私の同胞に幸福のあらん事を――――











………………おお?えーと、あれ?俺は何をしようとしてたんだっけ?
確かカミーユのお袋さんを、なんとかしなきゃいけないからMK-Ⅱに乗ったんだよな。
で、結局駄目で……あれ?何故にうろ覚えなんだ、俺がやったことだってのに。

「う、うう、かあさん……」

目の前には何やら俺にしがみついて泣くカミーユ。
な、何故にこんな状況に!?男とこんなに急接近とか気が狂ったのか俺は!?
い、いや待てよ?俺じゃなくてカミーユの方が迫った可能性もあるわけだ、自分で言うのもなんだが今の俺は美幼女だ。うん、言ってて死にたくなった。
とするとだ……俺はとんでもない思い違いをしていたのかもしれない。
ロリコンが確定(俺の中で)しているクワトロ大尉ばかり警戒していたが、カミーユにもその素質があったんじゃないだろうか。
そういやボンヤリとした記憶の中で、ジェリドのハイザックがやたら俺の方に迫って来ようとしてたし。
な、なんてこった。俺は自分でも気が付かない間に、こんなにも危険な状況に晒されていたのか…………!

……って、あれ?そういやここにカミーユがいるってことは、カミーユの親父さんってどうなるんだったか?












アレキサンドリアの独房の中で、フランクリン・ビダンは身を固くした。
妻がバスクに殺されたと聞いたのがつい先程。
自分がいる独房に近づく足音に、いよいよ自分の番かと覚悟を決めようとした時であった。

「フランクリン・ビダン大尉ですね?」
「……そうだ。一体、私に何の用かね。エマ・シーン中尉」

自分も知るティターンズのメインスタッフの来訪に、探る視線を送るフランクリンはその異変に気がついた。
看守の役目を命じられていた兵士が、気絶して宙を漂っている姿を目にしたのだ。

「私はエゥーゴに下ります。貴方にその気があるのなら、この場で返事を」
「……バスク大佐に逆らうのかね。ティターンズの君が」
「問答をしている時間はありません。イエスかノーで答えて」

その言葉に首を振る事など、今のフランクリンの状況が許す筈もなかった。
己の置かれた状況に戸惑いながらも、フランクリンはエマの提案に応える事しかできないのであった。


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