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No.30610の一覧
[0] 【習作】ZガンダムにニュータイプLv9の元一般人を放りこんでみる[ア、アッシマーがぁぁ!!](2011/11/21 17:15)
[1] 2話[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/02/24 23:53)
[2] 3話[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/02/25 00:39)
[3] 4話[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/03/22 02:04)
[4] 5話[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/05/10 05:57)
[5] 6話[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/05/26 06:30)
[6] 7話[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/06/07 06:44)
[7] ※お知らせ※  10/23 別板移行[ア、アッシマーがぁぁ!!](2012/10/23 11:02)
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[30610] 6話
Name: ア、アッシマーがぁぁ!!◆a9b17cc5 ID:f5fa12d2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/26 06:30
「つまり、MK-Ⅱを盗んだのはフランクリンの息子だと言うのだな?」

グリーン・ノア、ティターンズ基地の司令室。
ティターンズ総指揮官、バスク・オム大佐は副官であるジャマイカンの報告に眉をひそめた。
エゥーゴによるグリーン・ノア強襲、及びガンダムMK-Ⅱ強奪事件。
バスクが事態を正確に把握したのは、つい先程。全ての事が終わってからだ。

「はい。カミーユ・ビダンが施設のカメラに映った時刻と、ジェリドが3号機を奪われた時刻とがほぼ一致します」

余りにも鮮やかな一連の流れに、バスクがまず最初に考えたのは内通者の存在だ。
コロニーの警備を掻い潜り、テスト中の機体をパイロットに気付かれずに盗み出すなど、普通では考えられない事だ。
そんな時に、ジェリド・メサが機体を不時着させた建物から一人の少年が走り去るのを、監視カメラが捉えていた。
反地球連邦という目的を掲げながら、不特定多数のスペースノイドから支持によってその存在が隠され、力を蓄えてきたのが現在のエゥーゴだ。
グリーン・ノアが連邦軍の基地だとはいっても、そこに住む人間は地球での居住権を持たない宇宙移民者――すなわちスペースノイドである。
民間人の中に潜在的なエゥーゴへの賛同者が存在し、今回の事によって決起したというのは解らない話ではなかった。

「加えて、奪われたMK-Ⅱが墜落した場所に、カミーユ・ビダンの市民カードが落ちているのが発見されました。少々出来過ぎかとは思いますが……まぁ、所詮は学生の犯行だと言うことでしょうな」
「その学生が、パイロットが降りた隙にモビルスーツを盗んでいったというのだからな。ジェリドの間抜けさを嘆くべきか、その手際を褒めてやるべきか……」
「なんにせよ、これでエゥーゴを叩く絶好の口実を得たということですが」

ジャマイカンの言葉に、バスクは隠し切れない喜悦の色を滲ませながら酷薄に笑った。
これまでも散発的な行動によってエゥーゴは度々ティターンズへの妨害工作を行なってきた。
だが、それがエゥーゴによる攻撃だという決定的な証拠はなく、同じ連邦軍内の派閥であるという理由から表立った制圧作戦を行うことが出来ないのが実情であった。
しかしそれも昨日までの話だろう。此度の一件は、エゥーゴからの宣戦布告と同義だ。
エゥーゴが何を考えて事を起こしたかは知らないが、向かってくるのならこちらの圧倒的な戦力をもって叩き潰すだけの事だ。

「……念のため、フランクリン大尉を拘束しておくべきかもしれませんな。あれが裏で糸を引いたという可能性も無くは無いでしょう」
「それには及ばんよ。あの男はそんな気概や野心と言ったものとは無縁だ」

連邦軍技術士官、フランクリン・ビダン大尉はティターンズ新型MS開発計画の主任を任せられた男だ。
フランクリンは優秀な技術者であるがその反面、研究や開発といった自分にとっての興味の対象にしか執着しない傾向があった。
アースノイド至上を謳うティターンズの主義や、ティターンズが持つ強力な権力から得られる恩恵。
そういった物に惹かれて組織を籍を置く人間が多い中、フランクリンの様な人間は一見して『変わり者』と捉えられるのは常であった。
その変わり者の肉親が、現在のティターンズの最もたる敵であるエゥーゴに味方したという事実に、フランクリンに疑心を抱くジャマイカンの反応は至極当然の物だ。
しかし、フランクリンの人間的な部分を知っているバスクはフランクリンに二心が無い事を理解していた。
即物的で自己中心的。フランクリンのような男にエゥーゴが言う宇宙移民者の自治権など興味の範疇外だろう。
今のフランクリン自身の環境が、彼の欲求を満たしてくれているのだ。それを捨てて他人に手を貸してやる理由などあるはずもない。

「ビダン夫妻に関しては、前に伝えた通りに。二人をアレキサンドリに迎え入れろ……丁重に、な」
「了解しました。では、例の作戦を?」
「ああ。フフ……ブレックスが一体どんな反応を見せてくれるか、楽しみだ」










「迂闊だったか、くそっ」

サラミス改級ボスニア所属のガルバルディ部隊を指揮するライラ・ミラ・ライラは舌打ちした。
グリーン・ノアから逃げてきたというエゥーゴの戦艦と接触したライラの隊は、その部隊となし崩し的に戦闘を開始した。
敵機体の中で異彩を放つ赤い機体。恐らくは隊長機であろうその機体は、戦場を縦横無尽と駆け巡り、ガルバルディへ肉薄する。
宇宙というフィールドを思いのままに支配するその様は、歴戦のライラをして見事と思わずにいられない腕前であった。

「まさか、赤い彗星という訳でもあるまいにッ!!」

迫りくる火線を掻い潜りながら、何が何でも赤い機体から目を離すまいと捕捉する。
宇宙を走る、一筋の赤い閃光。その様はさながら彗星だ。
本物の赤い彗星かはともかく、あれが旧公国軍エースクラスと同等のパイロットなのは最早疑いようがない。

「しかし、母艦を落としてやれば……!」

勢いに呑まれてはいけない。ライラの経験から来る判断が、赤い機体との対決を避けさせた。
赤い彗星か真紅の稲妻かは知らないが、相手もモビルスーツである以上、母艦を沈められてはどうにもならないはずだ。
このまま続ければ、此方の被害も増える一方だろう。
ライラはガルバルディの舵を敵艦の方向へ一気に傾けた。
エゥーゴの白亜の船。どことなくペガサス級に通じる意匠の外観は、まるでかつてのホワイトベースだ。

「戦艦がMSに勝てると思うなよ、落ちろ!」

ざっと見た感じからして、白亜の船は巡洋艦クラスにしても対空砲の数は多くはない。
ならば一度取り付いてしまい、後はMSの機動力で撹乱してやれば良いだけのことだ。
相手が如何な敏腕だろうと、MSの数という物理的な戦力差は早々埋まる物ではない。
現実的な戦術性に加え、女の身で在りながら感情に流されない判断力。
それらこそが、ライラ・ミラ・ライラを唯の兵士とは一線を画す"戦士"としての存在足らしめる要因であった。

ライラのガルバルディが敵艦へと接近し、更に攻勢を強めようとした時であった。
ガルバルディ隊の後方、ボスニアの方角から一筋の閃光が放たれた。
炸裂する光を連鎖的に放ちながら駆ける閃光は、ボスニアからライラたちへと送られる撤退命令に他ならなかった。

「何故だ!これからという時にっ……!」

強い拒否感を覚えながらも、撤退の体制に入るライラの機体に、部下の操縦するガルバルディが近づいて来る。

「……メーデーが、やられました」
「分かっている。私に見えなかったと思うのか」

部下の声を震わせながらの報告に、ライラやり切れない苛立ちを感じずにはいられなかった。
戦端を開いた自分の判断が、間違っていたとは思わなかった。
だが、予想外の実力を見せたあの赤い機体への対抗心が、ライラ本来の慎重さを鈍らせていたのが事実であることは否めない。
撤退は不服だが、これ以上不用意な行動で損害を受けては、亡くした部下に顔向けが出来ない。
グリップを握る力を強めながら、ライラはボスニア向けバーニアの出力を目一杯まで引き上げた。







「休戦?この期に及んでか」
「間違いありません、白旗を上げています」

ルナツーの部隊が撤退して間もなく、先程の部隊とは別の方角からMSが接近してくる。
クワトロはノーマルスーツのまま、アーガマのカタパルトからティターンズのMS部隊を視認しようとした。
発光信号を出しながらアーガマへと着艦しようとするのは黒い機体、ガンダムMK-Ⅱだ。
クワトロたちが奪ったMK-Ⅱ。ティターンズに残る、その最後の一機がアーガマへと降り立った。
ハッチを開け、コックピットからティターンズのスーツを着たパイロットが降りてくる。
シルエットから、その人物が女性兵士であることが一目で伺えた。

「アレキサンドリア所属、エマ・シーン中尉であります。バスク・オム大佐からの親書をお持ちしました、取次を」

生真面目な、硬質な女性の声色。
勇敢だ。クワトロはらしくもなく、敵兵のその第一印象に、胸中で賞賛の念を送った。




「バスク大佐の親書への返答は、即答でお願いします」
「厳しいな」

アーガマの艦長室に迎え入れたブレックスらに物怖じすることもないエマに、ブレックスは苦笑した。
が、しかし。ブレックスの笑みは親書を開くとみるみる消え失せていった。
文字を目が追っていくと同時に、わなわなと激憤に身体が戦慄く様子に、エマだけでなくクワトロやヘンケンまでもが只ならぬ事態を察して身を構えた。

「何と書いてあるのですか、准将」
「読んでみろ」

押し付けるように手紙を渡されたヘンケンは、嫌な予感を感じながらも内容を確認する。
そして驚愕した。ブレックスの怒りの意味を理解したヘンケンは、手紙を破り裂きたくなる衝動を抑えながらそれをクワトロへと渡した。

「なんと、破廉恥な……!中尉はこの手紙の内容を知らんな?だからそうも涼しい顔をしていられる!!」
「何を―――」
「カミーユ・ビダンと共にガンダムMK-Ⅱを返さなければ、カミーユの両親を殺す―――そう書いてある」

クワトロから渡された親書を、信じられないという思いで見たエマは絶句した。
カミーユの両親であるビダン夫妻を人質にとった。ガンダムとカミーユを引き渡さねば両名の命は保証しない、と。
ガンダム強奪の犯人がカミーユとされる証拠もこじつけのような物だったが、何より、よりにもよってそれがバスクの直筆で書かれているのだ。
到底まともな軍人、それも一軍の指揮官がやるとは思えぬ蛮行であった。

「そんな、バスク大佐がこんな……」
「バスクならやる。私は奴のことをよく知っている」
「ですが、これは軍隊のやることではありませんっ!!」

冷酷にして残忍。蹂躙することに快楽を感じ、敵の悲鳴に喜悦を覚える。
征服欲の塊。それがバスクの人間性に対するブレックスの抱く認識であった。
認め難い事実に狼狽するエマが声を上げようも、ブレックスの怒りの眼光は揺るぎもしなかった。
事実としてカミーユはアーガマに存在し、MK-Ⅱが此方側にある。
バスクは自分にとって都合が良いその事実を確認し、利用した。そして、カミーユ・ビダンが本当に事件に関わっていたか、などというのは最早どうでもいい事なのだろう。

「今更の事だ。元よりティターンズは軍隊ではない、私兵だよ」
「撤回して下さい!私は、バスクの私兵になった憶えなどありません……!」
「バスクなどではない。もっと大きな―――言うならば、地球の重力に魂を縛られた人々の私兵なのだよ、ティターンズは」

対外的にはバスク・オムを指導者と据えるティターンズだが、それを影から支配するのがジャミトフ・ハイマン准将であることは周知の事実だ。
だがブレックスの発言は、ティターンズがジャミトフの野心を満たすだけのものではないと暗喩していた。
一年戦争が終結し、戦勝によって増長した連邦は、更にコロニーへの締め付けを強めた。
スペースノイドへ勝利という事実を、地球の大地へと齧り付く人間たちはコロニーへの搾取をよしとすることと歪曲した。
ジャミトフがティターンズが維持しているのではない。
地球を汚染し、宇宙の事など知ったことではないと惰性ままに暮らす人々の怠慢が、強権を振りかざすティターンズの横暴を許しているのだ。

「しかし、これは単なる脅しかもしれません」
「いいや、奴ならばやる。でなければ、態々バスク本人が戦場に出張る訳がない」

クワトロの推測を、ブレックスはにべもなく切り捨てた。
これから起こるであろう事態に、ブレックスは歯噛みしせずにはいられなかった。
そして、通信機からの電子音が鳴り響くのと同時に、ブレックスら全員の不安が的中される事となるのであった。

『正体不明のカプセルを発見しました!中に、人がいます!!」
「なんだと!?映像を回せ!!」

ディスプレイの映ったのは、今にも宇宙の闇に飲まれて消えてしまいそうな小さなカプセル。
たった一枚のガラスで隔てられた空間。その中に、一人の女性が閉じ込められていた。






アーガマの艦内がなにやら騒がしい。
ナナと一緒に艦内を散策していたカミーユは、周りの空気が変わったことに、言いようのない不安を感じた。
ひそひそと聞こえてくるクルー同士の会話に聞き耳を立てると、なにやら「人質」や「カプセル」といった言葉が耳に入る。
そんな時であった、格納庫へと続く通路から出てきた兵士同士の会話が、はっきりと聞こえたしまったのは。

「おい、聞いたか。ガキの両親が人質に取らたって」
「あのカミーユって奴のか?ティターンズめ、よくやるよ!」

その瞬間、カミーユの身体が飛び跳ねた。全てを聞かずとも、カミーユは理解してしまったのだ。
カミーユは自分がエゥーゴへ来た事で、自身に関係する人間がどうなるか考えなかった訳ではない。でも、その事実からずっと逃げていた。
そして、そのツケが今になって回ってきた事を悟った今。
カミーユの身体は自分の意志も定かでないままに、無我夢中で格納庫のMSデッキへと向かっていった。

「待って、カミーユ!」

発作的に走りだしたカミーユの背後から、ナナの悲鳴にも似た声が聞こえるも、今のカミーユはそれに構っている事など出来なかった。
格納庫へ走る途中でも、「女性」や「カミーユの母親」といった声が聞こえる。
最悪だ。恐れていた中でも、最悪の予想が現実になりつつあるのをカミーユは感じていた。

(どうしてだ、お袋……!なんで人質なんて……逃げられなかったのか?親父は、何をしてたんだ!?)

ぐるぐると回る思考を余所に、ドアを潜るなりカミーユは格納庫へと身を投げ出した。
ガンダムMK-Ⅱのコックピットめがけて床を蹴り、重力のない格納庫を慣性のままに進み、コックピットへ滑り込んだ。
機体の状態など確認する気にもなれなかった。
唯々、不安と恐怖で溺れそうになるこの苦しみをどうにかしたくて、カミーユは叫んだ。

「ガンダムMK-Ⅱ3号機、出ますッ!!」





「MK-Ⅱの3号機が動いた?カミーユがやってるのか!?」

アーガマのブリッジは混乱の極みにあった。
あの人質が本当にカミーユの母親か。それを確認させるべきか否か。
そんな議論の最中に、格納庫からカミーユがガンダムで発進しようとしていると知らせが入ったのだ。

「馬鹿野郎!!直ぐにやめさせろっ!!」

平時なら殆どのクルーが震え上がるであろうヘンケンの怒鳴り声も、この時にあっては無力だった。
通信越しに聞こえる整備班の制止の声と、MSのバーニアが吹き上がる轟音。
度重なる予想外の連続に、思わずヘンケンはパイロットシートの手すりを殴りつけずにはいられなかった。

「あのカプセルの中に居る人が誰か、分かってるんだわ……」

誰にともなくエマが呟いた。
それは、事態が最悪の結果で現実の物になったことを、その場に居た全員に理解させるものであった。
そして次の瞬間、更にヘンケンを動揺させる事態が飛び込んできた。
MSハッチからの通信。映像に出されたのは、ヘンケンのよく知る白い少女の姿だった。

『ヘンケン、私を出して!!』
「お前、なんでそんな所にいる!?」
『このままカミーユを行かせちゃ駄目!放っておいたら、取り返しの付かないことになる!』

本当に最低限の言葉しか発しない少女が、何時にないほど懸命に叫ぶ。
その姿は、これから起こる覆しようのない運命を嘆き、恐怖しているようにも見えた。
ふざけるな、そう怒鳴りつける暇もなくガンダムMK-Ⅱの2号機が発進態勢に入る。

「ええい、2号機を出してやれっ!クワトロ大尉はまだ出られんのか!?」









エゥーゴの白い戦艦。アーガマの付近でハイザックに搭乗しエマを待つジェリドは、命令書を確認していた。
エマの交渉の最中にエマのMK-Ⅱ1号機に何かあった場合、即時に攻撃を開始する事。
更には、交渉の材料としてアレキサンドリアから射出されたカプセルをエゥーゴがどうにかしようとした時、これを撃ち落とす事。
カプセルは強力な爆弾だと教えられたが、ジェリドにはいまいち腑に落ちなかった。
ともあれ、最高司令のバスクの命令ともあっては疑問を口に挟む余地など在ろう筈もなかったのだが。

「ガンダムMK-Ⅱが動いた、エマかっ!?」

不意に、アーガマのカタパルトから黒いガンダムが発進したのを確認したシェリドは、すぐにそれが異常事態だと気がついた。
ハイザックの脇を通る軌道を取ったMK-Ⅱは、速度を緩めることなく最大戦速で向かってくる。
更にその機体はエマの1号機ではなく、ジェリドが奪われた3号機だったのだ。

「エマじゃない……?まさか、あのガキか!?」

自分から機体を奪い、宇宙へと消えた白い少女。ジェリドは先の失態を、彼女の存在を隠してジャマイカンへ伝えた。
機体を奪われた時、自分は機体に乗っていなかった。相手の顔は見ていないと、嘘の報告をしたのだ。
何故そうしたかは、ジェリド自身にも分からない。それでも、ジェリドは自分の判断に後悔はしていなかった。
向かってくる3号機に、ジェリドは無理矢理ハイザックを組み付かせた。
衝突と同時に、3号機の勢いに巻き込まれた機体とジェリドの身体が嫌な軋み方をする。
だが、ジェリドは夢中でMK-Ⅱに向かって叫んだ。

「お前は誰だ、あの時のガキか!?」
『どけよっ!邪魔するな、俺はお袋を助けなきゃならないんだ!!』
「この声、あのガキじゃあない……!」

聞こえてくる少年の声に、ジェリドは憶えがあった。
空港でジェリドに絡み、さらに殴りかかってきたあの少年だ。
軍に連行された彼が、一体どんな巡り合わせで3号機に乗っているのかなど想像もつかない。
ジェリドがそんな疑問に考えを回らせる暇もなく、3号機はジェリドのハイザックを振り払い、カプセルへ向かい一直線に進んでいく。

「―――くっ、カプセルを奪おうってのか!?させるかよ!」

その手でカプセルを掴もうとするガンダムMK-Ⅱ3号機。
あのカプセルを奪われる訳にはいかない。これ以上の失態を犯せば、ジェリドの処罰は謹慎程度では済まないだろう。
何故か執着せずにはいられないあの少女でないというのなら、躊躇う理由などない。

「爆弾もろとも、消えて失くなれっ3号機!!」

ハイザックのライフルの照準をカプセルへ合わせる。
ジェリドは迷うことなく、そのトリガーを引いた。






滅茶苦茶にフットペダルを踏み込んだMK-Ⅱが、更に速度を上げる。
途中にハイザックがいたが、そんな事を気にしていられる余裕は、今のカミーユにはなかった。
カプセルが近づく、あと少しでMK-Ⅱがカプセルを掴める範囲に入る。

(何時もそうだ――――何時も、何時もっ――貴女は何時だって――!)

カプセルの中が、カミーユの肉眼にもはっきりと映った。
カミーユの母、ヒルダ・ビダンに相違ない。カミーユは、自分の母親を確かに認識した。
母は此方に向かって、何かを必死に叫んでいる。
聞こえない、何を言ってるんだ、そんな事してる場合じゃない、殺されるんだぞ、カミーユは激情で気が狂いそうだった。

(貴女は何時だって本当に大事なことをしないで、逃げて、誤魔化して―――!)

カミーユにとって、母は弱い人間だった。
父に愛人がいることを知っていながら、それを責めるでも問い詰めるでもなく、ただそれが事実だと諦め、仕事に逃げた。
反抗期であるカミーユを口では咎めながら、戒められないと諦め、親であることを中途半端に放棄した。
今だってそうだ。息子が軍に追われて自分も危なくなるなら、なにがなんでも逃げればよかったのだ。
家庭での自分、社会人としての自分。そんな今まで築いたものを失くすのを怖がって、しがらみに足をとられて、その結果がこれだ。

(なんで諦めるんだ、なんで逃げるんだ、なんで向きあってくれないんだっ―――!お袋はっ……母さんは、俺の母さんなのに!!)

MK-Ⅱの手がカプセルの近づく。
母はまだ叫び続けている。いい加減にしろ、やめてくれ、貴女が何を言いたいのか俺には分からないんだ。
カミーユのMK-Ⅱではなく、その後方を見ながら叫ぶ母の姿は、いっそ滑稽ですらあった。
なんで自分を見てくれないのか、なんでこんな事になったのか。
カミーユには分からなかった、救いが欲しかった、ナナなら解るのだろうか、この苦しみから解放される方法が。

「貴女は、何してるんだっ!!こんな所でぇっ!!!!!」

苦しみに喘ぐように、カミーユは母に吠えた。
MK-Ⅱの指がカプセルに近づく、あと数㎝で掴める。
―――その瞬間。

「あっ」

カプセルが、弾けた。
カミーユが、駆け抜けた光をMSの射撃だと理解する間もなく、カプセルはその光に貫かれたのだ。
最後にカミーユが見たのは、恐怖の表情を浮かべながら宇宙へと飲み込まれていく母の姿だった。








「どうした、なんでもないのか、MK-Ⅱの装甲は―――!?」

狙いに一寸の狂いもなくカプセルを狙撃したジェリドは困惑していた。
撃ち落としたカプセルは、爆発でMK-Ⅱを撃破するどころか、傷一つ付けてはいない。
エマも戻らない、MK-Ⅱも落ちていない。なら自分は撤退するべきなのか。
状況を判断しかねている時、不意にジェリドは未だかつて感じたことのない悪寒に襲われた。

「なんなんだ、この不愉快さは……!?あのMK-Ⅱのパイロットなのか、このプレッシャーは」

体中から汗が吹き出すのが止まらない。
動悸が激しくなり、息も荒くなる。握ったグリップから手が離れない。
ジェリドは、自分が越えてはならない一線を踏み越えてしまったのだと、理由も解らないままに理解した。
MK-Ⅱは動かない。死んでしまったように、カプセルを掴もうとした体勢のまま。









「うう、うああ、うああああ――――」

漆黒の宇宙空間を、ガンダムは漂う。
まるでその黒い装甲が、闇に消えて隠れてしまうように。

「うわああああああああああああああああっっっ!!!!!!!」

カミーユの叫びも、哀しみも。全て宇宙へと溶けて消えていった。
かつて数多の人の命が消え、宇宙へと還って逝ったのと同じように。














あとがき

シリアス展開につき中の人は冬眠中です。
原作のここ見直したら場面やら人やら入れ替わりまくりで死ぬかと思った。

一つ言い訳を……
感想で何人かの人に指摘頂いた、四話でMSが四機しかアーガマに行ってないのにブレックスが二機云々は完全に作者のミスです。申し訳ない……
実際にはMK-Ⅱは二機とも鹵獲されてます。
そのうち時間がある時に修正しますので、どうか生暖かい目で見てやって下さい。


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