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No.30400の一覧
[0] 【チラ裏】Knights of the Round Table【Fate/ZERO】[ブシドー](2011/12/04 18:57)
[1] かくして、円卓は現世に蘇る[ブシドー](2011/11/06 22:52)
[2] 開幕舞台裏[ブシドー](2011/11/10 01:16)
[3] 王と騎士(上)[ブシドー](2011/11/12 23:28)
[4] 王と騎士(下)[ブシドー](2011/11/19 22:30)
[5] 【閑話】苦悩と敵対[ブシドー](2011/12/04 16:51)
[6] 桜の大冒険[ブシドー](2011/12/19 22:50)
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[30400] 【チラ裏】Knights of the Round Table【Fate/ZERO】
Name: ブシドー◆e0a2501e ID:10f8d4d5 次を表示する
Date: 2011/12/04 18:57
誘われている、という感覚をセイバーは理解していた。
少女とも少年とも思わせるような中性的なその顔にダークスーツを纏ったセイバーは翠瞳を薄く鋭く細め、息を吐く。
夜の蚊帳が降りた港湾の一角、海上輸送などに用いるコンテナターミナルの全域の変化を見逃すまいと睨み付ける。
一振りの剣とも言えるそのセイバーは剣士のサーヴァントとして、最優のサーヴァントとして讃えられる空気を発していた。

「セイバー」

そのセイバーの背に、柔らかい声が掛けられる。セイバーの“マスター”であり、騎士として守るべき姫君である白い女性。
彼女、アイリスフィール=フォン=アインツベルンは白銀の長い髪と雪のような肌をした魔術師は、ゆっくりと口を開いた。

「これが今夜、私たちを招いたサーヴァントの対応なのかしら?婦人を待たせるのは少しいただけないわ」

挑発とも、本気とも思える言い様にセイバーは軽く微笑む。
恐らく、彼女は本気でそう言っているのだろう。夢の時間はもう終わり、戦いに身を落とすためのスイッチを入れるための言葉だ。
二人は日本の冬木へと今朝到った。此度の聖杯戦争へと参戦するために。
【聖杯戦争】など、一般人からすれば意味不明なものだろう。
歴史に詳しい者や宗教に身を置く者などからすれば、聖杯とは何かと曰く付きである物と感じるかも知れない。
確かに曰く付きだ、それもとっておきの。
冬木で行われる聖杯戦争とは、7人の英霊(サーヴァント)とそれを使役する7人の魔術師(マスター)によって繰り広げられる殺し合いだった。
サーヴァントはセイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、アサシン、バーサーカー、キャスターという役割を与えられ、マスターに召還される。
サーヴァントも、マスターも、その各々が叶えたい望みのために聖杯を求める。
その聖杯戦争の開幕とも言える戦いになるであろうこれは、騎士としての口上をセイバーに上げさせるに値した。

「―――何時までその姿を隠したつもりだ。斯様に誘いながらこちらを待たせるとは、英霊の名が泣くぞ!」

静まりきった冬の港にセイバーの張り上げた声が響く。
周囲に立ち並んだコンテナに反響し、波のように広がる声が相手に届いたのかは不明だ。
だが暫らくするとサーヴァントの気配は感じていた。恐らく霊体化を解いたのだろう。
サーヴァントは魔力によってその姿を現世に現す。それは毛糸で人形を編むのに似ている。
魔力を搾り、サーヴァントを不可視の霊体へとさせるのはマスターの魔力の消耗を避ける意味と、無暗にサーヴァントの持つ情報や神秘を晒さないためだ。
その霊体化を解いたとあれば、こちらを誘ったサーヴァントはセイバーと戦う気になったのであろう。
コンテナの先、見えはしないが、そこに居る。
だが、そのサーヴァントはこちらへと来ない。来る気配が存在しない。妙なことだと、セイバーは感じていた。

「油断しないで、アイリスフィール。いつどのような手段で仕掛けてくるか分かりません」

セイバーは背後で頷いたアイリスフィールの視線を感じながら、自らの身の内にある魔力を引き出すように目を閉じる。
その瞬間、セイバーを中心に吹き荒れた暴風がアイリスフィールの視力を一瞬奪い、そしてその目を見開いたときには、セイバーの姿は一変している。
銀の篭手、銀の胸当てを装飾された碧い戦衣装。
その手に魔力と風の渦巻いた不可視の剣を携えた御伽噺に出るような一人の騎士が、ここには居た。

「お願い、セイバー。私に勝利を!」

アイリスフィールはセイバーにそう命じる。
彼女は“仮初め”とはいえ、マスターだった。その毅然とした態度にセイバーも答えた。
彼女の騎士として、そして大望を望んだ友として。

「了解しました、アイリスフィール。貴女に勝利を」

そう、セイバーが告げたと同時に迫る風切り音。
セイバーが剣を構えるとその音の主が地面に着地するのは同時。
暗闇の先、よく見えないが片手には長物を握っているのが目に見えた。三騎士の一人、ランサーのサーヴァントであろう。
こちらに背を向け、月明かりの影に隠されたその顔が分からないが、相手が男であることは分かった。
それに加え、一瞬で理解できた。
あのランサーは、強い。
隠れていただけの者かと思えば、それとは思えぬ闘気を感じる。まさに戦場のそれだ。
セイバーも慣れ親しんだことがあると感じるだけの空気を持った相手。気を引き締める。

「最初に貴殿のような闘気を持つ者と合見えることが出来ることに聖杯に感謝しよう――――この戦場において、真名を名乗ることが出来ぬのが騎士としての悔やみではあるが…」

剣を下段に、何時もの受けの構えをしたセイバーは影へと声を向ける。
影に隠れたランサーは、その姿を見せてはいないがこちらに振り向いたのは理解できた。
セイバーは、続けた。

「今回の聖杯戦争に限り、我が名はセイバーとしてこの名乗りを上げよう。貴殿は、ランサーに違いはないか?」

セイバーの問いに、ランサーは答えない。
余りにも返答がないのに、声を失った英霊であるのか?とも考える。生まれながらの呪いによって何かしらの制約が存在する英雄は多く存在する。
だとすれば、声を喪失った英雄でありランサーの適性を持つ者がかのサーヴァントの真名になるだろう。
そう、セイバーが夢想したとき、ランサーの口が開く。
セイバーも、そしてその背後に立つアイリスフィールも、そしてこの戦場を監視していたセイバーの真の主である魔術使いも驚愕する一言だった。

「………お久しぶりでございます、アーサー王よ」
『なっ――――!』

セイバーとアイリスフィールの声が重なる。
アイリスフィールは、セイバーの真名……アーサー・ペンドラゴン。いや、アルトリア・ペンドラゴンを知ることに驚いている。
だがセイバーは、その声に驚愕していた。
そして悪戯のように、月明かりがランサーの覆っていた闇を追い払う。
目に見えるは、先ず無骨な槍。
過度な装飾を持たない、ただ敵を打ち払うことのみに特化した戦うための得物。
身に纏った鎧は動きを阻害しないよう区切られ、急所のみを守るようにされている。それは速きに重を置く槍兵に相応しい装束であった。
そしてその顔。
セイバーがかつて所有していた選定の剣を、自らの不義により折るに至った強き王の面影を残した鋭い瞳を持つ、槍使いにおいて円卓随一と謳われた騎士。
驚愕を隠せぬまま、セイバーは口から言葉を漏らしていた。

「サー・ラモラック…!?」
「なっ……!!」

サー・ラモラックと呼ばれたランサーは、小さく頭を垂れる。
それがセイバーの声に対しての肯定であるのと同時に事実だと、アイリスフィールに認識させた。
サー・ラモラック。
ペリノア王の息子にしてアーサー王に仕える最強の騎士たちと並び立つと伝えられた円卓に座ることを許された一人。
その生涯に大きな武勇伝は残されてはいないが、今なお残る伝説においてかの湖の騎士や弓の騎士と並ぶ武勇を持つとされた男だ。
そのような騎士が自身に最適性であろうランサーのサーヴァントとして召還されている。
強敵であるのに、間違いない。
それを一番よく知るのはセイバーであっただろうが、アイリスフィールはセイバーに声を掛けずにはいられなかった。

「セイバー、気をつけて」
「……はい」

セイバーの返答にアイリスフィールは目を見開く。
その声は怯えていた。まるで年相応の少女のような声は、アイリスフィールに縋っているようにも聞こえる。
そして思い出した。
セイバーの聖杯に望む大望、『王の選定のやり直し』。
かつて率いたブリテンの民を、そして円卓の騎士たちを裏切った自身のアーサー王としての抹消こそがセイバーの望みだ。
その戦いに、かつて自分が裏切った騎士が相対すればどうなるであろうか?
想像するのは、簡単だった。
だが、アイリスフィールには理解したくとも出来ない痛みであることも分かった。

「セイバー……!」

ランサーが槍を構える。
ランサーの表情に迷いはない。だが、唇を噛んではいた。
ランサー……ラモラックにとっても、かつて自身が仕えた王に槍を向けることは割り切れないであろうことが分かる。
だが、槍を向けたのならば敵だ。
セイバーは剣を構え、心を落ち着ける。自身が負ければ、セイバーの後ろに立つアイリスフィールは無事では済まない。
そうなるのだけは、セイバーにも耐えれぬことだった。

「……長きに渡っての再会が、斯様な舞台であったのを聖杯に呪おう。サー・ラモラック」
「叶うことならば、俺も王と再会は戦場で無いと祈りたかった」

先とは変わり、セイバーの口から聖杯を呪う言葉と共に剣を構える。
ランサーも苦渋に満ちた顔をそのままに、槍を構えた。
始まる。これから聖杯戦争が始まるのだ。
もしこの周辺の風景がコンテナターミナルなどでは無く、アインツベルン城下であれば、過去に二人が剣と槍を合わせたかも知れない古代の風景になったであろう。
だが、この場でこれから始まるのはそれと同じ英雄譚の一幕である。
その開幕を告げるように、お互いがにじり寄るように足を摺り、そして同時につま先に力を込めた瞬間、地面が爆ぜた。

「ハァァァァァアアア!!」
「フッ!」

ロケット推進のように加速したランサーの高速の突きをセイバーは上段から叩き落す。
空気の層を引き千切るような轟音が周辺に響き渡り、土煙が舞い、そして槍と剣によって再び引き裂かれる。
ランサーの槍使いはセイバーの知る通り、巧みであった。最小限の動きで最大限の威力を引き出すように操られる槍はその一つ一つが必殺だった。
一通りの打ち合いをセイバーは引き剥がすように魔力を込め、ランサーの懐へと踏み入る。
それを堪らないとでも言いたげな顔で防いだランサーは大きく押し込まれる。距離が開いた。

「卿の槍裁き、変わらず見事だ」
「勿体無きお言葉です、王よ」

互いを褒め称える言葉が出る。こればかりは騎士としての性分であった。
だが、ランサーの言葉のごとにセイバーは顔を顰めた。
王よ、王よ、王よ、王よ。
そう呼ばれる資格など私に無いとセイバーは叫びたかった。
だがそれを許さぬように、また剣と槍を合わせる。周辺への被害を見ればただの暴力と暴力のぶつかり合いも、ダンスのように映っているだろう。
アイリスフィールは、悲しそうに剣を振るい続けるセイバーを見る。
その姿を見ることが何より辛い。これでは、“あの人”が言った通りではないか。
王としての重責を押し付けたという彼の言い分が、セイバーが否定したその言葉が真実であるように、セイバーは戦っている。

「―――誰か…」

気づけば、アイリスフィールは零すように声を漏らしていた。
そう、誰でもいい。何であってもいい。だからお願い。



この戦いを、止めてあげて。



その祈りが届いたように、セイバーとランサーは同時に距離を開く。
アイリスフィールは一瞬、理解が追いつかなかったが振るわれた二人の得物が矢を弾いたことで理解した。アーチャーによる狙撃だ。
セイバーに対して2本の矢が、そしてランサーに対してはその数倍の矢が飛来する。
だが、その不意打ちに近い矢を二人は難なく弾くと、お互いが攻め手を失っていた。
第三者、アーチャーの介入によって。

「アイリスフィール、私の後ろに!」
「え、ええ!」

セイバーがアイリスフィールを守るように背に隠し、ランサーは周囲を嘗め回すように睨み付ける。
このこう着状態を生み出したアーチャーの姿は、見えない。
仮にセイバーをアーチャーが射った場合、背後にアイリスフィールを抱えたセイバーにとってはランサーに絶好の隙を与えることになる。
だが、ランサーに向けられた矢の数からしてアーチャーはランサーに重点を置いて攻撃しているようにも見えた。
そしてセイバーがそのランサーの隙を討とうとしても、背後のアイリスフィールを放置する形になってしまうだろう。
とどのつまり、見事に三竦みの関係をアーチャーは生み出したのだ。
セイバーはアーチャーへの賞賛と同時に、思わず感謝をしていた。

「姿を現さぬとは、我らが勇に臆したか?騎士でありながらアサシン紛いの卑怯者め!」

暫らくして、ランサーが吼えた。
槍の切っ先を天へと向け、堂々と気炎を吐くランサーの言葉を無視するようにアーチャーは現れない。
それを理解したのか、ランサーはつまらなそうに息を短く吐き捨てると、セイバーに向かって頭を下げた。

「今宵はここまででありましょう、王よ」
「そう、でしょうね…………サー・ラモラック、私は……!」
「失礼します」

ランサーの姿が掻き消える。
霊体化したであろうそれを見送ったセイバーは小さく「あ…」と声を零す。
縋るように伸ばされ、そして行き場を無くした手が握り拳にされた。
セイバーの顔が伏せられていた。

「……帰りましょう、セイバー」
「アイリスフィール……」
「貴女、とても疲れてるでしょう?私の買い物につき合わせちゃったから」

アイリスフィールは、小さく笑いながらセイバーの握り拳をゆっくりと解く。
セイバーは、それに驚いたような表情をすると、ゆっくりと強張っていた顔を緩ませた。

「はい、では帰りましょう……今夜は、確かに私も疲れた」

頷きあい、セイバーとアイリスフィールは歩き出す。
これからの戦いは厳しくなるだろうと、その予感を胸に宿して。




 ○



「セイバーとランサーの戦いは終わったぞ、ウェイバー」
「ほ、本当か?どっちが残ったんだライダー!?」

港より暫らく離れた冬木大橋のアーチの頂点にて、男の声と青年の声が響く。
青年はライダーと呼んだ、蓬髪を撫でるように後ろに纏めた所謂オールバックの男に噛み付くように尋ねる。
それを苦笑しながらも、ライダーと呼ばれたサーヴァントは答えた。

「アーチャーの介入によってお互いが引いた形だ」

そう、答えると目に見えて不機嫌になるウェイバー。
どちらかが倒れてくれれば今後の戦いに余裕が出ると思っていた彼の考えが透けて見えるようで、ライダーは苦笑する。
こうまで分かりやす過ぎると自身の相棒の意思を汲み取るために培った観察眼が役立ちそうにもないなとライダーは思っていた。
そこまで話すと、ウェイバー・ベルベットはため息をついて戦場となったコンテナターミナルを見つめて言った。

「まさか、聖杯戦争最初の戦いが三騎士同士によって始まるなんて思わなかったなぁ」
「それもそうだが、当事者たちはもっと驚いているだろうよ。かくいう、私もだ」
「なんでさ?」

ウェイバーは、暖かく自分の体温を保ってくれるライダーの相棒に身を預けながらそう尋ねる。
ライダーはライダーで、そう聞かれるのを待っていたかのようにニヤリと笑い、答えた。

「なに、三騎士三名、須らく“私の関係者”であるということだけだよ」
「へー………おい、おいおいおいおぃ!!まさかそれって……!」

ウェイバーの顔に驚愕の文字が浮かび上がるのにまた笑いながら、ウェイバーの疑問をライダーは肯定する。
その瞬間、ウェイバーの顔に浮かび上がるのは絶望もかくやといった風の顔であり、そしてまた噛み付くように泣きながら叫んだ。

「お・ま・え・なぁ~ッ!?三騎士だぞ!?それがライダー、お前に関係するなんてどう考えたって最悪じゃないかー!!」
「落ちつけウェイバー、私はかの王に最高の男と認められた者だぞ?」

うわぁぁぁ、と叫んでいたウェイバーがライダーの言葉にピタリと止まる。
そしてライダーに向けられた瞳はどこか信じられないように見開かれていた。

「ほ、本当なのか?」
「応とも。私自身は流れるままに旅を続けた訳で戦場との繋がりは比較的薄いやも知れんが、かの王を最も喜ばせたのは私だと自負している」

そのライダーの自身に満ちた言葉に、ウェイバーは希望が戻ったように顔が輝く。
これまた分かりやすいなとライダーは思っていると、どこか少年のような顔をし始めたウェイバーがライダーへと問い詰めていた。

「お前、それ本当なんだろうな!?嘘ついたら酷いんだからな!!」
「だから真実だ、ウェイバー・ベルベット。かの王に獅子の赤子を連れて挨拶に行った際など、まるで少年のように喜んでおったわ!」
「………は?」

ウェイバーの顔が笑顔のまま氷つく。
え、なに、獅子の赤子?ライオンの赤ちゃん?何か偉大なことを成し遂げたんじゃないのか?
ウェイバーがそのままフリーズしていると、ライダーはそれが戻らないと理解して相棒へと視線を合わせる。
相棒、一頭の巨大な獅子は小さく頷くと、ウェイバーを背中に乗せたままライダーと共にその場から消え去っていった。






かくして、第四次聖杯戦争の火蓋が切られることになる。
だが、それは今後長らく、どうあってもありえないようなイレギュラーばかりに満ち溢れた戦端の始まりであった。







後書き
最終鬼畜全部円卓(の騎士)
アニメ効果でちょっと書いてみたくなった。
セイバーに自分が裏切ったかつての騎士たちと戦わせるとかドSかも知れない。

追記
セイバーの願いの変異は理由づけ出来たら変更しません。


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