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No.30346の一覧
[0] 【習作】異世界トリップにうってつけの職業を考えてみた。(オリジナル・R15)[ハトリ](2012/02/05 23:44)
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[30346] 【習作】異世界トリップにうってつけの職業を考えてみた。(オリジナル・R15)
Name: ハトリ◆ea176006 ID:70f9d7d1 次を表示する
Date: 2012/02/05 23:44
 赤い風船は、青い空がよく似合う。

 誤って手放してしまったそれが、空に吸い込まれてゆくのを呆然と眺めた記憶は誰にだってあるだろう。映画やドラマのワンシーンで、小説の一節で、遊園地で泣いている幼児を遠目に見て――あるいはわが身をもって経験して。
 マリアはまぶしくて目を細めた。
 糸が手のひらをすり抜けた一瞬の焦燥と、瞬きごとに小さくなっていく風船の影を涙目で追うなんて体験はないはずだが、それでも我が事のように想起できるのは、手垢の付いた使い勝手のよい表現だからだろう。
 喪失の象徴か。取り返しのつかない過ちの暗喩か。届かないと知りながら腕を伸ばす希求、呆然と空を仰ぐ絶望。まぁ、なんでもいい。

 ――目の端を、赤い風船が横切った。
 通行人の誰もが、不思議とそれを目で追った。信号機を通り越え、電線をくぐり抜け、細いビルの合間を縫って、都心の狭い青空を目指す風船を、皆が皆、何となく、眼球だけで追いかけた。
 そんな中の一人であったマリアの、足下への注意が欠けていたのは確かだが、人一人がまるっと落下するような穴があったらその前方でさすがに気づくだろうと思う。だが、実際気づかずマリアは落下した。
 落下したからこそ”穴”が空いていたのだと判断したのが今。
 後頭部、背中、腰。強打したのだろう激痛が背骨から放射線状にジグザグ響く。痛い。これは痛い。そして重い。なぜか臭い。

 ん?

 くわんくわん鳴っている瞼をこじ開けると、眼前に見知らぬ男の顔が広がってそのまま限界まで全開にする。
「な、なに? 誰……っ」
 汚い髭面。記憶にない。
 反射的に暴れようとした両足が動かないので、汚い髭を避けるように首を伸ばせば、M字に開脚された両足首を固定する三本目と四本目の腕――二人目の汚い髭だ。
 身を捩り、仰け反った鼻先に親指ののぞいたブーツ。五本目と六本目の足。見上げればにやにやと油膜の張ったような笑みを浮かべた荒れた唇があった。
 三人。
 知らない汚い超臭い男たちに、マリアは馬乗りされ開脚させられ見下ろされている現状を把握した。
 土、草、木、木、木、木、緑、泥、小石、あ、毛虫。昼間のビル街を闊歩していて、風船を目で追って、穴に落ちて、湿った土が背にあって、上に汚い男たち。
 なんだそれ。
 胸元を力任せに破かれて、内腿を揉みしだかれ、仰向けのマリアを見下ろしていた男が身を屈め、マリアの手首と長い黒髪を土に縫いつけて、四肢の四分の三が拘束されたのを思い知り彼女はようやく身の危険を実感し――微笑んだ。
「なぁに? 溜まってるの?」
 白い指先が、くるくると、目と鼻の先の髭を擽った。

「口から寂れた公衆便所の臭いがするってどういう事? もうクッサイんだから。呼吸するのやめてくれないかしら――死ねとまではいわないけど」
 言ってるも同然というか直球で告げていたが、幸か不幸か言語の壁に阻まれた。最中だって……唸って喘いで吼えていただけだから、意味のある単語は発していなかったが。
「よっ……と」
 腹筋に力を入れ、マリアは身を起こした。
 ワンピースの土を払い、破かれた胸元を無理矢理結びながら立ち上がる。
 脱ぎ散らかしたパンプスを拾い上げ、やっぱり泥を払って履き直す。トンっとつま先を鳴らすのは、パンプスだろうがブーツだろうがスニーカーだろうがついやってしまうマリアの出掛けの癖だ。
 目にかかる前髪を掻き上げて、手の汚れが髪の毛に伝播したことに苛立ちが増した。自ら薪をくべたとも言う。
「ここはどこあなたたちは誰なのかしら? ちょっと教えてくれない? そこでひっくり返ってるあなたでいいわ」
 腿を擦るように足を上げ、12センチのピンヒールを、ひっくり返っている髭男のちょうどいい窪み――ヘソに置く。体重はかけない。まだ。
「まずは自己紹介をするべきかな。私はマリア。お店やってるの。16で父が借金残して蒸発してねー。母も半年頑張ったんだけど、あっとゆー間に病んで私を置いてった。何にも知らない小娘は、借金の取り立て屋に斡旋されてキャバクラで働くことになって、マリアになったの。それが私。今もマリア」
 少しずつ、体重を落とし、つま先を小刻みに揺らす。リズムを同じくする半勃ちのアレの上下運動を「かーわいーい」なんてかけらも思ってない女性特有の白々しく甲高い声を上げて笑う。
「年誤魔化してキャバ嬢やってたんだけど、借金取り立ての男がヒモになってお金使っちゃうの。稼いでも稼いでもパーになるもんだから、二十歳の時に大手を振るって泡姫に転身したの。とにかく夢中でお金稼いでたら、ヒモ男は勝手に借金作って仲間に追われていなくなっちゃった。今頃東京湾の底だと思うわ――えいえい」
 可愛らしいかけ声で、ぐりぐりとヒールでヘソをほじくる。髭男が奇声を上げてビクビク痙攣するのに気をよくして、マリアは自己紹介改め身の上話の軽やかに披露する。
「でねー。借金は順調に返済してたんだけど、ソープランドの方が経営不振で潰れちゃって。常連さんの薦めで、ちょっとかなりすっごくお高いSMクラブで働くことにしたの。このころようやく借金全部返せたのよ。なのに酷いの。私、返済義務なんてなかったんだって! 完済してから教えるなんてみんな酷い――まぁ、私がバカだったってだけなんだけど、思い出すとやっぱりかなり腹が立つわ。というわけで八つ当たりえいえいっ」
 あひんと喜んだかと思えば、喜びのあまりちろちろ漏らしはじめたのを見て、「いぬーいぬー」と揶揄。
「借金返しても、しばらくソコで働いてたんだけど、常連紙一重ストーカーがお店で問題起こしちゃって、私目当ての客だったから居心地悪くなっちゃって、やめちゃった。そのころのお客さんが熱心に勧めるから、今度は一人で隠れ家的性感マッサージのお店開いたの。雑居ビル借りて。それが立地の関係か、仕事明けのキャバ嬢がフツーのマッサージ希望で来るようになっちゃって、顧客のM男さんたち腰が引けて来なくなっちゃってー。しょうがないから見よう見まねで女の子相手にエステ始めて。でもやっぱりダメ。こーゆーのちゃんと習わないと、リピーターにはなってくれないのよね。昔のお客さん来なくなっちゃったし、ちゃんと勉強しなきゃって。ね、ちゃんと聞いてるぅ?」
 漏らし終えたのを確認して、靴のまま先端を弄くり倒す。軽く踏んだり強く踏んだりヒールでつついたりつま先でグリグリグリグリ。よく吼える犬ですこと。
「でねー? 仕事の傍らでぼちぼち勉強してたんだけど、専門学校に通いたくなって、お店土日だけにして、昼間学校に通って、夜デリヘルしてたんだ。体力的にきつかったけど、卒業間近だったのに……」
 苛立ちが再燃したのでさきっちょイジリをやめ、おもむろにヒールを肛門につっこんであげた。あーあーあーととても喜んでくれたので、小刻みに激しくガクガクしてあげる。とてもとても喜んでくれたので、マリアは凄絶な笑みを浮かべた。
「なのに、なんで、私はっ、こんなところで、客でもない男とっ、遊んでるわけっ!?」
「ああーっ!! あーっあーっアーッ!!」
「というわけで私、気持ちいいこと全般のプロフェッショナルなの。道端に落ちてたけど、高いたっかい女だったってわけで、思い知れっ! 只より高いモノはないっ! はい復唱っ!」
「あ゛ーーーーっ」
「誰が鳴けと言ったのっ!? 復・唱・よ、ふ・く・しょ・う!! リピートアフターミー!」
「あ゛ぃーーーーっ」

 憂さ晴らしはできたが、何の情報も得られず。マリアは返り討ちにした男たち三人から金目のモノをベルトのバックルまで回収して惨劇の場を後にした。
 言葉は通じずとも気持ちイイ肉体言語は壁知らずのようで重畳。
「ま、人間がいるのなら、どうとでもなるわ」
 振り返らず、かすかな水の音を頼りにマリアは森の中を歩き始めた……手を洗いたい。

 ――伝説の女性”黒髪のマリア”はこうしてこの地に降り立った。
 降臨直後に慌てず騒がず三人斬り。身なりがマリアの許容範囲を超えて不潔だったため、手を使い足を使い靴を使い全身を使い、粘膜は死守した。マリアの感じた身の危険は、貞操の危機ではなく性病感染の恐れであった。大柄な男三人にこれは骨が折れた。だが頑張った。
 またつまらぬモノをヌいてしまったなんて嘯きながら飄々と去るその足取りは迷いがない。
 現在地の情報こそ彼女は初め固執したが、目的地などない、どこでもよいと気づいてあっさりと割り切った。迷いようがない。現在地もわからないのに迷子ですらない女だった。
 親も親類も恋人も友人もいない。そういうものは、手のひらをすり抜けていった。手を放した覚えもないのに、全部、全部すり抜けていった。そんな風船だらけの青空を、為すすべもなく呆けて眺めたそんな日が、あったような気がする。
 ――違う。
 誰かの手のひらから、敢え無くすり抜けていった、赤い風船こそ、私だ。
 大切なモノが、失いたくないモノが、地上にはあった気がする。なのにマリアは飛びたくもない空をさまよい、あっちふらふらこっちふらふら、いつしか割れて墜落し、道端で誰にも省みられることのないゴミとなるのだと知っていた。

「ふうせんが、割れたのね」

 これはそういうことだろう。

【A perfect girl for the other side of love】


 問:タイトル通り。
 答:職業エロ。ほら、世界最古の職業だし。テクニシャンかつテクノクラートなおねいさん一択ファイナルアンサー。
 ……15禁で間に合っただろうか。
 習作兼リハビリ作。中編? ぼちぼち続く、はず。


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