少年は光の中にいた手足の感覚が消えていく。方向の感覚もあいまいで、昇っているのか落ちているのかもわからない何もない空間に存在する『自分』という矛盾。だがその矛盾もやがて消える自分は消える運命だった。その運命を受け入れてここまで来たのだから辛くないといったら嘘になる。悲しくないわけがない。もう流すこともできないが、泣け叫んだこともあったそれでも、変わると決めたから。大切な使命を果たすと、約束を、守ると決めたからでも唯一の心残りは―――ガイ、ナタリア、ジェイド、アニス、ミュウ……ティアどうしようもない馬鹿だった自分を、仲間だと言ってくれたみんなに、もう会えないこと『ごめんな、みんな、ティア。約束、守れな―――――』……ルーク。………界へ………めて………幸せを最後に聞こえた声が、なんなのかわからぬままルーク・フォン・ファブレは、この世界から消滅した少年が出会ったのは、不屈の心を持つ少女消えたはずの自分に戸惑いながら、少年は再び歩き出す誰も知らない、深淵の世界より導かれた、一人の少年の物語魔法少女リリカルなのは~ABYSS~それを見つけたのは、本当に偶然だった桃子に頼まれたお使いを済ませた帰り道。ふと気が向いたので、通りがかった公園に寄った休日の午後の公園にはまばらだがそれなりに人がいて、それをしばらく眺めていたしかしいつまでもこうしていてはお怒りをかってしまう。ベンチから腰を上げて、一瞬の、光を見た本当に、それは一瞬の光だった。自分以外に気づいたものがいないのがその証拠おそらく自分も、偶然にその方向を見ていなければ気付かなかっただろうその光を見た公園の外れの林に行くと、そこには少年が倒れていた倒れていた、というのが正しい表現なのかは疑問だ仰向けに空を仰ぎ目を伏せている少年は、ただ眠ってるようにも見えるだが、意識がないことがすぐにわかった素早くその少年のそばにいき、呼吸、脈拍など調べて、異常がないことに安堵するよくよく観察してみると、少年はどこかおかしかった木々の緑に映える紅い髪と腹筋の部分をさらす奇妙な服装からみて、少年はおそらく日本人ではないだろうその少年の首にかけられたネックレス。その中心に嵌め込まれた朱の宝石からは不思議な『何か』を感じ取れたそしてなによりも『何故』少年はこんな所にいるのか『何故』少年は気を失っているのかそれは、一瞬だけ見えたあの『光』と何か関係してるのか「まぁ、今はそんなことより―――」少年を背中におぶさる。わずかながら身じろぎしたが、気づく気配はなかったいろいろと気にはなるが、どの疑問も少年をここに置いておく理由にはならない―――少なくとも、私にとっては帰ったら桃子はどんな顔をするだろうか。いや、そんなこと考えるまでもないきっと彼女は何も言わず、あの太陽のようなほほえみで少年を迎えるだろうそのほほえみを思い浮かべ、そういえばこの少年はなのはと『同い年くらい』だろうか、などど思いながら、私は我が家への帰路についたちなみに、わが妻は私の予想通りの対応で出迎えてくれたのだが、私は公園に置き忘れた買い物袋を取りに再び公園へと向かうのであった