「今朝のさっと一品!」
「えっ朝からカツ丼!?」
「今朝の一品はカツ丼です、昨日つくったでカツを味を着けた炒めたたまねぎと卵で閉じてご飯に乗せるだけ!!」
「いやぁ受験っていても俺がうけるんじゃないし………昨日の夕飯カツだったじゃない」
「いいの、夫婦は同じもの食べて頑張るの!」
「まぁ、いいか……でも朝からはカツ丼は重い…」
FIGHET1
今日は待ちに待った藍越学園受験日
受験票持った、筆記用具持った、ポケットティッシュ持った、ハンカチ持った、弁当持った、参考書もった。
よし準備万端と玄関のドアを開ける。
今日の天気は晴れ。
太陽が燦燦と私を照らす。
その太陽は私の力の源である。
忌々しい記憶しかない私の力だが、湧き上がる力は燦然と胸の中で輝いている。
「美緒ちゃーん」
家から出てすぐに背中から私を呼ぶ声がして振り向くと
「あ、山田さんどうしたんですか朝から」
「今日受験って聞いたから…これキットカット桜咲くバージョン、受験で頭使うから糖分補給にこれ食べて。3個あるから、一夏君と弾君にもあげてね」
丁寧にキットカットを山田さんが手渡してくれる。
「ありがとうございます」
わたしはその親切さに笑みがこぼれた。
私にキットカットをくれたのはご近所に住む山田さんだ。
お兄さんの所に暮らし始めてからなにかと私の面倒見てくれるおじさんだ。
職業はお料理教室の先生らしく私に美味しい料理の作り方を教えてくれる人でもある。
彼はこの周辺住民にとって主婦のカリスマとして有名であり、この街で家庭料理で彼の腕をを越えるものはいないとされるらしい。
幼馴染の一夏も彼を師として崇めている。
「美緒ちゃんもこんなに大きくなって、もう高校生になるのね、早いなぁ」
「それに今年の16の誕生日には奥さんにもなるんだ」
「そうなの!?貴仁さんと結婚するの!?早いね!?」
「うん、受験だからつけてないけど、ほら婚約指輪」
私は制服の胸ポケットからエンゲージリングを取り出して見せる。
私が笑顔でリングを見せると山田さんが突然泣き出した。
「どうしたの山田さん!?」
「ううん…うれしいの私、美緒ちゃんがこんなに大きくなって…そして幸せになってくれて…私うれしい」
「ありがとう山田さん、でもこれからだよ幸せになるのは、受験今日だし」
私はおいおいと泣き始める山田さんに少しびびる、この人凄い人情家でも有名なのだが少し涙もろいのがたまにきずだ。
初めて会ったとき結構強面なので少し怖かったけど私をみて突然泣き出したのをみてもっと怖かった。
「レッドさんがかよ子さんと結婚して、かよ子さんの実家の婿養子に入ってから真面目に香川県で働いてるの聞いた時なみに嬉しいの私」
「烈人さんとかよ子さんかぁ、あの時私も結婚式に参加させてもらったけどかよ子さん綺麗だったなぁ」
二年前に山田さんがご好意で結婚を夢見ている私を連れてってくれた結婚式。
何故か初めて会った烈人さんが私をみて驚いていたのは覚えている。
まぁ山田さんの知り合いってだけで結婚式に参加した中学生見たらびっくりするかな。
「高校受かったら教えてね美緒ちゃん、盛大にお祝いパーティーするから」
「うん、ありがとう山田さん」
「がんばってねー美緒ちゃん!」
私は頭を下げてお礼し山田さんと別れる。
私は周囲から祝福されているのを実感しとても幸せな気分で歩きはじめる。
山田さんやご近所の方々には大変お世話になっている。
街の商店街の人たちも親切でよくオマケしてくれるし。
みんな私の成長を見守ってくれたいい人たちだ。
そんな彼らにまだまだ恩返しは出来ないけれど、せめて立派にならないと。
そう決意を抱いて歩きはじめる。
そんな工藤美緒の後姿をみてまだ山田は泣いていた。
「ううう……よかったー美緒ちゃんがあんなに幸せになってくれて」
山田こと悪の秘密結社フロシャイム川崎支部将軍のヴァンプは泣いていた。
「ヴァンプさま、これ」
そういってヴァンプの後ろからハンカチを差し出すのはフロシャイムの戦闘員一号
黒タイツにジーパンにトレーナー姿のごくごく普通の出勤前の戦闘員の格好だ。
「ううありがとう一号くん、でも君も泣いてるじゃない君が使いなよ」
「当たり前じゃないですかヴァンプ様、だって美緒ちゃんがあんなに幸せそうに…」
「そうだよね……そうだよね、ご両親がさ、あんなことになってさ、美緒ちゃんもあんなふうになってしまって、私達ではどうすることもできなくてさ……うう」
「そうですよね。そうですよね……」
説明しよう、二代目サンレッドとしての力に覚醒した工藤美緒のあまりの境遇に涙したヴァンプ将軍は密かにフロシャイム内で工藤美緒後援会を立ち上げ密かに
彼女が健やかに成長できるよう見守っていたのだ。
美緒は確かにサンレッドの力を持つがごく一般人。
彼女が自らの高いヒーローの素質で両親を亡くしていてそれゆえヒーローや悪の組織との戦いに巻き込むのは可哀想。
なのでフロシャイムの社内通信でもこの情報は全国各地に行き渡り
工藤美緒には怪人たちは悪の怪人としての正体を明かしての接触は禁止とされている。
でも地域社会の住民交流は許可されているので
故にヴァンプは山田という偽名を名乗っているのだ。
「でも大丈夫かなぁ美緒ちゃん、受かるといいなぁ」
「一号君、美緒ちゃんなら絶対受かるよ、美緒ちゃん凄く頭いいもの」
「そうですよね、小さい時から利発で礼儀正しくて思いやりもあるいい子でしたもんね」
「うん、面接もばっちりだよ、中学生になってから貴仁さんの負担にならないように新聞配達して半分は自分のお小遣いにして半分は家計に入れていたもの」
ちなみに工藤美緒が今お世話になっている工藤家は美緒が家計に入れているお金を、そのまま美緒のために作った口座にいれている。
「うんうん、この前の修学旅行の時にもご近所さんにもお土産を欠かさず買ってきてくれたいい子ですもんね」
「ほんと、レッドさんに爪の垢を飲ませてあげたいぐらいヒーローの素質があるいい子だよ」
「あんなことがなければヒーローになって欲しかったですよね」
元某K県のご当地ヒーローであったサンレッドは結局ヒーローを廃業し現在、奥さんのかよ子の実家の香川にいるためK県のヒーローは今いないのだ。
よって地域の住民と親交を深め、美緒の成長を見守るのが現在のヴァンプ将軍の世界征服活動なのだ。
「でもヒーローとの戦いがないから寂しいですよね」
「この前山口支部の加勢にいったじゃない」
「あー山口県に兄弟戦士アバシリンが出現したから加勢にいきましたね」
説明しよう!
兄弟戦士アバシリンとは元々北海道のご当地ヒーローであるが、ある時、酔った勢いで北海道の悪の怪人を皆殺しにしてしまい、それからは全国各地の怪人達を獲物と定め各地で怪人達を殺戮する
最悪のヒーローである。
「あれは嫌な事件だったね……加勢に行ったのはいいけど、みんな皆殺しにされかけて逃げたらムキエビさんが逃げ遅れて……」
「まぁ死なない人だし……あれから強化されて再生怪人シェリンプになったからよかったんじゃないですか」
「でもあれはないよね……最近女尊男卑の社会に対し怒りを感じたからって怪人達に八つ当たりするなんて…
それにいくらISっていう凄い物が出来たって結局女性と男性はお互い支えながら尊重しあうのが大事だよね、うん、わたし女尊男卑の問題を今度地域振興会の議題にしてみよう」
女尊男卑の社会になってからもまだ悪の組織とヒーローとの壮絶な戦いは続いていた。
「あれ、織斑君がいない……」
受験会場に辿り着いた私は参考書を読んでいた。
すると幼馴染の織斑君がいないことに気付いた。
受験開始まであまり時間がない、もしかして、寝坊?
私は参考書を鞄にしまい会場の外に出ると受付で預けていた携帯電話を取りに行く。
藍越学園ではカンニングを防ぐため携帯電話は受付に預けるのが義務付けられている。
ISが世界に広まると同時に世界の科学技術は引き上げられ携帯電話も結構高性能機が出始めているためである。
「うーん受付の人に聞いたけど、織斑君まだ会場に来てないみたい、どうしよう」
とりあえず、携帯で電話を掛けてみる
すぐに3コール目で掛かる。
織斑君は相当焦ってるらしく吐息が荒く要領が掴めないが
「はぁ!?迷った!?」
受験会場の建物内で迷ったらしい。
しかたない
「私迎えに行くからなるべく動かないで、うん大丈夫、私会場内把握してるから」
私は本気を出せば半径10キロ圏内の物音を聞き分けることが出来るのだ、建物内で織斑君の心音を察知するなんて造作もない。
そして本気を出せば新幹線ぐらいのスピードで走ることも簡単。
まだ受験まで時間はある、いざとなれば織斑君を背負って走れば間に合う。
「よし、いくよ」
私の胸の炎が燦然と燃え上がり始める。
胸の内の炎が私の体を通常の人類の規格を遥かに超える力を与えるのだ。
「わかった、あっちだ」
これは織斑君の足音と心音だ。
「でも動かないでっていったのに……もう」
織斑君の位置は受験会場からどんどん遠ざかってるのだ。
私は急がず焦らず、周囲に衝撃波を発生させない程度の速度で走り始めた。
織斑一夏は迷った先でISを発見し近づいていた。
幼馴染の工藤が探しに来てくれるとはいえ、なんとかしなきゃいけない、という気持ちが足を動かし
いつのまにか関係者立ち入り禁止と書かれた場所に入り込んでいた。
「IS……「みつけた、織斑君」工藤。」
柔和で柔らかい声に振り向くと幼馴染の工藤が後ろにいた。
走って此処まで来たのだろう、若干髪と制服が乱れているが汗一つかいていない。
あいも変わらずの抜群の運動神経だ。
昔から異常なほど運動神経と体力が優れていたのだ工藤は。
一度中学の夏休みに新聞配達を紹介してもらったが、新聞配達先でもその抜群の運動能力を発揮しており
自分の担当区画をすぐ終わらせ、他の担当区画の人の手伝いをするほどである。
弾が言うには貴仁さんがいなければ、学校内で彼女にしたい女性NO1であるらしい。
今時女尊の世の中でも老若男女誰に対しても礼儀正しく思いやりの心を忘れない、日々近所の山田さんと一緒に地域振興会に参加し街のボランティア活動を推し進め
その素晴らしき良識さで街のモラル向上に一生懸命な街のアイドル。
容姿も心の綺麗さ滲み出たかのように柔和な美人。
貴仁さんという男性一人を小さい頃からずっと思い続け、身持ちも堅く、今時ありえないほどのヤマトナデシコ。
曰く、男の夢を結集したような女性らしい。
それが彼女だ。
「うわ、ごめんな工藤……お前も受験なのに」
俺がそういうと工藤は苦笑して。
「困った時はお互い様だよ、いまからでも受験に間に合うし大丈夫だよ…ってIS?」
「ちょっと気になってさ………」
俺がISに触れようとすると
「ちょっと、勝手に触っちゃ駄目だよ、そして此処立ち入り禁止場所」
しかし
「あ………」
彼女の注意は間に合わず思わずISに触れてしまった。
「動いた…………」
、
織斑君を見つけるとそこはIS学園での受験で使われる予定のISが設置された場所であった。
ISって世界に数少ない凄いパワードスーツであり個人のお金では買えない、国家的に見ても大変貴重な物であり
まず一般人は滅多に触れることが出来ないものである。
学生の受験で使用される物とはいえ勝手に触るのはまず禁止されているだろう。
下手をしたら厳重注意ではすまない。
ただでさえ今の世論は女尊に傾いているんだから、普通の男の織斑君が触ってもしなにかあったら、大変な目にあうことは間違いなし。
それに織斑君も私も受験の内心点にこの問題行為が響き、受験合格できなくなるかもしれないのだ
「なのに…なんで織斑君勝手にIS動かしてるの!?国の物なんだよ公共物品なんだよ!?勝手に使っちゃ駄目でしょ!犯罪になるかも!?」
「男が動かしてるとかじゃなくて!?そっち!?」
「もう、さっさとそれから離れなさい」
「うわ、工藤!いきなり後ろから引っ張るな」
少し力の加減を忘れ織斑君をひっぱたので織斑君が転びそうになる。
このままだとISに派手にぶつかってしまう、仕方ない、と
バランスを崩す織斑君を抱きしめ
そして私もついついISに触ってしまった。
「痛いって工藤、一旦くっつくのやめてくれ」
織斑君はISにへばりつき私は織斑君の背中越しにISに触れていた。
「うわ……」
貴仁さん以外の男性との密着は鳥肌が立つほど気持ちが悪いので
私はすぐ織斑君から体をよけたがその瞬間。
「なんか傷つくぞその反「あなた達!なにしてるの!?」
後ろのドアが勢いよく開かれ
私は最悪の予想をたて思わず
「終わった……」
と溜息を吐いた。
予想通り
開かれたドアの傍に受験の係員の人たちが立っていた。
そこから男の織斑君何故ISを動かしてるのか、という係員の驚愕。
今この瞬間からとてつもない国家に関わる問題が発生したらしい。
結局、私は周囲の混乱に巻き込まれ藍越学園の受験を受けることができなくなってしまった。
「どうしょう……貴仁さん助けて…」
勢い良くわたしの幸せな未来の予定が崩れたのを感じた。
次回、史上初の男性のIS操縦者と受験失敗の少女。
あとがきというか説明
ヴァンプ様の偽名は声優ネタ。
ムキエビさんマジムキエビ。
ヴァンプ様マジカリスマ