奥様はIS学園で学園ヒーローをするそうです。
「来年。君と籍を入れようと思う。でも、高校ぐらい卒業しておきたい?」
工藤美緒は何時もどおりに夕食後の後片付けをしていると居間でテレビをみている男にそう問われた。
中学三年、来年16歳。
16歳と聞くと何を思い浮かべるだろうか?
酒、タバコ、運転免許、賭博、それらは禁じられておりまだまだ未熟な子供な年齢であると思う。
男性はそうだ、まぁバイクの免許ぐらいは所得可能である。
女性では少し違う。
16歳になると結婚、つまり18歳以上の男性と夫婦になれるのだ。
16で結婚する女性、いや16はまだまだ女の子といってもいいし、少女という言い方でもいい。
16歳で嫁ぐ、現代で見ればとても稀である。
今時は高校を出て18歳そこから大学に専門学校に短大、就職と数知れない未来への分岐点が広がっていくのだ。
まぁ結婚していても子供さえ作らなければ、別に学校なんて行けるし、また子供が居たとしても行けないこともない。
だが。
「結婚して俺の奥さんになって専業主婦になってこの家で生涯俺の家で家事をして美味しい味噌汁をつくってくれないかい?
そして籍をいれたらすぐ子供も欲しい、最初は君に似た女の子が欲しいな」
プロポーズだ。
しかも専業主婦になって欲しい、子供も作ろうという言葉つき。
工藤美緒はこの言葉どおり行けば全ての可能性を閉じ、この居間でテレビをみながら16の少女にプロポーズするという
大変、次元的に常識と掛け外れた言動を行なう男の奥さんになり子供を作って17には出産、子育てに従事するいっぱしの大人の女性になれというのだ。
工藤美緒はその言葉に対しただ一言、すこし額に冷や汗を流しながら
「……は、早くない?」
そう返すことしかできなかった。
プロローグ
私こと工藤美緒は大変、不可思議というか奇運というか困難というか物語的というかそういう人生を宿命付けられた人間だった。
テンプレTS転生特殊能力付き、という結構最近食傷気味な感じの。
神様にはあったことがない、インフルエンザが悪化し、脱水症状でそのままお亡くなりになり、気付いたら日本の一般家庭の家に生まれた女の子。
死ぬ最後の記憶はインフルエンザで職場を休み、8畳の居間に布団を敷いて、寝ながらアニメの天体戦士サンレッドをみているのをおぼろげに覚えている。
丁度神奈川県で働いていた私は、深夜にこのアニメを発見し、大いに嵌り、インフルエンザが蔓延する時期にアニメに出てくる場所を巡るのを趣味にしていた。
別に聖地巡礼とかそういうのじゃない、アニメに出てくる定食屋とか本当にあんのかなぁ、あったら、さば味噌定食食べたいなぐらいのノリである。
友達そう話したら、「お前オタク?なのか?」という反応をされた。
ちょっと傷ついた。でも、天体戦士サンレッドのオタクってまぁ珍しいのかなーぐらいの微妙な気分だったのは覚えている。
考え事が大いにずれている感じがするが、概ね大体死んだら女の子でしたーぐらいでいい。
元々は男だったために股間についてる凸が凹になり空洞となり凸ポジションに気遣うこともなくなり。
凸の皮に毛が挟まり痛い思いをする必要もなくなり、あの痛みが懐かしいけど虚しい気持ちになる。
今も銃弾が交差する戦場のど真ん中で銃器を持たない非戦闘員の気持ちになる。
8歳で初潮を迎えた瞬間に大変なことになったこともある。
そう大変なことになった。
あの時私は覚醒したのだ、TS転生というものに魂に虚無的な絶望を抱えた私に、ある権能が宿ったのだ。
初潮で太腿から滴る我が鮮血に怖気を感じ、自らの子宮を実感した時、3LDKの我が家が大火災に見舞われた。
ちょっと普通じゃない女の子、近所にはもっと普通じゃない女の子が住んでいたので
まぁなんとか深く考えず在るがままに我が子の成長を見守っていけばいいかと私に接していた両親はその時焼け死んだ。
まるで太陽の炎、燃え上がる世界。
不死鳥の炎。
コロナの力。
世界が炎に包まれ気付いた時。
私はファイヤーバードフォームになっていた。
可愛いウサギのパジャマをきたまま、背中から大変な熱量が吹き出るツバサを纏っていたのだ。
両親は一瞬にして燃え上がり、この世から居なくなった。
私は人間が燃える臭気に耐え切れず口から夕食に食べていたパスタを吐き出しながら。
混乱しながら泣き喚いた。
気付くと私は緊急病院に担ぎ込まれていた。
そして、謎の大火災により一つの家がまるで狙われるように燃え上がり焼失した。
私が混乱のまま必死に燃え上がる炎を制御し被害を最小限にとどめ様とした
結果、宇宙から地球を観測する衛星機が日本のある一点から成層圏にまで火柱が立ち上るのを記録した。
日本S県謎の一家焼失事件として世界的な事件となった。
その事件は様々な憶測を呼んだ。
膨大な熱量が発生したにも関らずたった半径10数メートルの民家一軒のみにしか被害が行かなかった謎。
そして一瞬にして酸素さえもなくなる炎の中ただ一人生き残った少女の謎。
気付くと私は病院のベッドにいた。
気付くと、私が正気に戻るまでの一ヶ月私は精神異常をおこしたままずっと病院のベッドに隔離されていたらしい。
隔離、という言葉に少し違和感を感じるがまさしく隔離という言葉が相応しい扱いを私は受けていた。
謎の災害に生き残った私は某有名大学病院のベッドで様々な検査を受けていたのだから。
目覚めた後、知った事実はとても重かった、両親の死亡、全てを失った私。
そして自らの裡にある両親を燃やし尽くした記憶と実感。
理不尽すぎる我が身の上
そして力。
私はそれから以降口を紡ぎ目を閉じ耳を塞ぎ、自らの心さえも塞ぎ病院のベッドの上で白雉と成り果てた。
食事も取らずただ絶望の果て自らの生の意味さえもわからず命を捨てる、その時私はそう選択した。
が、一人の男が私を救った。
それは私の従兄弟にあたる人だった。
親類は皆、私を諦めていたらしい。
言葉も返さずただ、ただ一人ベッドで俯き人形となった私を救うのを諦めた。
いや救うことを不可能と悟っていた。
ただ一人の男だけは違った。
男は私を救う気はなかった救えるとも思わなかった。
男はとても優しく義理人情にあふれた青年だった。
親類の女の子が謎の事件で両親を失い孤独となり、正気を失い、ただの呼吸するだけので生きる気力を失った人形に対し、ただひたすら優しかった。
根気強く、私がいる病院に毎日通い、虚ろな私に懸命に話しかける青年。
可哀想な女の子を心配し、世話を買い出た一人の青年。
私の体は衰弱し、どんどんと死へと進み始めた時、私は思った。
どうして、この目の前の人はこんなに優しくしてくれるのだろう。
意識の淵に一瞬そう考えた時、私は正気に戻った。
その時の私は正直直視さえも辛い状態だった。
口から鼻から目から汚い液体をただらし、ストレスで頭髪も抜け落ち、骸骨のようにガリガリに痩せ果てた亡者のような姿。
だがこの優しい青年はどんなに醜くくても見るのも辛いグロ画像な私をみてもただ、可哀想だから優しくし続けた。
わたしは正気に戻りしかし、体が衰弱して思うように回らない口で疑問を発した。
「なんで、やさしくしてくれるの?」
と。
青年は数ヶ月間無反応となった私の始めての反応に目を見張り、ナースコール目をやりそしてすぐ私に視線を戻し、こういった。
「だって可哀想だから、俺でも俺だけでも傍いてあげたかった」と
その言葉を聴いて信じれない思いを抱いた。
こんな人が本当にいるのか、と。
まるで神様みたいじゃないか、と。
おもわず神様と口に出していたらしい。
青年は軽く微笑んで
「ううん、違うよ、親戚のお兄さんだよ」
といってナースコールを押した。
神様にはあったことがない、しかし親戚のお兄さんは私にとって神様以上の存在となった瞬間だった。
そして私の胸のうちに生命力の炎が燃え始めた。
そして泣いた。
醜いまま汚いまま泣き叫んだ。
生きたい、親を殺してても生きたい、醜くても生きたい、この人がいるこの世界に生きたいと泣いた。
私はその日本当に生まれ変わったのだった。
それから私が立ち直り退院するまで一年の月日を要した。
それが私に居間でテレビを見ながらプロポーズした35歳の男性との出会いだった。
わたしは正気に戻ってからリハビリの一年間を親戚のお兄さんが見守る中順調に過ごした。
それはありえないほどの回復、奇跡ともいえる復活とも言えるほどの順調なリハビリだった。
胸のうちに炎が宿った私は驚異的だった。
担当していた医者は私に匙を投げていたそうだが、抜け落ちた頭髪も生え始め、食欲を見せ始め、一日一日に見る見る回復していく。
医者は頭を抱えて「まるで君の献身的な愛の力の奇跡だ」と親戚のお兄さんに言ったらしい。
お兄さんは一年間仕事を休みずっと私の傍に居てくれた。
私は悪く言えば依存的にして狂信的な感情を親戚のお兄さんに抱いた。
お兄さんが傍に居ないとぽろぽろと涙を流し始めるぐらいに。
お兄さんが居ないと生きれないと思うほどに。
リハビリ終了後、宙に浮いた私の引き取り先はお兄さんじゃなかったら死ぬと大声で喚くほど。
親類達は全員それに対し賛成を示した。
親戚のお兄さんはまぁ僕しかいないだろうと頷いて私を家族にしてくれた。
そしてある気の利いた親戚はお兄さんの両親の養子とせず三親等に入らないような戸籍に入れてくれた。
親戚全員大体と未来を予測し始めていたらしい。
お兄さんの両親はお兄さんに「責任とって守り続けなさい、貴方が救ったんだから」といった。
それから6年の月日が経った。
世界はISという存在に大きく形を変えていたが、私には何も関係なかった。
お兄さんとの6年間が私の全てだった私の人生だった。
「私もさ、お兄さんと結婚したい一生傍に居たいよ、でも……早くない?」
私は考え事から現実に身を戻し洗い物をしながら答える。
居間でテレビを見ている親戚のお兄さん…工藤貴仁は耳を赤くして
「早くない、早くない、だって俺35だもん、そろそろ結婚しても可笑しくないよ」
「いやさ…私まだ15だよ世間体的に不味くない?」
「………世間体なんてとっくの昔に俺の目の前から走りさってるよ」
「そうかも」
「世間体は俺のことロリコン扱いだよとっくの昔に」
「ごめん……………」
12の頃には肉体関係迫りまくった私が世間体とか言えるわけがなかった。
前世の男性の知識を生かしあの手この手でお兄さんに迫った私。
未成年に対する淫行に恐れ慄きながらも私の手からまだ逃げ切っているこのお兄さん。
今では周囲から立派なロリコンとして認められている。
「病院だとさ……俺みんなから生暖かい目で見られてるのしってる?」
私とお兄さんの出会いと関係はお兄さんが勤めている病院では有名だ。
たった一人の少女を生涯看護し続けるナースマンとして。
「美談扱いだからいいじゃない」
「よくない!未だにいつ君に手を出さないかと皆が待ちわびてんだぞ………でも犯罪だろ」
「じゃあ、手を出す?」
私は洗い物を一時中断し居間でテレビを見ているお兄さんに抱きつく。
お兄さんは額から汗を流しながら顔を顰める。
「…………犯罪だろ」
「いまさら気にしなくても」
「……母さんがさ、婚前交渉したら通報するって言ってんだよ」
「捕まっても心情的に罪に問われないって、だって愛してるし」
「世間は認めません」
「ええー」
「母さん、産婦人科医だから、いろんな不幸な出産見てるし、本当に結婚して生活基盤しっかりしてなかったら確実な避妊なしでの性交は駄目って言い張ってるんだよ」
「だったら、コンドームとかピルは?」
「コンドームは100パーじゃないし、ピルはあんまり体によくないから駄目、つうかそんなにしたいのか君」
「さっさと女の幸せとやら実感したい、お兄さんと一つになりたい」
「くぁwせdrftgyふじこl!!」
お兄さんは無理矢理立ち上がり逃げようとする
だが逃さん。
「離れて!まじ離れて!暴走する!勃起したから!危ない!」
「暴走しよーよ、一つになろうよ、アクエリオンしようよ」
「君さ!あのCM見る度にこっちみるなよ!!食卓に居合わせてる両親が「手を出したら解ってんだろうな手前」ってみんだぞ!!」
「ああっ!だから結婚ね!!世間的に結婚したらOKだからね、してもいいしね!!もう我慢の限界なんだー!じゃあ来年しよ結婚!!」
「そんな軽く言うことか!!」
「テレビみながらプロポーズするヤツには十分だよね」
「冗談だったの!君が制服エプロンで洗い物してるの見て思わずムラムラしていってしまったの!!」
「それでも結婚まで待てるお兄さんが凄い」
その後、夜勤明けで帰ってきたお兄さんのお母さんに私たちは説教を受けましたとさ。
結局私は16になったら結婚はしてもいいそうです。
でも高校は通うことになった。
「って感じになった」
「な…なん…だと…」
「奥様は女子高生…だと」
その話を幼馴染の織斑君と五反田君に話すと驚愕していた。
そりゃそうだ。
「工藤まじ結婚すんのかーありえねー!!」
「千冬ね…いやなんでもない」
「でも籍だけね、結婚式は成人式のあとの予定」
私はにやりと笑いながら薬指の指輪を掲げる。
「まぁ、そうなるだろうと思ってたけどな…貴仁さんへのお前のべったり具合みると」
「でも学校はどうすんの?」
「藍越にするよ、君らと一緒の」
完璧に一夏にフラグの立たないオリキャラ投入してみた。