どうも最近憧憬の目線を感じる。発信元は分かっているのだが、原因がさっぱりである。
分からない事は後に回し、とにかく次のページに日記の続きを書くこととしよう。また木を削りなおさなくても良いなどと、紙とは偉大である。
転生76日目
昨日ドワーフの名工とやらに会いに行ったのだが、剣はまだ出来ていないという。良い剣を造るならば予定など有って無いようなものだと言い切る彼はとても職人然としていた。素晴らしい。
まぁしかし刃の部分は大抵終わっており、後は装飾や鍔、鞘などの周りの物を他の職人が造ってくれるそうだ。ところで刃を見せてもらったのだが、反りや波紋がある片刃の剣、という明らかに日本刀の形であった。どういうことだろうか。
なにはともあれそう言う理由では仕方ない。とりあえず宿に戻り、明日は観光でもするかという話しになった。
しかし女性は風呂が長いな。私も入ってきたが、感覚を失っているのが恨めしくなったのは今日が初めてかもしれない。
転生77日目
この地下帝国、聞いてみれば面白いもので、職人気質のドワーフ達が地上を疎ましく思って勝手に集まって造ったという。王は居らず政治は無く自由に暮らしており、今でも拡張工事が誰かの手によって勝手に進んでいるという。良いのだろうかそれで。
王は居ない、と言ったが、神は居る。見たことこそ無いが、ドワーフ達が一心に信仰している神、ブラウニーがこの地下帝国を見守ってくださっている、らしい。私にはよくわからないが、元々争いを好まない者たち故の無法国なのだろう。
そういえば昨日書き忘れたが、私の斧も名工ハダードさんに預けている。何でもバスラを纏う武器など珍しい、儂が鍛えてやるわとのこと。ついでに私も鍛えられそうになった、恐ろしい。
完成すれば息子さんが伝えに来てくれるとか。大体三日ほど、と聞いた。女王の剣とは凄い差だが、そんなものだろう。
さて観光だが、正直物珍しい物ばかりでそれが普通に見えてくるほどだ。少し行った街角では自分で造ったであろう何か凄い形のオブジェが並んでいる。曲がりくねった何か、動物と動物を合わせたキメラのような何か、とても大きな蛇のような何か……それはアスガルドで見た翼の生えた蛇だった。ラプシヌプルクルと書いてあるその横には、先日のドラゴンまであった。そういえばあのドラゴンはどうしたのだろうか、もう腹の中は勘弁だが、一度見に行っても良いかもしれない。
遠くの露店ではアクセサリーを売っていたのだが、これまた素晴らしい出来である。ラピスラズリであろう宝石を研磨して嵌め込み、銀細工の紐で造り上げられたネックレスや、溶かして引き伸ばしたと思われる円環状の石・真鍮・真珠・ダイヤモンドを、四層に重ねている物。何故重ねたのかさっぱりだ。不純物が混じっていなかった辺り凄いと思うのだが。
その中でも、透き通った水晶のイヤリングをペルラが欲しがった為、スリジエが買ってあげていた。私が一文無しなのは分かっているが、こういう時は少しばかり申し訳なくなるな。スリジエ自体も同じ物を買っていたが。
あぁ、貨幣自体はピクシー除く妖精種共通だそうだ。
後はそうだな、広場に行けば前世のウォータースライダー並みの滑り台があったことに驚いたな。曲がりくねって逆に滑りにくそうだった。ピクシー達がどちらが先に滑るか言い争っていたが、滑らない方が懸命だと思う。
ペルレはそんなものに興味は無いようでまるで滑り台を見なかった。それよりも喧嘩を見ていた辺り、やはりこの子もダークエルフだということだろう。
一生分、いや生きてはいないのだが、それほどまでにドワーフの国は驚きばかりだった。スリジエなど眼を輝かせていた。彼女は来たことがあるのではないのかと思ったが、観光は初めてだそうだ。そういえば女王の使いが帰らなくても良いのかと思ったが、剣を受け取るまで帰れないという。
なんにしても有意義な一日だったとして、寝るとする。しかし女性の風呂は長い。あれだけ血気盛んでも身嗜みは大切のようだ。
転生79日目
斧が出来たと息子さんが伝えに来たので、受け取りに行った。
来たかと大きく重い声で迎えてくれるハダードさんは、どでかい斧を手に持ってこちらに向かってきたのだ。どでかい斧、まさかアレがと思ったがその通りだった。
目測だが伝えよう、柄の部分六十センチ、刃の部分九十センチ。全長一.五メートルぐらいだ。いやおかしい。
そもそも刃の部分が柄より長い時点でおかしいのだがそれは置いておく。凄いところはなんと柄も鉄で出来ており、更に刃の部分は木こりのようなものではなく戦斧のような分厚いものである。あとどこか禍々しい。明らかに戦闘目的であり、明らかに人間が持つ物ではない。そういえばこの場に人間は居ないことを思い出した。
そんな物を軽々と持ち上げるハダードさん、ほほうと感心するスリジエ、キラキラと素晴らしい物を見るような眼で斧を見詰めるペルレ。もしやすれば私はエルフ達の方が分かり合えるかもしれないと思った。
しかし、少々重いがお前なら大丈夫だと言ってくれ、その通りであったことも含めれば私はやはりエルフには敬遠されるかもしれん。
何でもこの斧、バスラを取り込んだ特別製であり、炉に入れている内にバスラが炎の気質を持ってしまったために、それを取り込んだこの斧は炎を纏うとか。久しぶりに要望無しだったから好き勝手にやっちまったと笑っていたハダードさんは職人のお遊び心もある、確かに名工だ。
炎を纏えば熱が鉄を伝わって柄も熱くなるという。確かにこれは私くらいしか使えないな。しかしこれは欠陥品なのかそれとも専用武器で良いのか……。そういえば私が鍛えられれば、私もこのような鉄ばかりの炎を纏う骨になっていたのだろうか。空恐ろしい。
転生80日目
記念すべき80日目だが事件が起きた。いや記念していいのだろうか。
まぁ事件だが、ペルレがハダードさんの工房から武器を持ち帰っていたのだ。本人曰く「地面に落ちていたから拾った」と言っていたが、ワープホールを使って宿から直接取った辺り窃盗である。すぐに謝りに行ったが、お遊びで造ったのだから別に良いという。ちゃんと使いこなしてくれればそれで良いと。懐が広いドワーフである。
喜色満面の顔で武器を振り回すペルレは見ていて微笑ましい。取ってきた武器は大鎌という珍しい物であるため中々扱いきれず、時々私に当たるがまぁ仕方ないだろう。
ところで宿の従業員らしき女性ドワーフは、怖々とした仕草で食事の旨を告げてくれたのだがどうしたのだろうか。
しかし明日はどうしたものか。散歩くらいしか思いつかない辺り私も娯楽の引き出しが少ないのだと感じた。とりあえず寝るとしようか。風呂はもう入らないことにした。
あと、そろそろ私の肩甲骨に大鎌が当たっていることに気づかないものだろうか。嬉しいのは分かったのだが。
転生84日目
どうにもやることが無いので、私は散歩、ペルレは鍛錬、スリジエはその付き添いということでこの数日は過ごしていた。
そんな中、朝起きるとピクシーが私達を訪ねてきたという。誰だと思って会ってみれば、彼はピカロと名乗った。
ピカロはハダードさんの大親友であり、彼が名工である裏には彼の尽力もあるとか。どうも一行で纏められそうにないほど喋られると途中から聞き取りづらくなって困る。彼はお喋り好きのようだ。
何でも私の斧がバスラを取り込むようにしたのも彼だという。
で、彼が何をしに来たかというと、女王の剣が出来たので取りに来てほしいと。彼らの凝り性にしてはどうも早くないかと思ったが、元々規格は決めており、その中でどれほど完璧な物にするかを凝っていたためこれほど時間がかかったとか。
道中でピカロの喋り過ぎにペルレが辟易するなどもあったが、ハダードさんに剣を見せてもらえた。
おお、と感嘆の声を上げた二人のダークエルフから察するに、本当に素晴らしいものなのだろう。残念ながら後光が眩しくて私には見えなかった。成る程これはあの女王に相応しい。むしろあの女王以外所持してはいけないのではと思うほど似合うだろうとも。
剣の評議に盛り上がる四人を見て疎外感を少し覚えたのは、おかしいことではないと思う。
転生85日目
今まで世話になっていた宿を後にし、馬を駆って元来た道を戻ってきた。今日は森の岩陰に身を寄せて寝ると言う。火を起こし、川から魚を獲って焼く。ところで私の斧は火をつけるのに便利だった。
ペルレはこんな時も鍛錬を欠かさず、今日はベアを仕留めてきたと喜び勇んで帰ってきた。もう魚を獲った後だったので処理に困ったが、スリジエが塩揉みして日持ちするようにしてくれた。彼女は良い嫁さんになるのではないだろうか。
転生88日目
やっとのことで王都に戻ってきた、喧嘩の様子も懐かしい。女性のダークエルフが男性のダークエルフを踏みつけていた。勝者を称える声が聞こえる。
今日は疲れたので身嗜みを整えて明日謁見して剣を献上すると言う。私は別に同伴しなくとも良いはずだが、王都に帰ってきたときに衛士に私も来いと言われてしまった。何なのか気になるが、はて。
転生89日目
さて女王である。いつも通りの輝きで安心すべきか否か、しかし眩しい。
彼女に対してスリジエは最大限の礼をしながらも自らの手で献上することを許されたそうだ。周囲のどよめきと賞賛が耳に入る。いや無いが、聞こえてくる。ちなみに私は常に頭蓋骨を垂れている。ローブについたフードを被ってもいいと言われている辺り寛容な方なのだろうか。
頭を上げて良いと聞いて眼孔を向ければ、いつもより一層輝いている女王が。眩しい剣に眩しい女王で足し算されたのだろうか。
そして私への用件だが、先の一件で信用できることが分かったのでアスガルドに帰ってもいいという。口実が出来ればすぐに帰す辺り中々適当な国である。あといつでも来て良いそうだ。
私が帰る、と聞いて少し落ち込んでくれたスリジエはそれでも笑顔でまた会おうと言ってくれたが、問題はペルレであった。なんと言えば良いのか、あのように慕ってくれているペルレを放って帰るには少々頭を悩ます必要がある。
転生90日目
さてはてペルレは予想通りに大暴れ。絶対離れないと言ってしがみついてくるのだから困った。再び来れると言っても聞きはせず、どうしたものかと思っていればスリジエが提案してくれた。
ついて行けばいい、と。
私はあちらでは完全に自給自足であり、むしろ食べなくても良いので生きて、まぁ生きていけるが、ペルレはそうではないのだ。それは些かどころではない問題だと言ったのだが、ペルレはついて行くと聞かない。
仕方ないので連れて帰るとする。どうせといえばアレだが、恐らくすぐにアルフヘイムに戻ると言い出すだろう。こちらでもスリジエがいるのだ、戻ることに何の問題も無い。
それにアルフヘイムの入り口と私の家は近いのだ、飢え死ぬこともそうあるまい。獣は自己責任だが。
さて久々の帰郷?となるが、爺様は元気…だろうな。あとはウェアウルフ達に占拠されていなければ良いが。
明日に備えて寝るとする。
著者:骨
後書き
ゼノブレイドってやり始めると99時間以上しちゃうね。
あとDOD2は黒歴史なので記憶から消去していますすいません。