「シンジ、ワイを殴ってくれ!!!」
「気でも触れたか?」
第四使徒シャムシエルを倒した次の日学校にてトウジはシンジに会った瞬間、自分を殴れと言うドMに目覚めたかと思うような事を言い出してきた。クラスにいる皆が自殺志願としか思えない発言に戦慄していると
「ワイは正気や!!!ワイはな、お前の苦労を何も知らずにお前を殴ってしまったんや!!お前を殴った事は後悔しておらん。だけどそれじゃあワイの気が済まんのや!!!そやから、ワイを殴れ!!!」
「よかろう。」
トウジの熱い言葉に従い腕を上げる。ある程度力を抑えて軽く殴ろうとシンジは考え
「いいか、シンジ!!!本気で殴るんや!!!そうでなければワイの気が晴れん!!!」
その発言にシンジとクラスメート達の動きが止まった。そして哀しげな表情で
「・・・見上げた漢よ。己を曲げぬ為我が全身全霊の拳を貴様のような華奢な肉体で受け止めると言うのか・・・。だがな、トウジ貴様の器では俺の一撃を耐えうることは万に一つも有り得ぬ!!!・・・死ぬ気か?」
その言葉に対しトウジはフッと笑い
「一発で死ぬんやら、ワイはそれまでの器という事なんやろ。だからお前は気にする必要はないわ・・・。そやから殴れ!!!このワイから誇りを無くさん為にも!!!」
トウジの見事な覚悟にシンジはまるで千年の知己を見るような目でシンジはそっと拳を握る。
「貴様と言う漢に会えただけでもこの町に来た甲斐があったと言う物よ。故に俺は悲しい、わしの手で貴様を葬らなければならぬのだから。」
「シンジ・・・」
「喰らえぃ、トウジ!!!これが拳王の全身全霊の一撃よ!!!」
「トウジィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
ケンスケが我に返りトウジに叫ぶがトウジはそっと微笑むだけだった。
直後、ゴシカァン!と日常ではまず聞くことが出来ない様な有り得ない破壊音が教室に鳴り響いた。
誰もがトウジが[禁則事項です]と成ってしまった姿を想像し目を背ける(委員長は失神した)。しかし皆の現実逃避はある男の一声で破られた。
「な・・・なんでワイは生きてるんや?」
有り得ない筈の声を聴き皆が目を開ける。そこに居たのはシンジに[禁則事項です]にされた筈のトウジだった。シンジの拳はトウジの体でなく後ろの黒板を砕いていた。
「今、わしに非礼を詫びるために死を覚悟した漢トウジは死んだ!!ここに居るのは妹の身を案じ我の友である漢トウジ!!」
「ワイを、ワイを友として認めてくれるのか!!!シンジ、お前はホンマにすごいやっちゃなぁ・・・。」
そう言ってトウジは目から一筋の涙を流す。そんなトウジにシンジは
「このシンジ、生まれてこの方初めて黒王号以外にも友と言える者を得たわ。」
そう言って抱き合う二人。それを見ていたクラスメート達の心は一つになった。
どうしてこうなった。
シンジとトウジが友となった翌日、ネルフでは前回失敗した綾波の起動実験を行っていた。そこにはミサトやリツコ、なんの気紛れかシンジも来ていた。
「ボーダーライン突破、零号機起動しました。」
意外とあっさりと絶対境界線を越える事が出来、エントリープラグの中で綾波がそっと安堵の息を吐く。
「碇、未確認飛行物体が接近中だ。恐らく使徒だな。まさかこのタイミングで来るとはこのふ」
「実験中断、総員第一種警戒態勢。」
「初号機は後380秒で準備できます。」
「よし、出撃だ。」
シンジ君がエヴァに乗るまで碇司令との第二次親子喧嘩が勃発しそうになったが、レイの文字道理命懸けの説得でシンジはエヴァに乗ってくれる事となった。
そして今回来た使徒は丸で手抜きデザインの様な巨大な八面体をした使徒だった。正直あまり強そうに見えない。
「射出準備完了、エヴァ初号機発進できます!!」
「発進!!!」
そう言ってエヴァを乗せたリフトがエヴァを地上に送り届けるため動き始める。そして地上まで後半ばと言った所で
「目標内部に高エネルギー反応確認!!!」
「まずい!!!シンジ君避けて!!!」
「む?」
そしてシンジが地上に出た瞬間に使徒から放たれる一筋の閃光。その閃光は何の容赦もなくシンジに直撃した。
「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「シンジ君!?」
圧倒的なエネルギーによりエヴァのATフィールドを軽々貫き装甲を溶かしていく。。
「初号機を回収して早く!!!」
「待てい!!!!」
ミサトがシンジを回収しようとリフトを下げようとした時現在ビームに直撃しているシンジから交信が入った。
「何言ってるの!?シンジ君早く戻さないとあなたが!!!!」
「黙れぃ!!この拳王に後退は無い!!!あるのは前進勝利のみ!!!」
そう言いながら閃光に逆らいながらも一歩一歩前進するシンジ。ATフィールドは貫かれ、装甲は溶けながらも前進していく。
「このような物、微に砕いてくれるわ!!!
そうして莫大なエネルギーに逆らいながらも使徒の目の前に到着したシンジ。しかし流石にダメージが大きいのかふら付いている。そしてシンジは拳を振り上げ
「喰らえぃ、この拳王の一撃を!!!」
全力で振り下ろした。ここに来るまでのダメージなど元から無かったかのような見事な一撃。使徒の強力なATフィールドも容易く突き破り使徒に拳が直撃する。
殴られた衝撃で体にヒビを入れながら地面を転がっていく使徒。ミサト達はその瞬間勝利を確信したが、
「ぬぅ!!!しくじったわ・・・。」
今の一撃に全力を振り絞ったせいでその場に崩れ落ちるシンジ。使徒の方はボロボロだが何とか立ち上がって(浮き上がる)いた。
「シンジ君を回収して早く!!!」
唖然としていた司令部でミサトが真っ先に我に返り即座にシンジを回収するように命令を出す。表層都市の一部分を切り離しエヴァを落下させることで何とかシンジを回収した。
回収するまでの間使徒は何の攻撃もしてこなかった。恐らく流石の使徒もかなりのダメージを負いそれどころではなったのだろう。
回収したエヴァは悲惨としか言いようのない状態だった。装甲は表も裏もほぼ完全に融解しておりシンジがこうして生きているのか疑問に思う程だった。シンジは回収した時流石に失神していたため今は病室にいる。
「まさか、あのような攻撃をしてくるとな、このh」
「初号機の状態は?」
「ほぼ全ての装甲が融解してるわね。でも不幸中の幸いにも中枢はなぜか無事なのよ。これなら何とかなるわ。」
「シンジ君は?」
「外傷も無いし、神経パルスに異常も見当たらないわ。あと少ししたら起きるんじゃない?」
シンジがデタラメなのはいつもの事なので特に突っ込まないミサト。しかしそんなデタラメな強さを持ったシンジさえ今回の使徒には敗北したのだ。シンジの力を過信し今回もあっという間に倒してくれるだろう、と私たちは碌な作戦も立てずに戦場に送り出したのだ。
「最低ね、私たち・・・」
今更後悔しても手遅れなため、今はあの使徒をどうやったら妥当することが出来るのか、シンジが起きるまでにできる事はすべてやっておこうと決意するミサトだった。
直後病室からシンジ君の叫び声が聞こえた。