Q.汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン初号機専属操縦者サードチルドレン碇シンジについて教えて下さい。
弐号機専属操縦者セカンドチルドレンの場合
「バカシンジ? そうね、なんか死んだ人間みたいな目をしてて、ぼーっとしてやる気なさそーで見ててイライラするのよね。しかもすっごい嘘吐きだし! 『立てば嘘吐き座れば詐欺師歩く姿は詭道主義』ってよく言ったもんだけど誰の言葉なんだか。……でも、そういえばあいつ、確かあの機関にいたのよね。実はアタマ良いのかしら?」
彼の保護者でもあるNERV作戦部長の場合
「そうねぇ、悪い子じゃないのよ? ただなんていうか……そう、『怖い』のよね。いえ、確かに家事はやってくれるしエヴァの操縦も真面目にしてるんだけどそういう事じゃなくてね……。噂じゃ私の母校が『鷹』に潰された時も居合わせたらしいけど、正直その場に行かなくてよかったわよ……」
第一中学に通うジャージ少年の場合
「ワシやケンスケはセンセを友達や思とるけどな、センセは多分ワシらを友達やとは思てへんやろなぁ。センセがワシらより年上ちゅうのもあるが、それ以前にセンセはそもそも他人を必要とはしてへん気がするわ。後はなんちゅうか、とにかく謎なお人やな。なんや前にも家庭教師のバイトをしてたとかで、ワシやケンスケやイインチョの勉強見てくれるんは助かるけどな」
作戦部長の親友のNERV技術部長の場合
「前々から噂には事欠かなかったわね。いえ、司令じゃないわよ? あの人がシンジ君についてなんて語る訳ないでしょ。例えば園山博士や三好先生辺りは色々と面白い話を聞かせてくれたわね。後はあの『天才』絡みの話なんか枚挙に暇がないくらいだわ。後、どうも本名を呼ばれるのを嫌うようね。ネルフでは皆呼んでるけど」
彼の父親の腹心たるNERV副司令の場合
「あの虚無を具現化したような目さえ除けばユイ君にそっくりだな。そういえばシンジ君も京都に住んでいたという話だが、親子三人とも京都で大学生とは中々面白い因果かも知れん。妹? 飛行機事故? いや、済まんが私には心当たりがないな……。碇にはシンジ君以外にも子供がいたのかね?」
三重スパイをこなすセカンドチルドレンの護衛の場合
「俺もこれまで様々な異形や異能を見てきたが、シンジ君みたいなタイプは会った事が……いや、一人しか会った事がない。あの刺青少年も相当なモノだったが、まさか同じようなモノがもう一人いるなんてな……。あの『鷹』から一目置かれているのも頷けるってもんだ。彼を呼び込んだのはもしかしたら司令にとって最大のミスになるかも知れないな……」
零号機専属操縦者ファーストチルドレンの場合
「碇さん。初号機専属操縦者。碇司令の息子。私にない絆を持っていた人。私にない心を持っていない人。セカンドを言葉一つで止められる人。セカンドを身体一つで止められない人。弱過ぎるために強い人。強過ぎるゆえに弱い人。
通称、戯言遣い」
フクインパニカル 〜世界の終わり、物語の終わり〜
副題「もし戯言遣いの本名が碇シンジだったら」
あの『堕落三昧』斜道卿壱郎研究施設より帰還して数日後、骨董アパートで過ごしていたぼくの元に一通の封筒が届いた。中身はかれこれ十年以上は会っていない父親からの『来い』という手紙と女性の写真、そして箱根に建設中の第三新東京市行きの切符だった。
これを境に本来あったはずの物語は全く別の物語を巻き込み、とは言えどちらがどちらに巻き込まれたかなど一切判断が付かず、只々ぼくたちの世界という名の物語はあらゆる思惑とあまねく思索を帯びて、始まりという名の終わりに向けてひたすら収束し集束し終息する事になる。――――まあ、戯言なのだけれど。
「サードチルドレン碇シンジ…………って十九歳? エヴァって十四歳しかダメじゃなかったの?」
「基本はそうよ。寧ろ彼の方が例外ね」
「例外か……。なんとなく判るわね」
無為式の胎動
「碇、本当にシンジ君をエヴァに乗せて良いのか? 判るだろう、彼は普通じゃないぞ」
「知っていますよ、冬月先生。シンジの異常性は……恐らくかの玖渚の令嬢の次くらいに私が知っています。それでも我々の計画にはシンジが必要なんです」
人類補完計画
「エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!」
生存競争の開幕
「使徒が…………怯えている?」
(ATフィールドは心の壁……。あれが戯言遣いの心が顕れたモノなら確かにこれ以上おぞましいモノはないわね)
人類最弱の脅威
「あなたは…………一体なに?」
「サードチルドレン、とかそういう事じゃないみたいだね。まあ、強いて言うなら只の最弱だよ」
人外と人でなしの邂逅
「これがエヴァンゲリオン弐号機! 世界初の制式タイプよっ!」
「制式でも人識でも良いけど、よくまあよりによって赤色なんて選んだねえ……」
もう一人の赤き最強
「手で受け止める!?」
「……成功確率は?」
「毎度の事だけど、シンジ君が関わった時点で全ての演算が完膚なきまでに完璧なまでに狂ってるわ。つまりは計算不可能」
「しなくても絶望的な事くらい判るわよ!」
加速する物語
「フォースが決まったの?」
「ええ、この子よ」
「……よりによってこの子?」
フォースチルドレン「闇口崩子」
「ゼーレの新たなるメンバー、西東天。君に全権を委ねよう」
「『君に全権を委ねよう』。ふん。面白い、お前達の計画とやら、あるいはそれが俺の求める世界の終わりかも知れん」
動き出す人類最悪
「ぎゃはははははは! おねーさんが葛城ミサトか! 澄百合学園史上唯一の満点卒業者ながら『神理楽』就職をケッたっていう変わり種! 丁度いいや、遊ぼうぜおねーさん!」
「加持リョウジ…………。『今は』、NERVの……保安部長でしたか…………。上手く、化けたものですねえ…………。殺し名や呪い名でこそないものの……こと暴力の世界ではそれなりに名が知られたあなたが……まるで普通の世界の人のようですよ…………? まあなにあれ、我があるじキール・ローレンツ様を裏切ったあなたが悪いんです……。だから……私を恨まないで下さいね…………」
「惣流・アスカ・ラングレー、狐さんの命令だ」
「惣流・アスカ・ラングレー、狐さんの命令だ」
「「左右同時に死んでしまえ」」
牙を剥く十三階段
「まったく、あの傍観者に出夢の野郎、加持のおっさんまでいるとはよ、とんだ傑作だぜ」
「殺しはダメですよ、人識くん。哀川のおねーさんに怒られちゃいますから」
殺人鬼兄妹の参戦
「フィフスが委員会から直接?」
「なんでも、シンジ君の友達らしいんですが……」
「げらげら――げら。久しぶりだぞ、いーちゃん」
「あ……あああああああああっ!!!」
フィフスチルドレン「想影真心」
「MAGIタイプが最低でも五、松代とドイツ・中国です!」
「メールを受信しました! 発信者は『死線の蒼』を名乗っています!」
「MAGIの侵攻、止まりました!」
「戦自の部隊が退いていきます!」
「内閣で動きがあった。恐らく玖渚機関の介入だ」
「友が、力を貸してくれてるのか……?」
青色サヴァンの助勢
「よう、いーたん。面白い事になってるな、あたしも混ぜろ!」
死色の真紅の本領
「いーちゃん、きらい」
「嫌ってほど好きで――憎たらしいほど愛してる」
ふたりのディングエピローグ
そして、一体何時始まったのかも判らないこの物語は、気の遠くなる程に続き続けてきた末に、世界の全てを呑み込んで遂に永劫の終わりを迎える。エヴァンゲリオンによって齎される混然とした混沌と混乱、それは正にフクインでパニカルな物語。
はじまらない