「ありがとうございました!」「「「ありがとうございました!」」」5月も終わりに近づいた、とある休日の高町家。その敷地内の一角にある道場から4人の声が響き渡った。言うまでもなく、士郎さん・恭也さん・美由希さん、そして僕である(葛花は僕の家でお昼寝中)。今日もまたこうして練習にお邪魔し、今は練習後の最後の一礼を済ませたところだ。これから道場の掃除をして、その後に解散となる。「あー、疲れた」「お疲れさま、春海くん。まだ始めてからあんまり経ってないし、やっぱりまだまだ慣れないかな?」「美由希さん。ま、そうですね。一口に剣術って言っても、やっぱ使う体の場所が今までとは全然違うので。筋肉痛自体は無くなってきたんですけど、素振り一つでこれですよ」言いながら自分の掌を見せる。そこにはこの数回の出稽古や、家で自主的にやっている素振りのおかげで血豆だらけ。それどころかその血豆すら破けて血が吹き出ており、事前に巻いておいたテーピングを血で汚していた。うーん。自分で言うのもなんだけどグロいね。「うわー、───って!春海くん、なにこれッ!?」「はい?」「こんな状態で放っておいたら余計にひどくなっちゃうよっ!なんでもっと早く言わないの!」「え、あ、……あー、すみません」最近、というか葛花と鍛錬をするようになってからというもの、多少の出血は日常茶飯事だったので(それ故に親に隠し通すのは苦労したが)その辺りの感覚がすっかり麻痺していた。この傷自体も水道で洗っておいて、帰ってから処理すればいいと思ってたし。「美由希、どうしたんだ?」「あ、恭ちゃん!これ見て、春海くんの手!」「あ、あははは……」「手?───これは」美由希さんに言われて僕の手を覗き込む恭也さん。「ね、ひどいでしょ?」「懐かしいな。俺や美由希も昔はよくこうなったものだ」「って、そうじゃないよね!?い、いや、確かにわたしもよくこうなったけど、それは……」「「それは?」」「……う、うぅ」左右から同時に訊き返す兄と弟弟子(御神流は教わっていないが、一応そういう扱いになっている)にたじろぐ美由希さん。どうやら自分がまったく人のこと言えないのに気付いたらしい。と、そこで今まで見ていた士郎さんが笑って近づいてきた。「ハハハ、恭也も春海くんも、美由希をイジメるのはその辺にしておけよー」「士郎さん」「とりあえず、春海くんは道場の掃除はその手じゃムリだろうから、家の方に行って治療をして貰って来るといい。今の時間ならレンが居るはずだから」「あ、はい。すみません」「恭也と美由希は残って掃除だ」「……了解」「はい!」まあ、そう言うことになった。すみません、ご迷惑お掛けしちゃって。**********春海くんが道場から出て行ったあと、物置の中から箒と雑巾を取り出しながらわたしは隣の恭ちゃんに話しかける。話題は出て行った春海くんの、その手。「恭ちゃん、さっきの春海くんの手って……」「ああ、うちの道場でやっている分だけでは、とてもじゃないけどあれ程の傷は出来ないな。明らかに自主練を重ねている証拠だ」「やっぱり」さっきの会話の中で恭ちゃんは自分もわたしもよくこうなったと言ったものの、本来ならばあんな傷痕は出来るはずがないのだ。わたし達が小さな頃からやってきたものとは違い、春海くんに教えているのは御神流ではなく普通の剣術。しかもその練習メニューも極々一般的なもの。自分で言うのもなんだが御神流の鍛錬密度は異常だ。その御神流であるわたし達と同じだけの血豆やそれが破れた傷ができること、それ自体がおかしなことなのだ。つまり春海くんは素振りや型の訓練だけで、小さな頃のわたし達と同じだけの密度の訓練を自主的にこなしていることになる。そのことを恭ちゃんに確かめてみると案の定だ。自分の兄もしっかりと気が付いていた。「俺も当然そうするが、お前も気をつけてやれよ。今は結果が外に現れているだけマシだが、あの分だとそのうち体の内側にも疲労が溜まる」「うん、それはもちろんだよ。……恭ちゃんみたいな例もあるし」「う……まあ、そのことは今では兄も反省しているわけで……」「もう。当たり前だよ」この兄、今でこそこうして元気に剣術をしているが、数年前に父さんが入院してしまった頃、自分の膝を壊す一歩手前までいったことがあるのだ。当時は翠屋もまだ営業が軌道に乗ったばかりで店員も少なく、その経営は身内である兄も自分も毎日手伝わなくてはいけないほどだった。晶やレンもその頃はまだうちに下宿しておらず(さすがに看病と店の経営で忙しそうにしていた母さんに晶を泊めては言いだせず、晶の方も晶自身が遠慮してしまったこともあり、ちょくちょく泊まることはあっても、あの子が本格的に家の一員になったのはレンと同時期の2年前だ)、父さんの看病もあって高町家は誰もが余裕のない毎日を送っていたため、わたし達も御神流の鍛錬をする暇はまるで無かった。しかし、目の前の兄は違ったようで。当時の兄は子供心に父親が不在の間は自分が家族を守るのだと考え、皆が寝静まった後や起床する前に隠れて無茶苦茶な鍛錬を重ねていたのだ。それも、翠屋の手伝いや父さんの看病も一切休むことなく。当然ながら体はボロボロ。特に膝への負担は酷かったみたいで、医者の話では本当にあと少しで歩けなくなるところだったらしい。翠屋の手伝いや父の看病に加え、皆に隠れてそんなことをしていたのだ。まだ体も出来上がっていなかった当時の恭ちゃんでは、当然の結果だったのだろう。ただ、幸いにも最悪の結末だけは回避された。そうなる前に父である高町士郎が意識不明から回復して目を覚まし、御神流を修めた凄腕の剣術家である父さんは恭ちゃんの現状をひと目見ただけで看破してしまったのだ。父さんに言われ、息子を問い詰めて話を聞いた母さんは当然ながら涙を流して大激怒(後にも先にも母さんが子供を叩いたのはこの一度だけだ)。きれいな顔を真っ赤にして。さらさらのほっぺを涙で濡らして。当時の母さんは勝手なことをした恭ちゃんに対してだけでなく、幾ら忙しかったとはいえ夫に言われるまで気付きもしなかった自分を相当に不甲斐なく思ったみたい。それ以降、医師によって父が退院するまでは本格的な鍛錬の、その一切が禁止された。恭ちゃんも恭ちゃんで母さんの涙はかなり堪えたようで、以後は医者の指示にしっかりと従って療養していた。と、まあ。こんな経緯もあってか、恭ちゃんとしては当時のことは軽いトラウマみたい。あのときの母さんの剣幕を思うと、それも無理ないだろう。同情する気は全く起きないけど。「……もう、あんな真似は絶対にしないでね」「……すまん」短く返す兄の声に、安心する。きっと、もうあんなことはしない。そんな恭ちゃんの気持ちが、その一言から伝わってきたから。「…………おーい。兄妹で仲睦まじいのは良いんだが、今は道場の掃除を頑張ろうなー。父さん寂しくて泣いちゃうぞー」「は、はいっ!?」「……了解」一人で道場の床の雑巾がけをしていた父さんの声に2人して返事を返して、急いで掃除を始める。と、とりあえず、今は掃除がんばろっ!**********士郎さんに言われた通り、道場から出て庭を通って玄関をくぐって高町家にお邪魔する。初めての高町家訪問から何度かなのはの部屋に遊びに来たりしてお邪魔しているため、この辺は勝手知ったる何とやら。玄関を潜ってレンを求めてリビングへ。其処に居なければ少し大声を出して呼びかけよう。そう考えながら廊下を歩いて高町家リビングに繋がる扉に手を掛け、開───「さすらいカメだぜ、ヘヘイへーイ!♪走るぜ回るぜ、ヘイヘイへーイ!♪」───こうとした手がピタリと止まる。「……………………………………………………………………………」「かーめかめ、かーめかめ、ロッケンロ───ル!!♪」自分の沈黙が、レンのものであろう歌声を一層引き立てる。「…………」僕は中に居るレンに気付かれないように、そっと扉を少しだけ開いて中の様子を覗き見る。傍から見れば明らかに不審者として警察を呼ばれるレベルの怪しさだが、この際気にしてはいられない。緊急事態なのだ。「イカしたカメだぜ、ヘヘイへーイ!♪走るぜ回るぜ、ヘイヘイへーイ!♪」何やら歌詞も2番に突入して興も乗ったらしく、より一層ノリノリで声を張り上げている鳳蓮飛ちゃん小学6年生。今日も中華系の普段着を着てポヤポヤした笑顔で高町家の家事をがんばっている。……歌いながら。(……やべー、レン熱唱だよ。僕が来たことにも気付かないくらいの熱唱ぶりだよ)扉の隙間から見える彼女は現在高町家一同の洗濯物を畳みながら有らん限りに熱唱していた。ムダに良い声なのがまた腹立つな。(うわー…………どーしよー)いやいや、落ち着け俺。ここは冷静に、クールに切り抜けろ。大丈夫だ、俺ならできる。俺はできる子。無事に落ち着くことに成功した僕は、この場を切り抜けるためのプランを頭の中に並べ立てる。プランA このまま気にせず中に入るダウト。アレ本人は絶対ヒトには聞かれてないと思ってるよ、熱唱だもの。腕とかメッチャ振ってるもの。このまま僕が中に入ったら気まず過ぎて治療どころじゃねえ。下手すれば今後の人間関係に致命的な亀裂が生じかねない。プランB 歌が終わるまでこの場で待機これもダメだ。そんなことをしていたら道場に戻るのが遅れてしまう。幾ら士郎さんから掃除は免除されたとは言え、唯でさえ僕に何の見返りもなく剣の指導をしてくれているのだ。ここは出来るだけ早く道場に戻って少しでも掃除を手伝うべきだ。プランC 一旦この場は退却し、治療せずに先に道場の掃除を手伝うボツ。そもそも士郎さんから先に治療してくるように言われたから此処に居てこんな状況になっているのだ。それをせずに道場に戻るのは本末転倒。てか戻ってどういう言い訳をすればいいんだ、この状況を。正直に言おうものなら僕がレンに殺されるわ。プランD 一度玄関まで戻り、わざとレンにまで聞こえるように声を張り上げながら、あたかもついさっき来た風を装ってリビングに入る。(これだっ!!!)完璧!このプランDならばレンも僕が近づいていることに気付いて熱唱を止め、更に治療を始めるまでの待ち時間も極限まで短くすることが可能となる。もちろんこの場に僕とレンの2人以外誰も居ない以上、僕が誰かに話さない限り他の者にこの事がばれる心配も皆無!!「かーめかめ、かーめかめ、ロッケンロ───ル!!♪」目の前で歌い続けるレンに、僕は不敵な笑みを浮かべる。(フフン、お前はそうやって気分良く熱唱しているが良いわ。そうやっていられるのも今の内だ。お前はもうじきそのなんかちょっとムダに上手いロック的な何かを中断される運命に───)「今夜は、あーの娘も誘うぜ、頭はビンビン!♪」(はいアウトォォッ!なんつー歌うたってんの、あの子!?)もうただの下ネタだよねっ!?(ヤバい、止めねばっ!てかもう歌うな!自分の歳考えろ小学6年生!……いかん、とっととプランDに───!!)「おーらい!!♪」と、踵を返して静かに、それでいて迅速に扉から離れようとしていた僕の耳にフィニッシュと言わんばかりに叫ぶレンの声が届く。見ると、洗濯物を畳むために下を向いたままだった顔を腕ごと振り上げていた。手に持った白いタオルがまるで旗のようだ。(ん?……終わったのか?)どうやら思ったよりも時間が経っていたらしい。僕がプランを実行に移す前に歌の方が先に終わってしまったようだ。(まあいい。それならプランBに移行して、さり気なくあの歌はもう歌わないように───ん?)───なんか、静かじゃね?(いやいやいや。歌い終わった以上こうして静かになるのも当たり前だろ。何を今更……)───なんか、レンって腕を振り上げたままこっちを凝視してね?(いやいやいやいや!アレはアレだって!一見こっちを見ているようだけど、実は歌の余韻に浸って微動だにしないだけだって!)「な、なな、なあ…………い、いつからー、そこに……?」───なんか、話しかけてきてね?(いやいやいやいやいや!!気のせいだって!!僕は気にせずこのままプランBを───)「な、なあ、……あ、は、は、春海……?……あ、あは、あはははっ。な、なんや、あんたも人が悪いなぁ、もー。あ、アレやろ……その、……そっ、そう!さっき!さっき来たばっかりなんやろっ?……な、なあ……そう、です……よね?」とうとう敬語になっちゃったよ、この子!?…………認める。認めましょう。そうです。確かにレンは僕に気がついています。───だが、まだ手はある。ここで僕がまるでたった今来たように振る舞えば何の問題も無し。大丈夫だ。僕なら難なくクリアできる簡単な問題だ。フフフ、どうやら僕の108技のひとつ『名演技』を魅せる時が来てしまったらしい。僕は意を決してドアノブに手を掛けると、リビングに繋がる扉を開いた。中に入ると、部屋の真ん中で持っていたタオルを手の中でクシャクシャしながら顔を真っ赤にしているレンがペタンと女の子座りでへたりこんでいた。やべぇ、ちょっと涙目なんだけど。可愛いんだけど。「萌えるんですけど!」「な、なんや!?」「ごめん、間違えた」熱き心の衝動≪パトス≫を言葉に乗せられる男。和泉春海をどうぞよろしく。「あ、あ~、レン、居た居た。探してたんだって」「え?……あ、や。な、なんや。ど、どないしたん?」僕の反応の薄さが予想外だったのだろう、少し詰まりつつもレンはアセアセと言葉を返す。「いやな、素振りのやり過ぎで手の皮がズルズルになって。士郎さん言われて“ついさっき”来たところなんだってー。ハハハー」「そ、そか!ほんならすぐに救急箱とって来るから!……ちょう待っとってな!」ドモりながらもなんとか言いきった彼女は僕の横を抜け、てててと脱兎(脱亀?)の勢いでリビングに駆けて行った。それを目で見送りながら、僕はさっきまでと違って一気に静かになったリビングの中で、静かに一言呟いた。「…………まいったなぁ」この後どうするか。それが問題だ。「うわぁ、これひどいなー」数分後。救急箱を持ってリビングに戻って来たレンは僕の手の惨状を見ると、痛そうに顔を顰めながらそう言った。救急箱を取りに行っている間に落ち着いたのか、まだ僅かに顔に赤みが残っているものの本人は普段通りの雰囲気で傷の具合を調べている。わざわざ蒸し返しても自分が対応に困るだけなので僕もそのあたりは全面スルーを敢行。今はソファに一緒に腰掛けて僕の手の治療をして貰っているところだ。「あかんやん、春海。こんなになるまで放っといたらー。手の皮ボロボロで血だらけになっとるし」傷の具合を調べ終わると、レンが救急箱から取り出したもので僕の右手を消毒しながらそう言ってきたので、それに僕も言葉を返す。手に走るジンジンした痛みは意地でも顔には出さない僕は男の子。我慢我慢。「稽古始まる前はちゃんとテーピングしてたんだけど、血が滲んでたから此処に来るまでに剥がしたんだよ」「言い訳すな。つよーなりたいのは分かるけど、体はそれより大事にせんとあかん。お医者さまにお世話になり始めてからじゃ遅いねんからな?」「あー……ま、そうだな。僕も医者の世話になるのは面倒だし」『前』の高校時代にちょっとしたことで一時期入院することがあったのだけど、あのときはたったの2週間が暇で暇で仕方なかった。持って行った漫画や小説の類も読みきってしまうともうやることがなくなり、残りの10日ほどは持参した某ポケットサイズのボールに収まるモンスター的なゲーム(緑)で延々と縛りゲーをしていた記憶がある(ちなみにその時の縛りは『最初から最後まで戦闘用の手持ちはヒトカゲ一匹』だった)。「またタケシに挑むまでにレベル30まで上げるのは嫌だしな……」「んー?……それは、よーわからんけど」少し首を傾げたレンだったが、僕の言葉の何に共感したのか、すぐにうんうん頷きながら包帯を巻き始める。「もし入院なんてことになったら、ええ事なんてひとつもないんやから。ずっと部屋の中で一人でおるのって意外としんどいしー」「……なーんか、やけに実感こもってんのな。なに?そんな経験でもあるの?」「え?あ……いや、そんなんとちゃうちゃう。テレビでそう言いよっただけやって、あはははっ。そんでな春海、そうなりたないんやったら、自分の体は大事にせなあかんよ?」「?……あ、ああ、だな」「そんな傷だらけでおったら、なのちゃんも心配して泣いてまうやん。なのちゃん泣かせたら悟空が悲しみのスーパーサイヤ人になった時のクリリンさんみたいするからなー?」「爆死!?」(……?)……今、わざと話題を逸らした?なんで?…………………まあ、別にいっか。言いたくないなら、それはそれでも。僕もいつまでも叱ってほしい程Mじゃないし、とっとと別の話題を振ろう。えーと、話題話題……「だったら、なのはがそんな寂しがるのなら一緒に歌でも歌ってやるのもいいかもな、あははは…………………………は………………は?」「…………………………………………………………………………………………………………」「…………………………………………………………………………………………………………」話題ミスったァッ!?テキトーに考えてテキトーに話題振ったら話題ミスったァアッ!!?しょうがないじゃん!一番最近に起こった印象深い思い出なんだからしょうがないじゃん!!一番衝撃的な出来事だったんだからしょうがないじゃんっ!!!「…………………………………………………………………………………………………………」「…………………………………………………………………………………………………………」(重てェッ!空気が重てェッ!!)やべー、やべーよオイ。せっかくほんわかしてきた筈の空気に鉛投入しちゃったよ。レンも僕も忘れかけてた記憶発掘しちゃったよ。記憶と一緒に気まずさという名のガスまで吹き出ちゃってるよコレ。「……………………………………………………………………………………………………春海」「ハイッ!?」「…………………………………………………………………………………………聴いとった?」「ハイッ!!……あ」「…………………………………………………………………………………そっか。そうなんや」…………怖いです。俯いたままで目元が全く見えないレンちゃん怖いです。僕ここで死ぬんじゃない?こんなところで死ぬんなら前世の教訓を生かして遺書でも残しておくんだった。てかDead End早いな僕の第二の人生。ああ、父さん、母さん、そしてまだ幼い我が妹2匹よ。和泉春海はその短すぎる生涯にもう幕を下ろしそうです。先立つ不幸を許してください。犯人は高町さん家のレンちゃんです。なのは、そして高町家のみなさん、あなた達の家は殺人事件の現場になりそうです。コナソばりのダイイングメッセージを残すつもりなのでコナソ君を呼んで解読してください。アリサ、結局一度も僕にツンデレしてくれませんでしたね。化けて出るつもりなのでその時にお願いします。すずか、僕が居なくなった場合アリサとなのはのケンカのストッパーになれるのは貴女だけです。がんばって下さい。そして葛花。僕はお前のことが、この人生の中で一番───?そんな感じで脳内辞書を作成(2秒)していると、いつまで経ってもレンからリアクションがないことに気がつく。改めてレンに目を向けると、そこには顔を俯けて目元が見えないままプルプルと震えているレンちゃんの姿が。「…………………レ、レン……さん?」僕は名前を呼びかけながら恐る恐る彼女の顔を覗き込んでいく。気分は爆発間近の爆弾処理班だ。失敗すれば死ぬ的な意味で。だんだんと見えてくるレンの表情。そしてもうすぐその顔全体が確認できるようになる、その時───!「あああああああーもー!はずかしいぃいいー!!」「のわっ!?」唐突に顔を上げたレンに思わず仰け反る僕。レンは驚く僕など気にしている余裕もない様子で、そのまま床にダイブしてゴロゴロ転がり始めた。僕の視界の中でフローリングの床を右に左にローリング(駄洒落じゃないよ?)。「あんな姿見られて、うちはもー生きていけへんー!!」「お、落ち着けレン!確かに歌詞も絵面もアレだったが、僕はなかなかに良い歌声だったと思うぞ!うん!」「いぃぃいい───やぁぁああ───!?」フォローの仕方ミスったぁぁっ!?僕の意図しない悲しき追い打ちにいよいよ湧き上がる羞恥心に耐えきれなくなったのか、レンはその場でローリングを止めて床にへたり込むと、うなぁぁと頭を抱えて悶えている。すげぇ、なんか目がマンガみたいにグルグルしてるんだけど。それどうやってんの?「うぅぅ───あぁぁ───………………………………………………………」それから少しして、もはや僕が哀れみさえ感じ始めた頃に、レンの悲痛な叫びは尻すぼみに消えていった。もはや自分でも完全に冷静になったとわかる声色で、僕は静かに問い掛ける。「……落ち着いた?」「……うん」「……左手も、お願いできる?」「……うん」左手も包帯巻いて貰いました。「あー、恥ずかしかったー」「アレは見てるこっちもいろいろと強烈だったけどなぁ」「うっがー!そんなこと、ゆーたらあかんー!」「アテテテテテッ!?わかった!わかったって!」左手に巻いている包帯をキツく締められたので敢えなく無条件降伏。無念である。僕は包帯を巻き終わった自分の左手を抱き寄せさすりながらレンに目を向けると、彼女はジトーッとした目でこちらを見ていた。「……なに?」「アレ、誰にも言ったりせーへんやろな?」「……アレって?」「うなッ!?そ、それはやな……」僕の言葉にうっと言い淀むレン。…………チャーンス!それを見た僕はここぞとばかりに言葉を畳みかける。「ん~?どーしたのかな~、レンちゃんは?アレって一体何なのかな~?」(すっごくイイ笑顔で相手の顔を下から覗き込むように)「う、うぅ……」「黙ってたら分かんねえぜー?ほれほれ言っちゃえよー」(控え目に言って殴りたくなる程のウザさで)「………………」自分で言うのもなんだが、妹たちが僕にこんな事したらぶん殴ってるね。うん。だが僕は違う。僕がそんな引き際を間違えるような無様な真似をする筈がない。妹たちとは違うのだよ、妹たちとは!「ほらほらー、どーしたのー?」「……………………」「んー?」「……えい」(春海の右手を掴んでグイッと引っ張る)「ん?」(レンの唐突な行動にされるがまま)「とりゃー」(そのまま腕挫十字固に移行)「……え゛」(自分の状況に気がつくも時既に遅し)「……」「……ア、アレ~?な、なにかな、これ?……ちょ、ちょっと……レンさん?ねえっ?」「…………何か遺言あるんなら、聞いてやってもえーで?」やっべ、おもっくそ引き際まちがえた。「ちょ、まッ!?ウェイトッ!待って、お願い!!ごめん!正直すまんかった!解かった!黙ってるから!誰にも言わないから!だから……ッ」「……言いたいことは、それで全部やな?」「スト~ップ!! 待った!待って!!待ってくだしぁ!!!」「なんや?」「そ、それは……」おちつけ和泉春海。ここでの発言は気をつけろ。これは重要な選択肢だ。間違えた時点で即BADどころかDEADへの直行便に叩き込まれて三途リバーで(いろんなモノが)ぶらり一人旅だ。そんな死神がバスガイドに付いてるような旅路に出たくないのならココは慎重に行け。極力刺激しないように。あたかも産卵中のウミガメに相対するが如く、慈愛の精神を持って臨め!顔が劇画タッチなりそうな緊張感を抑えながら、僕の右腕を両足で挟み込んだままのレンに首だけ向ける。「…………………」「…………………」グリン。再び顔の位置を元に戻す。(やばい、レンの目が対等な人間を見る目じゃない……)屠殺場の豚を見る目だよ、あれ。(いや待て。落ち着くんだ和泉春海。いくらこれから殺される豚を見るような切ない視線をぶつけてこようとも同じ人類じゃないか。同じ人類である以上きっと言葉で解かり合えるはずだ……!)僕は湧き上がる恐怖を必死に押し殺しながら、決死のネゴシエーションを開始した。「あ、」「つまらんこと言ったら腕1本な」どうやら彼女は同じ人類じゃないらしい。(いやいやいや、ココはポジティブ思考で行け和泉春海!『つまらんこと言ったら』ということはレンが思わずハッとなってしまうような一言を言えば良いんだ!!)「……じ、実は、僕がレンさんにあんな口を訊いたのには、理由があるんです」「理由?」「は、はい」「ほー。ほんならその理由とやら、言ってみー」ここだッ!「君があんまりにも可愛かったから、ついイジワルをしてしまったのさ」(キラッ☆)ぐい。「アァァ――――――――――!?!?」どうやら僕にニコぽの才能は無いらしい。がっでむ。「ノォォオオオオッ!?ギブギブギブギブッ!ごめんなさい!マジ調子こいてすいませんッしたッ!!」「まだまだまだまだーっ」「ノォォオオオオオオオオオオオオオッ!!?」高町家に僕の悲鳴が響き渡った。**********「あ、今度は春海くんの声だ」「……さっきのレンの奇声と言い、一体あの二人は家で何をやってるんだ?」「ハッハッハッ、レンも春海くんと仲良くやっているみたいだな。いや良いことだ。じゃあ掃除も終わったことだし、父さんはひとっ風呂あびて翠屋に行ってくるぞ」「うん。いってらっしゃい」「いってらっしゃい。……じゃあ、美由希。風呂、父さんが出たら先に入っていいぞ」「ありがと、恭ちゃん。上がったら声かけるね」「ああ。よろしく頼む」「ん、りょーかいしました」**********5分後。そこにはゼェハァ息切れしながらリビングの床に寝転がっている春海とレンの姿が。アホである。「はぁ、はぁ、……あんた、暴れ、すぎ、や……」「ぜぇ、ぜぇ、……なんで、あんだけ、暴れて、技が、解けねぇん、だよ……」寝ころんだままで他にもゴニョゴニョ言い合いながら、ぷるぷる震えながらお互いに体力回復を待つ。バカである。そうして数分後、ようやく息も整ってきた。まだ寝っ転がったままの春海はそのままに、レンはむくりと体を起こすとキョロキョロと周りを見渡し、「ぬわ───っ!?」年頃の女の子にあるまじき奇声が出た。「あん?どした……ありゃ」レンの奇声に春海が上体を起こしながらあげた疑問の声も中途半端に途切れる。それもそうだろう。二人が暴れた結果として、春海が来るまでレンがたたんでいた洗濯物がものの見事にバラバラになっていたのだから。ていうか近くであれだけ暴れていたら当然の帰結である。「あー、なんて言うか……すまん。僕が全部たたんでおくから」春海もこれにはさすがに申し訳なく思って素直に謝罪した。まあ、もともと暴れて騒いだのは自分だし。一方、レンのほうも調子に乗ってふざけていた自覚はあったため、苦笑して手をヒラヒラさせながら「ええって、別に。こんなんパパーッとたたんですぐ終わりなんやから、気にせんでえーよ」「いや、それは流石になぁ……。うし、なら僕も手伝うから二人でやろうぜ。てか手伝わせて」「んー」レンは立てた人差し指を口元にやりながら、少し考える。まあ、本来お客様にさせることではないけど、春海はここ1か月ほどの間でそれなりに仲良くなっている。ぶっちゃけもう友達感覚だ。洗濯物の中に下着類なんかが混じっていることもないので、そのあたりも安心(実は春海もバラバラの洗濯物を見た時点で、さり気なくそのことを確認してから申し出ていた)。「……………………」特に断る理由もないんじゃね?←結論「ま、えっか。ほんなら、よろしゅーな」「あいさー」互いに手を挙げて意思疎通。家人からのお許しも出たので、二人してリビングの床に座って洗濯物をいそいそとたたむ作業に勤しむ。「にしても」「ん?」たたんでいる間も、春海はレンに話しかける。基本的に春海は子供を相手にしているときは沈黙を好まないため、『前』も含めて話題の振り役になることは多々ある。108技に『話術』が含まれているのは伊達ではないのだ。「レンって関節技も使えたんだな。てっきり棍と中国拳法だけかと思ってたけど」思い出すのは先程まで散々痛い目にあわされた関節技。お遊びの域だったため春海も全力で暴れていた訳ではないとは言え、そこそこの力は込めたはずなのにレンは巧みな技運びで春海を完封してしまった。最後にはどっちも息切れ状態だったが。この1カ月に何度か手合わせをして(毎回、何故か5分だけだった)棍と中国拳法を扱うのは知っていたが、今回の関節技は全くの初見である。「うん、そやよー。うちのじーさまがこの拳法の達人でな。棍と拳法もじーさまから教えてもらってん」「関節技は?」「あれはじーさまが趣味で教えてくれた他流の技や」「しゅ、趣味ッスか……」趣味であのレベルッスか。手にしたタオルをたたみながら聞いた話に、思わず顔がヒクヒク引きつる。才能って不公平だ。「はー、達人級の“じーさま”ねー。……それでそのマスターアジアさんは」「だれがドモン・カッシュや」ごもっとも。てかよくわかったね、このネタ。むかしテレビで見とってん。てな感じで本筋に入る。「んで、どした?」「いや、その“じーさま”って今はどうしてんのかなって」「アメリカ」「アメリカ!?」予想もしていなかった国名に目を剥いて驚く春海。そんな春海にレンは晶のフードつきのパーカーを思いのほか丁寧にたたみながら、どこか得意気に話を続ける。「そーや。うちのままんが中華料理のコックさんやねん。ぱぱんと一緒にアメリカで中華料理の店やっとって。じーさまもそれに着いてっとるんよー」「なるほど。……あ、じゃあレンがココに下宿してるのって」「うちは英語とか話せへんし、日本のほうが住みよいしなー。うちのままんが桃子ちゃんの親友やから、それで2年前からお世話になってん」「はぁぁ~……人に縁あり、だなぁ」相槌を打ちながら、春海は内心で胸を撫で下ろしていた。実のところ、春海はレンや晶が高町家に下宿しているのを見て、なにか深刻な家庭内事情があるのではないかと少し勘ぐっていたのだ。もちろん今回のレンのように、ただの両親の仕事の都合の可能性もあることは解かっていた。だが『前』において、周りの子供の殆どが自分たちの両親と何らかの形で別れざるを得なかった境遇にあったことを考えると、思考がそちらの方向に傾いてしまうことも仕方がないだろう。だから、春海はこの1カ月の間、2人に家庭事情を尋ねることをしなかったのだ。地雷を踏むことを避けたかったこともあるし、春海自身がそんな詮索するような真似を嫌っていたこともある。ぶっちゃけ、事この方面に関して春海は臆病なくらいにヘタレだった。「あ、それならひょっとしてレンが普段着にしてる中華服って」「じーさまから貰った物や。うちが小学3年のときにプレゼントしてもろたんよ」「というか小学3年生の頃の服がまだ入るのか……」「やかましいわ!?うちはまだまだこれから“ないすばでー”に成長するっちゅーねん!」「現実って意外と残酷だよ?」「どういう意味や!」と、数もだんだん減りつつある洗濯物をたたみながら2人が言い合っていると、玄関の方から複数の足音が鳴り響いて、やがてリビングのドアが開かれた。「だだいまー。買いもの行ってきたぞー。……お、春海、来てたのか」「ただいま、レンちゃん!春くんも来てたんだ。いらっしゃい!」入ってきたのは買い物袋を右手に提げた晶となのはだった。晶はいつもの如くジャージとフードの付いた青いパーカー。なのはは柔らかな色合いのブラウスとワンピース、それとその小さな手にはつばが広い白色の帽子があった。「お邪魔してるぞー。あとおかえり、2人とも」「おかえりー、なのちゃん。…………あと、ついでに晶」「オイ、今なんか『ついで』とか言わなかったか、カメ助」「あれー?ついに幻聴が聞こえるようになったか、おさる?あんたのその唯一の取り柄であるところの猿のような耳の良さを失くしてしもーたら、あんたの良いトコ、なーーーんも失くなるで?ただでさえあんたはブッサイクなんやからなぁ?」ドアを潜って早々に春海に駆け寄るなのはをしり目に、レンと晶はいつものようにケンカの前哨戦である口撃を交わし合う。「幻聴なわけあるか!……そっちこそ自分の言ったことも覚えてないなんて、とうとう頭の中までカメみたいにボケ~っとしてきたんじゃねーのかっ?」「誰が頭の中までカメやねん!このおさる!」「お前以外に誰がいるんだよ!このドンガメ!」「やるんか!」「やんのか!」ヒートアップした二人は遂には立ちあがり、「寸掌!」「吼破!」掌と拳を交わし始めた。打ち鳴らされる一発一発が結構な威力であり、二人の高い実力がムダに発揮されている、ムダに。で、その光景を傍で見ている春海はと言うと、「まーた始まったよ」呆れた様子で目の前の子供年長コンビを眺めていた。まあ、この1カ月で二人セットで会うたびに似たような光景を見せられれば、この反応も当然である。むしろ下手に割り込んだりしたら二人のバトルに巻き込まれるだけ。なので高町家においては、あーまたやってるなー、なんて言いながら微笑ましいものを見る目で見守るのがデフォルトだ。そしてそれは最近の春海のデフォでもある。ていうか。「もー!レンちゃんも晶ちゃんもケンカしちゃダメー!!」わざわざ周りが止めなくても高町家ヒエラルキーの上位に位置する末っ子さん(少なくともレンと晶より上)が止めてしまうので、心配するだけ無駄なのだ。「だって、このバカが……」「せやかて、このアホが……」「だってじゃありません!あんまりケンカばっかりしてると2人ともおやつ抜きになっちゃうよ!」「あうぅ、それは勘弁……」「堪忍してやぁ、なのちゃん……」両腕を腰に当ててぷんぷん怒ってるんですあぴーるをするなのはに、晶もレンもこりゃヤバいとへこへこ頭を下げて、「平和よのー」そんな3人を見ていた春海が、後ろで残りの洗濯物をたたみながらしみじみと呟いた。**********そうして僕が残りの洗濯物を全てたたみ終わった頃。晶とレンが謝りたおした結果、なのはの機嫌はようやく直り、今は晶となのはが買い物先で買ってきた豆大福で4人揃っておやつタイムに突入。こうも時間が経っていると、さすがに道場のほうも掃除は終わっているだろうから僕も素直にいただきますよっと。「……って、美味いな、これ」4人で手を洗ったあとにソファに座って一口食べると、その予想外の味に思わず声が出た。それに晶が気を良くしたように答える。「へへへ、だろー?商店街の『まめや』って和菓子やなんだけどな、ココの豆大福がまた絶品なんだって」「晶ちゃん、まめやの豆大福、大好きだもんねー」「あんたにしてはナイスなチョイスやな」「テメーはいっつも一言余計なんだよ」僕と晶の間で両手で持った豆大福をその小さな口に運びながら、ニコニコとご機嫌な様子のなのはである。レンのほうも憎まれ口を叩きつつも豆大福の味には満足しているようだ。さすがに2人ともなのはと僕を挟んだ状態でケンカを再開する気はないのか、ソファの両側で大福片手にお互いの言葉を聞き流している。と、全員が一つ目を食べ終わったころに、隣のなのはが、「ねぇ、春くん!」「ん?」「春くんってまだうちにいられる?」「まあ、今日の分はもう終わったからな。門限までなら大丈夫だけど。……どった?」「じゃあじゃあ、みんなでゲームしようよ!」キラキラ笑顔のなのはが指差す先にあるのはテレビゲーム。傍にあるカゴの中には幾つかのカセットも置いてあった。「お、いいね。やろうぜやろうぜ」「うち、テレビにゲーム繋ぎよるなー」晶とレンも二つ返事でなのはに同意すると、早速ゲームの準備を始める。「ゲームねぇ。ま、いいよ。……でも」こちらを見るなのはに、僕はニヤリと笑って。「僕は強いぞー」「あぁああっ!?オレのドンキーがフォックスに吹っ飛ばされた!?」「あっかーん!?うちのクッパがなのちゃんのビームの餌食に!?」高町家のリビングにある割と大きめのテレビ。その画面の中でたった今、某ゴリラと某大型カメが画面の外へと消えていった。フィールドに立つのは、某キツネガンナーと某砲撃ハンター。「春くん、なかなかやるの。───でも」「なのはこそ何気にやり込んでるな。───だが」2人の距離が、今、再びゼロとなる!「勝つのはなのはなの!」「勝つのは僕だ!」で、勝った。「勝利の豆大福、美味也」「うー、くやしいー!」「ふははは。年季が違うのだよ、年季が」「むー」となりの なのはが むーむー なきだした!「むー?」「むー!」「むぁー!」「むぉー!」「……なのはの頭がおかしくなってしまった」「ひ、ひどい!?春くんがさいしょにやってきたんでしょー!」「残念!先に鳴きだしたのはなのはだ!」「むー!むー!!」隣でむーむーうっせぇので口に豆大福を突っ込んでやる。すると、不満顔からやがて笑顔になってもくもく食べだした。「はー、にしても春海、お前マジで強かったな。なのちゃんの零距離砲撃をリフレクトした時とか手の動き見えなかったんだけど……」「ほんまやなー。うちらはともかく、なのちゃんってこの家では負けなしのスゴ腕ゲーマーやのに」晶とレンが豆大福をかじりながら言ってくる。(まー冗談でなく年季が違うしなぁ)そもそも『前』において僕は園での余興で行われたゲーム大会で1位になったこともある上に、それを合わせたら10年以上やり込んでいるのだ。これで負けたらバカである。そして、それなのに7歳のなのはと接戦を演じてしまった僕は、どうやらバカの一歩手前らしい。むー。もっとやり込まねば。さしあたっては、帰ったら妹たちを練習台にしてやろう。でもその前に。「春くん!りべんじなの!」「ハッハァーッ!いいだろう! かかってきなさいッ!!」こっちのでっかいほうの妹分をけちょんけちょんにしてやろう。(あとがき)第八話、投稿完了。てか日常回とはいえ、ここまで内容がないのも物語としてどうかと思う今日この頃。この話で発覚したのって恭也が膝を怪我してないこととレンの家族関係くらいですよね。ていうか調子にのって原作「とらハ」を盛り込んだのは良いけど、どこまで詳しく書けばいいのやら。リリカルと違い、もう10年以上前ですから。下手しなくても「とらハ」のことを全く知らない読者様も居るんですよね。難しいところです。あと恭也たちの過去の話の中で、さり気に晶が高町家に住むようになったのが原作と違いレンとほぼ同時期であることが判明。このあたりも士郎さんが生き残ったことによるバタフライ効果です。それとレンの関西弁が微妙。原作をした人なら分かると思いますが、あの子のって似非関西弁なんですよね。どうしたのもか。次か、その次か。その辺りで、とらハ板に移動しようと思います。では。