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No.29380の一覧
[0] 【習作】 アルケミストちさめ (千雨魔改造・チート・世界樹の迷宮モドキ・ネギま)[弁蛇眠](2012/03/03 20:50)
[1] 【一発ネタ】ネギまのラブコメ(オリ主・ネギまSS)[弁蛇眠](2011/09/18 20:56)
[2] アイアン・ステッチ (長谷川千雨魔改造)[弁蛇眠](2011/09/24 20:24)
[3] アイアン・ステッチ2~長谷川ジゴロ事件~[弁蛇眠](2011/09/24 20:34)
[4] 追憶の長谷川千雨 1 (千雨魔改造)[弁蛇眠](2011/09/21 00:54)
[5] 追憶の長谷川千雨 2[弁蛇眠](2011/09/27 22:48)
[6] 追憶の長谷川千雨 3[弁蛇眠](2011/12/07 14:44)
[7] ユー・タッチ・ミー(ネギま・夕映魔改造・百合・『追憶』続編)[弁蛇眠](2012/02/21 15:08)
[8] ユー・タッチ・ミー 2[弁蛇眠](2012/02/21 15:07)
[9] アルケミストちさめ 1(千雨魔改造・チート・世界樹の迷宮モドキ・ネギま)[弁蛇眠](2012/02/25 14:10)
[10] アルケミストちさめ 2[弁蛇眠](2012/02/25 14:05)
[11] アルケミストちさめ 3[弁蛇眠](2012/02/26 12:55)
[12] アルケミストちさめ 4[弁蛇眠](2012/02/28 13:51)
[13] アルケミストちさめ 5[弁蛇眠](2012/02/29 23:43)
[14] アルケミストちさめ 6[弁蛇眠](2012/03/04 01:46)
[15] アルケミストちさめ 7《完》[弁蛇眠](2012/03/03 20:49)
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[29380] アイアン・ステッチ2~長谷川ジゴロ事件~
Name: 弁蛇眠◆8f640188 ID:7255952a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/24 20:34
アイアン・ステッチ2~長谷川ジゴロ事件~



「お風呂~、お風呂~」
 京都の旅館の一室。千雨の背後では嬉々としてお風呂の準備をするアーニャの姿があった。
「呑気だよなぁ~、アーニャ先生は。あんな事があったのにさ。……まぁ、私には関係無いか」
 千雨もお風呂の準備をしながら、今日の出来事を思い返した。
 四月某日。
 千雨達のクラスは無事三学年に進級し、修学旅行のため京都に来ていた。
 本来なら和気あいあいと進むはずの旅行であったが、京都に着いた途端、謎の女性『天ヶ崎千草』に一方的な宣戦布告を受けてしまう。
 京都駅に着いて観光バスに乗り換える間、3-Aのクラスの前に現れた天ヶ崎千草なる女性は、クラスメイトの桜咲刹那に対し「木乃香お嬢様は我々が頂く、返して欲しくばお前が来い」などという謎の宣告をするのだった。
 その後、突如京都駅に現れた大量のちっちゃい妖怪の数々に、クラスメイト含む多くの人々が混乱した。
 その混乱している間に行なわれた近衛木乃香を巡る攻防を、千雨は他人事の様に眺めていた。
 多くのクラスメイトは、足元に現れた低級妖怪なるものに「きゃー!」とか「わー!」とか言いながら、半笑い半泣きといった感じで慌てふためくばかりだった。
 そんな中、千雨は大したもので、足元にまとわり付く妖怪を、足裏で踏み潰し、蹴り倒し、まるでハエでも叩き潰すかの様に見事に追っ払った。
 千雨とて、つい数週間前にあった激動の『大停電バトルロワイヤル』を生き残ったくちだ。神経は図太く成長していた。
 ちなみにあの夜、絡繰茶々丸の攻撃を肛門で受けてしまったガンドルフィーニ先生は、未だ入院中だそうだ。傷自体は魔法で治療されたものの、PTSDを発症したとか何とか。
 そんなこんながありつつ、3-Aの武闘派の面々に追い返された天ヶ崎千草だったが、その後も彼女の妨害と思わしき所業は続く事になる。
 能天気な3-Aの面々は天ヶ崎の所業を頭の隅に追いやりつつ、軽快にバスに乗って京都の観光名所へと出向いた。その先々でもやはり色々とあったのだが割愛。
 夕方、千雨達はクタクタになり旅館に辿り着いたのだ。
 その後、夕食で日本旅館お決まりの和膳に舌鼓を打った。
 そして、現在は丁度部屋で一休みをし、入浴の順番待ちをしている所だった。
 ちなみにアーニャはこれまた千雨達との同室であった。相変わらずのいい加減ぶりである。
「これと、これと、あとこれでしょー」
 フンフンと、鼻歌混じりにアーニャは風呂の準備をしている。
 アーニャはわざわざ持ってきたマイ洗面器に、色々なボトルを入れていた。同室の千雨はそのボトル類が、アーニャ自作の魔法薬なのを知っている。
 寮の自室には、千雨の撮影器具だけでは無く、最近はアーニャの実験器具まで置くようになっていた。薬やら何やらを自作するのは、アーニャの趣味らしい。
 千雨もアーニャの作った魔法シャンプーを使わせて貰った事あるが、使った時の余りの効果に驚いたのは記憶に新しい。風呂上りの髪はツヤッツヤになり、翌朝にもキューティクルが消えない程であった。
 まさに『魔法』。
 千雨としては魔法の有用性をやっと実感したのが、この魔法シャンプーだったりする。
 そんな事を思いつつアーニャを見てると、洗面器にいつも持ち歩いているポーチも入れ始めた。
「おいおい先生。そのポーチまで持ってくのかよ。大事なもんなんだろ、濡らすぞ」
 ポーチの中に色々なマジックアイテムが入っているのを千雨は知っていた。されど、今部屋には魔法を知らない雪広あやかを含む数人が一緒にいる。「魔法」とはさすがに口に出さなかった。
「ふふーん、心配無用よチサメ。これね、完全防水なの。すごいでしょ」
 中には様々な香油なども入ってるらしい。
 おそらく魔法による何かしらの措置が為されてるのだろう。自慢げなアーニャだが、千雨からすればそこらへんで売ってるビニールポーチ程度にしか思えなかった。
「それは凄いな、うん」
「でしょ、でしょー!」
 その時、部屋の入り口に女性が立った。クラスの副担任の源だ。
「アーニャ先生。A組の入浴の時間になったみたいですよ。クラスの皆に知らせてきてください」
「はーい、源先生!」
 アーニャは洗面器を持ったまま、パタパタと走り出した。彼女はどうやら、日本に来てから大きなお風呂が気に入ったらしく、今回の旅行も旅館のお風呂を楽しみにしていたようなのだ。
 他のクラスメイトに知らせるべく部屋を飛び出したアーニャを、同室の面々は暖かな視線で見つめていた。
「まぁまぁ、アーニャ先生それほどお風呂が楽しみでしたのね」
 などと千雨の後ろで委員長のあやかが喋っていた。
 千雨も風呂は嫌いでは無いが、そこまで楽しみなものでは無い。むしろクラスメイトと一緒に入るとなると、少し気が引けた。
 だが、さすがに入らないわけにもいかないので、着替えやタオルを持ち、千雨も立ち上がった。



     ◆



「うわー、おっ風呂ー!」
 脱衣所からいち早く抜け出したのは鳴滝姉妹……とアーニャだった。先生なのに、生徒と混じって飛び跳ねながら浴場に突入している。
「おいおい、誰か止めろよ」
 千雨の呟きに対し、幾人かの視線が千雨に返された。
 「それはお前の仕事だろ」と暗に言っているのだ。なんだかんだで、千雨のクラス内では「アーニャ先生の保護者」という認識をされていた。
 実際の所、アーニャにコスプレ写真を握られ、嫌々世話を焼いていたのだが、多くの面々は子供先生を甲斐甲斐しく世話する少女に見えたらしい。
 湯船に浸かる前に軽く体を洗う。アーニャも女子寮で日本式の風呂の入り方を学んでいたので、同じように体を洗っていた。
 そしてとっぷりと湯船に浸かる。
「ふひゃ~、染みる~」
 あご先まで湯に浸かったアーニャが、とろける様な声を出した。
「なんか親父くさいよな、アーニャ先生って」
 対して千雨は肩までお湯に浸からず、浴槽の淵に腕を出していた。
「あ、そうだチサメ! 頭洗ってあげようか!」
「えぇ、いいよ。つか、なんで私がアーニャ先生に洗って貰わなきゃいけないんだよ」
「今回ね、新作のシャンプー作ってきたんだ! チサメの髪で試してみたいの」
「うげぇ、実験台かよ。ご免だね」
 苦虫を噛み潰した様な表情で、千雨はプイと顔を背けた。
「むふふ、チサメだって私のシャンプー褒めてたでしょ。今度のはピッカピカでツヤツヤでテカテカになるよ!」
「ピッカピカでツヤツヤでテカテカ……」
 アーニャの売り文句に、千雨は少し反応する。
「そそ、ほらチサメ、上がって上がって」
 アーニャは千雨の肩を掴み、湯船から出そうとする。
「い、いや~、しょ、しょうがねぇな。そこまで言うなら」
 千雨も口では仕方ないといった風だが、興味深々の様だ。
 アーニャに促され、シャワーの前に座らされる。アーニャは持ってきたマイ洗面器を持ち出し、何やらボトルをゴソゴソと漁り出した。
「あ、あった! よーし、じゃあ行くわよ~」
 千雨の髪を濡らし、アーニャは自作のシャンプーをドボドボとかける。そして髪をゴシゴシと洗い出した。
「あぁ~、いい感じだぜ、先生」
 千雨は目を瞑って、頭を洗ってもらう感触に身をゆだねた。チラリと薄目を開ければ、目の前の鏡越しに、千雨の背後で一生懸命頭を洗っているアーニャが見えた。
(こういうのも悪くは無いよな)
 何か妹が出来た様な感覚に、千雨は少し嬉しくなった。
 一通り髪を洗い終わり、お湯で流すと、千雨の髪はいつも異常にツヤツヤになっていた。
「おぉ、すごいじゃん」
「でしょー!」
 素直に褒めれば、アーニャはニコニコと笑った。
「なんや、アーニャ先生。これって先生の自作なん?」
 千雨の隣で体を洗ってた近衛木乃香が、興味深そうに聞いてきた。
「そうよコノカ。メイド・バイ・アーニャの自信作なの。使ってみる?」
「えぇんか?」
「うん、いいわよ。まだそこそこ量はあるし」
「ほな、ちょっと使ってみるわ~」
 木乃香はアーニャに渡されたシャンプーで髪を洗い始めた。
「あ、そういえばあと仕上げがあったわね」
 今度は自作のトリートメントを出して、千雨の髪にかけようとするが……。
「あっ!」
 アーニャの「しまった」と言わんばかりの声が上がる。
 手に持った小さなボトルは、奇妙な色の液体をトプトプと千雨の髪に垂らしていた。
「ちょ! な、何だよその反応! 何を私の髪にかけたんだよ」
「だだ大丈夫よチサメ。うん、ほんの少し髪の色が変わる液体だから。すぐに中和液出すから!」
「ちゅ、中和って何だよ!」
 アーニャはゴソゴソとポーチを漁るが、なかなか目当てのものが見つからないらしい。
 苛立った千雨は背後を振り返った。
「えーと、これでも無い! これでも無い!」
「ちょっと、アーニャ先――」
 ポーチから取り出した幾つもの小瓶。その一つがアーニャの手を滑り、空中で蓋が開いてしまう。千雨はその小瓶に収まった液体を顔で浴びてしまう。
「――うわっぷ! ペッ、何だこれ、苦い!」
「う――」
 ころころと足元を転がる小瓶を見て、アーニャは固まった。瓶にはラテン語で『惚れ薬』と書かれていた。
 これはアーニャが以前試しに作った試薬品だ。
 もちろん人間用では無い。魔法生物の家畜の繁殖用に使われる薬であり、アーニャがかつて飼っていた使い魔を交配させるために使用した残りでもある。
 本来人間には無害なものだった。例え服用しても、異性に対してわずかに好感が上がりやすい程度のものだ。
 だが、この惚れ薬を飲み込んでしまったのは千雨である。
 魔力経路が極端に細い千雨は、効力の薄い魔法薬でさえ、体内でとんでもなく凝縮してしまった。本来異性にしか影響を与えないはずの効果を、同性に与えるほどに。
 その時間僅かに五秒。
 数千倍に圧縮された惚れ薬は、千雨の体からフェロモンとして体外に排出された。
「けほっけほっ! うぇぇ気持ち悪い。おい、アーニャ先生、こ――」
 アーニャがズイっと顔を寄せてきた。頬は紅潮し、瞳は潤んでいる。
「チサメ! 私と仮契約して!」
「ちょ、お前何言ってるんだよ!」
 千雨がキョロキョロと周囲を見渡せば、クラスメイトのほとんどがボーっとした顔でこちらを向いていた。千雨は顔をアーニャの耳元に近づけた。
「おい、何いきなり言ってるんだよ。ここは人目があるんだぞ、魔法に関する事を言うなよ。それに仮契約はとっくにしただろ」
 千雨はアーニャの耳元でボソボソと呟く。対してアーニャは耳元に当たる千雨の吐息に、頬の赤味を強くした。
「……あっ。ち、違うの、私はマスターじゃなくて、チサメの従者になりたいの! 全部チサメのものになりたいの!」
「はっ、はぁぁぁぁぁぁ?」
 アーニャが急に大声でわめき出した。その行動に千雨は驚き、目を見開いた。
「ほらチサメ! 来て!」
「うわ、何すんだ、離せ!」
 アーニャの怪力で、千雨は洗い場の中央までズルズルと連れて行かれてしまう。その間、クラスメイトは無言で千雨を見つめていた。
 アーニャはそこで持ち歩いていたポーチから、仮契約用のチョークを取り出した。
「えい!」
 前回と同じくチョークを床に叩きつけ、仮契約用の魔方陣を作る。そして千雨を主として設定した。
 千雨も逃げ出そうとするものの、その四肢をクラスメイトに押さえられた。
「え?」
 右手を見れば、同じ班の那波千鶴がいた。
「長谷川さんの手。良く見れば綺麗ねぇ……」
 千鶴は千雨の手の指一本一本を艶かしく触った。くすぐったい感触に、千雨は声を上げようとするが――。
「ひぐ!」
 左の太ももに違和感。
 今度は木乃香が千雨の太ももに頬擦りしていた。
「千雨ちゃんの肌、気持ちええわぁ~」
 それだけでは無かった。
「千雨ちゃんの髪可愛い」
「長谷川殿の体、引き締まってるでゴザルなぁ」
「長谷川の事見てると、頭がボーッとなるアルよ」
 クラスメイトがぞろぞろと千雨の周りに集まっていた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待てぇぇぇ! お前ら頭沸いてるのか! 助けろ、私を助けろよ!」
 千雨は騒ぐが、周りの誰もが相手をしない。それどころか――。
「おい、アーニャ先生――ムグ」
 アーニャが千雨に覆い被さり、口付けをした。魔方陣が輝き、空中にカードが現れる。
 今度は主従逆転した形で、アーニャとの仮契約が成された。
 しかし前回とは違い、口付けは長い。アーニャの舌が千雨の口内を弄り、千雨は半泣きで目を見開いていた。
 ちなみに仮契約とは、仮契約用の魔方陣で精霊によって呪的ラインを構築する作業である。
 その際、仮契約用の精霊は唇による粘膜接触により、ラインの構築の合否を決めているのだ。
 だが、唇同士の接触で無くでも、不完全な形での契約は出来た。その場合は正式な仮契約のカード、『パクティオーカード』は現れず、通称『スカカード』というものが現れた。
 何が言いたいのかと言うと、アーニャとのキスの間、千雨の肌に唇を付けているクラスメイトにより、空中にはひっきり無しにスカカードが現れていた。
 アーニャは満足したのか、唇を離した。二人の間には唾液の糸が引いていた。
 疲れたのか、そのまま千雨に伸し掛かるようにアーニャは倒れて、気を失った。
「おぉぉい! 何寝てるんだクソガキ! いい加減目を覚まして私を――」
「……」
 今度はどこか口数の少ないザジ・レイニーデイが、アーニャを押しのけて千雨に口付けをしてきた。
「――――ッ!!」
 千雨は声無き悲鳴を上げる。
 頭上にまたパクティオーカードが現れた。
 ザジも数秒経つと満足したのか、倒れてしまう。
 どうにも濃縮した惚れ薬が千雨との粘膜接触を通して直接体内に流れ込み、その刺激の強さゆえ失神してしまう様だった。
 この時の千雨は、もちろんそこまで分からない。だが、周囲のゾンビの様な群れが、自分の唇により倒せる事が分かってしまった。
(これってやっぱりさっきの液体の効果なのか? それに……おいおい、嘘だろ……これしか方法無いのかよ)
 見れば、長瀬楓も龍宮真名も桜咲刹那も大河内アキラも、千雨に縋りつこうと這い寄ってきてる。
 どれもがクラス内で超人と恐れられている生徒である。
 彼女らを千雨が自力で撃退出来るとは思えない。それに逃げられるとも思えなかった。
 ならば、やる事は一つだった。
「ち、ちくしょー、お、覚えてろよぉ!」
 千雨は覚悟を決める。
 その後、浴場からは嬌声が響き続けた。
 旅館の女中も、修学旅行生がうるさいのはいつもの事、と特に気にしなかった。



     ◆



 三十分後。
 そろそろ次のクラスが入浴のためにやって来るだろう時間に、浴場の引き戸が開かれた。
 そこから出てきたのは全裸の千雨だ。
 ふらふらとしながら、壁にもたれる様にして立っている。
 見れば普段は白いはずの肌が、真っ赤なまだら模様になっていた。白が三、赤が七という割合である。
 千雨は無言のまま、脱衣所に置いておいた浴衣に着替え、浴場を後にした。
 ちなみに浴場には千雨を除く3-Aのクラスメイトと、アーニャが全裸で倒れていた。そして、その横にはカードの山が出来上がっていた。
 パクティオーカード42枚。(うち、ダブリ15枚)
 スカカード921枚。
 それが本日の長谷川千雨の戦果であった。大戦果である。
 千雨は出来るだけ先程の出来事を思い出さないように、自室まで歩いた。
「あら、長谷川さん。他のクラスメイトはどうしたの?」
 副担任の源が千雨に話しかけてくる。
「……みんなまだ風呂じゃないですかね」
 千雨は素っ気無く返した。そのまま自室に入っていってしまう。
 源はキョトンとしながら、千雨の反応に首を傾げた。
 自室に戻った千雨は、押入れにあった布団を引きずり出し、一人で布団に入ってしまう。
 そして布団の中で唸り声を上げた。
「あ~~~~~ッッ!」
 ゴロゴロと布団で転がり、目尻に涙を溜め、その後疲れたのか寝入ってしまう。
 次の日、千雨は意外とあっけらかんとしていた。自分の痛い過去をうまく処理する、千雨の処世術でもあった。
 ちなみにアーニャの風呂の経緯を説明した所、アーニャからの謝辞があったりした。その時教えて貰ったのが、惚れ薬による記憶の混乱であった。おそらくあの薬の効果のあった人達は、薬が効いていた時の記憶が無いだろうという説明である。なにせアーニャも昨日の事はうろ覚えらしい。なんとも都合の良い効果だなー、とか千雨は思った。
 だが千雨は知らなかった。
 アーニャが髪にかけた薬の効果で、数日後に千雨の髪の色が緑になり、「なんだ、この間違ったキャラデザ変更した様な髪の色は!」と嘆くことになる事を。
 クラスメイト内で、おぼろげに風呂の記憶が残った人々により、千雨のファンクラブが立ち上がる事を。
 アーニャが『アフラマズダー様がみてる』なるライトノベルに手を出し、千雨の事を『お姉さま』と呼び始める事を。
 実は桜咲刹那が鳥人のハーフであり、なおかつ背中の羽の封印を解くと、股間からおにゃんにゃんが生えてくる両性具有である事を。
 更に天ヶ崎千草が、ショタコンであり、幼少の時から刹那に懸想していた事を。
 そして刹那が木乃香と共に麻帆良に出奔した事を、勝手に駆け落ちと勘違いしていた天ヶ崎千草の怒りの矛先が、刹那と仮契約してしまった千雨に向く事を。
 京都から帰って来た折、千雨を巡ってクラスの人間関係がギスギスする事を。
 後に、仮契約を解除しようとするものの、千雨の周囲には千本近い呪的ラインが構築され、それらがクラスメイト中に混線し、解除が不可能である事を。
 長谷川千雨はこの時点でまったく知らなかったのだ。



 つづかない。





あとがき

 二話では無く、2(ツー)です。
 今度こそつづかないはず。
 時系列関係無く、要所だけ切り取りました。
 感想をひっそりと待ってます。


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