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No.29380の一覧
[0] 【習作】 アルケミストちさめ (千雨魔改造・チート・世界樹の迷宮モドキ・ネギま)[弁蛇眠](2012/03/03 20:50)
[1] 【一発ネタ】ネギまのラブコメ(オリ主・ネギまSS)[弁蛇眠](2011/09/18 20:56)
[2] アイアン・ステッチ (長谷川千雨魔改造)[弁蛇眠](2011/09/24 20:24)
[3] アイアン・ステッチ2~長谷川ジゴロ事件~[弁蛇眠](2011/09/24 20:34)
[4] 追憶の長谷川千雨 1 (千雨魔改造)[弁蛇眠](2011/09/21 00:54)
[5] 追憶の長谷川千雨 2[弁蛇眠](2011/09/27 22:48)
[6] 追憶の長谷川千雨 3[弁蛇眠](2011/12/07 14:44)
[7] ユー・タッチ・ミー(ネギま・夕映魔改造・百合・『追憶』続編)[弁蛇眠](2012/02/21 15:08)
[8] ユー・タッチ・ミー 2[弁蛇眠](2012/02/21 15:07)
[9] アルケミストちさめ 1(千雨魔改造・チート・世界樹の迷宮モドキ・ネギま)[弁蛇眠](2012/02/25 14:10)
[10] アルケミストちさめ 2[弁蛇眠](2012/02/25 14:05)
[11] アルケミストちさめ 3[弁蛇眠](2012/02/26 12:55)
[12] アルケミストちさめ 4[弁蛇眠](2012/02/28 13:51)
[13] アルケミストちさめ 5[弁蛇眠](2012/02/29 23:43)
[14] アルケミストちさめ 6[弁蛇眠](2012/03/04 01:46)
[15] アルケミストちさめ 7《完》[弁蛇眠](2012/03/03 20:49)
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[29380] アルケミストちさめ 3
Name: 弁蛇眠◆8f640188 ID:7255952a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/26 12:55
●4
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 息が荒い、喉が無性にズキズキする。
 腰のバッグがガチャガチャと揺れて痛いが、走るのをやめるわけにはいかなかった。
「ハルナ、早く!」
「わ、わかってるよ!!」
 背後ではモンスターの攻撃を盾で受けながら、ハルナが走っている。
 現在夕映達は逃げていた。
 地下三階、というのを甘く見ていたのかもしれないが、下調べはしてきたつもりだ。大抵のモンスターの情報は仕入れている。だが――。
(なんであのモンスターがいるのですか。あれは、もっと下層にいるはずなのに!)
 『フォレストウルフ』と呼ばれる白い体毛をした狼であった。しかも群れ。本来一匹でも厄介なはずの敵が、総勢二十匹もの群れを為し、夕映達に襲い掛かろうとしている。
 だが、夕映の機転で大多数の狼は足止め出来た。狭い通路を《大爆炎の術式》の術式で燃やしたのだ。『フォレストウルフ』は火が苦手、という事前の情報通りに、ほとんどの狼が炎を前にしてうろうろしていた。
 それでも二匹程は足止め出来ず、未だに夕映達に執拗な攻撃を仕掛けている。
 現在戦闘を走るのは、パーティーの生命線であるメディックの木乃香。二番目には弓矢による長距離のサポートが出来るのどか。三番目に夕映で、殿がハルナだ。
 ハルナの役割はもちろん盾。パラディンたる職は分厚い鎧と盾を使い、味方を守るのが仕事だ。
「ハルナ、耐えて下さい! もうすぐ階段に着きます。そうすればモンスターは追いかけてこれません」
「って言っても、本当にヤバイんだけど。夕映、『糸』、『アリアドネの糸』は!」
 瞬時に『迷宮街』へ戻してくれるアイテム『アリアドネの糸』を、夕映達は一個だけだが持っていた。
「あれは発動までの間、動くことが出来ないですし、効果範囲が狭いので皆が固まらなくてはなりません。使おうとすれば、その間に皆食い殺されます!」
「う、嘘ー!」
 泣き言を叫ぶハルナを援護するため、夕映は残り少ない試験管を背後に投げた。
「《火の術式》!」
 ボワッと火が広がり、二匹の追跡者の足が鈍る。
「今のうちです。この通路を抜ければ、階段のある広場です」
 前方を見れば、木乃香とのどかが広場へ入っていく。夕映もそれに続こうとすると、何かにぶつかってしまう。
「わぷッ!」
 転びそうになるが、どうにか踏ん張って耐える。
 どうやらぶつかったのはのどかの背中の様だった。木乃香も隣に棒立ちになっている。
「ど、どうしたのですか二人とも。急ぐのです――」
 嫌な予感がした。視界が二人の背中に邪魔されて見えない。
「夕映、どうしよう……」
 のどかの体をどけて前方をみると。
「えッ――」
 そこには階段を取り囲む様に、モンスターがいた。白い狼、先ほど足止めした『フォレストウルフ』の群れだった。
「回り込まれた、というわけですか」
 『迷宮』には隠された小道も多いという。おそらく自分たちが知らないルートを通ったのだろう、と予測する。
 背後からは走るハルナ、それを追いかける二匹の狼。
 前方には二十匹の狼。
「強行突破、しかありませんね」
「夕映、せやけど……」
「このままじゃ取り囲まれてお終いです。それに私達の足じゃ、追いかけっこで勝つのは不可能。だったら強行突破で階段まで辿り着きましょう」
 誰かを囮にして『糸』を使う、という提案を夕映はしない。心に過ぎった案の一つだが、夕映はそれを即座に捨てた。
(出来るわけありません。皆と地上に戻るのです)
 夕映は震えそうになる拳を、必死に握った。恐くて涙が溢れそうになるが、今はまだ駄目だ。
「背後のハルナが追いついたら、四人で一斉に階段まで向かいましょう」
 見れば、ハルナも広場の入り口に近づいてくる。
「ハルナ! 階段まで強行突破します! 付いてきてください!」
「つ、付いてきてって、無茶言うな!」
 ハルナは一番の重装備であり、殿まで勤めている。四人の中で一番体力を消耗していた。
「無茶でも付いてきてください!」
 それでも夕映は言わねばならない。
 四人が一斉に走り出すと、階段の周囲を囲んでいた狼も、夕映達に向かい走ってきた。
「木乃香! 今から最後の術式を前方に放ちます。うまく避けてください! のどかは側面に回りこまれない様に牽制を!」
「わ、わかったえ!」
「う、うん」
 木乃香は走りながら、慣れないワンドを握り締める。一応の武具として持ってきてるが、木乃香がこれを実戦で振るったのは数回に過ぎない。
 のどかも走りながら、どうにか矢を番えて放とうとしている。狙いは甘いが、それでも牽制にはなっている。
 夕映は最後の試験管を、前方へ向けて投げた。
「《火の、術式》!!」
 力を込めて唱える。いつもより多少大きい火が上がった気がするが、狼達はそれを少し迂回する程度だ。
 狼達の牙が、夕映達を襲う。
「きゃー!」
「うわ!」
「ぐッ!」
 牙が夕映達の体から肉を削いでいく。血飛沫が舞うなか、それでも夕映達は足を止めなかった。
「ぐッ、ハルナ! 付いてきてますか!」
 背後を振り向く余裕など、夕映には無かった。
「ハァ、ハァ、な、なんとかね。でも、かなーりヤバイかも」
 金属が軋む音が聞こえる。剣を振り回す音も。
「階段まで、もう少し。これならばどうにか……」
 四人とも満身創痍ながら、なんとか生きていた。
 視界に見える階段に、ほのかな希望が過ぎる。
 その時、狼の一匹の牙が夕映の足を抉った。
「ぐっ!」
 痛みで力が抜け、夕映はゴロゴロと地面を転がってしまう。
 その間に走っていた三人と離されてしまった。三人は夕映の元へ戻ろうとするが、狼が壁となり進めないでいる。
(これは、本当に駄目かもしれませんね)
 夕映が諦めかけた時、前方の階段から人影が降りてきた。
「あれ、お前らは――」
 聞いたことのある声。
 小豆色のブレザー、首元にリボン、黒いタイツ、足元のローファー。夕映達にとって見慣れた姿だ。
 それは紛れも無い、麻帆良学園女子中等部の制服。
 その人影も夕映達は知っていた。クラスメイトであり、余り目立たない人柄の人物。
 大きなメガネが特徴の少女、階段を降りてきた人影は長谷川千雨であった。



     ◆



「なんで、長谷川さんが……」
 夕映の中で疑問が沸く。本来であれば、そんな悠長な事を言っている間に食い殺される状況なのだが、千雨が現れてから『フォレストウルフ』達は、唸り声を上げながら千雨を見ている。
「へぇ、お前ら探索者やってたのか」
 千雨の表情は軽い。まるでこの状況を理解して無いかの様に。
「はやく、逃げてください! のどか達と一緒に、早く!」
 制服などでは『迷宮』では丸腰同然だ。千雨は武具の一つも持っていないようだ。そんななりではモンスターに簡単に殺されるだろう。ここ一ヶ月で得た、夕映の教訓だ。
「まぁクラスメイトのよしみだ。助けてやるよ」
 夕映の言葉など何処吹く風。千雨は階段から降り、軽やかな足取りで狼へ向かっていく。
 そのままのどか達を囲む狼に対し、千雨は殴りかかった。
「へ?」
 キャイン、という悲鳴の後、狼が吹き飛ばされる。
「ほら、宮崎達はさっさと階段まで逃げろ」
「で、でもゆえゆえが……」
「綾瀬も今助けてやるよ」
 千雨は狼を殴りながら、夕映の元へ近づいてくる。良く見ると、千雨の両腕には金属の光沢があった。
(あれは――ガントレット!)
 金属篭手、ガントレットはアルケミストにとって、必須のアイテムだ。防具や装飾品としての価値ばかりでは無い、その機能にこそ意味があった。
 千雨のガントレットは細かい傷が沢山あった。夕映のガントレットとて、この一ヶ月でかなり酷使したものの、比にすらならない。
 千雨が夕映に近づいていくと、狼達は標的を夕映に変え、襲いかかろうとした。
「チッ、おとなしく私だけ狙ってりゃいいものを」
 千雨が呟き、自らのガントレットに手を伸ばす。
 ガントレットがスライドし、試験管が何本か飛び出してくる。
 ガントレットの本来の機能、それは薬品の保管だ。『迷宮』の過酷な条件下でも薬品が変質しないように、様々な温度で保管するのだ。また、試験管を破損させないように、強固にも出来ている。だからといって、ガントレットでモンスターを殴りつける輩など、千雨以外にはいないのだが。
 一本の試験管を引き抜き、千雨は夕映に襲い掛かろうとする狼の口元へ放った。
「《火の術式》」
 ゴウ、っと火のサイズは小さいながらも、極限まで圧縮された火の玉が空中に出来、狼の一匹を黒こげにした。
 驚きながらも、夕映は這うようにして千雨の足元まで逃げる。
「あ、ありがとうございます、長谷川さん」
「ん? あぁ」
 素っ気無く、雑な態度。それはクラスで挨拶する時と、同じ様な対応だった。
 これで帰れると夕映は思ったが、周囲にはまた狼が集まり出している。
 千雨に殴られて吹き飛ばされた狼も、続々と起き上がっていた。
「やっぱり殴るだけじゃ無理か。私は《火》の系統、苦手なんだけどなー。まぁ、しょうがないか」
 千雨は面倒くさいとばかりに頭を掻き毟りながら、ガントレットから三本の試験管を取り出す。
(三本。やはり《大爆炎の術式》でしょうか。でも、私より使用する薬品の量が少ない――)
「おい綾瀬。いいか、私の足元から動くなよ。動くと、死ぬぞ」
 千雨の呼びかけに、夕映の思考は遮られた。
「は、はい!」
 夕映はコクコクと頷いた。
 千雨がチラリと背後を振り返ると、階段からこちらを伺うのどか達の姿があった。
「まぁ、階段にいるなら大丈夫か」
 片手に持った三本の試験管を、千雨は真上に放り投げる。
(真上? なんで?)
 術式を使う時、薬品を標的に向けて投げるのは定石だ。少なくとも夕映は研修でそう学んでいる。
「炎術――」
 千雨がボソリと言うと、真上に投げた試験管の一つ一つが巨大な火の玉になった。
(な、なんて大きさ。一個一個が私の《大爆炎の術式》並のサイズ)
 縦に三つに並ぶ火の玉。それらが凝縮されていく。小さくなる代わりに、火力は増した。
 千雨の頭上に現れた炎の塔。それが周囲を取り囲む狼達を威圧する。
「――術式《大瀑布》」
 千雨が唱えると同時に、指を弾いた。それを切っ掛けにして、火の玉の一つが千雨の目前に落ちてくる。
 地面にぶつかった火の玉は弾け、一瞬で広場全体、周囲五十メートルを火の海にする。
「なッ――」
 余りの威力に、夕映は驚愕した。
 しかし、まだ終わらない。
 千雨の頭上に残っているニ発目の火の玉が落ちて、また破裂した。
 炎が更に燃え上がり、狼達の体が焼かれていく。
 更に。
「ほい、トドメ」
 三発目が落ちた。
 それと共に、周囲は炎の壁へと変わる。部屋全体が業火に焼かれ、狼は光の粒にすらならず、瞬時に消滅した。
 目前の光景に呆然としながら、夕映は千雨の後ろ姿を仰ぎ見た。
 黒タイツに包まれた艶やかなラインの細い脚の根元には、爆風により揺れるスカートの裾がある。更に視線を上げれば横顔。炎に焼かれるモンスターを見つめながら、千雨は口元に弧を描いている。
 夕映はゾクリとした悪寒に身を震わせながらも、違和感を覚えた。
(この火力。なのになんで私達は無事なんですか)
 目前に炎の壁がある。なのに、その熱量がここまで伝わってこない。
 地面を見ると、まるでここだけ切り取られた様に火が来ていなかった。それだけじゃない、良く見ればそこらには霜や氷の粒がある。
(氷……)
 仕組みは分からない。
 それでも夕映は、目の前の少女が同じ『アルケミスト』である事。そしてその実力に天と地の差がある事だけは悟ったのだ。


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