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No.29380の一覧
[0] 【習作】 アルケミストちさめ (千雨魔改造・チート・世界樹の迷宮モドキ・ネギま)[弁蛇眠](2012/03/03 20:50)
[1] 【一発ネタ】ネギまのラブコメ(オリ主・ネギまSS)[弁蛇眠](2011/09/18 20:56)
[2] アイアン・ステッチ (長谷川千雨魔改造)[弁蛇眠](2011/09/24 20:24)
[3] アイアン・ステッチ2~長谷川ジゴロ事件~[弁蛇眠](2011/09/24 20:34)
[4] 追憶の長谷川千雨 1 (千雨魔改造)[弁蛇眠](2011/09/21 00:54)
[5] 追憶の長谷川千雨 2[弁蛇眠](2011/09/27 22:48)
[6] 追憶の長谷川千雨 3[弁蛇眠](2011/12/07 14:44)
[7] ユー・タッチ・ミー(ネギま・夕映魔改造・百合・『追憶』続編)[弁蛇眠](2012/02/21 15:08)
[8] ユー・タッチ・ミー 2[弁蛇眠](2012/02/21 15:07)
[9] アルケミストちさめ 1(千雨魔改造・チート・世界樹の迷宮モドキ・ネギま)[弁蛇眠](2012/02/25 14:10)
[10] アルケミストちさめ 2[弁蛇眠](2012/02/25 14:05)
[11] アルケミストちさめ 3[弁蛇眠](2012/02/26 12:55)
[12] アルケミストちさめ 4[弁蛇眠](2012/02/28 13:51)
[13] アルケミストちさめ 5[弁蛇眠](2012/02/29 23:43)
[14] アルケミストちさめ 6[弁蛇眠](2012/03/04 01:46)
[15] アルケミストちさめ 7《完》[弁蛇眠](2012/03/03 20:49)
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[29380] アルケミストちさめ 2
Name: 弁蛇眠◆8f640188 ID:7255952a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/25 14:05
●3
 切っ掛けは些細な事だった。
 図書館探検部として、麻帆良にある巨大な図書館の地下を探索した日の夜であった。
「あれ? これ何だろう」
 綾瀬夕映、宮崎のどか、早乙女ハルナ、近衛木乃香の四人は、部活動で付いた埃を落とすため、仲良く大浴場に入っていた。
 体を洗う際、手首に奇妙な模様をのどかが見つけたのが発端であった。
 気付けば四人とも、左右の違いはあれど、手首に緑色のツタの様な模様が肌に出来ていた。
 洗っても落ちない奇妙な模様に首を傾げつつも、四人は特に気に留めることも無く、その日を過ごした。
 翌日、四人は奇妙な現象に陥いる事となる。
 放課後、各々が分かれて帰寮の途についたはずなのに、四人がまったく同じ場所で出会ってしまったのだ。
 四人の目前には麻帆良が誇る巨大樹木、通称『世界樹』がある。
 少し丘になっている『世界樹広場』で、四人は示し合わせた様に再会したのだ。
 それぞれの言い分から察すれば、『なんとなく』ここへ来たらしい。
 特に目的も無いので、「とりあえず一緒に帰ろう」と話し合った四人の前に、一人の女性が現れた。
 髪をピシリと纏め、きっちりとしたスーツを着こなすキャリアウーマン、という印象の女性である。
 そして、彼女はこう言ったのだ。
「皆様、迷宮に興味はおありでしょうか?」
 女性の浮かべたアルカイックスマイルを、夕映は今でも覚えていた。
 これこそが転機であったと、今でも思えてしょうがない。



     ◆



 女性に連れられて、四人は世界樹広場の片隅に連れて行かれた。
 そこはなんとも無い、広場にある石壁の一つであった。
 女性は「どうぞ」と言いながら、壁を示す。疑問符を浮かべる四人に、女性は笑顔で返し「どうぞ触れてみてください」と言った。
 なにがなんだか分からぬまま、夕映達は壁に触れようとするが、触れようとした指先はそのまま感触無く壁に飲み込まれた。
「わわわ!」
 驚きながらたたらを踏む。気付けば四人は壁の中に吸い込まれていた。
 そして視界に広がる風景に、夕映達は感嘆の声を漏らした。
「うわぁ」
 天井が十メートルはある地下街。石造りの壁に、石造りの家々が並ぶ風景は、中世ヨーロッパの城塞都市を思わせた。
「な、何これ。どっかの遊園地か何か?」
 ハルナが疑問の声を上げる。
 石造りの閉ざされた空間なので薄暗い。しかし天井はライトすら無いのに、ぼんやりと薄く光っていた。
 その光の下、様々な商店が並んでいる。軒先に肉が吊るされていたり、むき出しの果実が山を作っていたり、およそ衛生管理の厳しい日本ではなかなか見かけない店の姿だ。
 そんな店の並ぶ通りを、これまた時代錯誤の格好で歩く人達がいた。
 体に金属製の鎧を着て、剣を腰に差している男。皮製の外套を纏い、大きな弓を背負う女性。
 それらの姿は夕映の好きなファンタジー映画に出てくる人間の様だ。映画と同じく、明らかに欧米系だと分かる顔立ちも多い。
 もちろんちらほらとと現代的な様相の人間もいる。
 そして、そのほとんどの人が手にデジタル端末を持っていた。買い物姿を見れば、商品の売買も電子マネーで行なっているようだった。
 近代化された中世ヨーロッパ、そんな矛盾した印象を夕映達は持った。
 いつの間にか背後に、先ほどの女性が立っている。
「ようこそ、『迷宮街』へ。ギルド組合はあなた方を歓迎いたします」
 女性がまた笑顔を浮かべた。



     ◆



 それからの時間はあっという間であった。
 夕映達は『迷宮街』と呼ばれる場所を通り歩き、ギルド組合支部なる建物へ連れられて説明を受けた。
 女性が言うには、夕映達は迷宮と呼ばれるものに〝魅入られた〟らしい。
 話を聞けば、一年ほど前に麻帆良の地下には『迷宮』と呼ばれる、ゲームで言う巨大なダンジョンが現れたとの事。
 『迷宮』では内部にいるモンスターを倒す事により、質の良い様々な資源が取れる。その資源を得るために、また『迷宮』を管理するために作られたのが、この『ギルド組合』なるものだ。
「私達、ギルド組合は探索者を求めています。最も誰でも良いという分けで無く、幾つかの条件を付けさせて貰っています」
 女性は更に説明した。
 『迷宮』や『迷宮街』については、原則存在自体が一般非公開とされ、メディアでもその情報は規制されている。いわばこの業界は薄いカーテンに区切られ、公の窓口が存在していないのだ。
 また関係者が『迷宮』について、存在を知らない人間に漏らす事は原則禁止されている。もし漏らした場合には厳罰があり、更に莫大な違約金まで支払わされるのだ。
 そんな情報統制化にありながら、探索者になるのは大変だ。
 探索者になる方法は二つある。
 一つ目は『迷宮』と『迷宮街』を探す事だ。
 探索者志望の人間は、存在するか分からない迷宮まで、〝自力〟で辿り着かねばならない。たくさんの情報ノイズを掻き分けながら、根気をむき出しにして『迷宮街』にまで辿り着く人間をギルド組合は歓迎するのだ。
 そしてもう一つの方法が、『迷宮』に〝魅入られる〟事だ。
 探索者を欲するのは、何も組合ばかりでは無い。迷宮自身も欲し、自分の周囲にいる素養のあるものに『呪い』にも似たマーキングをするという。その呪われた者こそ夕映達『魅入られた者』だった。
 ギルド組合は『魅入られた者』を探し、見つけた場合には勧誘するらしい。
「もっとも無理強いはしません。『呪い』とて『迷宮』が攻略されれば解放されます。一つの『迷宮』が攻略されるまで、平均三・四年と言われていますので、あと二年ほど不自由をかけますが、それであなた達は何事も無く生活出来ますよ」
 つまり、最低でも二年間は麻帆良から出る事が困難という事だ。例え出ても、過度のストレスに悩まされて生活もままならくなるらしい。
「あのー、ちょっと不思議に思うのですがよろしいですか?」
 夕映は疑問の声を上げた。
「どうぞ、こちらで答えられる事柄なら」
「はい。えーと、私達はその『迷宮』とやらに見初められた分けですよね。なのに、私達が迷宮をクリアしなくてもよろしいのでしょうか。ちょっと恥ずかしいのですが、その手の設定のフィクションだと、選ばれた人間で無ければ攻略できないとか、良く見かけるのですが」
 夕映の質問に対し、女性は馬鹿にせず答える。
「その疑問を持つ方は多いので、お気になさらず。実はほとんど問題ありません。『迷宮』に挑戦する条件とは、実を言うとまったく無いのです。ただ我々『組合』がある程度の選定をしているだけで、『迷宮』そのものはえり好みを一切しません。現在、世界中に『迷宮』は六つありまして、それら『迷宮』に挑戦する人間は数万人います。では何故わざわざ『迷宮』がマーキングをするのか、その実態は私達も分かりませんが、予測は出来ます」
 女性は壁にあるディスプレイを弄り、何かの表を出した。
「これはマーキングされた人間が解放された後の『迷宮』への挑戦率を表しています。ご覧の通り、リピート率が異常に高いのです。おそらく〝魅入られている〟間はお試し期間なのです。そして〝魅入られる〟事により、今度は自分が迷宮に〝魅入ってしまう〟のでしょうね。『迷宮』は恐らく探索される事を望んでいるのでしょう」
 また表示されたグラフが切り替わった。
「それに迷宮探索は常には無いスリルと興奮を探索者様に与えます。そして、莫大な収入も得られるのです。このグラフは探索者の平均収入を表しています」
「えーと、そのグラフの金額単位は何なのでしょうか? G$?」
「はい、そちらもご説明させて頂きますね。これらはG$(ギルド・ドル)と呼ばれる、我々『ギルド組合』が提供する『迷宮街』のみで使われる独自通貨です。探索者様は略してG(ゴールド)などと呼びますね。もちろん、これらは各国と国連との契約により、一般の流通貨幣との換金も行なえます。日本円ですと、現在は1G当り1000円前後のレートでお取引出来ます」
 その金額を聞き、ハルナが色めきだって立ち上がった。
「せ、千円! ってーことはそのグラフはいちじゅうひゃく……」
「落ち着くです、ハルナ」
 パシン、とハルナの頭が叩かれた。
 夕映は叩きながらも、色めきだつ気持ちは理解出来ている。目の前に示された金額は、莫大なのだ。しかし、そんなうまい話ばかりではないだろう、と疑う気持ちもある。
「でも、それだとそのG$のみで市場を維持する事は難しいんじゃないですか。どこか資本のある所が参入すれば、貨幣価値が簡単に下落すると思うんですが……」
「はい、そのために流通貨幣からGへの換金は一切行なっていません。個人間での換金を防ぐため、貨幣の流通は電子マネーのみで、『組合』側で管轄しています。また『迷宮街』を含めた探索者に必須の物資も、こちらで独占的に管轄させて貰ってます」
 女性は当たり前の様に笑った。
 先ほど見た街並みで、人々が端末を通して売買する光景が思い出される。
(なるほど、外部資本を完全に切り離しているのですか。資源を産み出す『迷宮』側からのみ扉を開け、相手側から開けさせない。うまく出来ていますね。それに、このシステムだとおおよそ簡単に換金をしない、いや出来ないでしょう)
 夕映はこの『迷宮』の中については大雑把にしか知らされてないため、テレビゲームを例に考えていた。
(探索は命懸け。そしてその命を繋ぐ物資はG$でしか買えない。一度流通貨幣に換金したら、G$には戻せない。よほど潤沢で無い限り、換金したら自分の命でツケを払う事になりません。閉鎖的な市場で成立するはずですね)
 もちろん、夕映が考える程、市場が閉鎖されている分けでは無かった。
 夕映は知らなかったが、この『迷宮』で取れる資源のほとんどが、『魔法世界』と呼ばれる魔法使いによる異世界、業界で消費されていた。また『迷宮』産の薬の一部などは、現代の化学薬品を超えるものもある。経済界の富裕層などは、大枚を叩いて買い漁ってたりする。
 それに幾ら『迷宮』が資源の宝庫と言えど、様々な外部の物資は必要となる。そのため夕映達も知っている幾つかの大きな企業もこの業界には参入してたりする。
 もっとも『組合』の強権の元で行なわれるため、企業が得た利益の幾らかを運営側が回収していたりするが。
「他にご質問はありますか?」
「えーと、そうですね。『迷宮』の安全性とかはどの程度なのでしょうか。大雑把に聞きましたが、その怪我とか……死ぬ度合いとか」
 夕映の質問に、少し表情を硬くしながら女性は答える。今回はディスプレイを弄らなかった。
「そうですね、この『迷宮』の探索はもちろん安全ではありません。多くの人が怪我をします。綾瀬様は死亡者の数が知りたいのですか?」
「あ、はい。もしよろしければどの程度なのか、参考に……」
「はい。別にお隠しする事じゃ無いので言いますと、今年度に至っては世界中の『迷宮』で合わせて57名程の死者が出ています」
 57名という人数が多いのか少ないのか、夕映達は一瞬判断がつかなかった。
「少し驚くかと思いますが、これは実は驚異的な数なのです。年間数万人という探索者が、命懸けで探索をしながら、死者がたった二桁というのは、安全性から見ればかなりのものと、組合は自負しています。この驚異的な死者の低下には、探索職であるメディックの技術強化や、『迷宮』資源から作れる薬品の品質向上を上げられると思います」
「なるほど……」
 夕映は頷く。話を聞く限り、数千人という死者が出ていてもおかしくないのが迷宮だ。なのに、予想はそれより遥かに軽い。
「ご質問が無ければ、次の説明に移ってよろしいでしょうか……」
 そして夕映達は簡単なオリエンテーションを受けた。
 およそ二時間程の説明の後、夕映達四人は探索者になる事を決意する。
 その際に聞かされたのが、『迷宮』には『迷宮』のルールがある、という事だ。
 まるでゲームの様だが、探索者として力を発揮するためには、『迷宮』側のルールにある探索職というものを身に付けなくてはならない。
 そして、『迷宮』内のモンスターには、『迷宮』の資源を使った武具でなければ傷つける事が難しく、守ることも難しいとの事。
 簡単に言えば、銃器を持ち込んで連射しても、低層のモンスターにすら苦戦するらしいのだ。
 夕映達四人は各々の探索職を決め、放課後に『迷宮街』で学べる短期研修を受ける事となった。
 その際、ハルナが『パラディン』、のどかが『レンジャー』と決まり、夕映と木乃香が『メディック』を希望したものの、夕映が譲る形で木乃香が『メディック』になった。
「せっかくなので、私は『アルケミスト』にしてみますよ」
 アルケミスト。錬金術師と呼ばれる探索職だ。彼らは自らが調合した薬品を使い、独自の術式で不可思議な現象を起こす。テレビゲームでいう『魔法使い』の立ち位置であった。
 四人は研修を受けた後、簡単な実技試験と筆記試験に合格し、探索者としての許可証を得る事となる。その際に最低限の武具を『組合』が揃えてくれた。
 探索者を選定するのは、武具や端末といった最低限の物資を初心者に無料で提供するため、という理由もあるらしい。要は希望者が増えすぎると、皆に無償で分け与えられないという事だ。
 ちなみに研修期間をハルナやのどか、木乃香などは一週間で終えていたが、夕映の『アルケミスト』だけはどうやら難関らしく、夕映は唸りながら現実の物理法則と異なる、『迷宮』だけに起こる自然科学を学び、二週間で許可を得た。
 こうして夕映達は、探索者としての生活を始める事となる。およそ週二回を目安に、部活の延長線上の冒険が始まり、一ヶ月が過ぎた。
 そして夕映達は、地下三階という場所にまで足を踏み入れたのだった。


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