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No.29234の一覧
[0] 【完結】どうしてこうなった・・・?(HUNTER×HUNTER二次)[とんぱ](2015/03/29 12:12)
[1] 第一話[とんぱ](2014/07/16 17:41)
[2] 第二話[とんぱ](2013/05/12 00:29)
[3] 第三話[とんぱ](2013/05/12 00:31)
[4] 第四話[とんぱ](2013/05/12 00:32)
[5] 第五話[とんぱ](2013/05/12 00:39)
[6] 第六話[とんぱ](2014/07/16 18:05)
[7] 第七話[とんぱ](2013/05/12 00:44)
[8] 第八話[とんぱ](2014/07/16 18:08)
[9] 第九話[とんぱ](2014/07/16 18:08)
[10] 第十話[とんぱ](2014/07/22 01:40)
[11] 第十一話[とんぱ](2014/07/16 18:18)
[12] 第十二話(あとがき追加)[とんぱ](2014/07/21 22:21)
[13] 第十三話[とんぱ](2014/07/21 21:56)
[14] 外伝1[とんぱ](2014/07/21 22:00)
[15] 外伝2[とんぱ](2014/07/21 22:08)
[16] 第十四話[とんぱ](2014/07/21 22:23)
[17] 第十五話[とんぱ](2014/07/21 22:29)
[18] 第十六話[とんぱ](2014/07/21 22:38)
[19] 第十七話[とんぱ](2014/07/21 22:49)
[20] 第十八話[とんぱ](2014/07/23 20:16)
[21] 第十九話[とんぱ](2014/07/23 20:24)
[22] 第二十話[とんぱ](2014/07/23 20:33)
[23] 第二十一話[とんぱ](2014/07/23 20:43)
[24] 第二十二話[とんぱ](2014/07/23 20:56)
[25] 第二十三話[とんぱ](2014/07/23 21:09)
[26] 第二十四話[とんぱ](2014/10/26 00:22)
[27] 第二十五話[とんぱ](2012/12/18 16:52)
[28] 第二十六話[とんぱ](2012/12/23 09:06)
[29] 第二十七話[とんぱ](2013/02/19 16:21)
[30] 第二十八話[とんぱ](2013/03/03 01:47)
[31] 第二十九話(クラピカ追憶編のネタバレ若干あり)[とんぱ](2013/02/21 19:32)
[32] 第三十話[とんぱ](2013/03/12 17:11)
[33] 第三十一話[とんぱ](2013/03/24 09:23)
[34] 第三十二話[とんぱ](2013/04/14 12:20)
[35] 第三十三話[とんぱ](2013/04/23 22:53)
[36] 第三十四話[とんぱ](2013/05/03 18:07)
[37] 第三十五話[とんぱ](2013/08/26 07:59)
[38] 第三十六話[とんぱ](2013/05/19 00:55)
[39] 第三十七話[とんぱ](2014/10/26 00:16)
[40] 第三十八話[とんぱ](2013/12/14 16:42)
[41] 第三十九話[とんぱ](2014/10/26 01:06)
[42] 第四十話[とんぱ](2015/04/23 19:54)
[43] 第四十一話[とんぱ](2013/07/29 22:01)
[44] 第四十二話[とんぱ](2014/07/11 15:15)
[45] 第四十三話[とんぱ](2013/10/01 22:18)
[46] 第四十四話[とんぱ](2015/04/23 21:46)
[47] 第四十五話[とんぱ](2013/11/28 20:35)
[48] 第四十六話[とんぱ](2014/07/21 22:50)
[49] 第四十七話[とんぱ](2014/07/21 22:50)
[50] 第四十八話[とんぱ](2014/07/22 02:20)
[51] 第四十九話[とんぱ](2014/07/21 22:50)
[52] 第五十話[とんぱ](2014/08/18 15:18)
[53] 第五十一話[とんぱ](2014/08/11 13:51)
[54] 第五十二話[とんぱ](2014/07/21 22:51)
[55] 第五十三話[とんぱ](2014/07/22 20:48)
[56] 第五十四話[とんぱ](2014/07/21 22:51)
[57] 第五十五話[とんぱ](2014/08/06 17:56)
[58] 第五十六話[とんぱ](2015/02/04 13:29)
[59] 第五十七話[とんぱ](2014/09/03 02:04)
[60] 第五十八話[とんぱ](2014/09/04 14:17)
[61] 第五十九話[とんぱ](2014/09/08 00:27)
[62] 第六十話[とんぱ](2014/09/17 18:21)
[63] 第六十一話[とんぱ](2014/10/12 21:02)
[64] 第六十二話[とんぱ](2015/03/12 22:47)
[65] 第六十三話[とんぱ](2015/03/16 12:33)
[66] 第六十四話[とんぱ](2015/03/19 21:43)
[67] 第六十五話[とんぱ](2015/03/19 21:44)
[68] 最終話[とんぱ](2015/04/01 03:01)
[69] 後日談その1[とんぱ](2015/03/23 21:41)
[70] 後日談その2[とんぱ](2015/06/07 09:21)
[71] 外伝3[とんぱ](2015/06/05 21:11)
[72] 後日談その3[とんぱ](2015/06/20 17:08)
[73] 後日談その4[とんぱ](2015/06/22 21:52)
[74] 後日談その5[とんぱ](2015/06/30 22:48)
[75] 後日談その6[とんぱ](2015/07/04 00:59)
[76] 後日談その7[とんぱ](2015/10/19 15:39)
[77] 後日談その8[とんぱ](2015/10/21 19:02)
[78] 外伝4[とんぱ](2015/10/28 19:31)
[79] 外伝5[とんぱ](2015/11/09 19:36)
[80] 異伝編 艦これ短編[とんぱ](2015/12/06 22:44)
[81] NARUTO 第一話[とんぱ](2015/12/09 20:55)
[82] NARUTO 第二話[とんぱ](2015/12/09 20:58)
[83] NARUTO 第三話[とんぱ](2015/12/10 02:10)
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[29234] 第五十二話
Name: とんぱ◆ea70014c ID:60672e82 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/07/21 22:51
第五十二話





ゴン達とお泊まり会をしてから3日が過ぎた。
あれは楽しかったなぁ。皆がリィーナの用意した可愛い服や綺麗な服で着飾られていたし。
最初は抵抗していたけど、最後には皆諦めていたな。今日1日だけだと我慢していた。
私を思ってのことだったら嬉しいな。

途中でキルアの性転換が切れた時が大変だった。
キルアだけ皆よりも早くにホルモンクッキーを食べたから効果が切れるのも早かったんだよね。
おかげでキルアは男の姿で女性の服を……あれ以来時々明後日の方角を眺めて黄昏ている。正直すまんかった。

でも……ホルモンクッキーが1日しか効果がないとはなぁ。
キチンとアイテムの説明を読んでいなかった。興奮してたし、感動のあまり涙が出て視界が歪んていたしな。
はぁ……例え私にホルモンクッキーの効果が出ていても目的を果たすのは難しかったのか。
1日しか性転換出来ないなら、恋人を見つけるのも難しいだろうし……。女に戻る度に性転換しなくてはならない。
最大でも200日だ。童貞喪失するだけならそういう店に行けばいいけど、恋愛をするには短い日数だろう。
私だってここまで待ったからには恋愛してキチンと童貞喪失したかったし。

なんか、逆に諦めがついて来た。どうせ無理だったんだって。
もちろん男に戻れるなら戻りたいけど……。
念能力で無理ならもう無理だ。だったら……ビスケの言う通り、女として生きていくしかない。
それが母さんとドミニクさん……父さんの為でもある。そう思うとそんなに嫌でもない。
あの人たちのおかげで今の私があるんだ。あの人たちの想いに応える生き方をしてもいいだろう。

まだ簡単には割り切れないけど、そう思って新たに生きていこう!
心の整理に時間が掛かったけど、そう思えば少しは前を向けるようになってきた。
そもそも私にはまだすべきこともあるんだ。ずっと落ち込んでいるわけにもいかない。
そう、グリードアイランドが終わった後のあの出来事の為にももっと強くならなくては!
まずはアレが本当に起こるかどうかも調べなければいけないな。グリードアイランドをクリアしたらネットで情報を調べよう。
確か巨大なキメラアントが原因だったから、虫関係の情報をハンターサイトで調べていればいずれ分かるだろう。
起こった後で動くから後手に回らざるを得ないけど、それは仕方ないと割り切るしかない……。
どこであの事件が起こるのか、そこまでは私も覚えていないからな……。確か、ミテネ連邦の何処かだったはずだけど……。
まあこればっかりは同じ場所で起こるとも、そもそも本当に同じことが起こるとも言えないからな。事件が起きるまで待つしかない。
もしかしたら時期がずれる可能性もある。もっと先になるか、あるいは今この瞬間にも起きているかもしれない……。

いや、今はそれを考えても仕方ないだろう。まずはグリードアイランドをクリアしなくちゃね。
ここしばらくグリードアイランドでの活動を控えていたけど、今日からまた頑張るとしよう。

 

「皆さんおはようございます!」
「アイシャ! 元気になったんだね!」
「え? ……そんなに違いますか?」

いつもと変わらない朝の挨拶をしただけなんだけど、そんなに違うのかな?

「全然違うよ! ちょっと前のアイシャは元気そうに見せてただけだったけど、今のアイシャはいつものアイシャだった!」

そうか、そんなに違っていたのか。
皆に心配させないようにいつも通りにしていたつもりだったけど、本当につもりだったみたいだな。
まだまだ修行が足りないな。……いや、ゴンが鋭いのかもしれないな。

「元気になったんなら何よりだぜ」
「ありがとうございます。
 ……その節は皆さんにご迷惑をお掛けしました。申し訳ありません。」

「全くだ。おかげで酷い目にあったぜ」
「ああ、少しは反省をしろよ」
「サブ! バラ!
 ま、待ってくださいリィーナ先生! お、オレからしっかりと言っておきますから何卒ご勘弁を!」

サブさんとバラさんの言い分ももっともなんだけどな。
しかしすごいなゲンスルーさんの対応の速さは。リィーナがサブさんとバラさんをどうこうする前に反応して先に謝るなんて。
というか、本当にゲンスルーさんって仲間思いだな。他人の為にここまでするなんて。サブさんとバラさんと本当に仲良しなんだな。

「リィーナ。今回は私の暴走が招いた結果です。
 彼らの不平は当然の反応ですよ。許して上げてください」

「……分かりました。今回はアイシャさんとゲンスルーさんに免じて無かったことと致します」
「ふぅ。悪いなアイシャ」
「いえ、本当のことですし」

サブさんとバラさんに悪いこともしたしね。
性転換の邪魔にならないように念には念を入れて最初の一撃で丸一日は昏倒するようにしていたし。
ゲンスルーさんも2人の世話で1日潰れたしね。
まあ、修行も免除されたから嬉しかったかもしれないけど。

「今日からまたグリードアイランドの攻略を始めましょう。
 私のせいでしばらく何も出来ていませんでしたからね」

この3日間は私を気遣ってか誰も攻略を進めずにいた。
まあゴン達は修行していたけど。
私は気持ちの整理を付けるために日がな1日ぼうっとしてたなぁ。
こんなにゆっくりしたのはどれくらいぶりだろうか?
今日からまた気合を入れ直して頑張ろう!

 

「さて、アイシャの調子も戻ったことだし、これからの方針を話し合うぞ」

司会ゲンスルーさんによるグリードアイランド攻略会議が始まる。
すっかり司会進行役が板についたゲンスルーさんである。

「まず、前に話していた通り、オレ達が1番手に入れなければならないのは指定ポケットカードNo.2“一坪の海岸線”だ。
 既に場所は“道標/ガイドポスト”で割っている。ソウフラビという街だ。
 だがこのカードはまだ誰も手に入れたことがないカードだ。先ほども念の為に調べてみたが所有しているプレイヤーは0だ。
 SSランクだけに、それだけ入手方法が困難なんだろう。オレの調べた限りでも入手の目処も立っていないようだ」

「困難なのは分かるが、今まで誰も入手しようとしていないわけじゃないんだろ?
 それなのに誰も入手出来ていないのか?」

「だろうな。恐らく特殊な条件があるんだろう。特定の時期、特定のアイテム、とにかく何らかの条件を満たしていないと入手出来ないんだろう。
 Sランクのカードでも他の指定ポケットカードを使わなければ入手が困難なカードは幾つもある。SSランクともなれば困難さは推して知るべしだな」

なるほど。一筋縄では行かなさそうだな。
単純に強ければ取れるというわけでもないだろう。その条件をどうにかして見つけなければ。

「まずはソウフラビに行ってみるか?
 ここで話していても現地に行ってみなけりゃ条件も分からないだろうしな」

「まあそうするしかあるまい。
 だが、問題は、だ……」

ん? 皆が私を一斉に見る。
ふふ、分かっているさ。どうせ私に移動系のスペルカードは効きませんよ。

「いいですよ。私はここで留守番していますから。
 皆さんでどうぞ」

不貞腐れなんかいないやい。
いいないいな、皆して空飛んで移動出来ていいな。
私も飛べるけど、それとこれとは違うんだ。一瞬で別の場所に移動出来るっていうのがいいんだ。

「いや、また幾つかのチームに分かれたら……」
「だけどよ、SSランクのカードだぜ? 全員で調べた方がいいんじゃないか?」
「だがアイシャはどうする?」
「また走ってくればいんじゃね? アイシャなら大丈夫だろ?」

そらまあ走ればいつかは辿り着くけどね。街への方向さえ分かればどうにかなる。
グリードアイランドがどれだけの広さかは分からないけど、その気になれば1000キロや2000キロくらい走れるだろう。

「へへ。まあ待てよ皆、オレにいい考えがある」
「なに? どういうことだレオリオ?」

レオリオさん? いい考えって何だろう?

「まあオレの考えを実行するならまずはソウフラビに行かないと意味がないな。
 一度オレをソウフラビに連れて行ってくれないか? オレはまだ行ったことがないからスペルじゃ行けないんだよ」

「……レオリオ、お前アレを試すつもりか?」

ミルキにはレオリオさんが何をしようとしているのか分かっているのか?
この2人、時々2人っきりで色々としているようだから、何か私たちに知らないことを知っているのかも。
最初はレオリオさんとミルキがここまで仲良くなるとは思ってもみなかったよ。

「へへ。まあな。多分アレなら上手く行くはずだぜ」
「いや、だがスペルでの移動は……いや、スペルと違いアレなら……」
「まあ物は試しでやってみるさ。とにかくゲンスルーさんよ、オレを一度ソウフラビに連れてってくれよ」
「何をするか分からんが、まあいいだろう。
 だがどうせならアイシャを除く全員でソウフラビへ行くぞ。これから何をするにしても移動出来る場所を増やしておくのに越したことはない。
 何人だろうとどうせ使うのは“同行/アカンパニー”1枚だしな」

「そうだな。それがいいだろう」
「アイシャさん! すぐに戻りますので少々お待ちください!」
「いえ、私を気にせず“一坪の海岸線”を探していてもいいんですよ。
 レオリオさんの考えとやらが無理でしたら、走って追いかけますから」

光が飛んで行った方向へ向かって走ればいつかは辿り着くでしょ?
走るよ。走ればいいんだ。クソッ! ゲームマスターどもめ! 細かな設定しやがって!

「大丈夫だ! きっと上手くいく! 待ってろよアイシャ、すぐに迎えに来るからな!」
「それじゃ行くぞ。“同行/アカンパニー”使用! ソウフラビへ!」

皆が光に包まれて飛んで行った。
私のオーラはまた減った。
……20m以上離れていれば良かった。

レオリオさん……。どうやって私をソウフラビへ連れて行くのだろう?
でも、ああ言ってくれたんだ。信じて迎えに来るのを待とう。

 

皆がソウフラビへ行ってから5分程経ったか。
まだレオリオさんは来ない。準備に時間が掛かるのかもしれない。
5分待ってもリィーナが来ないんだから、レオリオさんの考えとやらはまだ実行中なのだろう。
もし失敗したらすぐにリィーナが飛んでくるか“交信/コンタクト”で連絡してくるからな。

そうして待っていると空からスペルの飛行音が聞こえてきた。
きっとレオリオさんかリィーナだろう。どっちかな? いや、信じて待つと決めたんだ。レオリオさんだと思う。

空から着地したのは……レオリオさんだ!
レオリオさんが迎えに来てくれた。どうやって私をソウフラビへ連れて行ってくれるんだろう。楽しみだな。

「待たせたなアイシャ!
 ちょっとまだ不慣れなことをしてたから時間が掛かっちまったぜ。わりぃな」

「いいんですよ。それより、どうやって私をソウフラビまで連れて行ってくれるんですか?」
「ああ、それなんだがよ……す、少しだけアイシャを抱きかかえることになるけど、い、いいか?」
「え? それは構いませんけど……? でも、それだと……」

リィーナが試したことはレオリオさんも知っているはずだ。
例え抱きかかえたとしても、移動スペルでは私を連れて行くことは無理だった。
細かいプログラムだと憤ったが、不正防止の為には当然の処置だ。

「いや大丈夫だ。オレがこれからすることにスペルカードは関係ないからな。
 まあ、移動スペルを参考にしてはいるんだがよ」

? 移動スペルを参考にしているのに、スペルカードは関係ない?
……え、も、もしかして……。

「ほら、行くぜ」
「あ……は、はい」

レオリオさんに抱きかかえられる。お姫様抱っこだ。
リィーナにもされたけど、やっぱり少し恥ずかしいな。

「落ちたら危ないから少し強くするぜ。痛くないか?」
「はい、大丈夫です……」

痛くはない。ただやっぱり恥ずかしい。
多分今顔が赤くなっている。こんな歳で抱っこされるのはな……。

「それじゃ行くぜ!
 【高速飛行能力/ルーラ】使用! ソウフラビへ!」

「!?」

レオリオさんがそう叫んだ瞬間! 凄まじい勢いでレオリオさんが空を翔けた。
いや、私もだ。レオリオさんに抱き締められている私も一緒に空を翔けている。
下を見ると景色が巡るましく変わっていく。周りは青一色の空だ。
これが……皆が移動スペルを使用した時の感じか。

空の旅はすぐに終わりレオリオさんは大地に降り立った。
周りにはゴン達もいる。ということはやっぱりここはソウフラビなんだ。
ほんの1、2秒くらいで到着した。凄い。これがレオリオさんの……新たな念能力か!

「へへ、どうよ」
「す、凄いです! 放出系の能力を作ったんですね!」

確かにこれなら私でも移動出来る!
私そのものを移動させることは出来ないけど、移動するのはレオリオさんだ。
そのレオリオさんが私を抱えれば、一緒に私も移動する。私の身体に効果を及ぼす能力じゃないから【ボス属性】でも無効化しない!
これが瞬間移動の類なら無効化しただろうけど、レオリオさんのは高速飛行して目的地まで移動する能力だ。レオリオさんが言っている通り移動スペルを参考にしたんだろう。
移動スペルは目的地に向かって瞬間移動するんじゃなくて、高速で飛んでいく効果だからな。
移動スペルを何度も体験したおかげで能力を作るのにかなりの参考になったんだろう。

「ああ、前から考えていた能力なんだよ。
 これも黒の書に載っていたんだよな」

「あ、ああ。そうなんですか……」

私ってこんな能力まで考えていたんだ……。
いや、今回は良くやったと思おう。良くやったぞ過去の私!

「でも中々上手く出来なくてな。
 グリードアイランドでビスケに色々と放出系について細かく教わってたんだ。
 都合よく移動スペルなんてあったから、すげぇ参考になったぜ」

確かに能力を使用する時もスペルを使っているみたいだったな。
移動スペルと同じようにすることで明確なイメージを固めているんだろう。
何事もイメージがあるとないとでは大きな違いだ。念に関してはそれがより顕著に現れる。
グリードアイランドに来たことはレオリオさんにとって予想外にいい刺激になったみたいだ。

「移動地点の目標を定めるのをどうしようかと悩んでいたんだけどよ。
 それはミルキのおかげで何とかなったぜ」

「ミルキの?」
「ああ。ミルキから神字を少し教わってな。
 オレが念を籠めて書いた目的地の名前を刻んだ神字を目標にすることに成功したんだ」

なるほど。離れた位置に飛ぶのには何らかの目標を作らないと難しいからな。
それを神字で補ったわけか。

「後は能力を使用する時に刻んだ神字の名前を言えば、そこに飛んでいく仕組みだ。
 問題は目標の神字が何らかの理由で消えたらそこへは移動出来なくなるし、目標の神字を何処かへ動かされたらそこに向かって移動しちまうことだな」

「……目標が地面の下とかに隠されたらどうなるんですか?」

瞬間移動系じゃないから、石の中にいるとかにはならないと思うけど……。

「まあ大丈夫だぜ。地面の下に隠しても特に問題はなかった。一応それはミルキに言われて試しているからな。
 ぶっつけ本番でアイシャを巻き込むわけにもいかないしな。
 あと目標が動かされても大体の位置は分かる。もし深海とかに隠されても大丈夫だぜ。
 まあ目標は地面の下に隠すつもりだから簡単には動かされないだろうけどな」

「なるほど……。
 本当に素晴らしい能力ですレオリオさん!」

よく考えて作られている。これなら一度行った場所なら何時でも行けるということだ。
放出系でも最高に便利な類の能力だな!

「ありがとよ。
 ……元々は世界中を素早く移動したくて作ろうとしてたんだよ。
 これがあれば、助けを求めている患者の元にすぐに行けるからな……。
 ま、アイシャの役にも立てたし、完成して良かったぜ」

「レオリオさん……」

……そうか。その為に作った能力なのか。
レオリオさんの能力の殆どが、人を助ける為に作られているんだ。
これほど人の為に能力を作った人を私は知らない。

「レオリオさんは、きっと誰よりも素晴らしい医者になれると思います」
「へっ、よせよ。照れるぜ」

顔を赤らめてそっぽを向いたレオリオさん。
ふふ、結構レオリオさんって褒められるのに慣れてないよな。恥ずかしがり屋さんめ。

「いい話だ。感動的だな。だが死ね」
「ぬわーーっっ!?」
「れ、レオリオさーん!?」

な、何をするだァーッ!?
キルアとミルキによってレオリオさんが吹き飛ばされていく!?
レオリオさんに抱きかかえられていた私は地面に落ちる前にリィーナに抱きとめられた。

「何時までアイシャ抱きかかえたままくっちゃべってんだよ! 上手くいったんならさっさと降ろせや!」
「くそっ! こんなことなら神字なんて教えるんじゃなかったぜ! これからも移動の度にレオリオがアイシャを抱きかかえるとなれば……!
 貴様との友情もここで終わりのようだな! 眠れ地の底に!!」

「キルアさん。ミルキさん。私が許可します。やっておしまいなさい」
『あらほらさっさー!』
「ぐああ! し、痺れ! お、重い! 身体が痺れて潰れるぅ!!」

やめたげてよぉーー!!

 

「それじゃあ無事アイシャも合流出来たので“一坪の海岸線”捜索に移る」
『おー!』

ソウフラビ近くの海岸にて再びゲンスルーさん司会進行による攻略会議が始まる。
ただしキルアとミルキとリィーナの3人は正座で話を聞いているが。
膝の上にはミルキの作った重りをこれでもかと乗せている。少しは反省するがいい。
全く、レオリオさんが何をしたというのだ。

「おのれレオリオさんめ……!」
「……何だろう。アイシャに叱られるのも悪くない……」
「兄貴、その領域は危ないから帰って来い」

……結構余裕そうだな。重り増やすか?

『ぬわーーっ』

これくらいでいいだろう。
さ、ゲンスルーさん、話を続けてください。

「(……もう少し重くしてもいいんだぜ?)」

ははは。こういうところでリィーナに復讐しようとしてると後が怖いですよ?
でもたまのリクエストなので応えましょう。

『ぬわーーっっ!』

「さて、話を戻すぞ」

心なしか満足そうにしているゲンスルーさんが会議を進める。
……会議の進行も心なしかゆっくりな気がするけど。

「あー、つまりだ。SSランクともなると入手には複雑な流れが――」
「何を言いたいかと言うとだ、情報収集こそが1番大事でありかつ――」
「もしかしたら危険な戦闘もある可能性も無きにしも非ず、なので全員がそれぞれ注意を怠らず――」
「連絡を密にすることで危険の回避を――」

なげぇよ。

「……そろそろいい加減に致しませんと、私の堪忍袋も限界になりますよゲンスルーさん?」
「というわけだ! 皆頑張って情報を集めてくれ! 以上!」

自分が悪いと思っていたから我慢していたみたいだけど、流石にリィーナも限界に来ていたな。
慌てて話を切り上げるゲンスルーさん。焦るくらいなら初めからそんなことしなければ良かったのに。

とにかく、全員でバラけて情報収集が始まった。
ソウフラビの住人に話しかけて“一坪の海岸線”について知らないか聞き込みをする。
知っている人がいたらそこからさらに情報の真偽を確かめていくんだけど……。

 

「どうだ?」
「駄目だな。情報の欠片も出てこない」
「こっちも。一坪のひの字も出てこなかったよ」
「オレもだ」
「私もだな」

全員外れか。
本当にソウフラビで合っているのか? そう考えるほど情報は手に入らなかった。
SSランクとはいえ、これほど情報が出てこないものなのか?

「……今までもオレ達と同じように“一坪の海岸線”を探そうとしたプレイヤーはいたはずだ。
 だがオレ達と同じように見つけることは出来ていない……何かあるな」

何年もグリードアイランドをプレイしているゲンスルーさんでも分からない条件。
何らかのアイテムか、時期か、それとも他の何かか……どれも今すぐには分からないものばかりだ。

「時期が関係しているとしたらどうする?」
「……可能性としてはないとは言い切れないな。
 もしそうだとしたら……」

「ソウフラビをしばらく拠点として活動しないか?
 もし時期が原因だとしたら定期的に情報を集めるしか判断しようがない。
 もしかしたら情報収集を行った回数がトリガーになっているかもしれない。
 何も分からない現状だと、ここを拠点に動いた方がいいだろう」

「……そうだな。ここで情報収集を定期的に行いつつ、他のカードを集めるようにしよう」
「異議なし」
「オレも」
「それでいいだろう」

大体の方針は決まったな。

「もちろん並行して修行もしますよ。海岸もなかなか修行に良さそうな環境です。
 砂場や海など抵抗が程よくあって修行にもってこいですね」

「異議あり」
「オレも」
「それはないだろう」

だが残念。修行からは逃げられない。







12月になった。
あれからソウフラビに毎日情報収集に向かっているが何の情報も出てこない。
時期がフラグだとしたら、12月ではないということだろうか?
それともやっぱり時期は関係ないんだろうか?
まだ結論を出すのは早いな。

指定ポケットカードは78種まで集まった。
流石に残りはSランク以上が殆どなので、簡単には集まらなくなった。
これからは攻略に掛かる時間も多くなるだろう。

来月には新年、つまりは1月になる。1月と言えばハンター試験がある月だ。
キルアは前回のハンター試験に残念ながら落ちている。今回のハンター試験はどうするつもりだろう?

「キルア、来月にはハンター試験がありますが、キルアは受けるんですか?」
「あっ!」

うむ。どうやら忘れていたようだ。
キルアはそこまでプロハンターになる気はなかったみたいだけど、もう受ける気はないのかな?

「今日って何日だったっけ?」
「12月3日ですよ」
「もうそんな時期か。すっかり忘れていたぜ」
「あれから1年近く経つんだなぁ。何だか2、3年は一緒にいる気がするぜ」
「そうだな。かなり濃い日々を過ごしているからな。そう思うのも仕方あるまい」

そうか。来月にはゴン達と知り合って1年になるんだな。
レオリオさんの言う通りまだ1年も経っていないとは思えないくらい色々あった1年だった。
きっとゴン達と一緒にいるとこれからも色んな出来事と関わっていくんだろうな。
きっと退屈はしないだろうな。

「うーん、今すぐに行っても時間が勿体無いな」
「だったらギリギリまでここに入れば?
 試験の申し込みの締め切りは12月31日だから余裕があるといえばあるわさ」

「でもあんまり遅くなっても間に合わないかもしれないぜ」
「うむ。申し込みが間に合っても試験会場に辿り着けないかもしれないからな」
「それなら大丈夫! ほら、キリコにオレ達の友達だって言えばきっと今回の会場まで連れて行ってくれるよ」
「ああ! あの魔獣か!」
「そう言えば来年も案内してくれると言っていたな」
「ああ、私も案内してくれましたよ」

キリコ……凶狸狐か。
懐かしいな。空の散歩は楽しかった。あれのおかげでオーラの放出による空中移動を思いついたと言ってもいい。
キリコ達には感謝だな。

「アイシャも同じナビゲーターだったんだな」
「ええ。ドーレ港から一本杉を目指しました。親切なおじ様に教えてもらったんですよ」
「お、おじ様?」

おじ様元気かな? きっと元気な気がする。ああいうタイプはかなりしぶとい。
おじ様ならきっとどんな荒波も乗り越えていけそうだ。
思い出したらまた会いたくなってきた。おじ様って呼ぶと怒られるだろうけど。

「ゴンの言う通り彼らなら案内をしてくれるだろう。
 少しくらいここを出るのが遅くても間に合うだろうな」

「それなら1週間くらい前に出るとするか」
「ああ、それならオレも一緒に行くぜ」
「兄貴が? プロハンターになんか興味なかっただろ?」
「……今さら家の仕事をする気にもなれないしな。
 かと言ってしたいこともないし、どうせだったらプロハンターの資格を持ってれば色々と便利だろ?」

そんなに手軽に手に入れていいものなんだろうか。
プロハンターの資格が欲しくて毎年何百万人の人が試験に臨んで、合格出来る人はその中でもほんのひと握りなのになぁ。
でも2人の実力なら意地悪な試験じゃない限り大抵受かるだろうしな。
……また寿司みたいな試験ないよね?

「ミルキがそう言うなら2人で行ってくればどうですかキルア?」
「うーん、ま、いっか。
 足引っ張るなよ兄貴」

「お前がだキル」
「まーた2人で喧嘩する~」
「ふふ。喧嘩するほど仲がいいんですよゴン」
『誰がこんな奴と!
 ……真似すんなよ!』

めっちゃ仲良しです。息ぴったりじゃん。

 

さて、今日もソウフラビで情報収集してこようか。
多分成果はないだろうけど、それでも継続することに意味がある。
というか、ここまで来ると意地だ。今さら後には引けない。もしかしたらあと1回情報収集すると何か分かるかもしれない。
もしかしたら継続して情報収集し続けると何か分かるかもしれない。
そう考えたら今さら止められないのだ。
他の方法は別の人が試している。私は日々の情報収集が仕事なのだ。

では、朝の修行も終わったことだしソウフラビに……?
はて、空から移動スペルの音が?
でも私たちは今全員いるし……ということは他のプレイヤーか?

そうして空を見ると、すぐに私たちの傍……正確にはリィーナの傍に10人のプレイヤーが降り立った。
“同行/アカンパニー”か。ここはソウフラビから少し離れているから、狙いはリィーナだな。
ということは彼らはハメ組か……間違いない。以前ゲンスルーさんに会いに来ていた人もあの中に何人か混ざっている。

「……久しぶりだなゲンスルー。
 ゲームクリアから降りたんじゃなかったのか?」

「その話か。事情が変わってな。今はコイツ等とクリアを目指している」

あ、ゲンスルーさんの言葉に何人かが切れかけてる。

「ふざけるな! オレ達から勝手に離れて、ゲームを降りると言っておきながら今さらクリアを目指すだと!」
「やっぱりオレ達を裏切る気だったのかゲンスルー!」
「なんとか言ったらどうなんだ!」

……仲間と思っていたんだからな。特に初期から一緒だった人達は複雑なんだろう。
色々と憤りもあっても不思議じゃないか。

「皆落ち着け!
 ……ゲンスルー。オレ達の元に戻ってくる気はないのか?」

「……なに?」
「確かにお前は身勝手な理由でオレ達から離れていった。
 だが、お前がオレ達に貢献したことは小さな物じゃない。オレ達の基本となる戦法を考えたのもお前だ。
 今ならお前の仲間も含めてオレ達のチームに入れてもいい。報酬は少なくなるが、1人1億、お前は2億だ。
 もちろんお前たちが持っているカードでオレ達が持っていないカードは高く買い取ろう。……悪くない話だと思うが?」

これは彼らなりの譲歩、最後の優しさだな。
彼ら、ハメ組はもうゲームを殆どクリアしたものと思っている。ここに来たのもリィーナが持っているカードが狙いなのは明白。
私たちが仲間になればリィーナが持っているカードはそのままハメ組の物に、仲間になるのを断ればスペルで奪い取るだけ。
私たちが“堅牢/プリズン”で指定ポケットページを守れていないのも知っているのだろう。

無理矢理奪いに掛かっても勝算はあると踏んでいるのに、私たちに報酬を用意してカードの買い取りまで持ち掛けるのはゲンスルーさんへの借りを返す為だろう。
彼らがここまで来れたのにはゲンスルーさんの力は不可欠だったからな。例えそれがゲンスルーさんの計画の内でも、そこまでは彼らには分からないことだし。

「……なるほどな。そりゃいい話だ」
「なら!」
「まあ落ち着け。
 リィーナ先生。このまま先生がクリア出来たらオレの報酬は幾らになります?」

「そうですね。貴方の情報とその分析はかなりの役に立ちました。
 これだけの短期間でここまでのカードが集まったのは間違いなく貴方のおかげです。
 このままゲームクリアが出来たならば、500億の内40%をゲンスルーさん達で分けてもらっても構いませんよ。
 もちろん今後さらなる貢献を成したら報酬は上がるものと思って頂いて結構です」

「……というわけだ。悪いな、他を当たってくれ」

おお、予想以上の報酬にサブさんとバラさんが喜色満面になっている。
ゲンスルーさんはハメ組の人と交渉中だから冷静な仮面を被っているが、内心は大喜びしているな。
何せ報酬なんて無いものと諦めていただろうからな。そこに降って湧いたように200億の報酬が手に入る可能性が出て来たんだ。喜びもするだろう。

「っ! 後悔するなよ!
 その答えが大金に目が眩んだ愚かなものだと教えてやる!
 “ブック”!!」

『“ブック”!!』

交渉していた彼……確か以前来た時にニッケスと呼ばれていたかな?
ニッケスさんがバインダーを出したのを合図に他のハメ組もバインダーを出した。
全員がリィーナを20m以内の距離に収めている。スペルでカードを奪いに来たか。

「彼女がお前たちの指定ポケットカードを一手に集めているのは既に確認済みだ!
 その中でオレ達に必要なカードがあるのも分かっている!
 お前ならオレ達がどういう手に出るか分かっていただろうに、馬鹿な選択をしたよ!
 “強奪/ロブ”使用! リィーナを攻撃! No.75!!」

ニッケスさんが手に持ったカードから光が飛び出しリィーナへと飛んでいく。
ハメ組の人たちは皆勝利を確信した顔をしている。攻撃スペルを防ぐのに必要な防御スペルの殆どを独占しているんだ。例えこれが防がれたとしても、長くは保たないと確信しているのだろう。
対して私たちも誰も焦っていない。リィーナはこの日の為に常に【貴婦人の手袋/ブラックローズ&ホワイトローズシャーリンググローブ】を具現化して装着しているからだ。
彼らの戦法と確信は間違ってはいない。ただ、リィーナの能力がグリードアイランドというゲームに置いて予想外の能力だっただけだ。

「ふっ」
「……はあっ?」

リィーナがスペルを掴み取って吸収した。
ハメ組の人たちは皆呆然としている。まあ気持ちは分からなくもない。彼らからしたら想像だにしていなかった現象が目の前で起きたんだから。
必勝を期した戦法がいきなりスカされたんだから放心の1つや2つくらいするだろう。

「え? いや、え?」
「は? す、スペルが……つ、掴まれて……」
「き、消えた?」
「おや? どうされました? もっとスペルを撃ち込んでも良いのですよ?」

リィーナさん、挑発はやめてあげて。何だか可哀想になってくるから。

「あ、有り得ない! そうだ! 今のは“聖騎士の首飾り”の効果だ!」
「いや、お前に跳ね返っていないだろうが」

ゲンスルーさんの言う通りだ。“聖騎士の首飾り”は受けた攻撃スペルを対象に跳ね返す“反射/リフレクション”の効果を身に付けていれば常時発動するというもの。
つまり“強奪/ロブ”の効果が跳ね返っていないのだから、“聖騎士の首飾り”の効果というのはおかしいだろう。

「違う! オレも“聖騎士の首飾り”を身に付けているからだ!
 だからスペルが反射し続けるんだ。それをゲームシステムがスペルを打ち消すという結果にしたに過ぎない!」

ああ、確かにそういう風に取れなくもないな。
実際どうなるんだろう? “聖騎士の首飾り”を付けた者の間でスペルが反射し続けるのか、それとも消滅するのか、それとも反射は一度だけなのか。
試したことがないから分からないな。

「“徴収/レヴィ”なら“聖騎士の首飾り”も意味はない!
 勿体無いが“税務長の籠手”を使うぞ!」

『おう!』

ニッケスさんの掛け声と共にハメ組から3人程前に出てきて他のメンバーが下がった。
彼らの腕には初めから籠手が装着されている。どうやら“聖騎士の首飾り”対策に何人か“税務長の籠手”の使い手を用意しているようだ。
準備が良いことだが、まあそれも無意味に終わってしまうと思うと悲しいな。
おっと、私たちも下がっておこう。巻き込まれてカードが取られても嫌だからな。
全員分かっているようで、私が下がると同時に皆がスペルの範囲外に出た。

『“徴収/レヴィ”使用!!』

“徴収/レヴィ”を放ったハメ組のメンバーから大量の光弾が放たれる。それぞれ範囲内にいるプレイヤーに“徴収/レヴィ”の効果が発動したのだ。
その光弾の内の3つがリィーナに向かって飛んでいく。高速で飛来するそれは避けてもリィーナを自動追尾して必ず命中するだろう。
だが逆に言えば避けようと思えば避けることが出来る速度だということだ。リィーナならその程度の速度のスペルなど3つが10に増えようとも全て掴み取ることが出来る。

「ふっ」
「……あ、あ……あり、えない……」
「そういえばさっき面白いことを言っていたな。オレも言ってやろうか?
 お前たちがどういう手で来るか分からないオレだと思っていたのか? 対策があるからこそ強気な態度なんだよ」

「貴方の力ではないでしょうに」

ごもっともである。

「さあ、どう致しました? まだ“税務長の籠手”は使用出来るのでしょう?
 どうぞ指定ポケットのカードが無くなるまでお試しくださいませ。
 どうせ失うカードは余った指定ポケットカードかスペルで偽装した不必要なカードでしょうから、惜しくはないでしょう?」

「う、うあ……」

ニッケスさんが、いや、ハメ組全員がリィーナの圧力に押されている。
実力で劣っているからこその人海戦術にハメ技だ。これほどのプレッシャーを味わったことなどないのかもしれない。
……まあ、リィーナクラスのプレッシャーなんてそう味わう機会もないか。

「ぜ、全員でスペルを仕掛けろ!
 相手は両手でスペルを打ち消している! 何らかの念能力だろうが、両手以外では打ち消せないはずだ!
 全員で打ち続ければいずれは防御を突破出来る! 出来るはずだ!!」

もはやすがる思いだろうな。全員で我武者羅にスペルで攻撃しようとしている。
だが確かに有効な戦法でもある。リィーナとて人だ。無数に飛んでくるスペルの全てを両手で掴むことは出来ないかもしれない。いずれは掴み損ねてしまうだろうな。
けど、そう来るならそれなりの対処をすればいいだけだ。

『“徴収/レヴィ”使用!!』

ハメ組がそれぞれ“税務長の籠手”やスペルによる“徴収/レヴィ”の連続攻撃を行う。
これだけ“徴収/レヴィ”を撃っても当たるかどうか分からない上に、例えリィーナの防御をすり抜けて当たったとしても“徴収/レヴィ”ではどのカードが手に入るか分からない。
しかも“徴収/レヴィ”のカード化限度枚数は25枚。“税務長の籠手”で放てる“徴収/レヴィ”にも限界はある。合計したらハメ組が撃てる“徴収/レヴィ”は100にも満たないかもしれないな。
上手くいく可能性は低いのにそれが分かっていない。かなり動揺しているようだ。

まあ、そもそもリィーナは“徴収/レヴィ”が当たる位置にすらいないんだけどな。

「なっ!? い、何時の間に移動したんだ!?」
「近距離スペルの有効範囲は20m。貴方がたがスペルを使用する間に離れるには私にとって短すぎる距離です。
 そして貴方がたの実力では私の動きを追うことは出来ないでしょう。……誰か1人でも私の動きを捉えられていましたか?」

『……』

誰もが呆然としている。実力の差というものを感じたのだろう。

「先ほどから悠長にスペルで私のカードを奪おうとしていますが……。
 まさか、自分たちが攻撃を受けないとでも思っているのですか?」

「っ!
 ……ふ、ふふ、む、無駄だ。オレ達が持っているカードはスペルカードが殆ど。
 指定ポケットに入っているカードも――」

「ああ、そうではありませんよ」
「?」
「……私を怒らせて、無事で済むと思っているのですか? と言っているのですが……理解出来ませんでしたか?」
『ひっ!?』
「まさか貴方がた、そのような方法で他のプレイヤーからカードを奪っておいて、一切恨まれないとでも?
 だとすれば随分おめでたいですね。確かにゲーム上で貴方がたのやり方は不正ではございませんが、だからと言って全てのプレイヤーが納得すると思っていらしたら大間違いです。
 ……そのような甘い考えでは、いつか痛い目にあってしまいますよ?」

『あ、“同行/アカンパニー”使用! ジート!!』

あ、リィーナの脅しに押されたか。青い顔をしながら“同行/アカンパニー”で逃げていった。
まあ実力を見せつけられた上であんな風に脅されたら逃げもするわな。

「……せっかく忠告をして差し上げたというのに逃げるとは。失礼な方がたですね」

……ああ、リィーナなりの忠告だったのね今の。
どう聞いても脅しにしか聞こえなかったけどね。

「……忠告?」
「脅しの間違いじゃないのか?」
「リィーナの中では忠告なのよきっと」
「ビスケ、聞こえていますよ」

まあ丁度いい具合にハメ組への威嚇になっただろう。
これで彼らもリィーナに対しては今までのやり方が通用しないと理解出来たはずだ。
今後の交渉も上手くいく可能性も上がっただろう。
……まあ、“一坪の海岸線”が手に入らなければ交渉も何もないけど。

それじゃ、“一坪の海岸線”を手に入れる為にも日課の情報収集に出掛けるとしますか。







1月になった。新年となりおめでたいが、未だ“一坪の海岸線”に関してはおめでたい情報はない。
……日課の情報収集も続けているけど、もうこれ関係ないだろ多分。
いくら何でも二ヶ月近くも情報収集し続けなければ入手フラグが立たないなんて難易度高すぎる。SSランクどころじゃないよ。
同じ相手に何回も話しかけなければ情報をくれないかもってキルアに言われたけど、もう何十回話したか分かんないくらいだ。

多分他の条件があるんだろう。
やっぱり時期か? 何か関連するクエストをクリアしていないとか? それとも手持ちのアイテムか?
もう“宝籤/ロトリー”で当てた方が早いんじゃないか? ハメ組あたりがやってそうだな。そう考えると早く独占したいんだけど……。


キルア達がグリードアイランドから出てもう3週間か。試験は1月7日に始まるから、順当に進めば今頃は第3次試験か第4次試験あたりか?
ハンター試験はその年によって試験の回数も難易度も違うから掛かる日数も変わってくる。もしかしたらまだ最初の試験が終わっていないという可能性もあるな。
2人が帰ってくるのはいつ頃だろうか。合格してるといいんだけど。

レオリオさんも今頃は勉強に集中しているだろうな。
センター試験は確か17日だったはず。その日はレオリオさんの合格をお祈りしよう。
キルアとミルキは別に祈らなくてもまあ大丈夫だろう。命の危険もある試験だけど、あの2人がハンター試験で死ぬなんて難易度高過ぎて想像出来ないよ。

おや、空から聞きなれたスペル音。招かれざるお客様かな?
……ぶっ!?

「よう、今戻ったぜ」
「アイシャ! 久しぶりだな! 元気だったか!?」
「あ、お帰りキルア! ミルキさん!」
「2人とも早かったな。試験はどうだったんだ?」

いや、ちょっと早すぎない?
え? 試験開始日が5日前でしょ? 試験会場からジョイステーションを設置している場所まで戻るのにも数日は掛かるはずだよ?
何でもう帰って来てんの? どんなに試験が早く終わってもこれだと1日くらいしか試験に掛けた時間がないことに……。
……ああ、そうか。そういうことか……。

「キルア、ミルキ、お帰りなさい……。
 試験は残念でしたけど、無事帰って来ただけでも良かったです。
 試験はまた来年受ければいいだけの話ですからね!」

ハンター試験……きっと第1次試験か第2次試験で落ちてしまったんだろう。
実力は十分の2人だから、きっと実力以外の何かで落とされたんだ。去年の寿司みたいな意地の悪い試験か何かに当たったのかもしれない。
運が悪いとしか言いようがない。全く、プロのハンターから見てもこの2人の実力はかなりの物だと言うのに。
今度ネテロに文句言ってやる!

「……? 何言ってんだ?」
「アイシャ? ハンター試験ならオレ達2人とも合格してきたぜ?」

……はい?

「2人とも合格か。おめでとう」
「それにしても早かったわね~」
「そうですね。一体どのような試験だったのですか?」

こんなに早く終わる試験って何をしたんだろう?

「簡単な試験だったぜ。ただ他の受験生のプレートを5枚集めればいいってだけの」
「それだけならすぐに終わったんだがな。キルとどっちが多くプレートを集められるか競争になってな」
「途中から互いに妨害するから中々終わらなかったぜ」
「結局全員倒してプレート奪ってから2人で制限時間ギリギリまでタイマンして、互いに不毛だと思って止めたんだよな」
「ああ、無意味な時間を過ごしちまったぜ」
「……まあ、兄弟仲が良くて何よりですよ」

……この2人、自分たち以外の受験生全部倒してきたのか。
可哀想に。今年の受験生は運がなかったと思うしかないな。

「お前らは何か進展あったか?」
「何もありませんね。“一坪の海岸線”に関してはお手上げ状態です」
「……こうなったら他のカードを優先して集めた方が効率的かもしれないな」
「でも大体のカードは集まってんだろ? 他のプレイヤーのゲイン待ちのカードも結構あるしよ」
「そうだな。だが、このままソウフラビにいてもあまり意味はないかもしれない。
 ……レオリオが戻ってきたらもう一度全員で相談しよう。それまでは今まで通りでいいだろう」

「そうですね」

レオリオさん待ちか。
どうかいい結果が出ますように。







「よく集まってくれた。礼を言う」

錚々たる面々がオレの呼びかけに応えて集まってくれた。
アスタ組・ヤビビ組・ハンゼ組・リィーナ組・ソロプレイヤーのゴレイヌ・そしてオレ達カヅスール組。
総勢16名のトッププレイヤーがマサドラ近くの岩場に集合していた。この6組のどのチームも50種以上の指定ポケットカードを所有している。
この面々以外にもトップレベルのチームは他にもいるが、クリア間近なツェズゲラ組を呼ぶわけにもいかないし、他のは協調性のない連中が多かったからな。

「“交信/コンタクト”で話した通り、あの連中……ハメ組と呼ぶか。
 ハメ組の台頭に対策を立てる必要があると見てこうして皆に集まってもらった」

ハメ組。奴らのやり方はまさにハメ技だ。
数十人もの集団でスペルを買いあさり、攻撃も防御もおいそれと出来ない状況を作り出し他のプレイヤーから重要なカードを奪う。
よく考えられたやり方だ。だが、それをまかり通していいわけがない。やり方自体を非難するわけではないが、クリアを譲るつもりはないからな。

「アイツ等アタシ達からもカードを奪っていったのよ……!
 このままあんな連中にクリアさせるなんて許せないわ!」

アスタか。やはりこの中にも奴らの餌食になったものはいたか。

「オレ達もやられている。盗られたカードはまた入手することは出来たが、根本的な解決になっていない。
 このままじゃアイツ等がクリアするのも時間の問題だ」

「そうだ。このまま奴らの好きにさせるわけにはいかない。
 何とかしてクリアを阻止しなければ」

正直難しいだろう。奴らはオレ達の手持ちカードの状況を把握することが出来る。
だがオレ達は奴らがどれだけのカードを集めているのか、何処にいるのかすら分からない。
仲間の誰かにカードを分配して隠しているんだろう。おかげでランキングにも載っていないし、誰がカードを持っているかも分からない。
これではこちらから打って出ることすら出来ない。いや、例え打って出ることが可能だとしてもスペル数に差がありすぎてどうすることも出来ないだろう。

「“聖騎士の首飾り”で“徴収/レヴィ”以外の攻撃スペルからは身を守れるだろ?」
「ゴレイヌ。どうやらお前はまだハメ組の襲撃を受けていないようだな。
 奴らは“聖騎士の首飾り”を身に付けているプレイヤーに対しては“税務長の籠手”を使用した“徴収/レヴィ”の乱れ打ちをしてくるんだ。
 しかも複数人でな。いくら“徴収/レヴィ”がランダムにカードを奪うとしても、何回もやられたらいずれは目的のカードを奪われる」

「スペルで逃げたらどうだ?」
「すぐに追いかけられるさ」
「無理矢理アイツ等を叩くって手もあるわよ」
「奴らの方が数は多いんだぜ? 10人以上に囲まれてるんだ。こっちが逆にやられちまうさ」

そうだ。例え個々の力で上回っていたとしても、数はそれを越える力だ。
数を覆せる力を持った人間なんてほんの少数しかいない。オレ達じゃあれだけの人数相手に戦ったら返り討ちが関の山だ。

「じゃあどうするのよ!」
「落ち着けアスタ。それをこれから話し合うんだろう」

アスタは少々短気なところがあるな。仲間がそれを抑えて補っているようだが。
だがアスタが憤るのも理解出来る。このままじゃジリ貧だ。まさかあんな方法でクリアを目指すなんてな……。

「……“一坪の海岸線”」
「え?」

今のは……リィーナか。ここ最近かなりの速度でカードを集めているチームのリーダー。
噂通り見目麗しい美女だ。プレイヤーの中にファンがいるというのも理解出来るな。

「それは確かNo.2のカードだな。それがどうかしたのかリィーナ?」
「……」
「? どうかしたのか?」
「……いえ。
 先程も口にした“一坪の海岸線”ですが、これはまだ誰も入手したことのないカードです。
 これを彼らよりも早くに入手して独占して守れば、少なくとも彼らがクリアするのを防ぐことは出来るでしょう」

「はぁ? アンタ馬鹿なの? そんなことしたってアイツ等にカードを奪われるに決まってるじゃない。
 誰も手に入れてないならそれだけ入手難易度が高いってこと。だったらアイツ等も簡単には手に入れられないんだから、そのカードは放っておくのが1番じゃない」

……リィーナの言ったことは正しいが、アスタの言うことも確かだ。
例えカードを独占出来てもそれを奪われたら話にならない。ここはその“一坪の海岸線”の入手難易度を利用して時間を稼いでその間に何か他の方法を……。

「ふぅ。他人の意見を貶す前に自分が何を言っているかきちんと理解してから言葉を発した方が宜しいと思いますよ……アスタさん、でしたか?」
「……っ! アンタ、喧嘩売ってんの!?」

おいおい勘弁してくれ! いきなりトラブルなんて勘弁だぞ。

「2人とも落ち着け!
 ……リィーナ、確かにアスタの言い方は悪かったが言っていること自体にはオレも同意だ。
 アイツ等からカードを、守る方法が確立していない現状、不用意にレアカードを手に入れるべきじゃないだろう」

「……」
「どうした?」

またか。一体なんだこの沈黙は?

「……いえ、何でもありません。
 それではこのまま彼らがクリアするのを指をくわえて待っているのですか?
 確かに彼らが“一坪の海岸線”を入手するのは困難かもしれません。ですが、絶対に入手出来ないと決まっているわけではないでしょう。
 そもそも彼らは人海戦術を用いたスペルの独占を基本戦術としているのですよ。“一坪の海岸線”を“宝籤/ロトリー”で引き当てられないと言い切れるのですか?」

……確かにそれはあるな。だが、それこそまさに宝籤に当たるくらいの確率だぞ?

「だったら、どうやって手に入れたカードを守るっていうのよ!
 手に入れてもすぐに奪われるんじゃまだ“宝籤/ロトリー”で当てられるのを待った方が時間が稼げる分マシよ!」

「私の話を聞いていましたか? 独占して守れば、と言ったのです。
 カードを守る方法がなければこんな提案は致しません」

「奴らからカードを守る方法があるのか!?」
「一体どうやるんだ!?」
「まさかアンタ“堅牢/プリズン”持っているの!?」

“堅牢/プリズン”があれば指定ポケットは守ることが出来る。
だが問題は“一坪の海岸線”を独占した上で守るには“堅牢/プリズン”が複数枚必要だということだ。
ハメ組が多くのスペルを独占している現状、それだけの“堅牢/プリズン”を所有することなど出来るのか?

「いいえ、スペルは使用しません。
 要はカードを所持したプレイヤーをハメ組から見つからない場所に隠せばいいのです」

「……はぁ。所詮その程度の考えか。
 奴らがどれだけの人数揃えてると思っているの? 詳しい人数は知らないけど、多分50人は超えてるわよ。
 それだけの数から今さら私たちが逃げられるわけないじゃない。この場にいる全員がハメ組の誰かのバインダーに名前が登録されてるわよ。
 あとはスペルで“一坪の海岸線”を所持している奴を見つけられてはいオシマイ。分かった?」

「そこまで理解していてどうしてその先まで理解出来ないのか……私の方が理解に苦しみますね」
「アンタやっぱり喧嘩売ってんでしょ。いいわよ買ってあげるわよ!」
「えーいいい加減にしろ! 争うならここから出てってくれ!」

この2人絶対相性悪い! この面子をオレが仕切らなきゃいかんのか? 勘弁してくれ!

「貴方にも理解出来るように説明してあげましょう。
 簡単な話です。ハメ組の誰もが知らないプレイヤーを新たに連れてくればいいだけではありませんか」

「……あ」

なるほどそういうことか!
盲点だった! 確かにそうすればハメ組の攻撃は全て防げるじゃないか!

「彼らのやり方が通じるのは彼らのバインダーに名前の載っているプレイヤーのみ。
 なのでこの場の誰かが外へと戻り、知り合いの念能力者に頼み交代でグリードアイランドをプレイしてもらうのです。
 もちろんスタート地点には誰かが待っていなければなりません。ハメ組と接触する前にその場から移動しなければなりませんからね。
 そうして新たなプレイヤーに“一坪の海岸線”を持ってもらい、何処かに隠れてもらえばハメ組からの攻撃を受けずに済むでしょう。
 ああ、この時出来るなら2人連れて来た方がいいでしょう。もう1人には食料などの調達をしてもらいます。
 私たちの誰かがカードを守るプレイヤーと接触している時にたまたまハメ組が襲撃してくるという可能性もないとは言えませんから」

「そ、そんなの誰がやるっていうのよ。この場の誰もが自分たちがクリアしたくてここに来てんのよ。
 今さらプレイヤー交代なんて承諾出来るわけないでしょうが!」

「別に貴方にやってほしいとは言いませんよ。誰がこの方法を取っても結構ですし、取らなくても結構。
 ただ、他の方法があるのならどうぞ案を提示してくださいな」

「うっ……」
「とにかく、今は“一坪の海岸線”をどうにかして入手する、もしくはその入手方法を探ることが先決だと思いますが?
 ハメ組の方たちに先に入手されることが1番恐れるべき状況でしょう。
 入手さえ出来れば、後はすぐに“離脱/リーブ”で一度脱出してから先程の案を実行することも出来ますから」

……聞けば聞くほどこれ以外の方法はないな。
確かにこれならハメ組の襲撃を躱すことは可能! 例え“名簿/リスト”で“一坪の海岸線”を誰かが入手していると分かっても、それが誰かまではハメ組には判別出来ない!
そればかりか他のカードも新しく入ってくるプレイヤーに任せれば盗られる心配もなくなるだろう!
オレの知り合いの念能力者に渡りを付けて呼んでもいいな。この際報酬が少なくなっても仕方ない。それ以上のメリットがある。
リィーナの言う通り2人交代した方が安全だが、1人でも確実性は減るが今までとは安全度が雲泥の差だ。
これは例え“一坪の海岸線”を手に入れられなかったとしてもやる価値はあるな。

「唯一の欠点は“衝突/コリュジョン”は防ぎようがないということでしょうか。
 こればかりはどうしようもありません。ですが、この場合は出会う敵も1人のみ。遭遇してしまった場合はすぐに仲間の元へスペルで移動し、相談してまた新たなプレイヤーと入れ替わるのがいいでしょう」

そうか。“衝突/コリュジョン”までは防げないな。そうなるとまた保管要員を入れ替えなければいけないのか……。
そうなると少々手間だが、この際致し方あるまい。

「良し。リィーナの言うことももっともだ。
 今は“一坪の海岸線”の捜索を行うとしよう。
 入手出来なければ仕方なし。出来たならばリィーナの――」

っ! 何だ? どうした? リィーナの様子が……リィーナから凄まじいプレッシャーを感じる……!
あ、汗が止まらない……周りを見てもオレ以外は何事もなさそうにしている。オレだけか? ……いや、アスタも同じようになっているな。
どうしてオレとアスタだけが……!? ヤバイ。とにかくヤバイ。オレは今人生の岐路に立っている。
ここで選択を誤ればオレは死ぬかもしれない。大げさじゃなくそれだけのプレッシャーを味わっている!

「…………り」

間違えるな! 今までで彼女が発した違和感を見極めろ!

「……り、リィーナ、さん」

プ、プレッシャーが収まった! やった! オレは生き延びることが出来たんだ! 見ればアスタもプレッシャーから解放されたようだ。
恐らくオレは不用意に呼び捨てにしたせい、アスタは今までの態度が原因だろうな。
オレが彼女をさん付けで呼んだことでアスタも一緒にプレッシャーから開放されたということは、アスタの方はオレのついでに巻き込まれたようだな。
……これから不用意に女性を呼び捨てにするのは止めよう。絶対にだ。

「あー、とにかく“一坪の海岸線”を入手出来たならリィーナさんの案を試してみよう。
 オレにも知り合いの念能力者がいるし、他のチームもそうしたいならしてもいいだろう」

「……何があったんだカヅスール?」
「……何でもないさ」

頼むから聞かないでくれ。







全く。ほぼ初対面の女性の名をいきなり呼び捨てにするとは何事ですか。
女性ならばまだともかく、殿方に呼び捨てにされる謂れはございません。
私の名を呼び捨てにしても良い殿方は良人のみでございます。

初めは我慢も致しましたが、流石にそれも限界でした。
アスタさんがあまりに失礼な態度を取られていたのも原因でしょう。
もう少し礼儀というものを身に付けるべきですね。
最近の若者はそういったモラルがなっていません。嘆かわしいことです。

まあいいでしょう。とにかく、彼らを“一坪の海岸線”搜索に誘導することに成功したのですから。
今回の話は渡りに船でしたね。私たちも“一坪の海岸線”の捜索が難航していましたから、彼らにはフラグとやらを見つけてもらうのに役立ってもらいましょう。
もちろん役に立って頂けたら彼らにもそれなりの報酬はお渡しましょう。悪人ではない彼らを利用したままでいるなど私の矜持が許しません。

「さて、それじゃあこれから“一坪の海岸線”搜索に向かおうと思うのだが……。
 “一坪の海岸線”は何処で入手出来るんだ?」

「それについても調べてあります。ソウフラビという海辺の街です」
「おっ。オレ達行ったことある」
「じゃあ“同行/アカンパニー”で行くとしよう。
 誰か持っているか?」

「私が持っているので、それを使用しましょう」

……先生はソウフラビから少し離れた海岸で皆さんと修行しているから、このメンバーと出会うことはないでしょう。
ソウフラビにやって来たプレイヤーと揉め事が起こらないよう離れていたのが幸いしましたね。
私たちが既に“一坪の海岸線”の入手を試みているのが彼らに察せられたら少々面倒かもしれませんし。

「“同行/アカンパニー”使用! ソウフラビへ!」

“同行/アカンパニー”を使用すると程なくしてソウフラビへと到着する。
この移動スペルは本当に便利です。この効果を念能力で再現したレオリオさんは評価に値します。
しかも先生の黒の書を参考にしているというのですからなお良しです!
カストロさんといい、中々分かってらっしゃる方たちですね。黒の書が世界を流れているのは遺憾ですが、こうして善き人に渡っているのは嬉しい誤算でしょう。
まあ、中には悪人の手に渡っている物もあるかもしれませんから、早く全て回収しなければなりませんが。
……クリア報酬の内の1つは“失せ物宅配便”に致しましょうか。

レオリオさんには私が世界を移動する時に手助けしてもらいましょうか。手早く移動したい時には非常に便利です。
まあ、一度立ち寄ってその場所に神字を刻んだ目印を設置しなければいけないので、すぐには無理でしょうが。

「ここがソウフラビか」
「結構でかい街だな」
「まずは全員の行動を統一する為に入手までの流れを確認しておこう」

カヅスールさんの説明は前にゲンスルーさんが教えてくれたことと大体同じのようですね。
ですがこれでは何の情報も手に入らないでしょう。何せ同じことを私たちは毎日のように行っているのですから。
恐らく無駄足になるでしょう。あまり意味のない誘導だったかもしれませんが、僅かでも情報入手の確率を上げることが出来たと思えばまあ良いでしょう。

――そう、思っていたのですが……。

「情報提供者が見つかったぜ」
「こっちにもだ」
「私たちも話を聞けたわ」

…………どういうことなの?

「おかしいな。
 何ヶ月か前にオレ達が調べた時は全く手掛かりさえ話さなかったんだが」

こちとら2ヶ月以上は調べ続けましたが何の情報も出て来ませんでしたが?

「時間的な条件があったんじゃないか?
 この時期しかイベントが発生しないとか……」

今月に入ってから朝も昼も夜も必ず聞き込みに来ていましたが?
主に先生が。率先して動いてくれた先生の働きを馬鹿にしてるんですか?
もしそうならこのイベントを作った方にオハナシしなければいけませんが?

「とにかく聞き込みを続けよう」

そうですね。フラグの原因解明はさておき、今は情報が手に入ったことを喜びましょう。
このまま“一坪の海岸線”についてもっと調べなければ。
先生! リィーナは頑張ります!

 

そうして情報を集めていると重要な話を聞き出せた。
“レイザーと14人の悪魔”。
それがこの街を仕切っているという海賊たち。彼らは“一坪の海岸線”を入口とする海底洞窟に眠る財宝を狙ってこの街に来たらしい。
そうして“一坪の海岸線”の場所の手掛かりを知っている者は全て拷問を受けて殺されたそうです。
許しがたい非道……! ……まあ、ゲームのイベントなのは分かっていますがね。

とにかく、その海賊どもを追い払えば“一坪の海岸線”の場所を教えてくれるということ。
ふ、ならば後は話は簡単ですね。その海賊どもを叩きのめせばいいだけのことです。
……問題はこのイベントは先生と他の皆様でも発生させることが出来るかどうかですね。
もし出来なければ彼らと共にその海賊どもと戦うことになるのですが……。

どうにも彼らでは心もとないですね。全員まとめても私は愚か、ゲンスルーさん達にも勝てないでしょう。
……いえ、1人だけ別格がいますね。あの方……名前は存じませんが、失礼な言い方になりますが猿顔が特徴のあの方は中々の実力者とお見受けします。

まあ、彼らがどれほどの実力だろうと私とゲンスルーさん達で海賊を倒せば問題はないでしょう。
後はイベント発生の条件を確認せねば…………。
……ふむ。もしかしたら――

「イベントの発生条件がプレイヤーの人数だったかもしれないわね」
「え?」

ほう。やはり同じ結論に達する方がいましたか。
それ以外には考えにくいでしょう。
“レイザーと14人の悪魔”。つまりは15人の海賊どもということ。
そして私たちは現在16人のパーティとして動いている。
1人多いですが、きっかり同じ人数でなくとも15人以上のパーティを組めばイベントは発生すると考えていいでしょう。

「しかしゲームキャラはどうやってそれを判断するんだ?」
「“同行/アカンパニー”だろうな。15人以上で“同行/アカンパニー”を使いソウフラビに来る。
 恐らくこれがイベント発生の条件だろう」

ゲンスルーさんの意見以外は考えられませんね。
つまり先生たちも同じことをすればこのイベントを受けられるということ。
ふふ、これは好都合ですね。例えこのイベントで“一坪の海岸線”を手に入れられなかったとしても、後から先生たちが挑むことは可能ならば問題はないでしょう。
海賊がどれほどの強さだろうとも、先生相手に勝てるわけがありません。悔しいですが、先生の相手になるのはネテロ会長以外では考えられませんからね。

……いえ、先生はもしかしたらこのイベントに参加出来ないのでは? “同行/アカンパニー”で一緒に来られないとなると、15人のパーティには含まれないはず……。
くっ! 何ということでしょうか! このイベントを作ったのはきっと最低の人物に決まっています!
……こうなったら先生には後からこっそり合流してもらって、さりげなくパーティの一員として振る舞えばバレはしないのでは……?

「えげつねェな……」

おや、あの方は……。
なるほど。どうやら彼はこのイベントの嫌らしさを理解しているようですね。戦闘能力だけでなく頭も回るようです。
15人で挑まなければ発生しないイベント。ですが15人ものパーティを組んでいるプレイヤー等あのハメ組以外にはいないでしょう。
つまり複数のチームで挑まなければならないということ。その際に3チームでパーティが組めればいいのですが、それ以上のチームとなると……。
イベントクリア後のカードの分配で揉めるのは必然でしょうね。彼の言う通り、先生が参加出来ない可能性も含めてえげつない設定のイベントだと言えるでしょう。

まあ私たちは先生を除いても11人。あとの4人はそうですね……外の世界に帰りたくとも帰ることが出来ないでいるプレイヤーを“離脱/リーブ”を報酬にして誘えば……。
いえ、勝負の形式によってはそれも拒否されるかもしれませんね。
ともかく一度海賊どもがどのような輩でどのような勝負を持ち出して来るのかを確認した方がいいでしょう。







「これで8勝。オレ達の勝ちだな。
 出直して来な。まだしばらくオレ達はこの街で好きにさせてもらうぜ」

海賊との勝負。スポーツをテーマに、互いに15人の代表を出して先に8勝した方が勝利という形式の勝負。
何やら肩透かしですね。海賊との勝負と言うからにはもっと殺伐としたものを想像していたのですが。
まあそれだとこのメンバーの大半が海賊に殺されていたでしょうから、この方が良かったでしょう。
海賊どもも然程の力量ではありませんが、彼らの実力はそれ以下でしたからね。
まともな勝負では相手にならないでしょう。むしろスポーツである方が勝ち目がまだあったでしょうね。

まあそれでもこのメンバーで海賊に勝利するのは難しいので、ゲンスルーさんのアドバイス通りにして良かったでしょう。
わざと負けるのは癪でしたが、負けた時のデメリットもなく、メンバーの1人でも入れ替えればまた再挑戦も可能だと言うのですからこれが効率のいいやり方ではあります。
これを先生に教えてメンバーを整えて挑めば、私たちのみで8勝など余裕でしょう。残り4人のメンバーは先ほどの通りに帰りたがっているプレイヤーを誘えば解決するでしょう。

……ただ、あの海賊のリーダーであるあの男……。彼だけは一筋縄ではいかない相手ですね。
勝負の内容にもよりますが、恐らくゴンさん達ではまず勝てないレベルでしょう。……いえ、正直まともな戦闘ならともかく、スポーツによっては私でも負けるやもしれません。
これほどの実力者がいようとは。……ゲームのNPCとは思えません。恐らくゲームマスターかそれに雇われた1流の念能力者。他の海賊もそうでしょうが、彼だけは桁が2つは違いますね。
どうせなら彼と1対1でスポーツではないまともな決闘をしたいものです。

さて、勝負も終わりこの16人で今後について話し合うようですが……彼らはどう動くでしょうか。

「アタシ達はこれで抜けるわ。
 この内容なら例えハメ組が15人以上のパーティで攻略に来てもクリア出来ないわ。アイツ等私たちよりも弱いしね。
 リィーナ姐さんが言っていたように“宝籤/ロトリー”でゲットするかもしれないけど、それは運が悪かったと思って諦めるしかないわね」

なるほど。アスタさん組はここで手を引くと。
……ところで、どうして私を姐さんと呼ぶのでしょうか? とくと聞きたいのですが。

「……確かにそうだな。今のオレ達で無理なら奴らでも……」
「オレ達も一度このイベントから手を引こう。それよりもリィーナさんが言っていたやり方を試したいんでな
 “一坪の海岸線”は手に入らなかったが、それでもこれ以上ハメ組にカードが奪われないようにしたい。
 それが奴らのクリアを阻止する可能性にも繋がるからな」

「ではこのパーティはここで解散ということでよろしいでしょうか?」
「ああ。皆ご苦労だった。おかげでNo.2のイベントトリガーも分かったし、ハメ組に対する新たな対抗策も見えた。
 今回の集いは有意義なものだったよ。感謝する」

それはこちらの台詞でもありますね。おかげで長いこと進まなかった攻略に道が開けました。
これは相応の謝礼をしなければなりませんね。

「それでは皆様これをお持ちください」
「これは?」
「名刺? 裏にリィーナさんの直筆サインか? ……って! この名刺!?」
「ろ、ロックベルト財閥の……会長!?」
「申し遅れました。私ロックベルト財閥会長のリィーナ=ロックベルトと申します。
 此度は皆様のおかげで重要な情報が手に入りました。つきましてはこの件に関して謝礼をと思いまして。
 外の世界に戻った暁にはその名刺を持って財閥の本社か風間流本部道場にお越し下さい。1人当たり2000万ジェニーの謝礼金を約束致しましょう
 事前に私の所在をそこに書いてある電話番号にお掛けになって確認して頂けるとお互いに手間が省けて助かります。日によっては対応出来ない場合もございますので。
 ああ、ご本人がその名刺をお持ちになって直接お越しになることが条件です。代理人が受け取りに来た場合も、名刺が手元にない場合も謝礼金はお渡し出来ませんのでお気を付けください」

おや、皆様目を丸くなさっていますね。
まあ大抵の方が驚かれますが。私、別に正体を隠してもいませんし、メディアにもそれなりに顔を出しているのですが……。
やはり見た目でしょうか? ビスケのエステを受ける前は年齢より少し若いくらいの見た目でしたからね。
今では20歳そこそこの見た目を維持出来ています。ビスケのおかげですね。維持費はそれなりですが、美貌を保つのには安い買い物です。
……バッテラさんに頼まれている魔女の若返り薬、私も頂きたいですね。本当に20歳くらいに戻れば先生とずっと一緒に修行をすることが!
おお……! 夢が広がってきました! うふ、うふふ! これはいい考えです! 必ずやグリードアイランドをクリアして報酬を頂きましょう!
今回の一件で“一坪の海岸線”も入手出来そうですし、ゲームクリアも近づいて来ました!
そう考えるとこの情報は金よりも重く価値があるものです。2000万ジェニーでは安かったかもしれませんね。

「ほ、本当に貰えるの!?」
「いえ」
「はぁ? 何よ、やっぱり嘘なのね。ぬか喜びさせないで――」
「――よくよく考えれば2000万では妥当ではございませんね。
 1人につき1億の謝礼金とさせていただきます」

『どうして増えた!?』

そう大声を出さないでください。
増えた方が嬉しいでしょう? 私にとってはそれほどの情報だっただけのことです。

「ああ、控えさせてもらいますので、今一度貴方がたのお名前をお教え願ってもよろしいでしょうか」

全員の名前を聞き出し控えておく。バインダーに記録されているだろうが念の為です。出会った場所や順番によっては誰の名前か分からない場合もあるでしょうし。
後は彼らが名刺を持って謝礼金を受け取りに来た時に確認すればいいでしょう。

即席のパーティがそれぞれのチームに分かれて解散する。
誰もが何処か現実味のない物を見たような表情で離れていきますね。
そんなに衝撃的だったのでしょうか?
残ったのは私たち4人ともう1人、ゴレイヌさんだけ。
さて、ゴレイヌさんは彼らの今後の方針に賛同の意見を出してはいませんでしたが、どうするおつもりでしょうか?

「ゴレイヌさんはどうされるのですか?」
「……出来ればアンタ達の仲間に入れてもらいたいな」
「……申し訳ございませんが、貴方を仲間にするわけにはまいりません」

なるほど。私たちが今後どのような行動に出るか理解されているようですね。
ですが、ゴレイヌさんを仲間にするメリットは殆どありません。戦力という点では私たちは十二分に揃っているのですから。
しかも仲間にした場合のデメリットが大きすぎるのです。
ゴレイヌさんを仲間にした場合、彼もゲームクリアを目的としているのですから“一坪の海岸線”を報酬として渡さなくてはならなくなるでしょう。
そうすると彼がハメ組に“一坪の海岸線”を奪われた場合、私たちは“大天使の息吹”を手に入れられなくなるやもしれません。

「……アンタ達はこのイベントを諦めてないんだろ?
 そうじゃなきゃあんな風にわざと負ける意味はないからな。
 だったら強い仲間が必要なはずだ。あの風間流の最高責任者であるアンタにゃ及ばないが、オレもそこそこの実力者だぜ?」

「貴方の実力はある程度ですが肌で感じられています。仰る通り、かなりの実力者でしょう。
 ですが私たちは既に残りの仲間の目処が立っております。貴方を加えるのは私たちにとってメリットになりにくいのです」

強いて言うならば敵となる可能性のあるプレイヤーを味方に引き込めるかもしれないのがメリットでしょうか。
今回のイベントのみではなく、クリアまで仲間になるのならば先のデメリットはなくなります。
ですがその場合は彼にも報酬を渡さなければならないということ。
別に報酬を惜しむつもりはありませんが、報酬を払ってまで仲間にしたいとは思えないというのが正直な意見ですね。

「そりゃ残念だ。じゃあ今回は縁がなかったってことで」
「ええ。
 それではお互いに頑張りましょう」

……行きましたか。
いずれは彼ともクリアを巡って争うことになるかもしれませんね。
ツェズゲラさんもかなりの枚数のカードを集めていらっしゃるようです。
戦闘ではともかく、ゲーム上では気を引き締めないと足元を掬われるやもしれませんね。

…………そんなことより先生に会いたい。
先生! 不肖の弟子リィーナ、喜ばしい情報を持って今すぐ戻ります! 楽しみにお待ち下さいませ!





あとがき
皆の人気者。森の賢者ゴレイヌ参上。
でも仲間にはなりません。仲間にする理由がないんですよね。でも活躍どころはまだあります。
レオリオ新能力。ようやく出せたレオリオの得意系統能力です。もうレオリオが超便利キャラに。一家に1人レオリオさん!
その内世界を股にかけるスーパーグローバルドクターレオリオとなるでしょう。将来的にはクランケハンターを名乗らせたい。

【高速飛行能力/ルーラ】
・放出系能力
黒の書に載っていた能力をレオリオがミルキの協力のもと完成させた放出系の移動能力。瞬間移動ではなく、空を高速で移動する。その為室内や洞窟などの開けていない場所では使用出来ない。
オーラを籠めた神字で目的地の名前を刻んだ目印を作成し、それを目標にする。能力発動時に刻んだ目的地名を言えばそこへ自動で高速飛行する。
グリードアイランドの移動スペルを参考にしてイメージも完全に出来上がっていたためその完成度も高い。
移動スペルと同じく高速で移動してもその移動の際に空気の壁でダメージを受けるなどといった影響はない。しかも途中に巨大建築物や飛行物体があれば自動で避けてくれる。
移動スペルと違い術者の身体に触れている他者も一緒に移動することが出来る。別に抱きかかえる必要はないが、アイシャの場合は抱きかかえないと移動できない。他の人は触れてさえいればOK。ただし、人数が多くなるほどオーラの消耗も激しくなる。
目印が何らかの要因で失われるとその目印へは移動出来なくなる。また目印の位置が変わると移動場所も変わってしまう。

〈制約〉
・オーラを籠めた神字で作った目印がないと発動出来ない。
・術者の身体に触れている対象も一緒に移動出来るが、1人増えるごとに消費オーラ量は倍化(2人で2倍。3人で4倍)する。
・目印の作成数に限界はないが、作成する時に消費したオーラは回復することはない。作成した目印を破棄することは術者の自由。その場合破棄した目印の作成に消費したオーラは元に戻る。
 また、破棄した目印を遠隔で元に戻すことは出来ない。

〈誓約〉
・特になし。


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