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No.29186の一覧
[0] 【ネタの書きなぐり】IS×逆シャア インフィニットストラトス×機動戦士ガンダム 逆襲のシャア[BBB](2011/08/20 05:14)
[1]  1 【その境界線の先に立ち】[BBB](2011/08/25 06:09)
[2]  2 【ミステリアス・レイディの次】[BBB](2011/11/23 03:25)
[3]  3 【掴み取れ、乙女の凱歌】[BBB](2011/11/23 05:38)
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[29186]  2 【ミステリアス・レイディの次】
Name: BBB◆e494c1dd ID:51f4faa7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/23 03:25

「あーむろちゃん、いるかなー?」

 二年生の整備科、専用の教室として使われるそこに顔を出したのは水色の髪、肩口で整えられているセミロング。
 整備科以外の生徒では見慣れない機材が幾つも置かれた室内で、機材の向こう側から上げられたのは水色髪の少女よりも短い茶色のくせっ毛。

「楯無か、何の用だ?」
「何の用だって冷たいなぁ」
「こちらにも都合があるんだ、いつも付き合ってあげる訳にはいかないよ」

 アムロは楯無を見据えながら立ち上がる、同じ教室にいる生徒たちも顔を上げて廊下から顔を出した人物を見た。

「ちょっとね、他の子には頼めないし」
「……わかった、行くよ」
「会長、あまりレイちゃん引っ張りまわさないでくださいよー?」
「勿論よ」

 今は学園祭中、アムロにも楯無にもやる事はある。
 楯無、更識 楯無はIS学園の生徒会長でいつもよりもやることは多い。
 だと言うのに自分の足でわざわざアムロを迎えに来た、その顔はいつもと変わらないがその仮面の下には危惧が見え隠れしていたのをアムロは感じ取った。

「何があった」
「誤認であって欲しいけど、IS学園に入っちゃいけない存在が入ってきたかもしれない」

 国立IS学園は国立の名の通り国が管理する学園、それに各国のIS操縦者候補も居る事からそれなりに厳重な警備が敷かれている。
 二十四時間体制で動体や熱源センサーに光学機器などで不審な人物の接近などを監視する、学園祭中の膨れ上がった外来客にも適用され一人一人確認がなされる。
 指名手配などされた人物が確認されればすぐにでも監視され、同一人物であると確認され次第確保するようになっている。
 楯無はその中で引っかかった人物が確認されたと、簡潔にアムロへ伝える。

「映ってたのはほんの僅かだけ、それ以降は全く映ってないのよ。 はっきりと言って映らなさ過ぎて逆に怪しいわ」

 IS学園中に設置してあるセンサーや光学機器、監視カメラから逃れるようにして動いている。
 そしてそれらから逃れて移動する女は世界で唯一の男のIS操縦者の近くにいる。
 怪しいなんてものじゃない、すぐさまIS学園から蹴り出したほうがいろいろな面で安全ではないかと思える。

「保安などには?」
「多分IS操縦者、情報が正しければね」
「ならば教師にも伝えたのか?」
「ええ、でも無理かな」

 表事じゃないから、とISを扱える教師たちでも捕らえられないだろうと楯無。

「……工作員か」
「うん、捕まえるどころか見つけることすらできないんじゃないかな」

 IS学園の教師たちは主に国家代表や代表候補生たちで占められており、代表候補生になった時点で軍事教練を学ぶことになっている。
 そして実際に軍に所属して活動したとしても見付けることすら出来ない、相手は秘密裏に動くことを専門にする工作員で対工作員の対処を学んでいない軍人など簡単に撒ける。
 アムロとて記憶にあるあの世界で内偵をしていた時もあった、その当時行方をくらましていたシャアの動向を探り、シャアの居場所に繋がりそうな人物を尾行したこともある。
 その時の尾行は何度も撒かれそうになり、ニュータイプとしての直感などで辛うじて追いかけられた経緯があった。

「わかった、何をすれば良い?」
「支援かなぁ、もし危なくなったら、ね?」
「了解した、それでどんな人物なんだ?」

 センサーや監視カメラを避けて織斑 一夏に近づく女、当然警戒を抱かせるものがこれ以前にあったあったはずだとアムロは言う。

「一言で言えば秘密結社かなぁ、テロもする奴らの集まり」
「テロ、か。 目的は織斑 一夏かそのISか」
「多分ね」

 カツカツと二人は速めの歩調で廊下を歩く、その途中で多くの生徒達とすれ違い。

「あ、かいちょー! お暇でしたら寄ってってくださいよー、勿論アムロちゃんも!」

 二年生の出し物が並ぶ廊下で、同じ二年生であるからIS学園で有名な二人に当然と言って良い掛けられる声。

「ごめんねー、今から大事な用事があって、その後に寄らせてもらうわ」

 するりと隣にいたアムロの腕に自分の腕を回してアムロの肩に頭を寄せる、その様子を見て。

「きゃー! デートですか!」
「女同士でそれはないだろう、第一そんな甘酸っぱいものじゃないよ。 楯無も余りふざけるんじゃない」
「もー、これだからアムロちゃんは」

 楯無はノリがわるいなぁ、と苦笑しながらアムロの腕から離れる。

「用事が終わったら寄らせてもらうよ」
「はーい、待ってるよー」

 呼び込みの二年生に楯無とアムロは軽く手を振って廊下を歩み出す、その後も何度も声を掛けられ、その都度後で寄らせてもらうと断る。

「全く、アムロちゃんは人気者ねぇ」
「それを君が言うか?」

 後者から出ながら苦笑してアムロが言う、いつも飄々としていながらも明るく元気のよい楯無。
 物事もはっきりと言い放つことが多いが、それに嫌味を感じさせない口の良さ。
 人付き合いも良く上級生や下級生にも人気のある、文武両道で生徒会長に相応しい優れた人物。
 その楯無が人気があると言うアムロも、相手に優しさを向けて接する人間であり。
 余程のことで無ければ溜息を吐きつつも、しょうがないなと頼みを聞き入れる。
 人当たりも悪くないため、そう言った点で同級生からは楯無ほどではないが人気があるアムロであった。

「推測が当たってかどうか、当たってたら誘き寄せたいのよ」

 だから協力してほしいな、と楯無は言う。

「わかった、どうやって誘き出す?」
「考えがあるわ、合図を出すまでアムロちゃんは待機ね」

 そう言って楯無はにっこりと笑みを浮かべた、





 その後、楯無とアムロは別れることになった。
 と言っても一定の距離まで離れただけで、何かあればすぐにでもISで駆けつけられる距離。
 楯無が考えた作戦は織斑 一夏の周囲をかき乱し、接触しやすい状況を作り引っ張り出すという物。
 おそらくは狙われているだろう人物を囮に使うなど危険極まりないが、他に誘き寄せる方法がないためにしょうがなく認めたアムロ。
 楯無の言い分ではすぐに助けに行けば問題なし、と少しどころか結構ないい加減さであった。

「……まったく」

 とりあえず今楯無が周囲を騒がしている間、アムロは第四アリーナの一室で待機していた。
 第四アリーナでは演劇が行われるようで、それに楯無は一枚、いや、それ以上に噛んでいるらしい。
 耳を傾ければアリーナの方向から歓声のような音が聞こえる、それよりももっと確かな『気配』を感じていた。
 始まったのだろう、大きくなる歓声と気配。
 それを感じながらアムロは待機していた、じっと待ち楯無からの合図を待つ時間はどれほど掛かるだろうかと考えた矢先。

『アムロちゃん、動いたわ!』

 楯無からプライベート通信が入り、ステルスモードのままアムロは動き出す。
 通信と共に情報、ハイパーセンサーに第四アリーナの見取り図とその上に浮かぶ赤い光点が一つ。
 赤い光点は織斑 一夏を示し、第四アリーナのフィールド真中付近から端へ、そのまま第四アリーナの廊下へと移動していく。

『彼だけが逃げ出した可能性は?』
『フィールドのセットからは出ないように厳命したから、あの子の性格だとしっかり守ってくれるでしょうね』

 性格を見抜き、一人ではフィールドから出ては行かないだろうと当たりを付けた楯無。
 それが当たっていれば織斑 一夏が一人でフィールドの外に出ることはない、となれば破るだけのものが今の織斑 一夏にはある。

『あの五人かと思ったけど全員確認済み、フリーエントリー組でもないかな?』
『ちゃんと確かめてから言ってくれ』
『まあ言ってみれば分かるわ』

 またアリーナの見取り図に新たな光、青い光点が点って移動を始めていた。

『合流しましょう、追いかけつつね』
『了解した』

 アムロは駆け出し、赤い光点の後を追いかけ始めた。
 赤い光点は廊下を移動し続け、とある場所、更衣室で移動が止まった。
 息を殺しつつも更衣室に接近し、追いかけてきた楯無と合流。

『おまたせー、待った?』
『状況を考えてから言ってくれ』

 まるで待ち合わせに遅れてきたような物言いで楯無が更衣室付近で合流した。
 見取り図の赤い光点は未だ更衣室にあり、拡大して更衣室だけで見れば赤い光点は急に動いたり止まったりしている。

『これはやっちゃってるわね』

 楯無が足音どころか衣服の擦れる音さえ消して更衣室のドアまで近づく。

『……ロックされている、まさかシステムにまで干渉しているのか?』

 更衣室のドアは電子ロックで鍵を掛けられ、生徒どころか教師でさえ入ることはできないだろう。

『あの女を引きつけるわ、アムロちゃんはその間に中に入って潜んでね』
『……わかった』

 カギを開ける手段がある、更衣室の中でよからぬことが行われ織斑 一夏及びそのISが危険になっているはずだと楯無。
 アムロと楯無、二人で掛かれば制圧も出来ようがその制圧の最中に何らかの予期せぬことが起きるかもしれない。
 出来るだけ織斑 一夏とそのISを無事のまま事を終わらせたいと楯無はアムロに言う。
 だからアムロは頷き、それを見た楯無は微笑んでドアへと手を当てる。
 それだけで音もなく鍵が開き、楯無はアムロを見た。

『それじゃあ作戦開始』

 楯無がミステリアス・レイディを起動させて身に纏う、一瞬で終わるIS展開の後にアクア・クリスタルと呼ばれる非固定浮遊部位から水が溢れ出して瞬時に形作る。
 それは更識 楯無と瓜二つの水人形、それをドアを開いて更衣室に入らせる。
 更衣室の中はそれなりに乱れており、ロッカーが幾つも倒れ備え付けの椅子も割れていたりしている。
 アムロもステルスモードでνガンダムを展開、二人はPICによる音もない機動で更衣室に忍び込む。

 アムロの姿は無駄なエネルギーを抑えるために、ISアーマーの展開を控えたもの。
 額には金色に光を反射するV字型のアンテナと根元近くで角度を変えるV字アンテナを重ね、それを支えるミッドナイトブルーの留め。
 同じくミッドナイトブルーの無骨な胸部ISアーマーに、膝下から包む白と、ふくらはぎ部分もミッドナイトブルーに塗装されたISアーマー。
 白色の肩部ISアーマーの左には三角形にも見えるAを一筆書きしたような赤いパーソナルマーク、腰部には太ももまでしかない白のフロントスカート。
 背部には少し前に取り付けられたフィン・ファンネルが六基、まっすぐに伸びたものが二基と途中で折り曲げられたのが四基、ファンネルラックに取り付けられてある。

 周りが見えていないのか、更衣室のドアが開いたことにすら気が付いていない織斑 一夏と工作員であろう女。

『とりあえず私だけでやるわ、先輩で生徒会長の威厳を後輩に見せてあげなきゃいけないし』
『……わかった、だが危ないと感じたらすぐにでも割って入るぞ』
『きゃ、アムロちゃん頼もしい~』

 ここでもふざけたように言う楯無に、アムロは軽くため息を吐く。
 その間にも織斑 一夏は蜘蛛のようなISの脚で蹴飛ばされ、壁に叩きつけられていた。

『それじゃ』

 そう言ってドアの前に立たせていた楯無の水人形が動き出した。
 通信を介して水人形に言葉を通し、その声に二人が反応して振り向く。
 その隙に楯無は二人に接近、ドアの前にいる楯無が水人形だとは気が付かずに女は楯無を殺すと宣言して襲いかかる。
 突っ込む女は多脚ISの脚で水人形を貫いた、その隙に本物の楯無は接近して織斑 一夏のすぐそばを通りぬけ。

「手応えがないだと? まさかこいつは……、水か!?」
「ご名答、正解者にはプレゼントを上げなきゃね」

 既に女の背後へと到達していた楯無、慌てて振り向く女に呼び出していたランス『蒼流旋』でなぎ払った。
 強かに蒼流旋を叩きつけられた女は吹き飛び、列をなして並ぶロッカーを幾つもふっ飛ばしながらも急停止させた。

「ちっ、なんなんだてめぇはよ!」
「あら、自己紹介が遅れたわね。 名は更識 楯無、そしてIS『ミステリアス・レイディ』よ。 覚えておいてね」

 女がIS『アラクネ』を動かす前に、楯無は蒼流旋を持つ右腕を引き絞ってPICにてアラクネへと突っ込む。
 楯無の全長を超える大型ランスの表面に水が高速で螺旋を描いて、触れる物を全て破砕するドリルのようになった蒼流旋を遠慮無く突き出す。

「ぐおあっ!?」

 女は奇声を上げながらも辛うじて蒼流旋を避け、突き出された蒼流旋はロッカーを巻き込み一瞬で粉々に砕いた。

「出血大サービスってやつなんだから、プレゼントを受け取ってほしいわね」
「……ふざけやがって、ぶっころしてやらぁ!」

 そのセリフに笑いながらも楯無は迎え撃つ、アラクネの脚先が割れるように開いて銃身を覗かせる。
 複数の脚から放たれる銃弾に、楯無はアクア・クリスタルから水のヴェールを展開。
 水のヴェールに突き刺さる弾丸は一発も突破することはなく、水のヴェールの中で完全に停止する。
 銃撃が無駄なら直接引き裂いてやる、そう思ったのか二つの脚からカタールを取り出して腕に持ち。
 四脚は射撃モードのままで残る四脚を格闘モードにして楯無に向かって突っ込み、ビーム・クロウを繰り出す。

 それに対して楯無は蒼流旋と水のヴェール、そして足までも使ってその攻撃を軽やかに凌ぐ。
 己の攻撃が完全にいなされている光景に女は苛立ち、なんとか蒼流旋か水のヴェールを無効化しようと苦心する。
 女は射撃モードにしていた四つの脚を格闘モードにしてビーム・クロウで斬りかかる。
 さすがの蒼流旋や水のヴェールとはいえ、超高熱のプラズマ化しているビームを防ぎ切ることは出来ない。
 八脚のビーム・クロウと両手のカタール、計十もの攻撃でラッシュを掛け、まずは水のヴェールを吹き飛ばす。

「あらら、これはまずいかも」

 危機感が全く見えない楯無の声、次々と絶え間なく繰り出される攻撃を凌いでいたが時折通る攻撃によりシールドバリアーが限界を迎えて消える。

「余裕こきやがって! さっさと死にやがれ、ガキが!」

 蒼流旋や足も使って何とか凌いでいた楯無であったが、ついに限界を迎えてアラクネの装甲脚が蒼流旋に突き刺さり、無理やり蹴飛ばす。

『楯無!』
「まあいっか、折角だから見せ場は作らないとね」

 伸びるアラクネの脚が蒼流旋を蹴り飛ばされた楯無を捕らえ、一気に女の前に引き寄せられた。

「けっ、手こずらせやがって!」

 防御を突破し武器を破壊して楯無を捕らえたことで、勝利を確信したのか女は動きを緩め表情に笑みを浮かべる。

「楯無さん!」

 それを見た女に痛めつけられて床に伏せたままの一夏は叫んだ。

「大丈夫大丈夫、一夏くんは強く願っていなさい。 一夏くんが今最も望むことをね」

 明らかに不利な状況に楯無は一夏へと笑ってみせる。

「この状況でも余裕ぶっこけるとは大したタマだな、てめぇ」

 常に飄々としていた楯無に、女は呆れを通り越して感心した。
 だからと言って見逃してやる理由にはならない、こいつのISコアも奪っちまうか? とすら考える女。

「こっちで決めてもいいけどね、それじゃあちょっとつまらないのよ」
「ああ? 何言ってんだてめぇ?」

 カタールを構える女は楯無の言葉に耳を傾けた。

「勘違いしているようだから一つ教えてあげる、『私が一人で来た』なんて一言も言ってないわよ?」

 ──警告! 未確認ISの接近を

 アラクネが警告を出す、だがそれを全て伝えきる前にビームの発生音を女は耳にした。
 引き抜かれたのはビームサーベル、一夏の前を高速で通り過ぎた白と黒のISがビームサーベルを持つ右手を振り下ろした。
 一閃、更衣室の床を巻き込んでアラクネの右側に揃う装甲脚を切り裂いて落とす。
 勢いそのままにシールドを構えたまま体当たり、アラクネをシールドバリアーごと押し出しながらロッカーの列を吹き飛ばす。

「があ!?」

 シールドから顔を覗かせ、アラクネに向かってバルカンを放つ。

「こ、こいつ!?」

 シールドバリアーがバルカンを防ぎ、残る脚を射撃モードにして撃ち返そうした時にはビームサーベルが銃身をなぎ払っていた。
 そのままバルカンを放ちながらνガンダムは床に足を付き、音を立て削りながら減速を掛ける。
 そして足で床を蹴り出して右へと飛び、女は指で練り上げていたエネルギー・ワイヤーをνガンダムが飛ぶ前までの位置へと投げつけていた。

「なんっ!?」

 余りにもあっさりと見切らたことに女、オータムは驚きを隠せない。
 少なくともアムロからは見えない位置、エネルギー・ワイヤーを練っていた手は女の体の影になっていた。
 だというのに初めからわかっていたように回避を取り、νガンダムはアラクネの左側面を取って残る脚をビームサーベルで切り落とす。
 振り向こうとするもシールドによるバッシュ、強打によってシールドバリアーは打ち抜かれてアラクネは殴り飛ばされる。

(何なんだよこいつはぁ!?)

 なんとか体勢を立て直そうとするも、それよりも速くνガンダムはアラクネに迫る。
 シールドを構えて覗かせる、緑に光ったνガンダムのデュアルアイ。
 顔の見えない余りにも無機質な眼光がアラクネを捉え、オータムの背筋に悪寒を走らせる。
 それはオータムに撤退を決意させ、目前でビームサーベルを振り上げていたνガンダムを見た。

(今っ!?)

 アラクネのISコアを抜き出して、自爆をセットした抜け殻をνガンダムに押し付けて爆発させ、その隙に逃げ出すタイミングを図った。
 だがνガンダムは腕を振り下ろさずに、アラクネを見ながら後方へと急速に加速して下がり。

「爆発するぞ!」
「くそがっ!」

 それすらも見切られ、悪態を付きながらアラクネのISコアを抜き出して自爆を命じた外装をνガンダムへと突っ込ませる。

(一体どうなってやがる!?)

 PICにて全速でνガンダムへと突っ込んでいくアラクネの外装、それを尻目に全力でオータムは駈け出して逃げ出す。
 νガンダムは光を放ちながら迫るアラクネの外装に向かって後退から前進へ、空中で体勢を変えながら足を蹴り出した。
 ガゴンッ、と鈍い金属音を立てて吹っ飛ぶアラクネの外装、νガンダムは左腕を振りつつ蹴った反動のまま再度後退し、更衣室の壁に叩きつける前に大爆発を起こした。
 上がるのは閃光と爆炎と衝撃波、わずかに遅れて爆煙が更衣室内に広がる。

「……無茶するわねぇ」
「ああ、よくやるよ」

 爆発の威力はISのシールドバリアーを消し飛ばし、絶対防御すら貫通していただろう破壊力。
 生身のままだと爆発に巻き込まれずとも衝撃波で吹き飛ばされて死ぬ可能性もあった、それを許容した上での脱出。
 それに関して無茶だと、よくやると呆れた。

「……ッ、あの女は!? 白式が!!」

 大爆発、爆発する前の室内が更衣室であったなど一目見てわからないような有様の衝撃から一夏は我に返る。
 無論一夏に傷一つ無い、アムロが爆発すると警告を出した時には楯無が自身と一夏を余すことなく水のヴェールで包んでいたので無傷。
 当然その前にオータムに蹴られた跡などはあるが、爆発による怪我は一切ない。

「白式のコアが、取られちまった!」

 今にも走りだして水のヴェールを突き破りそうに叫ぶ一夏。

「逃しちゃいないさ」

 それに返して言ったνガンダム、アムロは煙や埃で一杯になって視界が効かない室内の一点を振り返って見る。

「ちゃんと捕まえてる、流石アムロちゃん」

 うふふと笑いながら楯無は一夏に向けて言う。

「丁度いいわ、一夏くん」

 あの女、オータムを捕らえていると言う言葉に一夏は安堵して楯無を見た。

「何ですか?」
「一夏くんにとってIS、白式はどんなものなのかしら?」
「え?」
「まあ本気で心配するものだっていうのはわかったけど」

 にこっと笑いかけて一夏を見る楯無、その鮮やかな笑顔に一夏は軽く頬を染めながら顔を逸らす。

「……多分、大事なものなんだと思います。 どう言う風に大事かって聞かれたらちょっと答えられないですけど、失くしちゃいけないような存在かなって思ってます」

 頬を指で掻きつつ答える一夏。

「だったら覚えておきましょう、ISとその操縦者は繋がってるの。 だから呼んであげましょう、大事に大事にね?」
「大事に、呼んであげる……」

 人差し指を立てて笑顔のままの楯無は言う、専用機となったISと操縦者は剥離剤<リムーバー>如きで引き離せない。
 だから呼んであげましょう、それにISは答えてくれると。
 それを聞いて一夏は頷き、左手で右手首を掴む一夏。
 少しずつ晴れていく煙の向こう、アムロが一度見た方向に視線を向けて瞼を閉じる。
 一夏は強く願う、戻って来いと、白式のコアに強く呼びかける。

「……来い、白式。 戻って来い!!」

 瞬間、光を放って一夏の右手に菱形立体のコアが浮かんでいた。

「……白式」

 呟いた時にはコアが光の粒子となって一夏を包み、剥離剤によって引き剥がされる前の状態まで戻った。
 それに対して良かったと、一夏は呟いた。





 その後駆けつけた教師や警備員に不審者が侵入し、ISを使って生徒を襲い、ISコアを強奪しようとした所を防ぎ捕縛したと説明し。
 νガンダムの左手甲から打ち出されたトリモチ・ランチャーを当てられ、更衣室の壁に縫いつけられたまま気絶しているオータムを引き渡す。
 当然手のうちにあったアラクネのISコアは没収され、オータムは持ち得る情報を洗いざらい吐くことになるだろう。

「こまるなぁ、アムロちゃんは」

 本来なら色々と事情聴取を聞かれる立場である二人ではあるが、楯無は対暗部用暗部「更識家」の当主であるために手を回してアムロに掛かる負担を打ち消した。
 少なくとも学園祭が終わるまで今回の事件は持ち上げない、そう方が付いてから校舎に戻る混雑する帰り道で楯無が呟く。

「一体なにが困るんだ?」
「確かにアムロちゃんの実力を買って付いてきてもらったんだし、隠れたままで終わるのは面白くないかなって思ったんだけどね」
「悪い癖を直してればそうなってただろ?」
「だからって全部かっさらっちゃうなんて困っちゃう娘ね」
「……全く、なんで俺が責められなくちゃならないんだ?」

 軽く肩をすくめてアムロは言う、それを見てうふふと楯無。

「まあとりあえずアムロちゃんにはお礼をしなくちゃね、なにか欲しい物とか……アムロちゃん?」

 楯無が話を振った時にはアムロは足を止め、晴れ上がっている空、それも遠くを見つめていた。

「……この感覚、一人ではなかったか!」

 生徒から外来の客までごちゃまぜになっているその場で、アムロはνガンダムを展開して装着する。
 瞬間飛び上がって右手に構えるビームライフルを、左手でライフル上部の取っ手を握って支えトリガーを引き絞った。






「くっ!」

 織斑 一夏が襲撃された、耳聡くその報を聞きつけたラウラ・ボーデヴィッヒは己の役職にかこつけて護送することを取り付けた。
 ラウラ自身にも襲撃犯に聞きたいことがあった、さすがにその場での尋問は無理であったが護送先にて行うことも約束させていた。
 今この時一夏と離れるのは色んな意味で苦しいことだが、嫁にする予定の一夏が襲われたなど例え義理姉になる予定の千冬が許してもラウラは許さない。
 それほどまでの怒りが持っていた、それに共感したのがセシリア・オルコットであった。
 こんな事許されることではないとラウラにも負けないほど怒りを持って護送を申し出て、射撃戦用のISで有ることから広範囲のセンサー有効半径にて襲撃犯奪還を察知出来るよう付き添う。

「そんな、まさか!?」

 襲撃犯を奪い返そうと、もしかすると護送車に襲撃を掛けてくるかもしれない。
 その予測は当たり、高速で接近してくる機影を超高感度ハイパーセンサー「ブリリアント・クリアランス」で捉えた。
 ラウラに警告を掛けた時には超長距離からの狙撃、辛うじて反応し身を捻って飛んできたレーザーをラウラは回避する。
 狙撃には狙撃を、スターライトmkIIIのロングレンジ用スコープからの映像をハイパーセンサー越しに捉えた姿にセシリアは声を漏らした。
 それはBT二号機『サイレント・ゼフィルス』、まかり間違ってもこんな場所に存在するはずのない、イギリス本国で実験運用されているはずのISがそこに居た。

『何をしている! 撃て!』

 ラウラの声に我に返って、照準を合わせて引き金を引くセシリア。
 スターライトmkIIIの銃口から光が飛び出して空を切る、超高速で飛ぶ光の弾丸はサイレント・ゼフィルスを穿つかと思われた瞬間。
 ブルー・ティアーズと同じくビット型のBT兵器、『シールド・ビット』が射線上に割り込んで光の弾丸を弾いた。

「くっ!」

 狙撃を遮るシールド・ビット、邪魔ならば同じBT兵器で撃ち落とせばいいとブルー・ティアーズを射出したその時には狙撃で撃ち落とされた。
 縦横無尽に空を駆ける超高速機動の最中に、精密射撃でブルー・ティアーズを撃ち落されたことに驚く。
 だがセシリアは驚くだけで動きを止めることはない、自分が出来ないことを相手が軽やかにやってのける様は既に見ている。
 砕かれた自信は己に課した訓練と、一夏から掛けられた優しい言葉でそれ以前よりも逞しくなっていた。
 BT兵器制御中に動けないと言う欠点を努力の訓練である程度緩和出来た、流石に自身も戦闘に参加できるほどの制御は身についてはいないが動かしながらも回避運動を取れる位にはなった。

 だがそれを見せる前にビットのブルー・ティアーズが落とされたこと、相手はBT兵器を柔軟に制御しながら本体も攻撃を加えてきている事にセシリアは唇を噛む。
 どうしてこうもオールレンジ兵器を扱う相手が尽く自分よりも上なのか、再度自信がへし折れそうになりながらもセシリアは飛来する光の弾丸に対して回避行動を取る。
 そして高速で迫るシールド・ビットが六基、三基ずつに別れてセシリアとラウラに襲い掛かった。
 上下左右前後三百六十度、周囲を飛び回ってビームを放ってくる。
 あっという間に二人はシールド・ビットの対応に追い込まれ、サイレント・ゼフィルスはそれを尻目に悠々とライフルを護送車に向けて撃ち放つ。

 その一撃で運転席を撃ち抜き動きを止めさせ、護送車に取り付いて取り出したナイフで天井を切り裂く。
 中に居たのは拘束服を着せられたオータム、こじ開けられた天井を見上げてサイレント・ゼフィルスを見た。

「迎えに来たぞ、オータム」
「ちっ、呼び捨てにすんじゃねぇ!」

 声を張り上げるオータムを掴み引っ張り上げ、浮き上がるサイレント・ゼフィルス。
 イギリスの代表候補生にドイツの遺伝子強化素体<アドヴァンスト>、どちらも取るに足らない殺す価値もないIS操縦者。
 つまらん任務は完了した、さっさと帰ろうとした瞬間。

 ──警告、高熱源反応の接近

 サイレント・ゼフィルスの警告を聞き、身を翻した。

「おわぁ!?」

 直後なでしこ色のビーム弾が直前に居た場所を通り過ぎた。

 ──警告、高熱源反応の

 先ほどの警告よりも速く回避行動を取る。

「──チッ」

 だがほんの僅かにシールドバリアーに接触、シールドエネルギーを削り取る。
 セシリアとラウラを弄んでいたシールド・ビットを一基ずつ呼び戻し、ビームが飛来した方向へと構えさせた瞬間。

 ──警告、高熱源反

 一基のシールド・ビットが吹き飛ぶ、スターライトmkIIIの一撃を弾いたシールド・ビットが粉々に吹き飛んだ。
 それは直撃コースだった、シールド・ビットが無ければ直撃を食らっていた。
 しかも自分の動きを読まれていた、ごく短い時間差の射撃で回避方向に合わせた物。
 それは回避する方向を読まれていたことに違いはなく、狙撃を行った存在がかなりの実力者だと証明していることでもあった。

「───」

 それに対して殺意がもたげる、こんなつまらない事で自分が直撃を貰いかけるなどと。
 ビーム弾が飛来した方向を見ながらすぐにセンサーを確認、射撃戦用のサイレント・ゼフィルスに狙撃を挑んでくるヤツはどんなISを操っているのかと確認するも。

 ──索敵完了、センサー有効範囲内に確認できるISは二機です。

 感知したISは二機、その反応はセシリアのブルー・ティアーズとラウラのシュヴァルツェア・レーゲンのみ。
 その他のIS反応は無し、平均的なISのセンサー範囲よりも圧倒的に広いサイレント・ゼフィルスのセンサーを持ってしても感知できないIS。

 ──警告、高熱源反応の接

 ステルスモードかと考えた矢先、飛来するなでしこ色のビーム弾。
 大気を切り裂く轟音を持ってサイレント・ゼフィルスを脅かす、これはステルスモードではない。

「──サイレント・ゼフィルスの射程を超える狙撃型IS?」

 シールド・ビットを犠牲にしてビームを防ぎ、飛来した方向を見る。

「うぐ、て、めぇ……」
「………」

 振り回されて呻くオータム、それを無視してサイレント・ゼフィルスはビームが飛来した方向へは反対へと飛び去っていく。





 PICとスラスターで加速しながら、ビームライフルを極小の動作で動かしてトリガー。
 ビームライフルを最大出力モードで撃ち放つ、銃口から飛び出るビームは通常モードの物よりも二回り以上も大きなビーム弾。
 大気圏内でのビームの使用は大きな減衰を起こして飛ぶほどに威力が低下する、それを大出力で放って力尽くで射程を伸ばす。
 それを持って超遠距離射撃を実現し、アムロは目視を出来ないセンサー範囲外の相手を勘だけで狙い撃つ。

「敵意が増大する? 来るのか」

 アムロは敵意が自分へと向いていることを感じ取る。

「これは……」

 ビームライフルを撃ちながら更に加速する。

「引いたか」

 敵意が遠ざかっていく、だが感じ取れなくなるまで向けられている敵意が弱まることは無かった。
 それから数十秒ほど高速で飛行し、センサーに二機のISを捉えた。
 見れば無残にも破壊された護送車、そして傍に佇む二機のISを見た。

「やられたか」

 一目見ればわかる、襲撃犯が連れ去られたと。
 アムロは護送車の傍に降り、二人に声を掛けた。

「無事か?」
「……貴女は」
「二年のアムロ・レイだ」

 装甲を解除して顔を見せる。
 ラウラとセシリアは渋い顔をしている、おそらくは襲撃犯を奪還に来たISにしてやられたのが響いているのだろう。

「平和ボケしたか、こちらと同じで一人だけじゃなかったようだ」

 楯無に通信を入れながらアムロは呟く、各国を敵に回しかねないIS学園襲撃を行う相手。
 明らかに普通ではない事をやる辺り、相当危険な存在かと再認識するアムロであった。














 五巻最後の方をメインに
 アラクネのISコアボッシュート
 この後十蔵さんと楯無が話して驚異的なアムロの能力を再認識、エムは少し悔しげにスコールに報告して内心アムロブッコロを考えるはず
 今度はシャアが出番なし、アムロを感じ取ったけど外まで感じ取れかったんで出ていかなかった、それか学園祭のなんかしてたか
 アムロがいきなりνガン出してビームライフル撃ったのはイベント扱いになりました

 基本MS系の顔見せ姿はMS少女そのまま、ISの原型といっていいかも
 シャアの言葉はブーメラン、バズーカ好きなアムロ
 出番が一向に無い千冬姉さんは近接が頭一つ以上飛び抜けているだけで、射撃も十二分も出来るかと、格闘部門で優勝したからって総合のブリュンヒルデになれるわけでもなさそうですし


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