俺はVRMMOに入り、ヒューズ達のIDを検索して引っこ抜いた。
驚いているヒューズ、ドワド、ジュークに笑顔で聞く。
「最近、気になる噂が聞こえて来ての。詳しい事を聞きたいと思ったのじゃ」
ジュークはそっと顔を逸らしたが、ヒューズは興奮して言い放った。
「精霊学についてなんだけどね。ゲームを参考に現実で色々試してみたら、なんと成功したんだよ! やはりセレインは天才だ! 心配しなくても、このゲームを作ったのがセレインだという事は皆知っている。手柄については、山分けと言った所だ」
「この世界には色々な武器があるからの。それらを参考にしたのは否定しないが、それを元に実際に作りだしたのはワシだ。鍛冶の手順とか、色々抜けていたり温度が間違っている所もあったからな。それを乗り越えたのだから、ワシの手柄だ」
ドワドがそれに続き、俺は冷ややかに微笑んだ。
「……で?」
その俺の声に感ずるものがあったのだろう。三人は目を逸らした。
「ワシは言ったはずだが……。この事は内密にとな。ワシが作ったと皆知っているとはどういう事じゃ! これはまだ早すぎるんじゃ。密かに密かに広めるべきじゃった。一時の欲で、それらを台無しにするとは何事じゃ!」
俺が一喝すると、三人は縮こまった。
「セレイン、今のままでも十分に凄い発明品だ。これ以上、何を望むんだ?」
「目の前の物しか見えぬ凡愚めが……。ワシの偉大なる目標がわからぬか。ヒューズ、お主には失望した。これで、色々と妨害が入る様になるじゃろうて……」
俺には目標があるのだ。ゲームを広めて皆でプレイするという夢がな!
ヒューズは、少し考えた後、唇を震わせた。
「まさか……いや……この発明品から推測できる夢は複数ある……しかし、そのどれも……」
そう、俺の夢はいくつもある。ネトゲ廃人を量産する事もそうだし、課金制のゲームもいずれは行うつもりだ。一家に一台はゲーム機がある様にもしたい。ふはははははは、俺は今でもゲームプログラマーなのだ!
「セレイン、貴方の目的は……」
俺はにやりと笑って言った。
「全部じゃよ、ヒューズ。全部じゃ」
それに彼らはビビった。恐ろしかろう、恐ろしかろう。しかし、俺はお前達も既に立派な―ゲーマーだと推測する!
一転、俺はしかめっ面になる。
「しかし、困ったのう。こうなった以上、計画を早めるしかあるまい。強欲王を持ちだすしかあるまい……。世界の構築を急がなくては。そして、端末の作り方を全ての場所に一気にばら撒くのじゃ」
何故かガタブルし始めたヒューズ達。用はすんだので、手を振って戻らせた。
そして、急いで世界の構築を始めたのである。
もちろん、忙しかった俺は、ラブリィ達やダークネス達が神々と会話する儀式に気付くはずはないのだった。
作業していた俺は、ある日突然ハックの知らせを受ける。
なんだ、このばかでかい魔力は!?
「馬鹿な、端末なしで単体でデータ網に侵入? ここに、来る!」
現れたのは、ローブ姿の美青年だった。
「……君が、セレインか?」
「お前は誰だ」
「我が名は……ダークネス」
俺は、即座に傅いていた。
「ようこそいらっしゃいました、ダークネス様」
「……私を排除しようとは、しないのか?」
「神に逆らう程愚かではありません。……ここへは、何ようで?」
「新しい、魔術。興味深い」
「魔術がお気に召したのでしたら、GMキャラとして全ての魔法と試作品の魔法を扱えるキャラをご用意致しましょうか。対外的には、新種のキャラのテストと致します」
「頼む」
俺が用意したキャラに、ダークネス様は乗り移る。俺は、自ら色々案内した。
ダークネス様は、俺のゲームを楽しんで下さった。
魔術を一つ使う度、目を輝かせるダークネス様はどこか幼く、俺は以前のゲームプレイヤーたちを思い出していた。
こっちの奴らは、実益に結び付けようとするのがいかん。
神にさえ気にいられるとは、俺はとんでもないゲームを作ってしまったかも知れん……むふふ。
ダークネス様は魔術を大いに気に入り、新たな魔術を作られると仰った。あ、あれ……?
これって凄すぎる事なんじゃないのか?
そして、ゲームで遊ぶ事を推奨して下さった。
その代り、俺はダークネス様と時々狩りに行くようになった。
俺の別キャラと奴隷のリザードマンが前衛、奴隷のダークエルフとダークネス様が後衛だ。当たり前だが、奴隷どもはかなり恐縮してた。
その際に、ダークネス様が考案した魔術のテストも行う。
二人でまったりとしていたその日、またもハックが感知された。
ダークネスが、突如として俺のローブの中に隠れたので、俺は驚く。
光の塊がエルフの形を形作り、そこに残念な胸の可愛らしい女の子が現れた。
「ダークネス――――――――! 婚約者の私を差し置いて、私の種族と遊んでいるなんて酷いわ!」
瞬時にライトモア様だと判別した俺は、ライトモア様に傅く。
そうか、神様たちは残念な美青年と残念な美幼女か……。
「五月蠅い死ね。お前が婚約者だと僕は認めてない。帰れ」
「……そいつなの? そいつがダークネスの大事な人なの? わかったわ。じゃあ、そいつの体を乗っ取って……」
物騒な事を言うライトモア。
「ダークネス、ダークネス、ダークネスぅ。愛してるわ。愛してるわ。ずっと閉じ込めて手足を折って愛で続けたい……。いい加減、諦めて私の物になってよぉ、ダークネスぅ。デザイアを捕えさせる時が楽しみだわ。その時は、大人しく物になる約束よね」
病んデレかYO!
そんな事で俺らの種族は長きにわたりいがみ合ってきたのかYO!
俺のローブに頭を突っ込みつつガタガタ震えるダークネス。
「あ……あの。とりあえず、友達からって事で、ゲームしませんか?」
俺は、恐る恐る提案した。
ライトモアからは何言ってんのこいつ、と言う目で睨まれ、ダークネスからは売るのか!? という視線を感じる。
だ、大丈夫。俺のゲームで遊べば、きっとちいちゃい事なんぞ忘れるさ……。
でも念の為、ライトモアの周りは美青年のNPCで固めよう。
少しでも異常過ぎるダークネスへの興味を薄れさせる事が出来たらおんの字である。