昨夜、アレクサンドロ・セラフィスの死を知った僕だが、翌日それが吹き飛ぶほどの衝撃を受けることとなる。
「あかん、訳わからんわ……」
「誰も覚えていないってどういうことよ……」
そう混乱した様を見せるはやてとアリサ。
なんと、翌日の学校でアレクサンドロの事が無かったことにされていたからである。
本日は天宮聖(あまみやひじり)に熱を上げるなのはとすずかを含む、このクラスの殆どが昨日の転校生を10人だと認識している。
無論、転校生ズはアレクサンドロの事を覚えているだろうが。
しかし、存在が無かったことにされるというのはどういうことなのだろうか?
転校生ズの間で何かがあったらしいのは、昨日あの後アレクサンドロが一人で先に戻ってきたらしいので分かるのだが。
それを尻目に、本日この学年の全クラスで将来の夢についての話がされたことで、ゆきのさんのテンションが天元突破状態である。
「──ということなんですよ」
昨日、話を聞くなりすっ飛んで帰っていった迅雷のオッサンであるが、今日も今日とて翠屋で密談である。
「なるほどねぇ、そんなことが……いや、だとあの連中の逸話が残っているのはおかしかねぇか? うーん、天鏡将院の方を調べれば何かわかるか?」
取り敢えず、昨日の続報ということでアレクサンドロの末路を伝えたのだが、なにやらブツブツと独り言である。
はて、あの連中とは如何なることか?
現状、僕の知る限り死者は天鏡将院八雲とアレクサンドロ・セラフィスの2人である。
「まあ、いいか。正直、それどころじゃないというのもあるんでな」
「……11人の転校生も相当シャレにならん話ではありますが」
あの量産型オリ主たちはかなりヤバイ気がするのだが。
「面倒な話だが、昨日この街にジュエルシードが落着した」
「……そりゃ、また厄介なお話ですな」
やっぱり、ジュエルシード自体はここに来るのか。
確かに、危険度でいえばこちらが勝るか、下手すれば海鳴どころか地球が危ない。
「ちなみに、ユーノ・スクライアは来てない」
「ゆきのェ……」
哀れなゆきのさん。
しかも詳しく聞けば、そもそもユーノ君、ジュエルシードの発掘にかかわっているわけでも無く、現在ミッドチルダの魔法学院の研究機関に所属しているらしい。
「で、だ──」
と、ようやく本題。
簡単にいえばジュエルシードの封印を手伝って欲しいということだ。
本来は規則的に不味いらしいのだが、オッサンのほうも打つ手がないらしい。
元々のバックアップ要員はジュエルシード落着の際に色々あり今動けず、オッサンはそもそも封印自体が出来ない。
そのうえ、ジュエルシードがここに落ちる際に起きた次元空間の乱れにより、増援が到着するのは2週間以上先とのこと。
ついでに使い魔も封印作業には使えない以上、現地に協力者を用意せざるを得ないと。
「そのへんは了解です。まあジュエルシードがある以上、なんとかしなきゃいかんのはわかりきってますし。それで、あんたは結局どこの人間なの? たぶん管理局の人間とは思ってたんだけど、こっちもかかわりたくないから聞かなかったけどさ」
「まあ、ご想像の通り、八神迅雷一等陸佐だ。それと、所属だが……あー、全時空平和委員会に所属している」
29で一等陸佐か、って、全時空、なんだって?
「……全時空、なに?」
「全時空平和委員会だ」
略して、『全平和会』!
なにそれ?
どうも、転生者の「管理局、最悪だな(以下略)」により改名したらしい。
後ろ向きだなぁ、おい。
ちなみに支給されたデバイスはストレージ。
なんだかんだで、使い勝手はインテリに勝るとか。
「さて、ここいらでいいか」
周囲を見渡しながらゾートが呟く。
この場所は、いうなれば原作において高町なのはがユーノ・スクライアと初めて会った場所である。
一応、昨夜のうちにあたりは付けており、この時間になったのは単純に高町なのはが学校を終えるのを待っていたからである。
「じゃ、念話で助けを呼ぶとするか」
そう呟くゾートの姿は、軽い負傷者に見える。
原作ではユーノは体力回復のためフェレットへと変化していたが、記憶剥奪のため変身魔法を使えないゾートはその姿のまま、なのはとの出会いを再現するつもりであった。
流石に無傷はおかしいと、負傷者を装ってはいるが。
『助け──』
「ほう、助けを呼ぶのは貴様か?」
「っ! 誰だ、お前は!」
邪魔をするな、と言いかけ、ゾートは声の主を見て呆気にとられる。
おぼろげながらに記憶に残る英雄王そのものの姿をした青年が目の前にいるのだ、驚かない訳がない。
「同郷の好だ。そのジュエルシード、素直にこちらに渡すのであれば、見逃してやろう」
昨夜のアレクサンドロ戦を経て、いささか神経がささくれている青年は呆気にとられるゾートに高圧的に命じる。
「なぁ──にィ?」
が、ゾートとて僅か1年で4桁に迫るほどの死者を量産した、生粋の犯罪者である。
即座に青年の敵意を感じ取って、戦闘態勢に入った。
「もう一度言うぞ? そのジュエル──」
「死になァ!」
パァン!
ゾートの戦意を感じてなお、勧告する青年の言葉を遮り、抜き打ちの如く腕を振り抜きざまに指を鳴らす。
キンッ!
「なっ!」
が、ゾートの放った真空波は青年に触れる前に、硬質な響きをたて霧散する。
その事実にゾートは驚愕する。
自身のこの能力『十傑集:素晴らしきヒィッツカラルド』は、『指を鳴らした際に生じる真空波があらゆるものを真っ二つにする』というものだ。
超再生能力者でもない限り、物理・魔法・現象だろうが構わず真っ二つにすることが可能なのだ。
が、この目の前の男はそれを何らかの方法で無効化した。
これまであらゆるものを真っ二つにしてきたゾートが、初めて遭遇した真っ二つにできないモノ。
「クククッ、絶対にテメエを真っ二つにしてやんよ!」
マグマの如き戦意がゾートから溢れ出る。
初めて出会う強敵に、これまでになく血潮が滾るゾート。
「死なないよう、手加減はしてやる……」
対照的にテンションの低い青年であった。
「ク、クハッ──クソ、強えー」
幾多の欠けた宝具を足元に散らばせながらも、ぼろぼろになったゾートが地面に貼り付けられたまま青年を見上げる。
結果はゾートの完敗。
が、金髪の青年にとって、初陣以来の5分を超える戦闘となった。
基本的に無駄な死者を出す気がない青年は、初手に自身の加減か可能である『乖離剣・エア』を選択したのだが、ゾートはその衝撃波を切り裂いて無効化するという出鱈目な方法で対抗してきた。
止むを得ず、青年は『王の財宝』を展開、なるべく手加減を──と、即死効果のないものを射出したのだが、これもゾートが踊るように繰り出す真空波に切り裂かれ無効化されてしまう。
この時点で、青年にはまだ3つほどゾートを無力化する手段があるのだが、そのうち2つは彼にしても微妙に加減が難しく、昨夜も怒りに任せて初めて会う転生者を殺してしまっている。
よって、青年は残る一つである目の前の転生者が対処しきれない量の宝具で押し切るという戦術を選択した。
指を鳴らすという動作に対して、破格の威力を誇る『十傑集:素晴らしきヒィッツカラルド』であるが、如何せん人間の腕は2本であり、親指を使う以上一度に2つ以上の目標を狙うことが出来ない欠点を持つ。
本来、この欠点は十傑集の圧倒的な身体能力で些細なものとなっているのだが、その身体能力をもってしても360度、全方向から
続けざまに放たれる宝具の嵐に曝されて耐えうるものではない。
それでも、5分。
真空波を放ち続ける両の手を地面に貼り付けにされるまで、ゾートはその二つ名の如く宝具を『切り裂き』続けた。
「見事だ。我(オレ)のコレをここまで耐えたのは貴様が初めてだ」
そう感心しながらも、青年はゾートの胸元からジュエルシードを抜き出す。
殺すことなく勝利した、にも関わらず青年の表情は暗い。
戦うことで、このゾートの心根というべきものが見えたためだ。
その瞳は腐った溝沼のように濁り、何処までも暗く、歪んでいる。
相当数の人間を大した理由なしに殺害してきたであろう、その経緯。
この場で見逃しても、改心は見込めそうになかった。
「これに懲りたのであれば、二度とこの地を踏まぬことだ」
それを理解しつつも、青年はゾートにチャンスを与える。
両手を貫く宝具を含めた周囲の全てを霧散させつつ、ここから離れるため背を向ける。
(ク、クソガァッ!──上からモノ見てんじゃ、ねぇ!)
忠告など即座に無視、ゾートは両手が開放されると右手を青年に向け、渾身の力を込める。
「死ね、コラァ!」
パァン!
ひときわ大きな音が鳴り、
キィン!
やはり、青年の不可視のそれは貫けず、ゾートの真空波は正しく『反射』され、ゾート自身を刻む。
「っ! こ、いつぁ、ベクト……」
放った真空波が完全な形で自身に反射されたことで、ゾートにもこの青年の不可視の障壁の正体にようやく気づく。
が、気づいたところでゾートは致命傷を負っている。
振り向いた青年が心底落胆した目を向けているのを感じながら、ゾートはもう一度手を構えようとし、
「あ──」
ボロッと体が崩れ消滅した。
《転生者一覧が更新されました》
【ゾート・■■■■■】
年齢:死亡(/20歳)
・総合SSランク魔導師(100P)
・出身:■■■■■一族(10P)
・十傑集:素晴らしきヒィッツカラルド(300P)
・洗脳:sekkyou(250P)
現在地:第97管理外世界
高町ゆきのは走っていた。
全速力で走っていた。
「ゆきのちゃん、待ってー」
「ゆきのー、待ちなさーい!」
追いかけるはやてとアリサの声を完全に無視して走っている。
懸命に走るわけは、念話が聞こえたためだ。
しかも、ただ聞こえたわけではない、『助け──』で途切れて聞こえたのだ。
問題として、待ち望んだユーノ・スクライアの声でなかった気がするのだが、短すぎて判断がつかない。
そして、続きが聞こえない。
何かあったのかもしれない。
そう不安に襲われたゆきのは、ユーノ・スクライアがいるであろう場所へ走るしかない。
(ユーノくん、ユーノくん、ユーノくん──)
頭の中は既にユーノのことしかなく、公園を抜け彼がいるはずの山道へと踏み入れた途端、彼女の足が止まる。
山道を誰かが降りてくる。
「おうさまだ……」
そうとしか形容の仕様のない男であった。
消滅したゾートのいた位置に転がったデバイスを拾った青年は、それが登録すらされていない未使用品であることを知る。
「このままにするのも、もったいなかろう」
そう呟き、己がデバイス『クロック・タイム』を起動、連動させることでこのデバイスを強制起動させる。
「インテリジェンス・タイプか、名前は……Excavate(貫くもの)か、ずいぶん物騒な名だ」
デバイスのスペックを見ながら、青年はその場を離れる。
最早この場所に用はない。
悪意を感じ取った場所にいたのが、先の転生者だっただけの話。
「しかし、本格的にこういった奴しかおらんのか?」
かつて襲撃をかけてきた7人、昨夜のアレクサンドロ、そして先ほどのゾート。
10人近い転生者と出会いながら、青年は1人として仲間意識を持つことのできる転生者と会っていない。
『──master』
「む、誰かこちらに来るな」
そんな考え事をしながら山道を下ると、それまでの転生者と同じ年頃であろう少女が呆然とした顔でこちらを見ていた。
「ほう、我(オレ)のカリスマに動じんとは、あの娘も転生者か」
初対面時に青年に威圧されるのが普通の人間であり、容姿に驚くのが転生者である。
深く考えてこの容姿を選択したわけではなかったが、偶然にも転生者を見分けるのに役立っていたりする。
「何用だ、娘。この先には何もないぞ?」
今までが今までな為、特に期待せず青年はゆきのに話しかける。
ここで喧嘩を売ってくるような転生者なら、もう殺っちまうかぐらいに考えて。
「……あ! えーと、そう。おうさま! ユーノ君、見なかった?」
「ほぅ」
ゆきのの第一声に、よくよく見ればそれなりの才能こそあるが、魔導師として覚醒すらしていないのが見てとれる。
「いや、ユーノ・スクライアとはまだ遭遇しておらんな」
青年の言葉にしょんぼりするゆきの。
逆に、初めて悪意のない転生者と出会ったことで、青年の気分は高揚していた。
「これを見ればわかると思うが、ユーノ・スクライアの安否は不明だが、ジュエルシードは既に海鳴に存在している」
ジュエルシードをデバイスから取り出して見せ、続けた言葉にゆきのが顔を青ざめる。
「我(オレ)もそちらまでは手が回らん。ユーノ・スクライアは貴様が探せ」
ジュエルシードは自分に任せろと、彼はゾートからパクったデバイス『Excavate』をゆきのに手渡す。
その唐突な行動に、目を白黒させるゆきの。
「最早、待つだけでは道は開けん。先ずは魔導師となれ、それは『Excavate』、貴様も貴様の想いを貫くがいい」
そのデバイスにはレイジングハートには及ばぬものの、基本的な機能はインストールしてあることを告げる。
「……わかった。おうさま、ジュエルシードはお願い!」
「まかせろ、我(オレ)を誰だと思っている」
ゆきのは不安を振り払いニッと笑う。
青年もまた破顔一笑、ゆきのと共に山道を下る。
「ゆきのちゃーん」
「ゆーきーのー!」
途中、親友2人の声を聞き、やべっとゆきのは顔を引きつらせ、足を止める。
そんなゆきのを一瞥し、青年は笑みを浮かべたまま彼女たちとすれ違い去ってゆく。
このときのゆきのは荷馬車に揺られた子牛のような瞳をしていたかもしれない。
息を切らせながらも怒りの表情を見せる二人に、乾いた笑みを浮かべるしかなかった。
こうして、濃密な一日が終わる。
『切り裂き』ゾートは、なのはと出会うことなく討たれた。
高町勇治は八神迅雷の申し出を受け入れ、ついでに家族にも話を通しておくことにする。
ついでに、ゾートとやらが死んだことも告げる。これを聞いて、バックアップの人が大いに憤慨した。
高町ゆきのは黄金のヒーローと出会い、道を歩き始める。
そうして始まるカウントダウン。
未だ動かぬ転校生たちは何を待つのか、何を求めるのか。
ここ海鳴に、激動の時間が始まろうとしていた。
あの日からから、およそ2週間があっさり経過した。
その間、封印したジュエルシードは勇治・迅雷組が6つ、青年が8つ。
ロベルト・ナカジマ提督の張った結界により、原作のようなジュエルシードモンスターが出現しなかったため街に被害は一切ない。
また、ユーノ・スクライアを確認できなかったため、フェイト・テスタロッサがくるのを待ってから動き始めようと決めていた転校生ズ10名は大いに混乱していた。
フェイトが来ないのにジュエルシード集めがあらかた終わっているからである。
まあ、この世界のフェイトさんは、24歳で既に子持ちの人妻なので来るはずもないのだが。
高町ゆきのも2週間の間、学校を終えるとふらふらとユーノを探して街を彷徨き、日替わりで転校生たちに頬を染める親友を見ていられない八神はやてとアリサ・バニングスは勇治に頼まれたこともあり、ゆきのに付き添う。
こちらも、ユーノ・スクライアは来ていない。
卒業試験中の友人に勉強を教えつつ、卒業済みの友人と共に上の学部の研究機関に所属し、最近は無限書庫に入り浸っている。
また、流石の高町家でも最近のなのはの様子に焦りを隠せていない。
特に、恭也が恋人である月村忍経由で彼女の妹のすずかもおかしくなっているのを聞いてからは尚更だ。
更にゆきのが情緒不安定で、帰宅すると部屋で塞ぎ込みがちである。
実際には、マルチタスクを使っての魔法訓練に、放課後のユーノ探索にふらふらになっているだけなのだが。
勇治に関しては、信頼の置ける八神迅雷の話もあり、そういった不思議な話にはなんぼか耐性のあった高町家の面々はジュエルシードの探索に全面的に協力している。
といっても、なるべく時間を作って士郎や恭也、美由希が迅雷たちと手分けして町中を捜索、見つけたら勇治の帰宅を待って封印作業に赴くだけだ。
ロベルトの結界のおかげで、一般人にも、勇治を含めた高町家の人間にも被害が出ることはなかった。
まあ、迅雷本人は金髪の青年と遭遇し、
(──やべぇ、コイツ。キラ・ヤマトより上かもしれん)
みたいなやり取りをしていたのだが。
最悪、自分たちの最強戦力であるリーゼフランの『女王艦隊』を上回るかもしれない青年に冷や汗を流すが、どちらかと言えば自分たちよりの思考のため、ジュエルシードに関しては協力を取り付けることに成功する。
そんな感じで、ジュエルシード集めに関しては順調であり、ゆきのもなんだかんだで勇治がフォローしている。
とはいっても、肝心のユーノが来ていないことを告げていないのだが。
やはりそうなると、高町家の問題は末娘のなのはと、将来的に縁戚となる月村すずかの動向になってくる。
現状、日替わりで惚れる対象が変わっているだけであり(しかも、それが毎回毎回本気に見える)、何が起きているわけでもないのだが、家族としてはたまったものではない。
それ以外は普段と変化はないため、あいにくと今のところ打つ手がなかったのである。
さて、そんなこんなで高町家を悩ます転校生ズであるが、遂に行動に出ようとしていた。
「では、全力を持ってにフリードリッヒ・ジークフリード・カーマイン・ロッテンマイヤーを倒す! ということでいいな?」
と、東樹(あずまいつき)の言葉にはじめからの協力者6人が異を唱える。
「ん? フリードリッヒ・ジークフリード・アウグストゥス・ガブリエフだろ?」
「いや、フリードリッヒ・ジークフリード・ディリードムルド・ロドルバンだったはずだ」
「違う違う、フリードリッヒ・ジークフリード・カールグスタフ・グーデリアンだ」
「……フリードリッヒ・ジークフリード・マスターフォース・トーテンコップ」
「確かフリードリッヒ・ジークフリード・ダークマグナス・ゲルトリッヒでは?」
「俺が聞いたのはフリードリッヒ・ジークフリード・グリファナード・スタイナーだ」
と、天宮聖(あまみやひじり)、神薙北斗(かんなぎほくと)、虎桜院闇守(こおういんやみもり)、皇劉騎(すめらぎりゅうき)、鳳凰院朱雀(ほうおういんすざく)、竜閃光峨(りゅうせんこうが)の順にジークフリード以降別の名を口にする。
「……全員違うじゃねぇか。まぁ、これだけ違うと聞き間違えはないな」
「ジークフリードまでは一緒か……本人が毎回忘れているのか、単に自称か」
「どっちでもいいさ。長いし、もうフリード(略)でいいだろ」
カイ・スターゲイザーが呆れたように呟き、レイ・ドラグーンがフムと考え込む。
最後に心底どうでもいいと、刹那・S・ナイブズが話をしめた。
「……では、フリード(略)討伐作戦、開始する」
「「「「「「「「「おー」」」」」」」」」
げんなりした樹の掛け声に、残る9人が適当に答える。
残念ながら、数の利はともかく連携は期待できそうになかった。
さて、フリード(略)こと金髪の青年は、これまでの転生者に比べ遥かにまともである高町ゆきのと出会ったことで、俄然やる気を取り戻していた(ゆきの自身はユーノと会えないためテンションは徐々に下がっていたが)。
そして、数日前に出会った八神迅雷(平日午前中のため、エレノワールと分かれて単独行動中であった)。
彼もまた公私を弁えた人物であり、原作における管理局に所属しているとのこと。
さらに原作における問題点はあらかた潰し、現在もなお改革中との話を聞く。
それを聞いた青年は、力を正しく行使する同胞に出会えたことで更に気分を高揚させる。
そして、彼らに協力を約束しジュエルシードの封印に邁進することになる。
結果、2週間で何のバックアップもなしに先に封印した2個に続き、ジュエルシード6個を追加で封印するというハイペースを出していた。
10人の転生者が彼を襲撃したのは、そんなときである。