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No.28418の一覧
[0] 【ネタ】僕「なんかQBみたいっすね?」神「効率的だろう?」【リリカルなのは】[タナカ](2011/06/26 14:01)
[1] 2話 「経験は大事、というお話」[タナカ](2011/06/26 14:01)
[2] 3話 Q:転生者はどんだけいるの? A:108人[タナカ](2011/06/20 16:03)
[3] 4話 いうなれば主人公は、マサルさんのフーミン、銀魂のメガネポジ[タナカ](2011/06/26 13:55)
[4] 5話 原作に登場するはずだった人たち、他[タナカ](2011/06/26 13:52)
[5] 6話 今回、名前を考えるのに一番時間が掛かった[タナカ](2011/06/26 14:08)
[6] 7話 一応、量産型にも性格設定はしてある。[タナカ](2011/07/03 17:47)
[7] 8話 カウントダウン開始[タナカ](2011/07/03 18:28)
[8] 9話 Credens justitiam[タナカ](2011/07/04 21:07)
[9] 10話 ニコポとはかように恐ろしいものなのだ[タナカ](2011/07/07 21:26)
[10] 11話 漸く主人公にも陽の光が、と思ったがそんなことはなかった[タナカ](2011/07/11 15:36)
[11] 12話 覚醒のゆきの、留守番の勇治[タナカ](2011/07/16 13:27)
[12] 13話 「ただいま」[タナカ](2011/07/19 21:45)
[13] 14話 A's編終了のお知らせ[タナカ](2011/07/23 19:25)
[14] 15話 オリ主で厨二の邪気眼[タナカ](2011/07/26 16:49)
[15] 16話 閑話みたいなもの[タナカ](2011/08/08 14:52)
[16] 17話 その頃、世界の裏側で[タナカ](2011/09/04 20:05)
[17] 18話 きっとターニングポイント[タナカ](2011/12/08 12:34)
[18] 19話 嵐の前の静けさ[タナカ](2011/12/30 18:46)
[19] 20話 「フリーダム壊滅作戦・上」[タナカ](2012/01/03 07:16)
[20] リリカルなのはTRPG・ルールブック 1/3改訂[タナカ](2012/01/03 08:05)
[21] ・転生者一覧(20話終了時点)[タナカ](2012/01/03 08:10)
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[28418] 16話 閑話みたいなもの
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/08 14:52

『さて、第二の人生はどうだったかね』

「……」

『いやいや、原作に関わりたくないと言ったのは君だろう』

「……!」

『まあ、そんなことはどうでもいい。君に貸した力の利子を払ってもらうとしよう』

「……」

『なあに大したことはない。君たちの感覚でほんの10年ほど、これまでの人生の後悔を振り返ってもらうだけだ』

「……! ……!」

『それは、聞かれていないからねえ。それに君が幽閉の身で過ごした二十数年に比べれば大したことはないだろう』

「……!」

『ふむ、君がそう思うのならそうなのだろうね』

「……」

『では、頑張ってくれたまえ』








《転生者一覧が更新されました》








【森元与平】New!

年齢:死亡(/100歳)New!

・運命:原作に絶対関わることはない(100P)New!

現在地:第九十七管理外世界New!









 キラ、オーリシュデのショックから数週間、衝撃冷めやらぬうちに夏休みに突入していた。

 その間、ゆきのさんは士郎父さんをどう説得したのやら、恭也兄さんや美由希姉さんと一緒に修業に精を出すようになった。
 ちなみに、僕ら三兄妹が御神流に触れていないのは、士郎父さんに才能なしと判断されたからである。

 まあ、まだ体幹が出来ていないってのもあったんだろうけど。
 取り敢えず僕も朝のランニングには付き合うだけはしている。勿論何kmも走れるわけでないので30分ほどだが。

 魔法の訓練は前に迅雷のオッサン、というか亡きエレノワールさんから教わった基礎の繰り返しに、ゆきのさんのExcavateが応用練習を考えてくれている。
 偶に一緒に訓練するのだが元々の魔力差はいかんともし難く、悔しいが一度も勝てたことはない。
 しかも、螺旋ゲージが全くたまっていない状態で、僕のシールドは面白いように撃ち抜かれた。
 改めて結界魔導師としてのユーノ・スクライアのスペックに畏敬を覚える。

 ゆきのさんのバリアジャケットは、基本はギル様の鎧を女性向けに改造した感じ(ぱっと見は色違いのセイバーに見えなくもない)

で、胸元の螺旋ゲージと赤いマフラーが原典からすると大きな違和感を感じさせる。
 僕はというと、聖祥の制服を少し軍服チックにした、例えるならクロノ・ハラオウンのバリアジャケットからトゲと手甲を外して色を白くした感じである。

 魔力色はゆきのさんが濃いピンクで、【天元突破】すると緑色。
 僕は薄白い青色である。

 個人的になんだかんだと楽しみにしていたリーゼフランさんとの通信は、何やら仕事がらみで忙しくなったらしく、週末に一度だけ30分ほどの通信を入れてくるだけになってしまった。
 僕的に素で話せる少ない話し相手なので少し寂しい。

 つまり、あちらにいる転生者たちとも顔合わせができなかったわけだが、ある日一覧が更新される。

 なんというか僕以上に後ろ向きな転生者だな、いや、だったな。
 丁度原作開始のこの年に寿命で死亡だろうか?

 少し気になった僕は翌日の新聞を確認したところ、確かに載っていた。

 御冥福をお祈りしたいところだが、多分無理だろう。
 スキルもない過去の日本人じゃ余程運が良くない限りどれだけ努力しようと、歴史改変などどうにもなるまい。
 まあ今だ小学3年の身、歴史の授業自体まだであるからひょっとしたらその内教科書に見るかもしれないが。

 取り敢えず、週末のリーゼフランさんからの通信の際に伝えておく。





『まあ、今までそんなタイプの転生者が居ない方が不思議だったわけだが。要は関わらない詐欺はあの神には通用せんというわけか』

 きっと、内心は関わる気満々でポーズだけ関わらないと言っていたのが、本気に取られて本当に関われない状況下で転生させられたのだろう、と彼女は推測した。

 確かにあのスキル取りだとルールブックを見ていないのは確定的に明らか。
 本気で原作無視で過去改変するならあれは無いわな。

『そうなると今年が終わるまでに、その森元氏と同じように一覧に載る転生者が複数出るかもしれんな』

 彼女の言葉に僕は頷く。
 その手の転生者が彼しかいないわけはないもんなぁ。
 まあ、管理世界の方なら幾分ましかもしれない。

『さて、話は変わるが……』

 丁度、夏休みになったことだし職場見学にでも来てはどうかとの提案を受けた。
 将来的に全平和会絡みの仕事を考えている僕としては断る理由もないので、士郎父さんたちに話しておく。

 ところが、この話がどう広がったのか、何故か海鳴組(家族含む)で1泊2日の全時空平和委員会本局見学ツアーと相成ってしまった。
 
 僕個人としては、向こうには迅雷のオッサンも居るし一人で問題ないと思ったのだが、士郎父さんたちはそう思わなかったらしい。

 しかも、ゆきのさんも全平和会への進路を考えていたらしいので余計就職先が気になったようだ。
 これがゆきのさんルートではやてとアリサに伝わり、二人とも、特にアリサがこれに食いついた。
 例の転校生ズの事件以降、本格的に全平和会への進路を考えているようだ。

 それにそれぞれの家族も士郎父さんたちと同じように全平和会という組織が気になったのだろう、子供だけでいかせるわけにはいかないと家族同伴を希望した。
 特にバニングス家は転生者絡みで長男が死んでるからなぁ。

 で、一応関係者と言えば関係者だし、月村のみなさんもハブるわけにはいかんと、去年の温泉行きの面子にユージンさんの変わりにアリサ父が入り、オッサンを除いたメンバーで見学ツアーをすることになった。

 何やら話が大きくなってしまった事をリーゼフランさんに詫びるが、問題ないと彼女はいつもの薄笑いの顔で答える。

『まあ、予想はしていたからな。日程はそちらに合わせるからそのままで結構、こちらに来てもらえばそれぞれの職場に連絡をとるだけで済むからな』

 うん、この人からすればメインはそうなるか。
 きっと、都合良くキラ戦みたいのが起こるんだろう。
 正直あの手のぶっ飛んだ転生者はお腹いっぱいなのだが。






 と、見学ツアーが決まって早1週間。

 現在AM10時。
 高町家、月村家、バニングス家、八神家の皆さんが海鳴の沿岸のゲート地点に集合している。
 この場所は原作的にも、僕個人としても因縁のある場所だ。

 そんなことを考えていると、ゲート地点が輝き、中から緑の髪の提督服を着た女性が猫耳っぽい使い魔の人を伴って現れた。

「お待たせいたしました。初めまして、私このたび皆様のご案内を務めさせていただきます、リンディ・ハラオウンと申します」

 こちらは使い魔のシルフ、と女性は丁寧に自己紹介する。

 実に久々に遭遇する原作の人物だ。
 というか、リンディさんに管理外世界からの見学者の引率をやらせるなんてリーゼフランさんも色々無茶をする。
 いや、原作と異なり提督とかではないのだろうか?

 保護者組が彼女と挨拶を交わしている最中、僕はそんなどうでもいいことを考えていた。

「本局までは6時間の航程です。なお今回のツアーの段取りは取り敢えずこちらのプランを考えてありますが、可能な限り皆様方の希望を聞くよう伺っておりますので」

 と、皆に態々紙製の旅のしおりを配る。

 それによると──。

 ・搭乗から30分ほど乗艦であるXV級大型次元航行船クラウディア及び全時空平和委員会の簡単な概要説明映画。

 ・30分の自由時間。

 ・再び60分の概要説明会。こちらはかなり突っ込んだ内容になるため参加は自由。参加しない場合は引き続き自由行動。

 ・昼食を含めた自由時間45分。

 ・最後の説明会。時間は休憩を含み75分。主に全時空平和委員会の前身、時空管理局設立から改名までの歴史の説明である。これも参加しない場合は自由行動。

 ・残る到着までの120分は自由行動。なお時差が5時間ほどあるらしいので年少組は軽く睡眠を取ることが推奨されている。

 この辺が本局につくまでの予定。
 因みに自由行動中艦内を移動する場合は案内役が付くとのこと。

 時差5時間でこっちより遅いとなると、今あちらは早朝の5時ごろか。

 僕は取り敢えず説明会は全部参加だなと決めた。










《転生者一覧が更新されました》










【プリンス・ツールフ】New!

年齢:27歳(/100歳)New!

・出身:スラム(-100P)New!
・サイヤ人:戦闘力100→3900(100P)[限界突破]New!
・総合SSランク魔導士(100P)New!

現在地:第97管理外世界New!









 クラウディアについた僕らを待っていたのは執務官服に身をつつんだ小柄な男、プリンス・ツールフ。
 僕らと同じく転生者だ。
 しかし、凄い名前だ。
 野菜じゃなくて果物か。
 そしてあの原典からの戦闘スキルだ。
 個人的にあれは非常に効率悪いと思った戦闘スキルの一つだ。

 彼は一通り定形通りの挨拶を交わすと、僕とゆきのさんにニヤリと笑う。

「おう、お前らのことは聞いているぞ。中々難儀したようだが、これも経験の内だな」

 そう言ってクハハハと高笑いし、ペシンとリンディさんに頭を叩かれた。

「ツールフ執務官、本艦の御客人に対してその態度はなんですか。いい大人が子供にする言葉じゃないでしょう」

「いや、貴様とて聞いているだろう! こいつらは所謂特別だ、同郷みたいなもんだから問題ないだろう!」

「ふぅ、いつも思うのですが貴方たちのそのシンパシーはどこから来るのやら。やはりフランが特別すぎるのかしら?」

「あの化物と一緒にするな!」

「……ほんと、貴方たちはフランが嫌いよねぇ。あんなにちっちゃくて可愛いのに」

 ガーと小男が唸るが、リンディさんには軽く流されている。
 フランってリーゼフランさんのことだよな?
 基本画面越しでバストショットなので背の高さはわからなかったが、低いのか。へぇー。
 というか、やっぱり冷たいのは転生者のみになのか。

 後でわかるのだが、彼女の態度は基本的に誰に対しても冷淡であまり変わらないらしい。
 特に転生者に対してはそれがあからさまで隠そうとしていない。
 そして、極一部の例外のみ愛嬌のある態度を見せているのだ。
 それがリンディさんらハラオウン家の人間であり、グレアム家の家族たちだ。

 と話がそれたが、二人が──原作を考えるとありえないが──コントみたいなやり取りを始めてしまったので、使い魔らしい紫髪の狐っぽい耳の優男が苦笑しながら、リンディさんの使い魔シルフと共に皆を会議室へと案内していく。

 ちなみにそれに気づいたリンディさんは直ぐにコントを止め、赤面しながら一行に加わった。

 ついでに、果物王子ことプリンス・ツールフ氏はムスッとしたまま自分に割り当てられた部屋へと戻っていった。
 どうも、クラウディアに乗艦している最大の理由は僕との顔合わせだったらしい。

 リーゼフランさん曰く。基本的に孫悟欽のストーカーが仕事なので、対『フリーダム』部隊の中では一番表の仕事を頑張っているとのこと。
何だかんだで執務官は忙しいのだ。
















      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

















 八神迅雷は姪の八神はやてが家族と共に本局の見学に来ると聞き、急遽第3管理世界ヴァイゼンへと飛んだ。

 表向きの理由は超S級次元犯罪者キラ・ヤマトの隠れ家を突き止めるためで、本音ははやてと顔を会わせたくないので逃げ出したのだ。

 首都にある支局のゲートポートから出た迅雷と使い魔のウィルは、普段着に着替え街に繰り出す。
 迅雷はいつも通りアロハシャツにジーンズで、ウィルは褐色の肌が映える白いワンピース・スカートに麦わら帽子をかぶっている。

「よろしかったのですか? きっと、はやてちゃんはマスターと会うのを楽しみにしていましたよ」

 今更であるが、ウィルが一言。

「俺だって会えるなら会いたいよ! あれ以来距離が近いんだよ! 我慢してんだよ! 大体、29のおっさんと9歳児とかありえんだろ、常識的に考えて!」

 うがー、と迅雷が吼える。

 基本的に生まれた時から知っているので冗談抜きで娘みたいなものなのだが、根本的に八神はやてが大好きなので理性が実に脆弱なのだ。
 本能が暴走したら止める自信がない。
 20歳差という完全に犯罪状態で手を出してしまう危険があった。

 だからこそ、態々この任務に自分をねじ込んだのだ。

「ユージンも妹の轡ぐらい握っておけってんだ……」

 そのはやてであるが、どうも末期状態のアリサに色々唆されているらしい。

 そのことを知り、亡き同胞に文句を言う。
 が、その相手も魂状態、言って聞かねばいかんともしようがない。

 首都のオフィス街を歩きながら、迅雷はブツブツと呟く。

『……マスター』

『ん、わかってる。ここに来た時から監視されてるな』

 通常の念話では傍受される危険があるので、接触念話で使い魔のウィルと情報確認。

 まだ生まれたばかりのウィルですら気づくほどに気配を隠していない。
 が、彼女のエリアサーチに引っかからない程度にはやるようだ。

(想定可能なうち、『フリーダム』の連中がつるむのはエミヤズ以外は考えられん。まあ、ゼロの野郎はないとは言えんがそれならウィンドの旦那から連絡がある。やはり『フェアリー・ガーデン』か。よりによってキラの奴と接触済みか……)

 現在、『フリーダム』に登録されている9名のうち、今回判明したキラ・ヤマトに加え、リュウ・サカザキ、孫悟欽以外は所在地不明である。
 エミヤズはsekkyouで一般社会に溶け込み、ゼロは今だ『黒の騎士団宣言』時以外姿を見せたことが無い程度に正体不明、残る2人は拠点を管理外世界に置いていると思われるため手が回らないのが現状だ。
(ギル・ディランとロードリッヒ・セルバイアンはあまり派手に動かないので優先順位は低い。ただし強さはギルは下位エミヤ2人より強く、ロードリッヒはエミヤ筆頭とほぼ互角)

 キラのスキルが判明した時点で全平和会側の転生者たちは無人世界に拠点を置いているのかと思ったが、高町勇治の一覧情報では普通に第3管理世界ヴァイゼンにいる。
 クラナガン襲撃以後もキラの襲撃は治まることはなかったが、そのいずれも最終的にヴァイゼンにいると記されている。
 が、スキルの構成上キラが普通の生活を送るのは難しいはずだ。
 何者か──無論転生者──による支援があるはず、というのがリーゼフランたちの見解だ。

 十中八九『フェアリー・ガーデン』だろうが、万が一別の組織という可能性もなきにしもあらず。
 海鳴にあれだけの転生者がいたのだ、今だ確認されない転生者が居てもおかしくないのがこの世界である。

 よってキラの攻撃をほぼ無効化できるカーミィナルか、死ににくいペンドラゴンのどちらかがここに派遣されることになっていたが迅雷が無理やりねじ込んだのだ。
 とはいえ限界突破によりカーミィナルの次に死ににくくなった迅雷である。
 リーゼフランも苦笑しながら許可を出した。

『一応安全を考えて郊外に出てから封時結界を展開、お前は外で待機。俺がやられたら即座に帰還しろ』

『……はい、マスター』

『ああ、そういえば勇治が来るんだったな。結界展開後は俺のC-3POからの映像を本局の姐さんに繋いでおけ』

 使い魔に確認を取りながら、迅雷は街の中心部から離れる。
 それを追う監視者は相変わらず気配を隠さず、しかし姿は一切見せないままであった。






「さてと」

 迅雷が足を止める。

 場所は郊外の閑散とした森林公園。
 今日が平日であるためか、人は殆どいない。

「ウィル」

「はい、魔力反応はマスターと私、監視者のみです」

 使い魔の言葉に頷く。

「ご武運を」

 同時に、彼女が魔方陣を足元に展開、半径500mの封時結界を張る。
 空間の位相がずれ、無人の空間に迅雷が一人立つ。
 監視者の気配は結界内にある。
 上手く取り込めたようだ。

「!」

 結界に閉じ込められたと気づいた監視者の殺気が爆発的に膨れ上がった。

「さて、どうする? 素直にキラの情報を話してくれるんなら対応を考えんでもないが」

 一応、迅雷は姿の見えない相手に勧告する。
 何らかの反応があれば儲けものだ。

「……」

 しかし数秒の沈黙の後、監視者は態々迅雷の正面からスゥっと姿を現した。

「……てめぇも、気合入ってんなぁ」

 その姿は一言で言えば異形であった。
 190cmの迅雷より頭一つ以上デカイ、その巨体はゴツイ筋肉質な体型でいかにも強者といったオーラを纏っている。
 体表は爬虫類にも似た鱗のようなものも見受けられる。
 特に異質なのは頭部だ。
 一見カニのような甲殻類を思わせる甲羅の様な頭頂部からケーブルにも見える髪のようなものが生えている。
 果たしてその表情はマスクに覆われ伺うことはできない。

 一言で言えば某宇宙の狩猟者である。

「……」

 狩猟者は無言で右手の鉤爪を迅雷に向け、構える。

「まあ、そうだよなぁ。来な!」















      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

















 僕たちが食堂で昼食をとっていると、果物王子が慌てた様子で飛び込んできた。

「高町勇治はいるか! って、食事中か……」

 幸いというか、僕は食事が早いの方なので丁度終わったところだが。

「いえ、終わったとこです。また変なのが来ましたか?」

 果物王子の慌てた様子に士郎父さんたちが僕を伺うが、問題ないことを告げておく。
 なんせ見るだけだ。
 まったくもって問題ない。

「話が早いな。まあ流石アレの肝いりか」

 化物とかアレとか、この果物王子は余程リーゼフランさんが嫌いらしい。
 まあ、あれだけ上から目線だ、嫌いな人はとことん嫌うだろう。

 こっちだ、と彼の案内で通信室へと向かう。
 最初の映像でも思ったが、やはりこのクラウディアでかいな。
 というか、なんでこの時期にXV級が就役しているのだろうか?

 そんなことを考えているうちに通信室に到着。
 中に入るといくつものモニタが展開されていた。

「あ、オッサン。と、なんだアレ……」








《転生者一覧が更新されました》








【ゲルカ】New!

年齢:79歳(/380歳)[限界突破]New!

・出身:何らかの研究施設(-200P)New!
・Sランク陸戦魔導師(25P)New!
・マルチタスクLv5(15P)New!
・防御魔法使用不可:→念能力(-750P)New!
・容姿:異形(-300P)New!
・女運:最悪(-150P)New!
・身長:230cm(20P)New!
・デバイス:インテリジェンス(40P)New!
・誰とも会話出来ない(-300P)New!
・超能力:ESP・書を守る者クローン級(300P)New!
・念能力:特定・メレオロン(1500P)New!
・貧乏Lv2(-100P)New! 
【生命吸収】[限界突破]New!

現在地:第3管理世界ヴァイゼンNew!





 迅雷のオッサンが戦っているのは異形の戦士であった。
 何かで見たことある気がするが、もう思い出せないなぁ。

 しかし、なんというか、スゴイな。

 モニタの向こうの戦場ではオッサンが大苦戦中である。

 ゲルカってのが結界中を飛び回りながら光の槍みたいのなので攻撃している。
 オッサンも反応できる分は手のひらの炎で消し飛ばしているのだが、ダメだと体に突き刺さっている。

 おかげで血まみれ、いや火まみれだ。

 しかしあれで全くダメージ受けてないように見えるのは凄いなぁ。

 ゲルカが近接しないのは多分右手の焦げあとが原因だろう。
 迂闊に飛び込んで、文字通り火傷したのだろう。

『どうだ?』

 と、忘れていたが別のモニタからリーゼフランさんが声をかけてくる。
 僕は情報を手短にまとめて送る。

 画面の彼女が眉を顰める。

 気持ちは非常によくわかる。
 実に厄介な転生者だ。
 純粋な強さはさほどでもないが、面倒くさい戦闘スキルを持っている。

 モニタを見る限り使っていないようだが、念能力でメレオロンはヤバイ。
 というか、あれは本体が殆ど戦闘力を持たないから許されてるようなもんだろうに。

 と、戦局が動いた!






「……」

 幾度目かの攻防を終え、狩猟者が大きく迅雷から距離をとった。

「おい、打ち止めか?」

 無論、そんなわけないことを確信して迅雷は問う。
 これまで何度か挑発するが、相手は一言も発してこない。

 厄介な相手だ。
 手の内も殆ど見せないし、情報を欠片もこぼさない。

「ん?」

 狩猟者が構えを解く。

 と同時に、その背後に赤いリボンにその両端を括られた空間の隙間が発生した。

「あん?」

 迅雷が驚く間もあればこそ、狩猟者はその隙間へと跳躍する。

 瞬く間の出来事であった。

 結界内に一人取り残された。
 先程までの気配も殺気ももう感じられない。

「逃がしたか……いや、見逃されたか?」

 そう独りごちる。

 しかし、あの狩猟者の姿は高町勇治が確認したはずだ。
 あのヘンテコな空間はあれの能力だろうか?

 迅雷はそんなことを考えながら、慌ただしく結界内に入ってきた使い魔のウィルに治療を任せる。

「しかし、お前も訓練では俺がどんだけ傷を負っても気にせんくせに、何だその顔は」

「グスッ、く、訓練と実戦は違います! マスターが死んじゃうかもしれないんですよ!」

 鼻水を垂らしながら涙を浮かべる使い魔を嗜める。
 一応、そんな形でも彼女は安堵しているのだが。

『戦闘終了早々で悪いが、任務は中止だ』

 と、上司からの通信が入る。

「中止とは?」

『キラの所在地が変わった。どうやら今のヤツは足止めが役目のようだ。まあ、キラの後ろにあるのが『フェアリー・ガーデン』と判明した。ついでに所属している転生者の能力も割れた、上々だよ』

 疑問符を浮かべる迅雷にリーゼフランが解説する。

「ならいいんですがね。ところで……」

 ふう、と息を付き迅雷が続きを言いあぐねる。

『ああ、直ぐに帰ってこなくてもいいぞ。具体的には明日いっぱいは』

 ニヤニヤしながらリーゼフランが告げる。

「感謝します」

 話のわかる上司に、迅雷は心底感謝した。




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