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No.28418の一覧
[0] 【ネタ】僕「なんかQBみたいっすね?」神「効率的だろう?」【リリカルなのは】[タナカ](2011/06/26 14:01)
[1] 2話 「経験は大事、というお話」[タナカ](2011/06/26 14:01)
[2] 3話 Q:転生者はどんだけいるの? A:108人[タナカ](2011/06/20 16:03)
[3] 4話 いうなれば主人公は、マサルさんのフーミン、銀魂のメガネポジ[タナカ](2011/06/26 13:55)
[4] 5話 原作に登場するはずだった人たち、他[タナカ](2011/06/26 13:52)
[5] 6話 今回、名前を考えるのに一番時間が掛かった[タナカ](2011/06/26 14:08)
[6] 7話 一応、量産型にも性格設定はしてある。[タナカ](2011/07/03 17:47)
[7] 8話 カウントダウン開始[タナカ](2011/07/03 18:28)
[8] 9話 Credens justitiam[タナカ](2011/07/04 21:07)
[9] 10話 ニコポとはかように恐ろしいものなのだ[タナカ](2011/07/07 21:26)
[10] 11話 漸く主人公にも陽の光が、と思ったがそんなことはなかった[タナカ](2011/07/11 15:36)
[11] 12話 覚醒のゆきの、留守番の勇治[タナカ](2011/07/16 13:27)
[12] 13話 「ただいま」[タナカ](2011/07/19 21:45)
[13] 14話 A's編終了のお知らせ[タナカ](2011/07/23 19:25)
[14] 15話 オリ主で厨二の邪気眼[タナカ](2011/07/26 16:49)
[15] 16話 閑話みたいなもの[タナカ](2011/08/08 14:52)
[16] 17話 その頃、世界の裏側で[タナカ](2011/09/04 20:05)
[17] 18話 きっとターニングポイント[タナカ](2011/12/08 12:34)
[18] 19話 嵐の前の静けさ[タナカ](2011/12/30 18:46)
[19] 20話 「フリーダム壊滅作戦・上」[タナカ](2012/01/03 07:16)
[20] リリカルなのはTRPG・ルールブック 1/3改訂[タナカ](2012/01/03 08:05)
[21] ・転生者一覧(20話終了時点)[タナカ](2012/01/03 08:10)
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[28418] 12話 覚醒のゆきの、留守番の勇治
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/16 13:27


「ところで、なんで全時空平和委員会なのに局員って呼ばれてるんすか?」

「んー、ほんとどうでもいい理由なんだが、会員って響きが不評でな」

「……はぁ」

「で、全平和会『本局』局員、『地上支局』局員ってことで、それまで通り局員って呼ぶのが慣例になった」

「ほんと、どうでもいいっすね」






《転生者一覧が更新されました》





【ロベルト・ナカジマ】New!

年齢:33歳(/100歳)New!

・出身:孤児院(-30P)New!
・SSSSランク結界魔導師(300P)New!
・攻撃魔法使用不可:→SSSSランク結界魔導師(-200P)New!
・マルチタスクLv10→50(30P)[限界突破]New!
【鉄壁:魔法や武器に付加された効果を無効化する】[限界突破]New!

現在地:第97管理外世界New!







 僕たちが海鳴から逃げ出してだいたい1日が経過した。

 リーゼフランさんとの会話の後、アースラ艦長のロベルト・ナカジマ提督と会い挨拶を交わした。その際『転生者一覧』が更新された。

 その後、何だかんだで疲れていた僕は用意されていた部屋で寝ていたのだが、『転生者一覧』の更新情報でたたき起こされることとなった。

 なんと、死んだはずのユージンさんの情報が更新され、転校生ズが2名も死亡するという異常事態である。

 早朝にたたき起こされた僕は、大急ぎで迅雷のオッサンの元へ駆ける。
 とはいえ、オッサンがどこにいるのか知らないので、そのへんの人に聞く。

 親切な使い魔さんが、訓練室にいることを教えてくれた。
 というか、この船使い魔以外のクルーが殆ど居ない……どういうこと?

「オッサン!」

 と、訓練室に来たのだが、現在入室厳禁と出ている。
 どうしたものかと、入口でウロウロしていると褐色の使い魔の女の子がこちらへやってくる。

「現在、マスターは訓練中です。ご要件があればお伝えしますが?」

 どこかエレノワールさんに似た女の子にそう言われる。

「え、えーと。う、海鳴の転生者が2人も死んで、ユージンさんが訳の分からないことに……」

 いかん、自分でも何言ってるのかわからん。

「っ! はい、畏まりました」

 と、使い魔さんが急にビクッしたかと思うと、訓練室の方をむいて頷く。

「勇治さま、こちらに。マスターが出られるまでもう暫くかかりますので」

 そういって、彼女は僕を控え室のようなところへと連れて行く。

 その控え室のような部屋には、彼女の他に3名ほどの使い魔がいた。

「えーと……」

 名前は? と尋ねると、彼女はウィルと申しますと答えてくれた。

「ウィルさん、今までこの中で制服着た人って迅雷さんとロベルトさんしか見てないんだけど……」

 昨日会った3人は、タキシードに聖衣に和服だ。
 後は使い魔数名と遭遇したのみである。

「はい、仰られるとおり、現在アースラに乗艦している人間はあなた方お二人を含めて、6名となっております」

 やはり……

「このアースラは対転生者用に、同じく転生者及び全平和会所属の使い魔のみでクルーが編成されております」

 というと、彼女たち使い魔には洗脳タイプのスキルは効かないらしい。理由は不明だが。

 ドゴォッ!

「うえぃ?」

 と、そんなことを話していると、隣の、おそらく訓練室だろう部屋から衝撃と共にすさまじい音がする。

 僕が驚いていると、ウィルを含めた使い魔たちが慌しく動き始める。

「……? うおぁ!」

「おう、待たせたな」

 プシューと扉が開き、真っ赤に燃えるオッサンが片手を挙げ気軽そうに声をかけてくる。

 が、血まみれ、というか火まみれである。
 ウィルさんが慌てながら治療魔法をかけている。

 これが『熱血』、海鳴で見たときも思ったが、とんでもないスキルだ。







「なるほど、そりゃ訳わからんなぁ」

 僕の説明にオッサンが頷く。
 あの後、10分ほど治療やら着替えやらで待った後、転生者一覧の情報を伝える。

「特に、ユージンさんの【守護霊:アリサ・バニングス】ってどういうことでしょう? まんま、守護霊になったって考えていいんですかね?」

「うーん。正直、生まれてこの方幽霊なんぞ見たことねえしな。百聞は一見にしかずとも言うし、見てみないと判断できんな」

 ですよねぇ、と僕が同意した時である。

『待たせたな』

「いえ、待つほど時間はたっちゃいませんぜ」

 リーゼフランさんが通信を繋げてきた。

『一通り聞いた。海鳴で動きがあったようだな』

「ええ」

 僕は同意する。

『……作戦を前倒しする。お前たちの準備が整い次第、出撃だ。いけるな?』

「勿論」

 彼女の問いに、オッサンは力強く頷いた。

 それから5分後、慌しく集合したオッサンたち4人と使い魔4名はリーゼフランさんの指示の元、出撃していく。
 僕はというと、艦橋にて転校生ズの生死判定のお仕事である。

 まあ、僕が下に行ってもやることないから仕方ないんだけど。








 ルミカ・シェベルが使い魔と共にバニングス邸に着いたときには、全てが終わったあとであった。

「誰よ、アンタ?」

 封時結界内にいるアリサ・バニングスを見て首をかしげる。
 しかも、その背には3mはあろうかという炎の翼が展開している。

 そして、無茶苦茶こちらを警戒している。

 更に、この場に他の転生者の気配は感じなかった。

「えー、うー、あっ、そうです。私、八神迅雷の同僚でルミカ・シェベルというものです」

 こんな異常事態、『フリーダム』の連中とやりあっている時でも無いのに、とルミカは焦る。

 既に死んでいるはずのユージン・バニングスとやらに異変が起こり、この地を牛耳る転生者に2名も死者が出たので何かがあったのは間違いないのだが、どうやらここでまとめて何かが起きたらしい。

「はやての?」

 ルミカの言葉に、親友の叔父の胡散臭い顔が脳裏に浮かび、アリサの警戒がいくらか和らぐ。

「はい。あっ! それと、高町勇治、ゆきの両名も保護しています」

 そういえば、と高町家の転生者も保護していたのを思い出す。

「勇治たち? そう、よかった……」

『アリサ、この人たちは敵じゃなさそうだ』

 と、アリサがホッとした表情を浮かべ、彼女の胸元に輝く緋色の宝石から声がすると共に、背中の炎の翼が消える。

「……」

 幼少時から剣を振るってばかりいたルミカは、一言で言うと学が足りない。
 この状況から、何が起こったかを察するのは不可能であった。

「マスター」

 と、使い魔のエストがアースラからの通信をルミカに知らせる。

 どうやら、高町家に向かったペンドラゴンが苦戦しているらしい。
 まあ、苦戦するのがあの老人の癖みたいなものだ。

「エスト、後はよろしくね」

 後のことは全て使い魔に一任し、彼女は転移のための魔方陣を展開した。
 







 その時、天宮聖(あまみやひじり)と龍閃光峨(りゅうせんこうが)の2人はバニングス邸に赴く直前であった。

 彼ら2人に虎桜院闇守(こおういんやみもり)を加えた3人は、近いうちに他の転生者の排除に乗り出そうと手を組んでいたので、闇守からの定期連絡が途絶えたため様子を見に行こうとしていたのだ。

 海鳴全域を覆う封時結界が張られたのは、彼らが丁度月村邸の玄関へと出たタイミングである。

 訝しむ2人の前に、月村家担当の転生者とその使い魔が姿を現した。

 黄金の鎧を身に纏うカウリと、仮面で顔を隠した使い魔のシアの2人である。

「ほう、タイミングよく2人ともか」

 そして、情報では『無限の剣製』持ちの2人だ。
 5年前のエミヤズの本局襲撃時に居合わせなかったカウリとしては、是非ここで予行演習といきたい。

「おいおい、冗談きついぞ。なんだそりぁ?」

「プクク、今どき聖闘士とかないわー」

 仰々しい黄金の鎧に、聖と光峨は其々呆れた声を上げる。

「語るべき言葉はない。参る!」

 その2人の様子に特に思うこともなく、カウリはそれだけ言う。

 同時に、必殺の手刀を振りかぶる。
 聖闘士にこの程度の間合いなど、無いも同然であった。

 一瞬のうちに間合いを詰め、それを振り下ろした。

「え?」

「まずは一人!」

 その挙動に殆ど反応できなかったものの、本能的に受け止めようと展開した干将・莫耶ごと天宮聖はその手刀に切り裂かれる。

「ちょ!」

「二人!」

 続けざま、返す一刀で動きの止まった龍閃光峨を切り裂いた。

 そしてそのまま2人とも光の粒子となって消えてゆく。

「お疲れ様です、カウリ様」

「……こんなものか。他の状況は?」

 予行演習にもならん、と吐き捨てる。

「はい、ルミカ様はアリサ・バニングスを無事確保された模様。迅雷様は戦闘中。ペンドラゴン様の状況が不利なので合流するよう本部長より、御達しが」

「うむ。お前はこの場の後始末を」

「畏まりました、カウリ様」

 カウリは状況を確認後、使い魔のシアに月村家の面々の保護を指示し、テレポートで高町家へと向かった。





《転生者一覧が更新されました》





【天宮 聖】

年齢:死亡(/15歳)New!

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:天宮聖(15P)

現在地:第97管理外世界





【龍閃 光峨】

年齢:死亡(/15歳)New!

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:龍閃光峨(20P)

現在地:第97管理外世界








「おいおい、こいつは流石に儂がハズレすぎじゃろ……」

 海鳴に降り立ったペンドラゴンを出迎えたのは、鳳凰院朱雀(ほうおういんすざく)とカイ・スターゲイザーの転生者2人と、高町士郎、恭也、美由希ら御神流の剣士3人である。

 その上で、余裕を崩さず愚痴を言う。

「ご主人、あの3人では手加減できない」

「ま、そうじゃがな」

 使い魔のエペソがぼそりと呟く。

 事実、その通りである。
 迅雷はいうに及ばず、ルミカも純粋な技術ではやはり劣る。
 カウリも単独では加減が効かないだろう。

 そして、当然ではあるがリーゼフランはこのことを織り込み済みで、ペンドラゴンをここの担当としている。

 まあ、あの女狐のことだ、一石二鳥にも三鳥にもなるよう手を打っているのだろう。

「ほれ、手加減してやるから……本気でかかってこい!」

 皺だらけの口元に、ニィっと挑発的な笑みを浮かべ宣言した。








 八神迅雷は昨日逃げ出さざるを得なかった八神家の前に、万感の思いで帰還した。

 既に目の前の2人の転生者、東樹(あずまいつき)と神薙北斗(かんなぎほくと)は戦闘態勢だ。

「よお、リベンジマッチといこうや」

 お前ら、殺すわ……と壮絶な笑みを浮かべる迅雷。

「ハッ、どこに雲隠れしたかと思えば、自分から死にに来るとはな!」

 迅雷の着る陸士の制服に、悪い予感が当たったと内心舌打ちする樹。

 が、ちょうどいいタイミングでの新たな驚異の登場だ。
 切り捨てどきと判断していた3人の転生者の使い道が出来たと、皮算用を立てる。

「なんの対策もしていないと思ったか! この剣は炎を喰らう魔剣よ!」

 そして、この男に対しては万全とはいかないまでも対策はしてある。

 昨日、この男が宝具を溶かしたことから、所謂悪魔の実の自然系の能力者と予測を立てたのだ。
 原典における炎系のそれは、メラメラの実かマグマグの実の2つ。
 一応、不死鳥の炎も考慮にはいれたが、傷から上がる炎が赤かったことから候補から外している。

 タネさえ分かれば、英雄王の蔵は万能に近い対応力を持つ。
 炎を吸収する魔剣を用意した今、敗北の可能性はない。

 樹はそう確信していた。

「へぇ、いいぜ。やってみな」

 対する迅雷は不敵に笑う。

「その余裕、後悔するぞ!」

 樹はその態度に悪魔の実の能力者であるという確信を深めた。
 と、同時に勝利への確信も得る。

 そう無防備に近づく男に、魔剣を袈裟斬りに振り下ろした。

 ジュ!

「なん……だと……」

 炎を喰らうはずの魔剣は、迅雷の体に食い込んだ瞬間、切っ先から蒸発していく。

 振り切った魔剣は根元をわずかに残すのみ。
 対する迅雷は切られた傷口から炎を噴き出すだけだ。

 樹は呆然と溶けた剣を見つめる。

 純粋に魔力量の問題であった。
 樹の魔力値は現在およそ6000万、これでも原作でのこの時点でのなのはたちの10倍以上あるのだが。

 対する、迅雷の魔力値は約250億で文字通り桁が違う。
 かつて天鏡将院八雲の『幻想殺し』を正面からぶち抜いた圧倒的魔力量であった。

「悪いな、俺の炎はその剣風情じゃ、消せねぇよ!」

 迅雷は樹の顔面を掴む。

「は、放せ! 放せぇ!」

「爆熱!」

 暴れる樹に構わず叫ぶ。

 それは己が『熱血』を手のひらに収束して放つ、超高熱アイアンクロー。

 ボンッと樹の頭部が爆発し、その四肢が力なく垂れた。

 3000度の高熱で頭部を焼かれたのだ、普通に絶命である。






《転生者一覧が更新されました》





【東 樹】

年齢:死亡(/10歳)New!

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・王の財宝(10000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:東樹(10P)

現在地:第97管理外世界





 北斗は目の前で起きた事が現実とは思えなかった。

 この男が厄介な転生者であることは昨日の時点でわかっている。
 おそらく自然系の悪魔の実の能力者、自分の北斗神拳もオーラ系の技以外はほぼ通用しまい。

 その対策に、樹はほぼ万全の用意を整えていた。
 あの魔剣だけではない。
 他にも対炎用の幾多の装備を用意していたのだ。

 それが、相手に乗せられたとはいえ何もできずに終わるなんて。

「そんな、ウソだ……」

 北斗にとって目の前のそれは到底受け入れられない現実であった。

 樹の体が光の粒子となって消えていく。
 それが、紛れもない現実であった。

 迅雷はそれを一瞥し、北斗にバインドをかけるようウィルに指示する。

 自失呆然となった彼は抵抗もなく拘束された。

 それを横目に八神家へと入る迅雷。
 ソファーにははやてが寝かされており、兄夫婦は姿が見えない。
 が、死んではいない。どうやら寝室に放り込まれているようだ。

「ふぅ、どうしたもんかね」

 昨日の死環白とやらで、現在はやては誰かを強制的に愛するようにされている。
 これが洗脳系スキルなら使用者をどうにかすれば、何とかなるのだが。
 はたして北斗神拳の業がどこまで持つか、スキル持ちが現段階で北斗しかいないためなんともいえなかった。

 そして、迅雷個人としてもはやてが誰かに愛情を向けるのを見るのは精神衛生上宜しくなかった。
 特に、こいつらに愛情を向けるなど、考えただけでも憤死しそうだ。

「ん……ジン、さん?」

 と、考えているうちにはやてが目を覚ます。

「おう、はや……って?」

「ジンさんっ! 大好きやー!」

 そう叫び、ソファーから迅雷に向かって飛びつくはやて。
 うおっ、と慌てつつもしっかりはやてを受け止める。

「落ち着け、はやて! お前は今正気じゃない!」

「いやいや、むっちゃ正気やで? その証拠に、キスしたいくらい大好きや!」

 んー! んー! とキスを迫るはやて。
 それをどうにか抑えながら、庭へと向かう。

「おい! おまえ、これを何とかしたら命だけは助けてやるよ」

 やたらとキスを迫る子狸を止まらせながら、迅雷は北斗に言う。

「え、えっと、記憶を消す秘孔と突けば……」

 結局、あのまま寝かせっぱなしだったと、忙しかったとはいえすっかり忘れていた北斗が対処法を答えた。

「よし、じゃあさっさとやれ」

「は、はいぃ!」

 バインドを解かれた北斗が小走りで2人に近づく。
 ハァ! と原典でバットがリンにしたように秘孔を突く。
 はうっ! とはやてが再び気絶した。

 迅雷ははやてを再度ソファーに戻すと、二カッと笑顔で北斗に近づく。
 北斗も愛想笑いを返す。
 感謝するといわんばかりに勢いよく両手を握る。

 助かったと、安堵の息をつこうとしたその瞬間、両手に激痛が走る。
 目を下にやると、握られたその手は真っ赤な手に覆われ、肉の焦げる嫌な匂いと共に煙をあげて崩れていく。

「手、手がぁ! 手がぁー!」

 焼け落ちた両手を踊るように振り回す北斗の顔面を、迅雷は両手で挟み込むように掴む。

「命だけはといったが……あれはウソだ」

 大事な、俺の命より大事なはやてを、こんな目にあわせたてめえは絶対に許さん。

「ヒ、ヒァー!」

 迅雷は悪鬼のごとき表情を浮かべ、そのまま両手でつかんだ北斗の顔に、全開の力を叩き込んだ。






《転生者一覧が更新されました》




【神薙 北斗】

年齢:死亡(/19歳)New!

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・北斗神拳(300P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:神薙北斗(20P)

現在地:第97管理外世界











      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










 海鳴にて全平和会の転生者と、転校生ズの戦闘が始まった頃、高町ゆきのは与えられた一室のベッドの上で体育座りでメソメソしていた。

「おとうさん……おかあさん……」

 勇治と異なり、覚醒後もすぐさま高町家に溶け込んだゆきのは、根本的な目的を除いて見た目相応の精神状態になっていった。
 この辺は同性の転生者がいなかったことも影響している。

 原作開始時点においてゆきのは、『ユーノ君のお嫁さんになる』ことと未来知識を持っていること以外は、完全にこの世界の9歳児と変わらないメンタルになっていた。

 そして始まらない原作。
 山田三郎との邂逅を経て、目標を見つけたものの進展しない毎日に心を蝕まれていた。

 そこに今回の事件である。

 運良く勇治と行動を共にしていたからこの程度ですんだが、もし一緒でなかった場合は精神崩壊、いや、為すすべなく転校生ズに殺害されていただろう。

「いやだよ……こんなのいやだよ」

 ただでさえメンタルが後退している所に今回のコレなので、自分が転生者であるということすら忘れかけていた。

「誰か……助けてよ……」

 そうして呟く。

 助けを求める言葉を口にした。

『呼んだか?』

 と、胸元から声がした。

「おうさまっ!」

 その声は、ゆきのがほんの一時だけ話した相手。
 それでも一度たりとて忘れることはなかった相手。

 『おうさま』こと、山田三郎その人である。







 胸元から紐につないでいたデバイスを取り出す。

 それは金色の光を点滅させ、ゆきのに語りかける。

『どうした、高町ゆきの? お前にできるのは、今そこで泣くだけか?』

「でも……わたしに何ができるの?」

 何もできないよ、と自嘲の笑みを浮かべる。

『何が、だと? 笑止。お前なら何だってできるはずだ、高町ゆきの』

「わたし、何もできなかったよ?」

 できるという彼に、できなかったと泣き笑いの顔で答えるゆきの。

『何かを成し遂げようとするものにしか、何かは成せん。何もできなかったのではない、お前はまだ何もしていないのだ』

 彼は自ら動かぬものに何ができようと笑う。
 それでも、なぜか動き出せばゆきのが何でもできると信じているようだった。

「……わたしでも、何かできる?」

 果たして、自分にそんな大層な力があっただろうか? と疑問符を浮かべながら点滅するデバイスを見る。

『そうだ。高町ゆきの、それでも自分が信じられないというのなら、我(オレ)の信じたお前を信じろ』

「おうさまの、信じたわたし?」

 一度会っただけのこの人に、自分は何かできただろうかと疑問の声を上げる。

『そう、我(オレ)が信じたお前だ。我(オレ)が同胞を信じられなくなっていた時、お前が希望を与えてくれたのだ。利用するのでもなく足蹴にするでもなく、ただユーノ・スクライアを案じたお前に希望を見たのだ』

 あの時、山田は10人近くの転生者と出会いながら、そのすべてが所謂最低オリ主──しかも『無限の剣製』持ちが4人──だったこともあり、同じ転生者というものに絶望しかけていた。
 あの時、ゆきのと出会わなければ、転生者全てを狩る存在に成り果てていたかもしれなかった。

 故に、山田三郎にとって、高町ゆきのは特別であった。

「おうさまの、信じるわたし……」

 あの時のアレは、『おうさま』が言うほどキレイな理由ではない。
 それでも、大好きな『ユーノ君』が心配だったのは本当だ。

「わたしの、今できる、コト」

 そう呟きながら、ベッドから降りる。
 両の足でしっかりと立つ。
 その瞳には、力が、意志が形になろうとしている。

『そうだ、先ずは立ち上がれ。全てはそこからだ』

 何ができる?

 何だってできる!

 『おうさま』がそう信じてくれた。

 今の『わたし』なら、何だってできる!

「お父さんを、お母さんを、お兄ちゃん、お姉ちゃん、なのはを……アイツらから取り戻すんだ!」






《転生者一覧が更新されました》





【高町ゆきの】

年齢:9歳(/100歳)

・空戦Sランク魔導師(50P)
・マルチタスクLv10(30P)
・容姿:美形(20P)
・男運:悪い(-30P)
・恋愛:特定(5P)
・恋愛:一目惚れ(15P)
・恋愛:ユーノ・スクライア(10P)
【天元突破:気合を魔力に変換】[限界突破] New!

現在地:第97管理外世界





 部屋を飛び出したゆきのは駆ける。

 ここがアースラというのは、部屋を出たときに気がついた。
 であれば転送ポートは艦橋か転送室。

 偉い人の許可も取りたかったので艦橋へ向かうことにする。

「すみません! お父さんたちを助けに行かせて下さいっ!」

 親切な使い魔の人に道を教わり、艦橋にたどり着くなりゆきのは叫ぶ。

「ゆきの? 平気かって、何言ってんの!?」

 唐突に現れた妹に、兄勇治は元気な姿にホッとするが、すぐさま突っ込む。

「高町ゆきのさん、安心して欲しい。現在、我々の精鋭が高町家を、いや海鳴をあの胡乱な転生者共から取り戻すべく奮闘中だ。もうじき朗報も入るだろう、君も勇治君と一緒にここで待っていてくれたまえ」

 と、ロベルトがやんわり拒否する。

「待てません!」

 が、即座にゆきのも拒否。
 ロベルトの顔が引き攣る。

『高町勇治、先程妙な顔をしただろう? 君の妹に何があった?』

 と、リーゼフランは勇治の表情の変化を見逃さず尋ねる。

「……こいつ、限界突破してます。気合で魔力が上がる無茶苦茶なやつです」

 隠しても無駄と思い、正直に告げる。

『……ロベルト、行かしてやれ』

「おい! 正気か、この子まだ9歳だろうが!」

 転生者だ問題ないと宣うリーゼフランに、それは関係ない大問題だと噛み付くロベルト。

 二人が言い合いを始める直前、リーゼフランが勇治に目配せする。
 それに気づいた勇治は妹のゆきのを見る。

 昨日の泣き顔が嘘みたいにいい表情を浮かべている。

 はぁ、とため息一つ。

「行けよ、送ってやる」

「えっ? あ、うん!」

 勇治の言葉に一瞬疑問を浮かべるも、すぐさま理解しゆきのは転送ポートに飛び込む。

「ちょ、待て! おい、ペーネロペー! って、リーゼてめぇ、グランドマスター権限なんぞ使いやがってぇ!」

 誰一人として止めない使い魔たちに、ロベルトが貸し一つだぁ! と叫ぶ。

『安心しろ、あの子は傷一つつかずに戻ってくるよ』

「そーゆー問題じゃ、ねぇだろうが!」

 ロベルトの叫びを背に、ゆきのは勇治のゲート起動により海鳴へと転移した。














      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆














 海鳴、高町家上空──。

『さて、初陣であるな高町ゆきの。だが、臆するな。我(オレ)が補佐に付く。思い切りやってやれ!』

「うん。任せたよ、おうさま!」

 山田の憑依したデバイス、エクストバイトを起動。
 これまで何度も訓練に使ってきたが、実戦、そしてセットアップ自体初めてだ。

「エクスカベイト、セットアップ!」

『stand by ready. set up.』

 その初めても恙無く起動。
 ゆきのの身を包むバリアジャケットは、一言で言えば金ピカだった。
 そして、デバイスは左手に一体化したドリルであった。






 アースラにて──。

「うげ、趣味わりー」

 勇治は顔をしかめ、

『ドリル型のデバイスか、今のところ初めてだな』

 リーゼフランは関心の声を上げ、

「……もう、知らん!」

 ロベルトは不貞寝した。







『……高町ゆきの、起動呪文はどうした?』

「え? もう必要ないと思って」

 問題なく変身したと思ったゆきのに、待ったの声がかかる。

『必要ない? 冗談ではない! 魔法少女の変身に、呪文は必須であろうがっ!』

 所謂山田的ヒーロー像である。
 男のヒーローは不言実行(黙って助ける)、女のヒーローは有言実行(名乗りと共に助ける)という彼独自の美学であった。

「あっ! そういえば!」

 はっとした表情でゆきのが顔色を変える。
 そして、妙なところで気の合うふたりは、こんなどうでもいいところでも気が合っていた。

『うむ、次からは気をつけるがいい。さて、下も気づいた、来るぞ!』

「うん! いくよ、エクスカベイト!」

 ツッコミ不在のまま、ふたりは戦闘に思考を移す。

『yes mastar. charge!』

 ゆきのの掛け声とともにドリルが回転し、直滑降で加速していく。







「おっとー、新たなお客さんかーい?」

 丁度手の空いた状況であったカイが、デバイスの報告により上空に現れた新手に気づく。

「朱雀、ここは任すぞ」

「ああ」

 それだけ告げると、デバイスを起動。
 全身をメタリックな漆黒の鎧で覆う、基本形『漆黒の堕天使(ダーク・フォーリン・エンジェル)』モードである。

 右手のブレイドソードの柄の紫の宝玉が点灯する。

「推定Sランク魔導師、か。余裕だな」

 カイは笑みを浮かべながら飛翔。
 デバイスの補助で上空のゆきのをその視界に捕らえる。

「スターゲイト、『殲滅の死天使(ジェノサイド・デス・エンジェル)』モード!」

『……』

 カイの叫びとともに漆黒の鎧の一部が変化。
 ブレイドソードが巨大な大砲となり、そこから幾多のケーブルが背中の羽が変化したプロペラントタンクのような構造物につながっている。

「いくぞ、羽虫!」

 大砲の照準をゆきのにセット、漆黒の魔方陣がカイの足元に展開する。

「喰らえっ! 『星崩衝撃砲(スター・ブラスト・ゲイザー)』!」

 カイの巨大な銃型デバイスから放たれる漆黒の魔力光が、天を埋めつくさんと唸りを上げて昇ってゆく。







 唸りを上げ迫る漆黒の魔砲に、ゆきのは怯むことなく突貫する。

『舐めるなよ?』
「舐めないでよ?」

 本来であれば差は歴然、されど今のゆきのに限界などという言葉はない。

『此奴のドリルは!』
「私のドリルは!」

 何時しかその体は、緑色の魔力光に包まれている。

『天を衝くドリルだ!』
「天を衝くドリルだ!」

 その言葉と共に、目元を赤く光るサングラスが覆う。

「必ッ殺ゥー! ギィガァ!」

 ゆきのの叫びと共に、左手のドリルの回転が更に増し、十倍以上に巨大化する。

 漆黒の砲撃と緑色に光るドリルが拮抗したのは一瞬。

「ドリルゥー!」

 砲撃を穿って、巨大なドリルが直滑降していく。

「なんだそりゃあああああああ!」

 ありえねぇだろぉ! とカイが絶叫する。

 純粋に高町なのはのスターライトブレイカーを上回る一撃が、自身に向けて突っ込んでくる巨大なドリルの螺旋に雲散、無消していく。

「ブレイクッ!」

「クソがぁあああああ!」

 砲撃を抜け、緊急展開したシールドをも貫き、デバイスをバリアジャケットを砕きながら、巨大なドリルがカイを穿つ。

「ガハッ!」

 そしてドリルに貫かれた勢いそのままに、地面に叩きつけられる。

 その衝撃か、はたまた魔力ダメージか、カイの意識はそこでブラックアウトした。









 捌く。捌く。捌く。

 御神流剣士の、神速を交えたその攻撃を。

 捌く。捌く。捌く。

 3名の御神流剣士の連続攻撃を、その老人は捌き続ける。

 初めから数合で、朱雀とカイはかえって3人の邪魔になると攻撃から外れている。

 そして、今カイは新たな乱入者により無力化された。

 が、朱雀には現状為す術がない。
 昨日殺しそこねた転生者の傍にはメイド服の使い魔がいる。
 カイを倒した相手に、二対一の不利な状況で勝てる算段ができるほど朱雀は自信過剰ではない。

 その逆だからこそ、手間をかけてまで結界内に高町家の戦闘員を入れたのだ。

 幸い、カイを倒した奴は力を使い切ったように見える。
 なんとかこの老人を3人が倒してくれれば、手の打ち様もあるのだが。

 と、朱雀が思案したときであった。

 ガガッ、キィン、といった金属音と共に目の前の動きが止まる。

「遅くなった」

「遅れました」

「遅いわい」

 三者三様の言葉、先程とまでは異なり、御神流剣士たちの一撃は老人ではなく、黄金の鎧をまとった青年と和装の少女により止められていた。

 それぞれの担当地での任務を終えた二人が合流したのである。

「なんだぁ?」

 その光景に朱雀が目を剥く。

 トッ!

「あっ?」

 その一瞬であった。
 朱雀の目にはペンドラゴンの体がその場から消えたように見えた。

 ただの一歩で10m以上の距離が踏破される。

 自分の懐に瞬間移動でもしたかのように、老人が正拳突きの構えをとっている。

 ペンドラゴンという男が50年以上かけて磨きあげた、基本にして最強最大の技。

 その名も、『極・中段正拳突き』!

「ひいっ!」

 咄嗟に張ったシールドに、放たれた拳がぶつかり、

 パァン!

 耳を劈く衝撃音と共に拳はそこで止まる。

「うぼぁ!?」

 拳は確かに朱雀に触れなかった。

 しかし、彼はくの字なって水平に吹き飛ぶ。

「……儂の、全オーラをこめておるんでな。拳の当たる当たらんはあまり関係ない」

 正拳突きの軸線上100mほどが命中範囲となる。
 が、殴れるものなら殴りたいペンドラゴンであった。

 そして撃ち込んだオーラは、対象の内部で一旦爆縮され、直後に連続する核爆発の如き圧倒的破壊を引き起こし、その体を数倍に膨脹させる。

「う、うぼぉおあああああああ!」

 朱雀は断末魔と共に、爆発四散した。






《転生者一覧が更新されました》





【鳳凰院 朱雀】

年齢:死亡(/15歳)New!

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:鳳凰院朱雀(25P)

現在地:第97管理外世界







「えーと、ゆきのがやったカイってのを除いて、全滅です」

 勇治はゆきのの行動に冷や冷やしながら、リーゼフランに一覧の情報を逐一伝える。

『フム、まあこんなものか。生き残りは……そういえば初期からのオーバースペック・デバイスには興味があるな、技研に送ればカタギリも喜ぶ。本体は、生かさず殺さずで……まぁ、極東に任せるか』

 などと物騒なことを呟きながら、彼女は勇治にご苦労とねぎらう。

 アースラ艦長のロベルトは艦長席で不貞寝している。

 こうして、海鳴を──たった1日であるが──混乱に陥れた転生者たちは、自分たちがしたのと同じように僅か1日で鎮圧された。

 後に、『フリーダム・ゾート』事件と呼ばれる事件の顛末である。




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