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No.28399の一覧
[0] 【ネタ】友達がいなくて昼休みが辛い……【オリジナル】[トワイライト](2011/06/17 02:48)
[1] 幻の妹が部屋にいて辛い……[トワイライト](2011/06/21 01:13)
[2] 屋上が結構汚くて辛い……[トワイライト](2011/06/24 15:54)
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[28399] 屋上が結構汚くて辛い……
Name: トワイライト◆246d0262 ID:13e7fc51 前を表示する
Date: 2011/06/24 15:54
翌日である。
翌日――俺が高校生活初めての友達を作った次の日。
昨晩の瞑想もあってか、気は体中に充実し精神的なコンディションも整っていた。
絶好の友達作り日和(語呂悪いな……)と言えた。
朝食をバリバリ食べ、意気揚々と家を出る。
青空の下でサンサンと輝く太陽も、決意を新にした俺を祝福しているようだった。
空を仰ぎ、気合と共に声を出す。

「――今日からが俺のレジェンド(伝説)のプロローグ(始まり)だッ!」
「ねえママ? あのお兄ちゃんレジェンドがプロローグらしいよ」
「そうね。――ふふ、私達は新しい歴史の始まりを目にしているのかもしれないわね、あなた?」
「そうだねママ――傍観者たる私達はただそれを見守るだけだ」

うわー……誰もいないと思ってたのに、また変な親子に見られてたわー。
しかも昨日の親子だわー。
出勤前のパパも一緒だったわー
同じアパートの住人だったわー。



■■■


俺が初めての友人を作り、レジェンドをプロローグしようが、クラスでの扱いが変わるわけではない。
今日も今日とてクラスメイトからはいない物扱いされ、午前の授業を過ごす。
体育が無い日はいい。
あの破滅の言葉『ハイ、二人組作ってー』が無いからな……。
あれ考えた奴今すぐ死なないかな……?

さて、午前中の授業も終わり昼休みになった。
俺はクラスメイトの友達力高めの連中が、机を連結させる音を聞きながら、教室を出た。
そのまま二つ隣の井本さんの教室へ。
扉から溢れ出てくる、購買もしくは学食の行く連中を避けながら、教室の中を覗き込んだ。

「……んー」

この教室も俺のクラスと同じく、数人の生徒が集まりくっつけた机でコロニーを形成している。
そのコロニーから外れる様に、教室の隅。
井本さんがいた。

「うわぁ」

思わずそんな声を出してしまうほど、井本さんの状況は悲惨だった。
まず目が死んでる。
そして目が死んでる。
最後の目が死んでる。
つまり目が死んでるのだ、オーバーキル。

井本さんの死んだ魚の様な視線は、ふらふらと教室を彷徨っている。
楽しげに食事をするクラスメイト達を。
決して届かない物を見るかの様に、自嘲気味に微笑みながら見ている。
容姿が快活そうな少女なだけに痛々しい。
誰か声掛けてやれよ……かわいそうだろ。
思わず目から涙してしまう。
と、よくよく考えたら、俺もあんな状況だという事に気づいた。
そう考えると、涙も倍出てくるのだった。

滲む視界越しに井本さんを見ていると、覇気のない動きで鞄から弁当箱と思われる包みを取り出していた。
きっと一人で寂しく頂くのだろう。
俺は井本さんの携帯にメールを送った。
内容は『扉を見るべし』。
井本さんの机の上にある携帯が振動、相変わらず覇気のない動きで携帯を開き――パッと表情が華やかになった。
満面の笑みが浮かぶ。
そして視線は俺がいる場所へ。

「や――!」

俺を見るけるやいなや、立ち上がり教室に響き渡る大きな声をあげる。
そしてその大声にクラスの視線が集中する。
それに気づいた井本さんは、じわりを顔を赤くして、

「や……やっぱり今日はいい天気ですから、お外でご飯を食べようかなー……なんて」

と言ったのだった。
そしてそれぞれの雑談に戻るクラスメイト達。
恐ろしくリアクションがないな……。
誰か一人くらい何か言ってやれよ……。

あまりに悲惨な状況。
俺は井本さんに向かって、こっちに来いと手招きした。
そのまま廊下へ。

「は、恥ずかしかったです……」

教室から出るや、真っ赤な顔を覆う井本さん。
そりゃあれだけ大声出した上に、クラスメイトからはノーリアクションだったからな。
恥ずかしいわ。

「そ、それで……何か用ですか?」
「昼飯はいつも一人で食べてるのか?」

俺の言葉に、井本さんの顔に影が差した。

「ええ、まあ……はい。入学式からずっとです。カクテルパーティー効果って怖いですよね……あんなに騒がしい教室なのに、自分に関する話題だけはハッキリと聞こえちゃうんですから……。『一人でご飯食べておいしいのかな?』『声かけなよー』『やだー』『ふふふ』みたいな会話で私のMPはボロボロですよ」
「大変だったな……」

本当に。
他人事じゃないから困る。
俺の場合、そのカクテルパーティー効果以前の問題で、自分の話題なんて微塵もされないからな。
朝、俺が教室に入ってきても、誰も視線を向けないっていう。

「一緒に食べる相手はいないんだよな?」
「……友達いないですからね。あっ、でも携帯に家族の写真を写したりして食べると、一緒に食べてるみたいで――」
「……」

よく今まで生きてこれたな、この小動物……。
ストレスで禿げるか、エスケープフロムスクール(退学)、E・J・K(Employment Jitaku Keibiin)しなかったことは賞賛に値する。
いや、昨日の奇行を見る限り、それも時間の問題だったかもしれないが。

さて、用件を告げよう。
俺は右手に持った弁当の包みを見せた。

「俺と一緒に昼ご飯を食べないか?」
「……?」
「いや、そんな意味が分からない、みたいな顔で首傾げられても。友達いない同志で一緒に飯食おうぜ、って話なんだけど」
「……んーっ! むぃー! い、痛ひ……」
「そりゃそんだけ頬引っ張ったらな」

急に自分の頬っぺたを引っ張る井本さん。
白い頬に赤みが差す。
どれだけ強く引っ張ったんだ……。
というより、何故いきなり頬を?

「ゆ、夢じゃないんですよね!? わ、私と一緒にお昼ご飯を食べようって……嘘じゃないんですよね!?」
「本当だけど」
「ほ、本当に……ほっ、本当にですか!?」
「……あ、ああ」
「嘘じゃないんですよね!? 着いて行ったら、私を指差しながら『ぷぷー、アイツ本当にきやがった!』『マジウケル!』『超ヤバス! 10000ガバスレベルだわ!』って言う人達に囲まれたりしないですよね!?」
「……」
「……あ、あの『しつこいなコイツ……やっぱ一人で食べるか』……みたいな目で見てませんか?」
「俺の辞書に<しつこい>という言葉は無い」

何か弁当に関する嫌なトラウマでもあるのか……?

「い、一緒に……一緒にお昼ご飯……」

どれだけ一緒にお昼を食べる友人に焦がれていたのか。
目の前の井本さんは、思わず微笑ましい表情で見てしまうほど、歳相応の満面の笑みを浮かべた。

「は、はい! 一緒に食べましょう! すぐに食べましょう! 一緒に! 一人じゃなくて二人で!」

ぐいと手が掴まれ上下にシェイクハンドされる。
恐らくこの揺れで、俺の弁当はしっちゃかめっちゃかになっているだろうが、この笑顔を壊すのも忍びない。
黙っていよう。

井本さんはシェイクハンドに満足し「「す、すいませんでした!」と真っ赤な顔で握っていた手を慌てて離した。
仕切り直すかの様に言葉を発する。

「そ、それでどこでご飯を食べるんですか? ……も、もしかして教室で?」
「そんなことをしたら俺は死ぬ」

あんな友達力が充満した中で、俺達二人如きで挑んだら、多分即死する。
レベルが高すぎる行為だ。

「じゃ、じゃあどこで? 空き教室も大体は埋まってますし……」

恐らく何度か一人で食事できる場所を探したのだろう。
しかしどこへ行っても友達力保持者に占領されていた、井本さんの言葉からはそういった意味が感じ取れた。
確かにこの学校で、昼休みに一人きりになれる場所というのは殆どない。
放課後ともなれば、部活や遊びなどで無人になる空間は点々とあるが。

「あっ、もしかしてあそこですか? あそこは、ちょっと……臭いとかもありますし……で、でもっ、山田君と一緒なら――頑張れると思います!」
「頑張んなくていいから。つーか便所飯じゃないから。二人で便所飯とかないから」

グッと拳を握り、得体の知れない闘志を燃やす井本さん。
いや、いくら燃やそうが、便所飯は無いから。
しかも何度か経験があるような言い方である。
マジかよ……軽くヒくわ……。
俺だって一回しかした事ない行為なのに。

「じゃ、じゃあ一体どこで……?」
「……」

不安げに訪ねてくる井本さんに、俺はちょっと自慢げな顔でその場所を指差した。
真上――屋上へ。


■■■


「で、でも屋上には確か鍵が――」
「ほれ」
「あ、開いちゃった……?」

ポカンとした表情で、開いてしまった屋上の扉を見る井本さん。
少し誇らしい気持ちになる。
屋上へ入れることに気づいたのは、最近だ。
放課後、特にやることが無くてフラフラとやって来て開いてしまったのだ。
少しコツはいるけども。

扉を開けて屋上へと入る。
少し肌寒い風が俺達を撫でた。
冬じゃなくて良かったと思う、冬にこんな場所で食べるなんて正気じゃないからな。

「はぇー……凄いですねー。漫画とかじゃ当たり前の様にここでお弁当食べてますけど、普通は入れないですもんね」

屋上をグルリと見回しながら、興味深そうに呟く井本さん。

俺達は、日の当たらない給水棟の影に向かった。
そこに用意しておいたビニールシートをひく。

「遠足みたいですね!」

無邪気な笑顔の井本さん。
これが本来の彼女の姿なんだろう。

シートに座り、二人で向かい合う。

「お弁当に見せ合いっこしましょう! 一度やってみたかったんですっ」

こうやって何の疑いもなく俺に擦り寄ってくる子犬の様な井本さんに、冷酷な表情でこの場から立ち去ってみたいと思う俺の心の深くにある闇は一生封印しておいた方がいいと思う。
俺に子犬を虐めて喜ぶ趣味は無い。
好意には好意で答える、信頼関係の構築の基本だ。

「俺の超弁当を見たら、井本さんは失禁するかもしれないな……」
「しっ、失禁なんてしませんよぅ! え、えっちな事言わないで下さい! もー!」

Q.失禁はえっちな言葉ですか?
A.知りません。

赤面癖があるのか、頬を仄かに赤くした井本さんがバタバタと肩を叩いてくる。
この程度の下ネタとも言えない下ネタで恥ずかしがるなんて……あ、ああ、そうか。
友達いないからか……。
そ、そうか……うん。

「な、なんで『この子、社会に出たら死ぬんじゃないかな……』みたいな目で見るんです?」

社会に出ると、下ネタコミュニケーションは必須だからです。
下ネタコミュのレベルが低いと、輪から弾かれます。
……ん? 何で俺はそんなこと知ってるんだ……?
まあいいか。

「お、お弁当です! ハイ! 見せっこしましょうっ」

せーの、と自分の弁当の蓋を開ける井本さん。
中身は彩りがあり、何というか相当、弁当を作りなれた人間の製作である事を感じ取れた。

「へー、おいしそうだな」
「でしょっ? アーニャちゃんが作ってくれたんです!」
「……」
「何で急に嫌そうな顔になるんですかっ」

ほんと、何でだろう。
どれだけ旨そうでも、あのダブルピースババアが作った物だと考えると……うお、脳裏に昨日の制服バアア映像がっ!

「……うえっぷ」
「ひ、人のお弁当を見て変なリアクションしないで下さいよぅっ」

ああ、いかん……。
これは流石に失礼だな。
くそ、いつまで俺を苦しめるつもりだ、ババアめ……。

「山田君のお弁当も見せて下さよー」
「そ、そうだな……オラッ!」

脳内バアアを追い出す勢いで、自分の弁当の蓋を開ける。
ババアは消えなかったが、その代わりに目の前の井本さんがビクリと震えた。

「び、びっくりしました。……わっ、こ、このお弁当……ご飯とお芋さんだけしかありませんっ!」
「腹には溜まるぞ?」

昨日楓が持ってきた芋は、家にまだまだある。
こうやって消費していかなければ、腐ってしまうからな。

互いの弁当のオカズを交換しながら、昼食を食べる。
食事中の話題が尽きることはない。
お互い、今まで会話の相手がいなかったのだ。
喋る内容なんていくらでもある。

さて、食事も済み、昼休みもそろそろ終わる。
俺は今日の昼食の本当の用件を告げることにした。

「今日の放課後は空いてるか?」
「……へ? 放課後ですか? ――あ、空いてます! すっごい空いてます! 穴だらけです!」

猛烈に食いついてきた。
目が爛々と輝いていて、その顔を目の前まで近づけてくるので、少し怖い。

「空いてるか。なら良かった」
「ど、どこに行きます!? ゲ、ゲームセンターですか!? それとも映画に!?」
「違う」
「カ、カラオケですか!? もう『またお一人様ですか? ギターケース持って来て、練習しにきたアピールとかいいですからw』みたいな顔で見られなくていいんですよね!? やったーっ」

何やら薔薇色の放課後を想像して、万歳している井本さんには悪いが、全然違う。
俺達には遊んでいる暇なんてないのだ。

放課後、昨日の様に校内を散策し、友達力が低い人間を捜索する。
二人なら単純に捜索能率も二倍だ。
友達力が凄まじく低い井本さんには、とても期待している。
友達力が低い人間は友達力が低い人間と惹かれ合う……それは世界のサダメだからだ。

さて、問題は。

「プリクラも撮りましょうねっ! あっ、そうだ。こ、今度の連休に旅行に行くのはどうですっ? 私のお父さんが経営してる旅館があるんですよ――」

満面の笑みで遊びの計画を立てる井本さんだ。
俺達がこれから行う活動を告げたら、さぞ落ち込むだろうが……。
まあなんとかなるだろ。

今日の放課後より――友達の捜索を開始する。


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