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No.28399の一覧
[0] 【ネタ】友達がいなくて昼休みが辛い……【オリジナル】[トワイライト](2011/06/17 02:48)
[1] 幻の妹が部屋にいて辛い……[トワイライト](2011/06/21 01:13)
[2] 屋上が結構汚くて辛い……[トワイライト](2011/06/24 15:54)
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[28399] 幻の妹が部屋にいて辛い……
Name: トワイライト◆246d0262 ID:13e7fc51 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/21 01:13
「あ、明日も友達でいてくれますよね!」

中庭での会合の後、夕暮れに染まる校門での井本さんの言葉である。
今ひとつ意味が分からない、しかし井本さんの表情は必死なそれだった.

「いや、まあ普通にそうだろ? 友達ってそんな一日経ったらハイ終わり、みたいなもんじゃなくね?」
「そ、そうですよね! 明日も明後日も明々後日も――これからずっと……死ぬまで友達ですよね!」
「……」
「あ、あの……なんか『コイツ面倒くせぇ……』みたいな顔してませんか?」
「俺とお前でエターナルフレンドだ」
「ハイ!」

数分前の初遭遇から、井本さんには得体の知れない『アレさ』があることは分かった。
TIP値が高い人間には、それ相応の理由がある。
何かしらの原因が無くちゃ、友達がいないなんてことは無いからだ。
多少人格や性癖に問題があることも想定していたが……しょっぱなからキツイのを引いてしまったかもしれない。
この子が最初で良かったのか……?

「……? どうかしましたか?」

溌剌とした笑みを浮かべながら、小首を傾げる井本さん。
所々のアレな発言を除けば、小動物的な可愛らしさを備えたいい感じの子なんだが……勿体無い。

校門で別れる直前まで『夕食を家で!』と半ば病的までに誘ってくる井本さんに、やんわりと断りを入れて帰路に着く。
分かれて数秒もしない内に長文メールが届いたのには、ヒヤリとしたが、まあ許容範囲だ。
これから多くの高TIP保持者と接していくのだ。これくらいのことで挫けてはいられない。




■■■




高校生活初めての友人が出来た日、そして俺の壮大かつアドバンスな計画の始動日。
放課後の帰り道、ほぼ10分おきに届く井本さんのメールを処理しながら、これからについて考える。

この学園にはまだまだ俺の知らない、莫大なTIP所持者がたくさんいるはず。
高いTIP所持者は惹かれ合うサダメだ。
これからTIP……ああ、一々面倒だな! これからTIPのことは<友達力>って表記にしよう。

これから友達力が乏しい連中と友達になっていく。
例え友達力が乏しくても、一人や二人友達がいるかもしれない。
その友達――友達の友達とも友達になる。
そうやって友達の輪を増やしていけば、さながらネズミが子を産むが如く、友達が増えるという計画だ。
ああ、やばい!
考えるだけでも興奮してきたぞ……!
友達が輪の様に増えていく、その光景を想像しただけで、俺の胸に何か熱い物が溜まっていくのを感じた。
胸の内に溜まってきた感情を、言葉にして夕暮れに向かって叫ぶ。

「イッツアショータイム!!」
「ねえママ。あのお兄ちゃんショーが始まるって言ってるよ? 一体何が始まるの?」
「――ええ、そうね。始まるようだわ……楽しい楽しいショーが。ふふ、楽しみね」

誰もいないと思って叫んだけど、変な親子に見られてたわー。
恥ずかしいわー。


■■■


「お帰りお兄ちゃん」

家に帰ると、いつもの様に妹の幻が出迎えた。
いつもならスマイル+ただいま!のコンボをお見舞いするのだが、それは昨日までの俺。
友達がいなかった昨日まの俺だ。今の俺には友達がおり、幻なんかに頼らずともいい。
取り合えず塩……は無いので、手から波動的な物を生み出すイメージを代わりにぶつける。

「消えろ幻想! もう貴様は必要ない! ハァー! ……だが、今まで俺を支えてくれてありがとな」
「久しぶりに会った兄がヤベエ。前からヤバイと思ってたけど、ヤバサが進行しちゃってる……やっぱり友達がいなすぎて……」

……あれ?
何だ? いつもの幻想にしては、目つきが悪いな。
いつも見ている幻想なら、目をハートマークにして過剰なほどのスキンシップをしてくるのに……。
これはまるで、実家にいる本物の妹の様じゃないか。
玄関マットの上で腰に手を当て、呆れた目でこちらを見てくる楓。
もしかするともしかするのか?

「もしかして本物の楓か? トゥルー楓?」
「そうだよ。そもそも私に偽者も本物はないよ」
「何だよ本物かよ……」

やれやれと靴を脱ぎ、楓の脇を通り抜け部屋へ向かう。
部屋に入り、背後を見ると相変わらず、兄を兄とも思っていない蔑んだ目で俺を見てくる楓がいた。

「で、何しに来たんだ?」
「様子見。最近実家の方に顔出さないから、見て来いってお母さんが」
「そうかい」

溜息を吐きつつ、座り込む。と同時に携帯が震える。
またメールだ。あの井本さん、宣言通りにアドレスを交換してから数分置きにメールを送ってきなさる。
どれどれ
『お父さんです』
そんな短い文面と共に、満面の笑みでダブルピースをしたおっさんの写真が添付されていた。
知らんがな。どういう感想を送ればいいんだよ。
つーかおっさんダブルピースやめろ。

取り合えず『そうだな、お父さんだな』と送っておく。

「……」
「ん?」

携帯から顔を上げると、妹が目を細めて俺を見ていた。

「何だよ、そんなに俺を見つめて? 俺に穴でも開ける気か?」
「……どこからのクーポンメール? マ○ド? ロッテ○ア? MOS?」
「決め付けるのとかよくない」
「でも、そうでしょ? お兄ちゃん、メールを貰うような友達なんていないし。お兄ちゃんメンタルチキンだから、ジャンクフード以外のお店行けないし」
「い、行けるっつーの! 王将とかも行けるし! 言うなればばかっぱ寿司すらもな! さもなくばジャ○ンカラにだって行けるわ!」
「どんな日本語なのさ……」

ハァ、と溜息を吐く楓。
俺の携帯に友人からのメールが届くなんて考えもしない顔だ。
腹立たしい。
ここで俺がこのメールを見せれば、どうなるだろうか。
驚く顔が見れるかもしれん……あーいや、でもこのメールの量見せるのはなあ……。
精神衛生上よくないか……。
発狂しかねんしな。
つか俺が既に発狂しそうだ。
メールフォルダが井本さんの名前で埋め尽くされるのに、比例して俺の精神も磨耗して行っている気がする。
今日本物の楓に会っていなかったら、幻想の楓に溺れてそのまま人生ドロップアウトしてたかもしれない……。

「ありがとな楓」
「今の流れからのお礼の意味が分からない」
「ジュースやるよ」
「何これ多い!? 運搬車でも襲撃したの!?」

ここに来てやっと、楓が驚く顔が見れた。
ちょっと優越感。
明日の筋肉痛と引き換えに、この顔が見れたなら儲け物だ。

さて、思わず癒しを手に入れたが、俺は忙しい。
これから一人部屋で、精神を集中しなければならないのだ。
友達力を感知する為には、普段から精神を研ぎ澄ませなければならない。
故に一日一回の瞑想は必要不可欠なのだ。

「という事で帰れ」
「まだ様子見終わってないから帰らない」
「何でだよ。『お兄ちゃんすっごい元気だったよ! その元気さに充てられて私もすこぶるワンダフル! わんわんお!』とか適当に言ってればいいだろ?」
「それ多分汚染されてる。兄菌に感染してる」
「おいやめろ。小学生時代を思い出すから菌ネタは本当にやめろ」

ここで小学生の頃を回想することはない。
ただ言えるのは――子供はどこまでも残酷になれるってことだ。

――ブルブルブル。

……と、またメールか。

『美桓ちゃんです』

えー、今度は姉ちゃんか? 美人だな……つーかダブルピース好きな家族だな!
あ、続けてメール?

『美桓ちゃんはお母さんです、一応』

母親かよ……似た物夫婦にもほどがあるな。

……と、また楓がこっちを見てる。

「早く帰れよ。つーか、あれだろ? 週三回、手紙で近況報告してるだろうが。見てないのか?」
「え、見てないけど?」
「見ろよ、見まくれよ。俺字書くの苦手なのに頑張ったんだぞ? 何で見ないんだよ」
「燃やしたから」
「燃やしたのかよ……燃やしたのかよ!?」

時間差で驚いてしまった。
兄が懸命に書いた手紙をも燃やす妹がどこにいるのか? ここにいます。

「ついでに芋も焼いたけど」
「兄の手紙で芋焼くなよ!」
「手紙か、お兄ちゃんの部屋のエロ本のどっちを燃やすかで迷った」
「良い判断だったな、楓」

それ以前にエロ本の場所を把握されてるのも問題だな……。
全部を持ってこれなかったのが悔やまれる。

……と、またメールが。
『ポチmk2です』
メールに添付されていたのは、柴犬の写真。
凄い名前の犬だな……つーか、この犬もダブルピースしてやがる……。

「で、その芋がこちらに」
「お、おう……」

楓が鞄から新聞紙を取り出す。こういう差し入れは地味にありがたい。
後で暖めて食べよう。

震える携帯。
……またメールだ。

件名『メイドのアーニャちゃんです』

メイド?
メイドって言うと、あの……メイドか?
家にメイドがいるのか? 凄いな……。
どれどれ。

「うぐぅお!?」
「ど、どうしたのお兄ちゃん? 急にボディにいいのを貰った様なリアクションして……。 暴力的なまでに安いクーポンでも届いた?」

楓が何か言っているが、耳に入らない。
携帯に映る写真。
凄まじい破壊力だ……。

映っていたのは、件名通りメイドさんの写真。
そしてやはりダブルピース。
そしてババア。
明らかに60は超えたババアが、視線を上に向けた状態で、舌をテロリと唇から垂らし、ネジが外れた感じの笑みを浮かべているのだ。
吐き気がする。
何だこのババアは。俺を写真越しに不能にする気か……!?

『特技は男の人を虜にする笑顔らしいです。隣にいたお父さんは悩殺されて、失神してしまいました。もうお父さんってば(笑)』

(笑)じゃねーよ。
これ生身で見てたら、完全に廃人になるぞ。
つーかおっさん、こんなメイド雇うなよ。

「……ねえ、お兄ちゃん大丈夫? さっきから脂汗が凄いよ? そんなに大変なクーポンだったの?」
「あ、ああ……そうだな。こんなものが出回ったら、世界が終わる……そんなレベルだ」
「凄いクーポン……ビッグ○ックが2円とか?」

それは世界が終わるな。
俺はできるだけ画面を直視しない様にしつつ、メイドババアの写真を消去した。
できれば脳内からも消去したいが、一度刻まれた記憶は一生消えない。
恨むぞ、井本さん……。

楓は俺の様子がおかしいことに何か言いたそうだったが、時計を見ると立ち上がった。

「じゃ、帰る」
「え、帰るのか?」
「帰るよ。もう遅いし。塾行かなくちゃ」

来年高校受験である楓は、どの高校を目指しているかは教えてくれないが、勤勉に勉強をしている。
その勉強の時間を割いてまで、俺のところに来てくれていることを考えると、かなり嬉しい。
まあ、いくら嬉しくても態度には出さないのだが。
シスコンとか気持ち悪いしな。

楓は鞄を掴むと、玄関へと向かった。
そのまま靴を履き、玄関の扉を開け――

「友達がいないからって、近所の子供に『ぼ、ぼくと友達になってよっ』なんて迫らないでね? そんなのがニュースで流れたら、私耐えれらいから……笑うの」
「もう帰れ。すぐ帰れ。今すぐ帰れ」
「言われなくても……じゃ」

そして楓は去っていった。
来てくれて嬉しかったが、最後の台詞で台無しだった。

「……やれやれ、と」

再び震える携帯。
このままだと、本当に一日100通のメールが届くかもしれない。
ここらで、一つこれからの為に注意をしておくか。

件名『これからよろしくお願いします』

本文には『頑張ってみました!』の文字。
添付された写真は……メイド服を着た井本さん。

「……うぉ」

仄かに頬を染めながら笑顔でダブルピースをする井本さんを見て、少しときめいた。
……う、うん。まあメールくらいいいかな。

その日の瞑想は心が和む井本さんの写真を見ながら行った。
ただし、井本さんの隣でダブルピースをする制服を着たババアは全力でシャットアウトして。


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