?????????風が吹き、荒れていた。空に浮かぶ大地。上から大きく抉られた建物。荒れ果て、今なお荒れ続ける世界。普段は保たれている海水が空へと散っている。大地と海が共に散っている空は終焉。抉られ、荒れる地上は地獄。大地と海がある空は、地上の破片と粉塵と海水の霧、そして爆発によって生じた蒸気や風によって薄暗い。「・・・・・・・・・・・・街が崩れていく・・・・・なんて力」暗い空の色は朱と黒が渦巻き、人工の光を失った地上の建物のほとんどが倒壊し、山肌は大地ごと削られ倒壊した建物ごと空に巻き上げられる。「・・・・・こんな!!・・・・・こんなものに、・・・・どうやって!?」崩れていく世界を、荒れながら空へと引かれながら落ちていく大地と海を、原形をほぼ失った建物の上から眺める白のドレスを着た少女がいた。(私じゃ、私達だけじゃ勝てない・・・・・・・・)この世界の中心。この地獄の原因。この混沌の発生源。見滝原、守ると決めた街。自分と親友の住む街。壊れていく。大切な居場所が。白の少女の視線の先。朱と黒の嵐を纏う存在。虹色を背負う異形。巨大な理不尽。「・・・・それでも・・・止めてみせるわ」それでもなお、白の少女は視線を逸らさない。世界線x.091015わたしたちはCDショップで買い物して、他愛無い会話に笑いあいながら過ごしていた。わたしにはそれが楽しくて、嬉しくて、とても幸せだった。――――でもこれは?なに?どうして?――――――――これはなんだろう?凍りついて、ただただ目の前の亡骸に視線を張り付けている。自分だけではない。周りにいる――――――同級生も、自分達のように買い物に来ていただろう―――人達も。まどか達と一緒に岡部さんを探すために行動をしようとした直後、景色が変わった。突然に、唐突に。そして戸惑うわたし達の前に『あれ』が現れて、不幸にも近くにいた学生が最初の犠牲者になった。同時に『私』は訴える。逃げろと。まだ■■■■でない「わたし」は無力だからと。「―――――――――――――」誰も言葉を、行動を起こせないなか、『あれ』が顔を上げる。視線の先にいる獲物・・・・・・自分達に殺到する。――――――――え?その時ようやく、呆然としていた私達は我に返り―――――直後、恐慌に陥った。「ひっ!」誰の声か解らない。もしかしたら自分の声だったかもしれない。でもどっちでもいい、重要なのはそれが引き鉄になったことだ。おかげで動かなかった体は動く。走る。逃げる。ここから一歩でも遠くえ、一秒でも早く離れる。自分だけでは無い。誰もがそうした。何が起きようとしているのか。自分達がどうなるか、悟ったからだ。その理解は裏切られなかった。悲劇が、一方的な虐殺が始まった。人が死ぬ。人が殺されていく。――――――――なんで?なんでこんなことに?「・・・・・・・・・あっ!?・・・・あが?」近くにいた年上の男性が捕まる。「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」―――ズルズル――ガリガリ音が聞こえる。『あれ』に引きずり込まれる音と。「ああああああああああ!!ま・・・・まって!まって・・・うあ・・ああああああああああああ!!」抵抗しているんだろう。床を掻き毟る音が聞こえる。―――ブンッ!!――ドチャッ!!「・・・・やだ・・・・・こんなの・・・・いやだよ・・・・」「だめ!走ってまどか、追いつかれる!」「な、なんなのこれ・・・・夢?・・・・ねえ転校生・・・あたしまだ寝てんのかな?嘘だよね!?こんなの嘘だよね!?」呆然とするまどかとパニックになる美樹さんの手を引いて、わたしは走る。「やっ・・・やめてよー!」「ひいやああああああああ!」「・・・・あ・・・・・が」「マァマァーーー!」「はなせ・・・はなせよー!」「ああああ!」「だ・・・だれか・・」「おいていかな――」「たすけて!」「うわー!」「ひい・・・」「おねがいします・・・おねがいしま―」「あ・・・あは・・・あははは」「ゆるして・・・たすけてよー!」「いやだ・・・いやだー!」―――ブンッ!! ――ドチャッ!! ―――ブンッ!! ――ドチャッ!! ―――ブンッ!! ―――ブンッ!! ――――――――ドチャッ!!「なっ・・・なに?」「振り向かないで美樹さん!今は走って!」「う、うん」息が苦しい、体がもう悲鳴をあげる。走れない。でも走る。止まったらもう動けない。美樹さんもまどかも、今は混乱からうまく体を動かせない状態だ。だから今しかない。動ける今しか。「・・・・はっ・・・・はっ・・・・・ぜぇ・・・・ぜぇ・・・・ッ!」混乱していていつもより早く走れない。でも、混乱から覚めたらもう動けない。この状況、目の前で人が死ぬ非日常の光景。それを理解したとき、彼女達は動けるだろうか?・・・・・恐らく無理だ。二人は尊敬する『■ ■■が■された時』のように動くことは―――――。――――ズキッ!!「―――――ッ!?」―――――また?さっきから一体・・・・わたしは・・・・「私」は『あれ』が何なのか・・・知って?頭痛に顔を顰めながらほむらは さやかと まどかの手を引っ張る。『あれ』から逃げるために悲鳴をあげる体で走る。「わたし」が知らない、「私」が知っている、でも「私」も知らない『あれ』から逃げる。化け物から逃げる。軽々と人間を振り回し、地面に叩きつける『あれ』は ――――――――身の丈は3メートルをゆうにこえ、アニメのような猫の顔を二つくっ付けたような頭部、人間の女性のような体つき、背中から成人男性の腰ほどありそうな自信の身長ほどある指のような腕、それが8本生えている。全身を裁縫糸で縫いつけられた異形 ――――『あれ』は■■、化け物だ。数時間前「オカリーン!」「ん?まどかと英雄とほむほむか。・・・・・・・・この時期では珍しい組み合わせだな」「「「?」」」「いや、こっちの話だ。それで、三人でこれから買い物か?」放課後の帰り道、まどかと美樹さんと一緒に買い物の道すがら鳳凰院先生・・・・・・岡部倫太郎さんを見かけ、まどかが声をかけた。・・・・・・あれ?「おか・・・・鳳凰院先生は午前中で帰ったんじゃなかったんですか?」「・・・・・・・異端審問会があってな。」「は?異端審問会ですか?」「うむ、遺憾ながらこの鳳凰院凶真を裁こうと挑んできてな。先ほどまで行われてたのだ。むろん俺の勝利で終わったがな」・・・・・・?よくわからず首を傾げる。そこにまどかがフォローしてくれた。「ほむらちゃん、職員会議のことだよ」「・・・・・・・ああ」「あ、裏切ったなまどか!」「じゃあ岡部さん、朝に三年の先輩を保健室にって噂ホントだったんだ」まどかからさっきまで鳳凰院先生のことを聞いていたけど本当だったんだ。・・・・女性を勘違いさせる男。うん、わたしは気をつけよう。・・・・・まどかがなんか怖いし。「・・・・いや、今回は事前に誤解を解いたはずなんだがな・・・・・あれはいったい?」「オカリン、きっと引いたところを押したんだよ」「岡部さん・・・・また?しかもやっぱり自覚無し?」「・・・・?なんのことだ?職員か・・・・・審問会でもそんなこと言われたが?」「はぁ~、オカリンはオカリンってこと・・・・もう!ダメだよオカリン」「いやだからだな―――」「・・・あれ?まどか怒んないの?」あれ?わたしのときは「あんな」だったのに・・・・あれ?「ん?なんのこと、ほむらちゃん?」「あ~転校生、ちょっとこっち」美樹さんがわたしの腕を引いてまどか達と距離をあける。「美樹さん?」「まあ見てなって」「?どうしたのさやかちゃ・・・・・そうだオカリン!」「うわ、急になんだ?」「今日オカリンが女子生徒をハグしてたって聞いたよ!」「うぐ・・・・・・な・・・なんのことだ!俺は知らんぞ!」あきらかに動揺している岡部さん。む~、と岡部さんを上目づかいで睨みつける(こわくない かわいい)まどか。「オカリン・・・・・私には嘘つかないよね?」「いやまて違うんだまどか!抱き合っていたわけじゃない、抱き合っていたわけではないのだ。そうあれはそのあれだ、つまりだな、あ~あれだ、地球の自転が・・・・・プレートテクトニクスが俺の計算を裏切ってだな――」・・・・なんか浮気がばれたダメ男みたいだな~、と眺めるわたしと美樹さん。「ねえオカリン?私はオカリンが誰かと抱き合っても別にいいんだよ?だって今までその手の話は全部事故や偶然や誤解だったんだよね?」「そっ・・・・そうだ!今回もきっとそういうものなのだ!フハ・・・・・フゥーーハハハハハハハハ!さすがラボメン№02にして我が鳳凰院凶真の――――」「でもね~オカリン」岡部さんのセリフをまどかが遮る。・・・・・・あ、この感じ・・・・。「まさかオカリンの意思で、事故でも偶然でも誤解でもなく、オカリンの方からハグしたりしてないよね?」「・・・・えっ?・・・・・・・あ・・・あの~まどかさん?どのあたりから―――」「してないよね?」「あの・・・その・・・まど――」「してないよね?」「ま・・まど―――」「してないよね?」こ、こわいよまどか「~~~~~ッ、ええーーーい、なんだなんだ!人のことを疑ってからに!」あ、岡部さんが耐えきれなくなって逆ギレ(?)した。「だいたいだな、仮に抱きしめなかったとしてもそんなふうに言われたら誰だってー―――――」「『仮に』?」「ハッ!?」岡部さんが盛大に自爆している。あの人絶対浮気できないな。「ねぇオカリン?」「はっ・・・はい!?」もう岡部さんはダメだな。まどかに完全におされている。「私はオカリンを信じているよ。オカリンは誤解をうけやすいけど教え子に手を出す人じゃないよね?」「も・・・もちろんだ!それは確固たる真実だ、問題無い!」「うんうん、そうだよねオカリン!」ああ、もしかしてこの人馬鹿なのかな?「それは」って・・・・また自爆してるし。「ならオカリンは女子生徒と抱き合ってなんかないよね?」「・・・・・・・・・・・・・ぇ・・・・と・・・・・・・・・・・も・・・・・・・・もちろんだ!」・・・・・・・・まさかここで誤魔化そうとするとは。ある意味尊敬する。完全にばれてるのに。「・・・・・いや、気持ちは解らないわけでもないよ?」「・・・うん、そうだよね」美樹さんと想いがシンクロする。あそこで同意できなければどうなるか、頷く以外の選択がはたして自分にとれるだろうか?・・・・・・・たぶん無理だ。「よーするにさ、まどかって岡部さんが誰かとラッキーイベントとかにあっても別に気にしないんだよ。たとえ目の前でもね。ただ・・・・・」「本人から――――、岡部さんからのアプローチはダメってこと?・・・・・・まどかは岡部さんが好きなの?」自分で聞いといてなんだけど、嫌だなーと思うのは我が儘かな?せっかくまどかと仲良くなれたのに。いきなり誰かに盗られたと思ってしまう。・・・・・・独占欲強いのかな?今日初めて知り合ったのに・・・・・・・・・・・・・・わたし・・・・・それとも朝に感じた違和感・・・・のせい?「ん~それは無いみたいってのがあたし達クラスの見解かな?」「えっ、そうなの?」「うん、まえにまどかに聞いたらお互い兄妹みたいな感じなんだってさ・・・・真顔だったし、あれはホントにその気は無いね」「・・・・そうなんだ」顔を蒼くさせたり白くさせたりする岡部さん。笑顔で詰め寄るまどか。わたしには仲の良い兄妹とか幼馴染はいないけど、普通はあんな感じなのかな?漫画やドラマみたいな関係にみえるわたしはやっぱり世間知らずだなと自分を納得させる。付き合いの長い美樹さんやクラスの皆がそういうんだからその通りなんだろう。「そんなオカリンは今日はウチで晩御飯だね。パパとママを交えた家族会議だよ」「・・・・・・・・・・・はい」向こうは何やら決着がついたようだ。とどめはまどかが岡部さんに抱きついて首筋を スンスン と可愛らしく鼻を動かし、岡部さんに笑顔を向けて、「うん、知らない匂いだね」のセリフに岡部さんは全て諦めたらしい。「・・・・・・ただ」「・・・・なに?」「最近まどかのブラコンが激しいという見解も・・・・・」「・・・・・・・」?????????死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ。私の親友が。大切な人が。命がけで戦ったのに。その身を■■に堕としてまで守ってくれたのに。なのに――――未来ガジェット0号『 』起動 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。私の親友を。大切な人を。■した。■した彼女の心で。願いで。想いで。魂で。私を―――デヴァイサ―『■ ■■■』許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない。私の親友で。大切な人で。その彼女の心で。願いで。想いで。魂で。傷つける。■し合いをさせる。―――グリーフシード『マルゴット』「・・・・・てやる。」目の前の男を睨みつける。彼女から何度も聞いていた。面白い臨時講師だと。学校に行くのも悪くないと。愛について語り合ったと。楽しい人、私達の力になってくれると、いつか三人でお茶を飲もうと言っていた。――――――――――なのに!「岡部・・・・・・・倫太郎・・・・・」よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも。―――よくも!「――――――――――」「殺してやる!岡部倫太郎!!」ドンッ!!殺す。持てる力を全て使って殺す。岡部倫太郎を。生み出した球体に残りの魔力を全力でこめて突っ込む。ドンッ!!目の前の男。人間の身でありながら地面を踏み砕く力で、岡部倫太郎もこちらに向かってくる。今は変色した、元は白かった白衣の背中から生えた、黒い、人間の腕の様な異形の大鎌をこちらに向け突っ込んでくる。――――その身はすでに死にかけ。両腕は吹き飛ばした。右目は引き裂いた。腹は突き刺さした。全身血だらけだ。散々苦しめた。――――それでもなお、岡部倫太郎はこちらに向かってくる。自分を止めるために。構わない。―――逃げようが戦おうが策を巡らそうがただ怯えようが、一顧だにせず殺す。祈る。願う。奪われた純粋な怒りを胸に。白の少女は視線を逸らさない。世界線x.091015した・・・・ した・・・ ・・した・・・「ひっ!」「しっ・・・・・大丈夫、大丈夫だから」『あれ』の足音が聞こえる。突然変化した世界。まるで「不思議の国のアリス」の世界だ。周りの全てが巨大。ファンシーな装飾をされた部屋。裁縫針やハサミを始める裁縫セット。毛糸玉。ミシン。その全てが人間を軽々しく凌駕する巨大さ。その見た目から、かつて味わったことがないほどの恐怖と血の臭いがする。『結界』 ほむらの脳裏に知らない、しかし知っている知識が浮かぶ。ズキンッ!――――逃げられない『あれ』から身を隠して息を潜める。あれからどれだけの時間がたったのか。いつの間にか周りの悲鳴や、人間の■を叩き潰す音は聞こえなくなっていた。ズキンッ!――――どうする?今はまどかと美樹さんと一緒に巨大なミシンと巨大な毛糸の塊の間に身を隠している。『あれ』の・・・・『魔女』の足音が遠ざかり、十分に距離があいたのを確認し――。「・・・・・・ふぅ・・・・もう大丈夫だよ二人とも」震える二人に声をかける。まどかも美樹さんも少し首を下に動かしただけの返事をかえす。当然だ。理解したはずだ。今現実で己の死を感じたのだ。もしかしたら自分がすぐそこで「潰れている」ものになっていたかもしれない。それは平和な日常を過ごしてきた、「まだ」一般人の二人には、――いや(この二人は、いつになっても人の死に慣れなかったな、「私」と違って・・・・・)ズキンッ! 頭痛がする―――このままではまずい当たり前だ。この日本で普通に暮らしていて目の前で人が死ぬ、それも殺される場面に慣れるなんてこと、そうそうあるわけがない。ズキンッ! 頭が痛い―――「わたし」じゃ戦えないそれもいきなり景色が変わり見知らぬ場所で、唐突に、遠慮なく、容赦なく、加減なく、無意味に、無駄に、無作為に、無目的に、無計画に、無用に―――――理由もなく理不尽に殺される。ズキンッ! ―――「私」でも戦えない「・・・・こわい・・・・・怖いよ・・・・パパ・・・ママ・・・・・・オカリン・・・・ッ」「・・・・・・・・・・だめ・・・・あたしのケータイも繋がらないよ!・・・どうして・・・・?・・・・さっきまでCDショップにいたのに・・・・・・、なんなのよここはっ!?」ズキンッ!―――今の「私/わたし」には 力が無いんだ大好きな家族がいて、親友がいて、時には笑い、時には泣く、そんなどこにでもある日常。まどかの居場所。まどかのいるべき世界。(まどかを・・・・まどかの居場所(日常)を守る・・・・・・「私」はそのために―――――――――)―――たとえ・・・・何を・・・犠牲にしてでも・・・・彼女を、まどかを守るズキンッ! ズキンッ!!「・・・・・うっ・・・・・・うぇ・・・・ひっ・・ッ」「あっ、だ・・・・大丈夫だよまどか。・・・なッ・・・なかッ・・・・・・・泣かないで、・・・・ほらこっちおいで・・・・」この状況でどこか冷静な自分が思考する。どうやってまどかを守るか、ただそれだけを思考する。他のことはどうでもいいと、まどかを抱きしめる美樹さやかや自分を犠牲にしてでも ―――犠牲にしてでも「まどか大丈夫だよ・・・・泣かないで、ほらこっち・・・・・・“ほむら”も」「えッ?・・・・・・ぁ・・あ・・・・・・・・ぅん・・・美樹さん」―――なのに、美樹さんが名前をよんでくれた。頭の中を知っているのに知らない、知らないのに知っているという矛盾を孕んだ記憶で、「わたし」じゃない「私」が思考する。まどかを守るために。何を、誰を、自分を犠牲にしてでも。――――でも「ほらこっち、うん・・・・まどかもほむらも目、つぶってな。・・・・・・大丈夫・・・・大丈夫・・・。」「・・・・ありがッ・・・・・と、さやかちゃん」「・・・・・・・・・・」美樹さんが “美樹さやか”が わたしの 私 の 名前を 呼んでくれた。「・・・・?・・・・大丈夫だよほむら、あたしがちゃんと抱きしめてあげるから・・・・ね。まどかももっとしがみ付いていいよ」「・・・・・・ッ・・うん・・・・うん・・うん!」―――ああ、ダメだ ダメだ ダメだよ 涙が零れる。泣いてる場合じゃないのに美樹さんが繋がらない携帯を握りしめながら震えて泣くまどかを抱きしめて励ます。大丈夫だと。そしてまどかを抱きしめながら、私にも手を差し伸ばす。そして抱きしめてくれた。こんな「私」に手を、差し伸べてくれる。―――この感情は・・・・ダメだ・・・・・いけない「大丈夫・・・・きっと大丈夫だからね」場違いにも程がある。なんでこんなに嬉しいんだ。やめろ、「私」は彼女が嫌いだと思っていたのに。まどかと私を美樹さんが・・・・美樹さやかが抱きしめる。少しでも落ち着かせるように、やさしく背中をさすってくれる。大丈夫だと励ます。―――ああ、このままじゃ「私」は戦えない 誰も、自分も・・・・失いたくない だって涙声で、震える声で大丈夫だと励ます。ぎこちない動きで、震える体で落ち着いてと背中をさする。―――ああ、「私」は戦えない 「私」は もう 一人は震える声で、震える体で、――――それでもなお 小さな体で抱きしめる。わたし達を護るように、自分の体で周りの怖いことから、理不尽から隠すように―――「私/わたし」は 美樹さやかと、美樹さんと いつの日か 一緒に 叶わないと 思って 諦めて でも それでも心のどこかで いつかと 願い 心を閉ざして なのに あなたは「美樹ッ・・・さんっ・・・・わたし・・・わたし!」ギュッ!抱きしめる。「私」が。失いたくないと。声に出さない絶叫を上げる。―――いやだ、失いたくない、嘘だ、どうでもよくなんかない。「私」はまどかだけじゃない。巴さんも、杏子も、あなたとも一緒に、一緒にいたいんだ。だから・・・・だから「・・・・うん、いるよ。大丈夫だからね、ほむら」―――――ッ、だから!わたし、私は!死にたくない。まどかと出会えた。だってやっとあなたが、あなたが私の名前を呼んでくれた。「ほむら」と。だから―――「・・・・・・・あ・・ッ!二人ともッ・・・しっかりつかまってな・・・・・顔・・・・・あげちゃダメだよ」「!!さっ・・さやかちゃん!」ビクッ!!美樹さやかが・・・・・・、美樹さんの体が硬直する。私達の体を一層強く抱きしめる。きっと見つかった。彼女の視線の先にはあれが、『魔女』がいるのだろう。まどかもそれを悟ったのか体を強張らせる。「美樹さ―――」「ダメッ!!」顔を上げようとしたまどかと私を抑え込むように抱きしめる。震える声で、震える体で――――護る。自分はその身を魔女にさらそうと、私達をできるだけ魔女の視界にいれないように。彼女は気づいていないが、すでに泣いていた。泣きながら鼻水を垂らし、震えはすでに抱きしめられた私達にも痛いほど伝わる。歯をガチガチと鳴らす。彼女は強くない。決して強くない。涙を流し、壊れたラジカセのように、途切れ途切れの声で大丈夫だと繰り返す姿は見るに堪えない。でも、それでも・・・・・・それでもなお誰かのために、私達のために動けない体で動こうとあがく彼女を、護ろうと足掻く彼女を、その姿を、その心を、その生き方を、笑うことができる?ああ、あの『知らない彼』の言う通りだ。恐怖に怯えながら誰を護ろうとする彼女は震える体で誰かのために戦う彼女は間違いなく―――『英雄』だった・・・した・・・・・・した・・・・・・自分達の心臓の音と、歯が当たる音以外がまるで死んでしまったように錯覚した世界で・・・・・・・・した・・・・・した・・・・・した・・・・・魔女の足音が近づいてくる。死が迫る。いやだ。彼女達を失いたくない。死にたくない。穴だらけの矛盾に満ちた記憶。その中にある力があれば―――このままじゃ声が聴こえる。『運命を変えたいかい?』ほむらの脳裏に声が聴こえる。音が死んだような世界で足音以外の音(声)が生まれた。一つは『それを可能にする力が君には、君達にはあるんだ』それは幼い少年のようであり、同時に少女のような声。『この状況を覆すことができるんだ』それは親しみをこめた響きでありながら、どこか無機質な声。『だから僕と契約して、魔法少女になってよ!』それともう一つ。~~~~~~~~~♪近くで携帯の着信を告げる音が響いた。まどかの抱きしめていた携帯から。着信ディスプレイには『オカリン』