<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.28390の一覧
[0] [習作]Steins;Madoka (Steins;Gate × まどか☆マギカ)[かっこう](2012/11/14 00:27)
[1] 世界線x.xxxxxx[かっこう](2011/06/17 21:12)
[2] 世界線0.091015→x.091015 ①[かっこう](2011/06/18 01:20)
[3] 世界線0.091015→x.091015 ②[かっこう](2011/06/28 21:37)
[4] 世界線0.091015→x.091015 ③[かっこう](2011/06/22 03:15)
[5] 世界線x.091015 「巴マミ」①[かっこう](2011/07/01 13:56)
[6] 世界線x.091015 「巴マミ」②[かっこう](2011/07/02 00:00)
[7] 世界線x.091015 「暁美ほむら」[かっこう](2011/08/12 02:35)
[8] 世界線x.091015 「休み時間」[かっこう](2011/07/10 22:08)
[9] 世界線x.091015 魔女と正義の味方と魔法少女①[かっこう](2011/07/19 07:43)
[10] 世界線x.091015 魔女と正義の味方と魔法少女②[かっこう](2011/07/26 14:17)
[11] 世界線x.091015 魔女と正義の味方と魔法少女③[かっこう](2011/08/12 02:04)
[12] 世界線x.091015 魔女と正義の味方と魔法少女④[かっこう](2011/09/08 01:26)
[13] 世界線x.091015→χ世界線0.091015 「ユウリ」[かっこう](2011/09/08 01:29)
[14] 世界線x.091015→χ世界線0.091015 「休憩」[かっこう](2011/09/22 23:53)
[15] χ世界線0.091015「魔法少女」[かっこう](2011/10/29 00:06)
[16] χ世界線0.091015 「キュウべえ」 注;読み飛ばし推奨 独自考察有り[かっこう](2011/10/15 13:51)
[17] χ世界線0.091015 「アトラクタフィールド」[かっこう](2011/11/18 00:25)
[18] χ世界線0.091015 「最初の分岐点」[かっこう](2011/12/09 22:13)
[19] episodeⅠ χ世界線0.409431「通り過ぎた世界線」①[かっこう](2012/01/10 13:57)
[20] episodeⅠ χ世界線0.409431「通り過ぎた世界線」②[かっこう](2011/12/18 22:44)
[21] episodeⅠ χ世界線0.409431「通り過ぎた世界線」③[かっこう](2012/01/14 00:58)
[22] episodeⅠ χ世界線0.409431「通り過ぎた世界線」④[かっこう](2012/03/02 18:32)
[23] episodeⅠ χ世界線0.409431「通り過ぎた世界線」⑤[かっこう](2012/03/02 19:08)
[24] episodeⅠ χ世界線0.409431「通り過ぎた世界線」⑥[かっこう](2012/05/08 15:21)
[25] episodeⅠ χ世界線0.409431「通り過ぎた世界線」⑦[かっこう](2012/05/10 23:33)
[26] χ世界線0.091015 「どうしてこうなった 前半」[かっこう](2012/06/07 20:57)
[27] χ世界線0.091015 「どうしてこうなった 後半1」[かっこう](2012/08/28 00:00)
[28] χ世界線0.091015 「どうしてこうなった 後編2」[かっこう](2012/11/14 00:47)
[29] χ世界線0.091015 「分岐点2」[かっこう](2013/01/26 00:36)
[30] χ世界線0.091015「■■■■■」[かっこう](2013/05/31 23:47)
[31] χ世界戦0.091015 「オペレーション・フミトビョルグ」[かっこう](2013/12/06 00:16)
[32] χ世界戦0.091015 「会合 加速」[かっこう](2014/05/05 11:10)
[33] χ世界線3.406288 『妄想トリガー;佐倉杏子編』[かっこう](2012/08/06 22:26)
[34] χ世界線3.406288 『妄想トリガー;暴走小町編』[かっこう](2013/04/19 01:12)
[35] χ世界線3.406288 『妄想トリガー;暴走小町編』2[かっこう](2013/07/30 00:00)
[36] χ世界線3.406288 『妄想トリガー;巴マミ編』[かっこう](2014/05/05 11:11)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[28390] χ世界線0.091015 「最初の分岐点」
Name: かっこう◆7172c748 ID:3f6e4993 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/12/09 22:13
χ世界線0.091015


――うぉー開けろー!
――オォカァベェー!
――ばんばんばん!!!

「あすなろ市?」
「そうだよ、本校でおこなっている特別授業を別の学校でも採用する事になってね。いやー評判がよくて見滝原中学の評価が高くてねー」

HAHAHAと軽快に笑う初老の男性、彼が見滝原中学校の校長にして岡部達のような外部の人間を招き入れる特別課外授業の立案者。
彼は朝の職員会議で職員及び岡部を含む臨時講師達の前に立ち他校からの見滝原中学校の評価が高くなっている事を伝える。

――くっそ、ぶっ壊してやる!
――シェルブリットォオオオ!!!
――ゴキンッ!

「あすなろ市にある中学校の校長達とは縁があってね。君達外部の人間、多種多様の人材を招き生徒達に沢山の事を学んでもらう。言うだけなら簡単なんだけど実際には似たような授業ばかり、ところが君達(ていうか岡部倫太郎)は今までにないくらい生徒達からやる気をひきだしている。警察から表彰されたりテレビの取材がきたりして最近は親御さんからの苦情も減ってきているし・・・・・・・うん、嬉しいねぇ」
「たしかに苦情は減ってきていますが・・・・・・・評価が高いのですか?」

顎を撫でながらうんうんと頷く校長に岡部は皆が気になっている事を代表して訪ねる。
岡部が訪ねなければならない。評価が高いと言ったがそれは果たして

――いってー!拳がー!?
――基本ガラス張りの校舎だからなぁ、やっぱ耐震のために頑丈だよな・・・・・知ってたけど!
――じゃあ言えよ!見ろよ俺のガジェットばらばらになっちゃったよ

「校長先生、失礼を承知してお尋ねしますがその評価は良い意味でですか?」
「もちろんだよ岡部君!特に君の授業のおかげでね、我が校の知名度は上がる一方だよ」
「・・・・・どう思いますか」
「わっ 私に振らないで下さい!・・・・困ります」
「ん?どうかしたのかね二人とも?」

――やっぱ野球グローブと単三電池じゃ光るだけで攻撃力無いな、そもそも壁相手にスタン効果は意味ないし
――所詮使わない家庭物からの作品だしなっ・・・と    ズガン!
――しっかしカテェな、なんでこんなに防弾性高いんだ、何に備えてんだよこの学校?テロ?  ドゴン!

他の教師同様に決してガラスの向こう側の光景を視界に入れないようにしている校長が岡部と早乙女先生に声をかける。
その声はいたって普通で、さも二人の様子を不思議がっている。
しかしその額には確かに汗が流れていた。
岡部は聞かない事が社会人として正しいのでは?と思い口に出さない方がいいのかと悩む。
あと校舎が頑丈なのは外ではしゃいでいるテロリスト・・・・彼らが作った作品のせいだろう。

――わあっ?・・・・ゴム切れた
――お前の『これが増すドライバー!』って中のゴム切れたら唯の銛以下だよね    がんがん!
――ぜんまい巻かないと唯の物干し竿です・・・それがなにか?

「・・・・・本当に採用するんですか?」
「・・・・・ああ、すでに準備を始めている学校もある。料理人の立花宗一郎といった雑誌に取り上げられている人物など、なかなか大きな動きをみせているよ」
「へえ、あの―」
「生徒が持ってた雑誌で―」
「バケツパフェでしたっけ、あれは食ってみたいな」
(・・・・確か別の世界線でまどか達と行った喫茶店のマスターか?)

実技があるなら確かにそれは将来料理人やパティシエを目指す子には大きな経験になるだろう。マミあたりも参加したがるかもしれない。そうでない子もこれを機会になんらかの将来性について考えるかもしれない。中学生ではまだそういうことを考えるのは早いかもしれないが、きっかけにしてはこの手の職業は生徒達の興味を引きつけるだろう。

「・・・・考えてみればここの学校の生徒が向こうに行く訳ではないのだから大丈夫か」
「そういえばそうですよね・・・・なんだ、心配する事ないじゃないですか!」
「「「ああ確かに」」」

岡部の言葉に教頭先生を含めた教員達が皆安心したように呟いた。
最初から問題など無い。心配する必要などなかったのだ。何も我が校の品行可愛い生徒達が他校で器物損壊や傷害事件をいつものように起こしたり未来ガジェットを創って気づけば学園公認の雑誌の販売等を学校側に後には引けない感じにまで追い詰めて許可を出させるようなことをしに行く訳ではないのだから。
校長はただ“他校”が我が校の特別授業を真似るだけで、別に我が校のように“外(で)は(基本的に)穏やか中では(かなり)賑やか(?)”な学校になる訳ではない。
バレたらきっと評判は地の底に落ち別の意味でテレビと警察のお世話になるだろう。
そして我が校と同じ事になれば生徒達の自主性と活発性との引き換えに爆発とトラップとの生傷絶えない学校生活が待っているかもしれない。
本校の各教員の今年の労災はかなり通ったのではないだろうか?
本校が未だに世間から騒がれないのは最初からこの学校がガラス張りという特殊構造で耐震などの対処をしており頑丈で、また見晴らしの良い空間なので“いざという時に問題の場所が分かりやすく避難も救助も早く行う事が出来る”。そのため問題が発覚する前にもみ消せるからだ。
さらにFG(未来ガジェット)シリーズは最初から威力が高い物は無く、基本的に徐々に威力が上がっていったのでそれを予測して休みのたびに防弾性を高めに改築している。見滝原中学校は基本生活が豊かな生徒達が通う学校なので寄付金等が多く、テレビ取材等でもいくらかもらっていたのでコレもおおきい。
本校の人間は慣れた・・・・というか諦めたような悟った感じだが、他校ではこうはいかないだろう。

「・・・・・・ちなみにそこの校長は岡部君を雇いたいと言ってきてね」
『『『『なんて愚かなっ!?』』』』

安心したのもつかの間、校長の発言に室内の人間全員の台詞が校長を襲う。
FGの存在は岡部の存在があってこそだ。この混沌を見滝原中学校以外で創造するのは上記で示した通り危険だ。

――電池きれた!あと壊れた!
――ちくしょお!出て来い岡部ぇー!てめえは俺らを怒らせた!  ガンガン!
――こっちもガス欠だ・・・・・自転車の空気入れじゃ無理か―

「――ってどういう意味だ貴様らぁ!」
「いやいやいや岡部先生本人も叫んでましたよ!?」
「ぐっ!?ええいそんなことはどうでもいい――――どういうことですか校長!貴方は誤解とはいえせっかく上がった評価を自ら捨て去るのですか、その結果被害にあうのはこの学校の関係者全員に及ぶというのに!それが教育者として正しいと思っているのですか!」

岡部の台詞に室内の全員が頷き校長を見詰める、この学校以外でFGシリーズを扱うのは危険だ。

「・・・・・・元は君が原因なんだがなぁ、いやほら向こうの校長がね、岡部君の授業を実は何度か見学した事があってね――」
「にもかかわらずこの俺を欲しがるとは・・・・・一体生徒を何だと思っているのだ!」
「ぇえ!?君がそれを言っちゃっていいの?」
「そうです校長先生いくらんでも危険すぎます!」
「まったく何を考えて・・・・・まさか承認していませんよね?」
「早乙女先生に教頭まで・・・・いやそれなんだが―――」

まさかの返答に戸惑う校長、さらに―――

「いいですか校長、今我々が――、いや生徒達が無事なのは我が校の生徒だからなんですよ」
「そうですよ、最近感覚が鈍ってきていますけどウチの生徒は特別なんです」
「普通の学生と一緒にしたら可哀そうですよ!」
「他校の生徒が」
「ここの生徒はその――あんなんだし」
「・・・・じゃなくて“アレ”ですよ」
「彼らは“アレ”なんですから・・・・・理解して下さい。貴方は今まで何を見てきたんですか?」
「君達も教え子にシビアだね!?」

ちなみに、最近の見滝原のゴミ収集所には稀にガジェットの材料に使えそうなパーツを求め生徒が現れるようになった。

――どんどんどん!
――くそーきたないぞ岡部ぇー!  がんがん!
――五人ってどういう事だコラー!!   ばんばん!

「えー、彼は岡部君の授業を見学をしたときは本来の岡部君の思考実験や試行錯誤の論議の時の授業だったんだよ・・・・運がいいというか悪いというか」

ちなみにその授業内容も『どうして漫画にでてくるヒロインの女の子は料理が壊滅的に不味いのかな?』という鹿目まどかの出したテーマで二チームに分かれてディベート形式で論破合戦をしていたが発案者が鹿目まどかだったことも含めなかなか白熱していた。
また、防音性も高いガラスだったので外から見る分には真面目に授業をしているように見える。もちろん彼らは議題はともかく真面目に論議していたので学生達が積極的に取り組んでいたようにも見えた事だろう。

「・・・・・何もFGシリーズを創(作)りに行く訳ではないんだし―――」
「そういえば何故あんな火力が高まる事に?」
「・・・・本来俺はFGにそんなものを求めてはいない」
「えっ、そうなんですか?」

元々FG(未来ガジェット)は完成された製品を二つ以上くっつけて作るリサイクル的な概念が強い物だったハズ・・・・・だ。
火力とか攻撃力等を求めた覚えは無い。
岡部は世界に混沌を・・・・もとい、役に立つ物を作る、独創的なアイディアを生む精神性を育てさせるハズだった。
だが気づけば皆は法廷に立つ際に「いえいえこれって家に有るもの適当にくっ付けただけですから、危ない物何もついてませんからセーフセーフ」で逃げ切れるのか、危険の無いものでどこまでいけるのか?そのギリギリで火力を上げる事に何らしかのプライドを賭けているように日夜知恵を絞り己のFGのversion upに費やしている。
それは世界を繰り返す度に高まる傾向がある。世界が何を学習しているのか分からない。
もちろんまともな思考の持ち主もいるがそういう輩が超電磁砲や音爆弾を偶発的に生みだしてしまう。
そしてそれが拍車をかけまた皆のやる気に火をつける。今では『今月の未来ガジェット特集』なる物まである。

「・・・・・どうしてこうなったんだ」
『『『『う~ん』』』』

岡部達は皆で唸る。どうしてこうなったと。

「いやいや皆さん結果的に生徒達の自主性が芽生えたと思えば――」

――う~ん、やっぱランキング並みの火力が必要かな?
――ウチのクラスのランキング持ちは鹿目さんの音爆弾だけだし・・・・意味ね~
――そこの消火器使えば作れるけど・・・・違反(危険物)だしな―、ゴミじゃないし

自主性?

首を傾げる。
芽生えた結果確かに行動力が生まれたかもしれないが、ついでにいろんな知識も増えた。でもいつか間違いを起こしてしまいそうだ。

「・・・・サバイバル知識が豊富になっていざという時に役に――」

――んー、壊れたガジェット繋げてみるか?
――おお!?割と行けそうな気が!
――よっ・・・・と。いくぞー       ズガンッ!!!

「・・・・サバイバル技術というよりゲリラ戦術っぽいですよね」
「持久戦に強そうですよね、ウチの生徒」
「誰と戦うんだ?」
「壊れたパーツを最大限に生かしていますよ」
「あ、自壊した」
「でも今の一番威力が高そうでしたね」
「日本で需要あるスキルかな?」
「成長したなぁ・・・・」
「・・・・・・はあ」

各教師が室内の外で繰り広げられているゲリラ戦術にコメントする。
第三次世界大戦があるならともかく少なくとも現日本の中学校で必要なものではない。
将来の就職活動のさいに「私はゲリラ戦法が得意です。最後まで粘って見せます!」とアピールしてもそれはユニークとして評価されるのだろうか?AP入試ならいけるか?

「・・・・なんだいなんだい皆して私だけを悪者にして!本当は私だってコレはヤバいって思っているんだよ!?」
「というか校長、俺はあすなろ市に行く事が決まったのですか?」
「・・・・・せっかく本音で喋ったのに流されたよ」

――もう戻るか?動いてなんかすっきりしたし
――だねー、どうせいつも通りに誤解何だろうしね
――それでも駆け出す俺ら・・・・・青春だ!

がしゃがしゃと職員室の外で残骸を片付ける生徒達に一瞬視線を向け岡部は確認をとる。

岡部は知らない。ここがこの世界線の最初の分かれ道。
正か誤か。分からない。解らない。知らない。
その選択のどれが正しくて、どれが間違いなのか。

「一応君の意見を聞こうかと思ってね、どうかな岡部君」
「あすなろ市にはいつから?」
「来月の頭からだよ・・・・どうかな?」

ただ、岡部に選択の余地は無かったのかもしれない。
岡部は一ヶ月後にこの見滝原にやってくる魔女に相対するためにやるべき事がある。
まどか達ラボメンを守るために最低一ヶ月間は傍にいないといけない。世界はまどかを魔法少女になる事を望んでいる。収束する。昨日のようにまどか達に魔女をぶつけ、きっかけを与える。魔女だけじゃない、まどかに契約させようとあらゆる因果をそこに収束させる。
それを阻止できるのは基本的に事情を知る岡部倫太郎と暁美ほむら。
しかし現在のほむらには魔法の力は無い、これまでの世界線のように留守を預ける事はできない。
すでに昨日は想定外の魔女が現れた。
今まで相対した事の無い魔女。
早すぎる危険との接触。
動けない、今の岡部には時間も仲間も準備も力も足りない。

“だから”――

「雇ってもらっている立場から申し訳ありませんが・・・・・今回は辞退させていただきたい」
「――ふむ、一応理由を聞いてもいいかな?」
「この見滝原でやるべき事があります。あと一カ月は離れることはできません」

一時的になら恐らく・・・・いや、世界はそんなに優しくない。
鹿目まどかの契約の理由と時期は常にばらばらだ。
『契約して魔法少女になる』 世界が鹿目まどかに与えた運命。
時期は含まれていない。もし契約して魔法少女に何月何日何時何分と世界が決定していれば、それはその時間まで絶対に契約しない。できない。他でもない世界が保証している。そう収束する。
だから契約の時期が収束で定められているならそれを逆手にとって行動できたが、これでは何に備えればいいかわからない、安心できない。
契約の理由も解らない。突発的な事故や事件、不幸な出来事などで世界はまどかに契約をせまる。
“安全な時間帯が無い”。“安心できる保証も無い”。

「申し訳ありません」
「いや、頭を上げてくれ岡部君。こちらも急な話だ。向こうにはこちらから話しておくよ」
「ありがとうございます」

岡部は頭を上げ、取りあえず学校側との関係を崩さずにここに残れる事に安堵した。

「では朝の会議はこれで終了です。皆さん今日も提示で帰れるように――――以上」

教頭の言葉で朝の職員会議に幕が下りた。
最初の分岐点を通過した。





「ふぅ」
「岡部先生、今日は三年の授業だけですよね?もしよければ一緒にお昼食べませんか」
「お昼ですか?そうですね―――」

早乙女先生の言葉に岡部は頷きそうになる。今日はニ限目に三年生の授業があるだけで終わりだ(マミのクラスではない)。
しかし今日の岡部には昨日できなかった事をするための用件がある。

「ああ、すみません。今日はラボに客を待たせているので授業が終わりしだいすぐに出るつもりです」
「そうでしたかぁ、なら仕方ないですね、では次の機会に」
「ぜひ、貴女ともいろんな話がしたかったのでいつか必ず」
「ふふ、楽しみにしてますから今度誘ってくださいね?」

眼鏡に童顔な早乙女先生はそういって職員室を出ていった。他の先生と臨時講師も各々の準備をしたり、各教室に向かって歩き出す。
岡部は携帯を取り出し現在ラボにいるであろう客人に電話をかける。

『ユウリかい?』
「ああ、さすがに起きていると思うが・・・・・」

職員室でキュウべえが初めて岡部に声をかけた。
別にいままでどこかにいっていた訳ではない。キュウべえはずっと岡部の肩の上にいて先ほどまでの会話を聞いていた。青年の肩に謎のヌイグルミが常時いたのだが誰もツッコミをいれなかった、ツッコミをいれたら負けというわけでも岡部が空気扱いされている訳でもない。今朝の志筑仁美の時もそうだが、キュウべえの姿は岡部達ラボメン以外にはみえていなかった。
インキュベータは基本的に才能ある人間、魔法少女の素質ある人間にしか見えないのだ。

コール音が数回続くがユウリは電話に出ない。かといって留守電にもならないのでしばらくまってみることにした、幸い岡部の授業はニ限目からだ。

『キョ―マはあすなろ市に行くのを断ったね』
「やることがあるからな」

電話が繋がるまでの合間、岡部とキュウべえは先ほどの校長の提案について話し合う。

『あすなろ市にも魔法少女はいるよ 見滝原よりも多いんじゃないかな?』
「・・・・そうだな、茜すみれ も確かあすなろ市出身だったし・・・・今度ラボメンをつれていってみるか・・・・例の喫茶店にもしばらくいっていないしな」

魔法少女が多い。なら行く価値は有る。
別の世界線で出会った少女茜すみれ、あだ名は「オデ子」。できることなら仲間にしたい。
今この世界線で確認できている魔法少女は四人。

巴マミ
飛鳥ユウリ(仮)
呉キリカ
美国織莉子

茜すみれは解らないが、美国織莉子は恐らくキリカの言動からほぼ間違いは無いと思う――

「キュウべえ」
『なに?』
「美国織莉子という少女を知っているか?」
『彼女は魔法少女だよ』
「そうか、ありがとう」
『知り合いかい?』
「ああ、俺と同じリーディング・シュタイナーを・・・・・・」
『?』
「おいおい話すさ・・・・・・しかしそれでも後三人か」

まどかとさやかは仕方が無いとして、ほむらの脱落が厳しい状況だ。
織莉子とキリカ、まだ仲間になるとは限らないがこの世界線のまどかは『最高の最悪』では無い、またキリカの様子から友好的な態度をとられているので・・・・・・彼女達を相手に油断をするつもりはないが未来視を、『他の未来の世界線を観測できる』状態のこの世界線の織莉子なら話し次第でこちらの味方になってくれるかもしれない。
『ワルプルギスの夜』に立ち向かうには彼女達だけでは火力不足だ。こちらの力も欲しいはずだ。
もっとも『最高の魔法少女である鹿目まどか』をぬきにした場合は魔法少女を五人十人集めた所で結果はあまり大差が無い。“アレ”は異常だ。

超ド級の大型魔女。
異端の中の異端。
魔女の中の魔女。
異形の中の異形。
最強の魔女の一角。
虹を背負う者。
超えるべき絶望の“一つ”。

『ワルプルギスの夜』に個々の魔法はあまり効果が無い。
地力の差が大きすぎてダメージが通らない。
数を集めても意味が無い。むしろ邪魔だ。戦力的にも、相手の特性的にも。
だからあと三人でいい。

『なにが後三人なんだい?』
「ん?」

キュウべえが白い尻尾を岡部の頭の後ろで揺らしながら尋ねる。何が後三人なのか。

「ああ、あと三人いれば七人だなぁって」
『七人?』
「俺を使えば“八人”。だから“最低七人”。これが“俺達が”考えた未来を勝ち取るための最低限の数だ」

八人;ラボメンメンバー最大数の数

「未来ガジェット0号 失われた過去の郷愁【ノスタルジア・ドライブ】を元に”俺達ラボメンが作った“FGMシリーズの最高傑作」

FGM;Future Gadget Magica

「『ワルキューレ』の発動には――――七人の仲間が必要なんだ」


『ワルプルギスの夜』を超えて、“その先のためにも”―――
岡部には少なくとも、“七人”の信頼できる魔法少女が必要だった。





ただ、岡部は一つ選択を間違えたのかもしれない
間違いなのかは分からない、その先の未来は誰も観測していないのだから。
ただ、未来視を持つ少女の観測した未来で

あすなろ市にいる魔法少女達と岡部が共闘する未来が薄れ





互いに殺しあう未来が色濃く付加されたことを そんな可能性世界線が観測された事を

岡部は知る由もなかった
















未来ガジェット研究所 寝室

鳴りやまないケータイのバイブレーションに顔を顰めながら、もぞもぞと毛布から手を少しだけ外に這い出す。
ユウリは普段あまり活用することが無いケータイを恨めしい視線で睨みつけると―――自分が柔らかいベットの上で毛布に身をゆだねていると理解し・・・・・・

「―――っ!?」

ばばっ と自分と周りを確認する。
ここは何処?私は誰?なんでここに?何かされた?ていうか昨日アイツの家に?ユウリ!・・・ん?

「・・・・・何で私・・・ここで寝てるの?」

おかしい。確か私はあの鳳凰院とかいう男にユウリの話を聞くためにここに来た・・・・そして?
思い出せ。
ユウリの話を聞いてすぐに帰る。出ていく。そのつもりだった。
ラボというこの建物に入ったらいきなりラボメンに任命するとか言って私は№04に。
あの男とその幼馴染と友人の自己紹介、キュウべえを含めた魔女と魔法少女についての説明、彼なりの考察を聞いていた。
一旦会話が途絶えると、私と同じくらいの年の子が二人共寝てしまい円卓会議(?)が一時中断になってその間に私はシャワーを借りた。
男の家でシャワー、昔なら思う事は有ったかもしれないが今は特にない、いざとなればこの身は魔法を使える。HENTAIなど敵ではない。

そして―リビングに残った彼らは魔法少女の秘密に関する会話をしていた。
彼らは気づいていなかったが―――私は“魔法少女の真実をしっている”。
最初から知っていた。契約する前に、魔法少女が魔女化する事を私は知っていた。
だからその事についてはなんら思う事は無い。
私は彼の言うところの『命を、人生を対価にしてもいい願い』があったのだから。
それでも、一人でいることに、孤独でいる事がまったく大丈夫という訳ではなかった。
だからか、シャワーを浴びながら彼の話を、変身することで強化された耳で聞いて、それでいろいろ“安心した”。
安心してしまった。
魔法少女は魔女になる危険を孕んでいる。
魔法少女は正直、一般的に見れば付き合いが面倒だ、その事情、その精神、その在り方。
なのに彼は、鳳凰院凶真は全てを知ってなおユウリと一緒にいてくれたみたいで、そして私と一緒にいてくれる。自分の家に招いてくれた。面倒事の塊を。
・・・・・自分で思っていたより私の精神は存外脆かったようだ。
緊張の糸が切れてしまった。まだ完璧に信頼できる存在かもわからないのに睡魔に負けた。
№05.ラボラトリ―メンバー。ラボメン。仲間。私の仲間。私の味方。
彼は魔法少女の味方。ユウリの味方。

・・・・・昨日の記憶はそこまで。
今着ている男物のシャツも、羽織っている毛布もあの鳳凰院のものだろう。

でも―

「・・・・・・私達魔法少女に味方なんているもんか」

鳴りやまない電話を手にとり呟く。誰からだろうか、魔法少女になってから今日まで、実験に巻きこんだ人間以外の電話は受け足らないようにしてきた。
最初の頃は頻繁に電話もメールもあったが・・・・今ではもう親からすら毎日はかかってこない。
どうでもいい。昨日はユウリの事を知っている男に、それも魔法関係で、だから珍しさに興味があっただけで他の他意など無い。あってはいけない。私はユウリじゃない。あいり。“希望ではなく呪いを願った魔法少女”。
飛鳥ユウリのように優しい魔法少女でも、鳳凰院凶真が知っているような希望を願った魔法少女でもない。
だからきっと、このまま一緒にいたら幻滅される。
今ならまだ命の恩人としてプラス面で印象に残っているはずだ。

「なんせギリギリで助けてやったわけだし?まさに魔法少女って感じだったよね?あっ・・・でも・・・・・」

最初はクールに会話していたはずだけど鳳凰院との会話はなんか地が出てしまったというか割と話しやすくて油断したというか楽しかったというか気づけば私はユウリと一緒の時みたいにベラベラと喋ってしまって―――

「あう・・・・口悪い子って思われた・・・・・?」

それに思い返してみればユウリの事で泣いているところを見られてしまった・・・・・それに簡単な嘘に騙されてユウリと彼がいわゆるオトコとオンナな関係と早合点して・・・・・エッチな子とも思われたかもしれない。

ユウリは味方なんていないと心に戒めをしいたのにだんだん昨日の事を思い出してオロオロとうろたえる。
起きたならさっさとユウリの事を聞いて立ち去ればいいから関係ないといえばその通りだがそれはそれ。

「うぅ、おまけにその後に地面とのディ―プキス・・・・・お風呂入ったらすぐに寝るとかお子様すぎる・・・・・」

(ユウリ、私はもしかしたら彼にすっごくダメな子ってみられたかも・・・・・ごめん・・)

私のせいでユウリは口悪い生意気な、そのくせ泣き虫でエッチでファーストキスがアスファルトで初めてきた男の人の家でシャワー借りて警戒心ゼロですぐ寝る愚行を犯した訳のわからない魔法少女になっちゃったよ。
今の私はユウリだからきっと彼に誤解された。ユウリはちょっと変な子だと。
私のせいでユウリが――――

「・・・・・・・ん?」

いやまて、彼は確か私とユウリが別人たと気づいていたんじゃ?なら―――

「・・・・・ぁっ、なぁーんだ、だったら―――」

大丈夫。
恰好付の口悪い生意気なそのくせ泣き虫でエッチでファーストキスがアスファルトで初めてきた男の人の家でシャワー借りて警戒心ゼロですぐ寝る愚行を犯した訳のわからない魔法少女として認識されたのはユウリではなく『私』という事で―――

大丈夫ッ☆ やったねユウリ!

「――ッなわけがねえ!!!」

ガッツポーズをとって・・・・すぐに折りたたみ式ベットから勢いよく立ちあがり吠える。
つまり私は彼から“そういう子”として見られたという事だ。命の恩人もクソも無い。
改めて自分の姿を確かめる。下着と・・・・大きさからみて彼のシャツと薄手の毛布―――以上!

「はっ・・・はしッ・・・・・はしたない!?」

願いによりユウリと同じになったサラサラの金髪長髪は背中を撫でる様に流れ、よれよれの男物のシャツからは首元をさらし屈めば見えてはいけない場所が見えそうだ。下の部分からはシャツで隠れてはいるがパンツが見えそうで見えない、目のやり場に困りそうな、いや足そのものを主張するように毛布の隙間から・・・・・足先からシャツの裾までを覗かしている。ユウリは寝るときにお腹の部分のみ毛布をかけて寝ていた、・・・・・・つまり寝ている間は下着が丸見えのopen combat――――――?

「う・・・・うわぁあああああああああ!!!?」

未だに鳴りやまないケータイを握り潰しそうになりながら再び毛布に包まりながら悶える。
見られた?否、見させた?見せた?私が?自分から?HENTAI?

「ユウリ!どうしようユウリ、私ってHENTAI?はしたない子?違うよね?私―――」

この年頃の女の子でこの醜態。女性からはどうあれ男性からはどうなんだろうか。
昨今の日本において少女や女に幻想を抱くなよ とよく言われるようになったこの頃とはいえ―――

「し・・・・死んじゃう・・・・・恥ずかしさで死ねる・・・・・・・・ぐす」

この少女は羞恥心をもって悶えていた。というか泣き始めた。
顔を羞恥で真っ赤にしたユウリ(あいり)は毛布の中でぐすぐす鼻を啜りながら今は亡き親友にどうすればいいか相談していた。返事の有る無しは関係ない。取りあえず縋りつく存在を求めて毛布の中で泣き続け――――

「―――――って違うぞ私!」

―――再び立ち上がり吠えた。

「さっきから何でそんなこと気にしてんだ私は!!アイツにどう思われようと関係ないじゃん!!!」

だらしないところを見られたのがユウリだったら嫌だけど他人ならへっちゃらだ。気にしない気にしない。
それにアイツがユウリじゃなくて私の事をHENTAIと思っているならユウリの威厳(?)に傷はつかない。
大丈夫大丈夫大丈――――

「大丈夫ぅ・・・・うぅ・・・ぐす・・・・ぜったいみられたぁ・・・・・」

そしてまた毛布に包まる。朝から彼女は浮き沈みが激しかった。
目尻に涙を浮かべながら彼女は落ち着こうとベソをかきながらも楽しかったユウリとの思い出に現実逃避していた。が、ケータイのバイブに・・・・意識を現実に向け改めて自分の状況を確認する。取りあえず変な事はされてないっぽい。衣服がずらされていたり体がべたついたり蚊に刺されたようなあとも無い。それにひとまずの安心を得て今度は周りに気を配る。耳を澄ませても人の気配がしない、遠くから車やエンジンの音が聞こえるくらいだ。

「・・・・今何時だろ」

目の届く範囲に時計が無いので彼女は毛布を引きずりながら寝室とリビングを遮るカーテンの元に移動する。
目に溜まった涙を、ベソをかきながらカーテンを開けてリビングの様子を顔だけを出して確認する。気配はしないが念には念を だ。寝起きの、それもこんな姿を付き合ってもいない男に・・・・いや、付き合ってもしばらくはダメだ。寝起きを見られる・・・・・見せるってどんな上級者だ!私はまだ中学生だ、学校には行ってないけど。これ以上の辱めは許さない。絶対にだ。

「いない・・・・・よね?」

いない、誰もいない。ユウリの視界には人はいない。もちろん幽霊も妖怪も魔女もいない。
なので彼女はずかずかとテーブルの有る所まで進みリモコンで見たい訳でも時計を確認するためでもなく、ただなんとなくテレビの電源を入れた。そしてテレビから流れてくる音が耳に入ると、ユウリは息を吐いた。

ここが“ちゃんとした場所”として存在している事に・・・・・人のいる場所としてある事に

「―――――ん、よかった」

自然そう呟いていた。
テレビの上の時計で現時刻を確認し、ソファに身を委ねる。
テーブルの上にはカップ麺と魔法瓶、そして書き置きのメモ。

朝ごはんたべてくださいね
私達学校に行ってくるからあとで話聞かせてよね
昨日はありがとうございました
エル・プサイ・コングルゥ

・・・・・昨日の会話のやりとりから誰がどれを書いたのか、分かる様な気がする、試されているのだろうか?
ユウリは取りあえずカップ麺に使うお湯を調達するため立ち上がる。ここにはポットが無いのでヤカンで沸かすしかない。
座ったばかりで面倒くさいと思ったがそれはそれ、安心してというか落ち着いて食事をとれる事に悪い事は無いと、これからどうしようとかと思いながら立ち上がる。
そして未だにしつこく自己主張を繰り返すケータイにようやくまともな意識が向かう。しかし―

「・・・・・・・誰?」

ディスプレイには『岡部倫太郎』の文字。

「・・・・・・・?」

首を傾げる。彼女の携帯に男の名前が記載されているのは別に不思議ではない。親や親せき、実験に利用している奴等のがある。しかしこの『岡部倫太郎』の文字に身に覚えが無い。登録した覚えもない。男の知り合い自体が少ないのだ、ならばこれは誰だ?とユウリはケータイを耳に運ぶ。

(・・・・どこかで聞いた事がある様な?)

最近聞いたような・・・・・昨日登録した(された)のは鳳凰院凶真だから違うとして――
まあ誰でもいいかと通話をボタンをON。

「もしもし」
≪・・・・・・・≫
「・・・もしもし?」
≪・・・・・・・≫
「もしもーし!!」

さんざん自己主張しといていざ通話に出ると電話先の相手は何も答えない。もう一度もしもし?と尋ねるが応答は無い、朝から意味の分からない醜態を晒す事になった始まりの電話だけにユウリはイライラしながら大きい声でもう一度声を出した。もしかしたら此方が電話に出なかったのを理由に対しての仕返しかもしれないと、そんな器の小さな事をする奴がこんなに電話をかけ続けるのか、大事な要件じゃないのかとか考えきれず乱暴な言葉でユウリは叫んでみたが電話先の相手は何も言わない。電話をかけておいて繋がったに気づいていないかのような無視っぷりだ。

「―――ッ、無視すんな!」
≪・・・・ッ・・・・・・ッ≫

耳を傾げると向こうは電話が繋がったというのに別の存在と、恐らく近くにいる相手と話していて電話が繋がった事に今気付いたらしい、慌てた様子の声が機嫌の悪くなったユウリの耳に全て届く前に―――

≪―――すまん、繋がっている事に気がつか―――≫
「朝っぱらから誰だお前は!だいたい電話かけたんならちゃんと対応しろよ非常識!!いたずらだと思うだろうがバーカバーカ!!!」

幼稚かもしれないが朝の鬱憤を全部この知らない誰かにぶつけた。どうせ名前も憶えていない相手だ、実験の被験者かもしれないが関係ない。別に被験者の一人や二人どうなろうとユウリには関係ないのだから。

≪すっ、すまん指圧師!・・・・もといユウリ。なかなかでないモノだからキュウべえとの会話に夢中になって―――≫
「・・・・ん?」
≪ユウリ?≫

気のせいだろうか、電話から聞こえる男の声は先ほどまで自分を辱めた(ということにした)人間、鳳凰院凶真その人の様な感じがする。
彼はユウリの携帯電話で昨日勝手に向こうのアドレスを登録していたので此方に電話をかけることはできる。だからケータイから彼の声が聞こえてきてもそれは怪奇現象でも何でもない。

「・・・・・・ん?」
≪・・・?もしもし、ユウリ?≫

しかし、ケータイを顔の前に持ってきて確認してもディスプレイには『岡部倫太郎』の文字しかない。
ちょっとだけ昨日の記憶が蘇る。


『俺の名は鳳凰院―――』
『オカリンだよ』
『・・・・・鳳凰院オカリン・・・・ハーフ?キョ―マじゃないの?』
『まどか、人の自己紹介に口を挟むのは感心できないぞ』
『だってオカリンちゃんと名前言わないもん』
『先生ちゃんとお願いします』
『ほむほむまで』
『ほむらです』
『ユウリよ、俺の名前は鳳凰院『オカリン』凶真だ――――ってまどかぁ!』
『・・・・・ミドルネーム?』
『岡部倫太郎が本名だからね。あ、私は美樹さやか、よろしくね』


改装終了おかえりなさい世界。つまりあれか?普段は鳳凰院凶真って厨二な名前を豪語している猛者のくせにケータイのプロフィールには本名である岡部倫太郎で登録しているということか・・・・・・・その結果私はまた彼に電話に出るのが遅い恰好付の口悪い生意気なそのくせ泣き虫でエッチでファーストキスがアスファルトで初めてきた男の人の家でシャワー借りて警戒心ゼロですぐ寝る愚行を犯した訳のわからない魔法少女として再登録された事だろう。

「・・・・うっ・・・・うく・・・」
≪ん?なんだって?ユウリ―――≫
「・・・・・うぇえええ」
≪ええ!?どうした!?なにがあった・・・・今はラボか?すぐ戻るか――≫
「くんなばかぁー!!!」

先ほどの混乱からまだ完全に立ち直っていないのにさらに混乱が後押しして混乱がぶり返してきてなんかいろいろ訳わかんなくて再びぐすりだした。
彼女のなかでは昨日会ったばかりの年上の男の人に恰好良い所を見せたのは最初だけで、あとは世間知らずのはしたない口悪い女の子というレッテルを貼られたのと同義であり、それは中学生の少女としてはかなりアウトでそのうえ誰にも見せた事が無い肌を寝ている間に観察するようなHENYAI厨二の男性にみられるコンボで私は汚されたと、ユウリの体なのに実際は私の体なのにゴメンと謝って結局――――恥ずかしくて訳分からなくて泣いた。






閑話休題

≪え~・・・・・落ち着いたか?≫
「だまれ・・・・ぐす・・・・しんじゃぇへんたい・・・」
≪・・・・・なぜだ・・・・ほんとに大丈夫か?なんなら迎いに―≫
「きたらころすから・・・・コルのえさにするから・・・・」

私はしばらくの間泣き続けた。
迷惑をかけたと思った。彼は私をあやそうと電話越しでアレコレ話しかけて落ち着かせようと四苦八苦しながら現在いるであろうバイト先の学校からラボに戻ると何度も言ってきたが、私はそれを全部断った。
ぐすっ と何度も鼻をすすり、その度に心配そうに声をかけてくる彼には申し訳ないが、今彼が目の前に現れたら間違いなく「コルノ・フォルテ」をけしかける。
さんざん泣いているのを聞かれていながら私はまだ見栄を張っていた。ソファーの上で毛布を頭からかぶり膝を抱えて倒れているよわよわしい姿を見られる事を拒んだ。
これ以上ユウリの姿で情けない所を見せる訳にはいかない。

≪――――で、――――なんだが――≫

これは別にユウリの姿だからという精神的防御ではなく決して自身の醜態をこれ以上晒したくないという事ではないからねユウリ。と自分に言い訳しておく。

≪――――どう―?≫

取りあえずこれ以上コイツに関わっていてはいろいろボロが出そうなのでケータイの通話を切ろうとボタンに指をそえた。

≪―――聞いてるか?できれば返事がほしいのだが≫

・・・聞いていなかった、テレビの上の時計を見ると意外と時間が過ぎていた。
返事?そえられた指をいったん離して聞き返す。これを聞いたらもう絶対いつも通り、クールな私になってユウリの話を聞いてここからオサラバだと決意する。

「・・・・・・なに?」
≪いやだからさっきから言ってるだろう、ユウリ―――≫

さっきからと言われてもこっちはずっとこれ以上ないくらい混乱の極みなのだ、話を聞いてもらえるだけ感謝しろと思いながらテーブルの上の魔法瓶からコップに中身を注ぐ。









≪―――――俺と付き合ってほしいと言っているんだが≫
「うんわかった」


コップから溢れだす琥珀色の液体を眺めながら私は―――

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほぇ?」
≪うむ、了承もされたしさっそく―――≫

あまりにも自然に彼が告白してきたのでうっかりOKを出してしまった。
あれだ、「またな」って言ったら「じゃあな」。「いくか」って言われたら「いこう」。「ぬるぽ」ときたら「がっ!」って返す世界共通のあれだ。自然すぎてあっさりきっぱり返事をしてしまった。してしまった。

≪俺は今日ニ限目までしかシフトが入っていないからな・・・・街にでも乗り出すか?≫
「それってデー・・!・・・・いやいやまてまてまってまってよ!?」
≪ん?どうした?≫

彼は平然としている。
こっちが人生初めての告白・・・・・それも年上の男性からの突然の申し出だ、これ以上ないくらい混乱の極みだと言ったばかりだが何だコレ?なんでいきなり?ユウリ、私いきなり告白されたよどうしよう?こんな時はどんな顔をすればいいの?笑えばいいの?
いやいや先に確認だ!昨日から私は早とちりの連続だ、これ以上の失態は死ねる。人は羞恥心で死ねる。ソウルジェムが有る分それは謙虚に現実性をはらんでいるし・・・・・羞恥心の場合ソウルジェムはどう反応するんだろうか・・・・・・いやそんな考察は後だ現実と戦え私!

「え?えっと・・・・なななんで?なんできゅうに?」

大丈夫か私?彼に声はちゃんと届いているか?ろれつは?返事しちゃったどうしよう!
取りあえず確認だ!さあ来い!!

≪急にって・・・・昨日言っただろう?≫
「えっ・・・・え~と?」

昨日?中身が空になった魔法瓶を左手で置いたり持ったりしながら昨日の彼との関わりを思い出す。彼が私に惚れたとすれば魔女の脅威から恰好良く助けに入った時だろう・・・・その時の会話に確か――――


『まったくだ、基本的に一人で戦うお前達を尊敬するよ』
『他の連中は知らない、私は一人で戦うわ』
『強いな』
『お前らが弱すぎるんだ』
『おまけに可愛い』
『―――ふん、ユウリだからな』


コレか!?これだな!!これしかないな!!?うんッ、これだ!!!!
なんだ朝から自分が情けないとか だらしないとか はしたないとかなんとか思っていたけどコイツは最初から私のことをちゃんと分かっていたようだ!
ふふ、そうだよ昨日の私はピンチの時に現れた主人公のように魔女を圧倒して倒したのだ、おまけに今はユウリの姿・・・・・完璧じゃないか!

≪思いだしたか?それでお昼頃街に――≫
「うんわかっ――♪」

朝の悩みの大半を一気に解消され言われるまま彼の言葉に同意しようとして――――

「いやいやまってよストップ!!?」
≪今度はなんだ?≫

急いで止めた。熱くなりすぎだ私、クールになれ。STOP温暖化!
もう一度、いいかクールになれ私、告白されたのは私だ 主導権はこっちにある!
落ち着け、私はそんな軽い女じゃないぞ冷静に対応するんだ!
そもそも付き合うって決めてないしさっきのは急だったからノーカンノーカン、私はユウリのためにやるべき事があるんだ!ここは『悪いけどアンタとは付き合えないよ』と恰好良く振るべきだろう・・・・深呼吸深呼吸・・・・・よしいくぞ私、言ってやれ!

「・・・あにょ・・・ほらわたしたちャきのうあったばかりで・・・その、まだややいっていうか・・・・」

台詞が考えていたのとは全然違った!なにより噛みまくった!『にょ』ってなんぞ?呆れたよ自分に!窓はどこだ!飛び出して落ちれば記憶をリセットできるか?チャンスをくださいどうすればいいですか!?教えて神様ティーチミー!

≪そう・・・・か?まぁお前がそういうならそうか・・・・わかった≫
「あぅぅ・・・・」

此方の噛み噛みの台詞をスルーしてくれた彼には感謝すべきだろうか?
流されるとそれはそれで生殺しな感じだ。

なにはともあれ彼は此方の意図をくみ取ってくれたようだ、そこには感謝しなくてはいけない。もしかしたらそのまま流されていたかもしれないのだから。
いまだ高鳴る胸の鼓動を抑えつつ・・・・・残念だったような良かったような心境で彼にお礼と謝罪を告げようとして―――

≪楽しみは“夜”にとっておくか・・・・・ならば昼は外で外食にするか?≫
「ふぇ!?」

鳳凰院凶真の言葉に一気に緊張がはしる。
デートは続行?っていうか楽しみは夜に?『夜』!?
私まだ中学生で未経験でユウリはこっちで私の明日はどっちだ!?

「ななななななんでどうして―――!!!?」
≪お前も了承しただろう、言ったからには責任を持て≫
「そっ・・・そんなぁ・・・」

私は泣きそうになった。確かに返事しちゃったけどあれはノーカンにしてくれたんじゃないのか?昼はデートで見逃すから夜までに覚悟を決めろと?中学生にいきなりその覚悟は重すぎるよぉ。

≪では昼頃にラボに迎いに―――≫
「ひゃわわわわわ!?まってまってそんないきなりそんな!!?」
≪・・・ユウリ?≫
「ひゃいッ!?」
≪大丈夫か?やはり一度ラボに―――≫
「だっ・・・・大丈夫だよ!私が行くから!12時頃学校行くから待ってて絶対待っててちゃんと行くから心の整理をさせてー!!!」
≪おおう!?≫
「後でメールするから!!!」

ケータイのボタンを壊れる勢いで押し通話を切断する。

「な・・・な・・なう?」

自分の口から意味不明な言葉が紡がれる。ケータイを持つ手は汗でぬれて震えていた。

「なあああああああああああう!!!?」

ソファーの上にあった丸い犬なのかタヌキなのかよくわからないヌイグルミを思いっきり抱きしめ悶える。ソファーに倒れた体を起こすことなく足をバタバタと振り回し先ほどの会話を思い出す整理する整頓する理解する。

「なあああああああああああう!!?」

落ち着け私!どうしてこうなった?私が何をした?どうすればいい?とりあえずお風呂か?いやいやお風呂ってノリノリか?ちがう落ち着くためだよ私冷静になれcoolに羽ばたけ!・・・・・意味が分からないホント今日の私に何が起こっているんだ、いつから私の世界は歪み始めた?実はこれ朝から暴走してる私が見ている夢とか妄想なんじゃ?じゃあ何処からが現実で何処までが妄想だ!?
くそ、どうしてこんなことに!最初から冷静で有れば、鳳凰院からの電話をすぐにとっていれば、ちゃんと話を聞いていれば、自分の考えに埋没しなければ――――妄想する事も暴走する事も勘違いする事も泣く事も告白をちゃんと断ることもできたはずだ!
まさかあの鳳凰院はそれを狙っていたのか?もしそうだとしたらかなりのやり手だ。

「ユウリ・・・どうしよう・・・・・・・あの時の私に言ってやりたいッ 軽率な事をするなと!もっと注意を払えと!!陰謀の魔の手は思った以上にずっと身近にあって いつもお前を陥れようと手ぐすね引いているのだと・・・!」

起き上がってダンッ、とテーブルに両手を叩きつける。
そのさいにコップから溢れるほど注がれた琥珀色の液体が目の前を跳びはなる。
テーブルの下を除けばカーペットまでビショビショで―――

「うぅ・・・・・・・もう・・・・ふんだりけったり・・・・・」

肩を落とし脱力する。・・・・・疲れた。
連続した緊張と叫び声で喉がカラカラだった、ユウリは片付けを後回しにし目の前の飲み物を手に取る。
魔法瓶に入っていたものなので、手からキンキンに冷えた感触がある。
ありがたい。素直にそう思えたユウリはその新たに開拓した味覚に雄々しく挑戦した英雄的ドリンクを一気に喉に流し込んだ。

「ぶッ!?」

そして豪快に吹いた。
まどか印特製『芋サイダー』を。










見滝原中学校


『ユウリはなんだって?』

キュウべえの言葉に岡部は答える。

「ああ、料理の買い出しに付き合ってくれるようだ。昨日教わった料理を作ってくれると言っていたし・・・・・まあ、とりあえずそれは夜からだな。昼は俺とユウリとお前しかいないから楽しみは夜にとっておこう。マミも誘ってみるか」
『マミも?』
「彼女は我がラボの要になる。今日中にラボメンに勧誘するさ、昨日は出来なかったし今日の夜はみんなの歓迎会としよう」

岡部はキュウべえに視線を向ける。

「マミは今日学校に来ているか?」
『―――――うん、今は教室にいるみたいだよ』
「そうか、ではマミにも軽く挨拶をしておくか・・・・・って授業開始の時間か、割と長電話してたな」
『ならその間もっと話を聞かせてほしいな 僕も君の言う未来ガジェットには興味があるよ』
「それは何よりだ相棒、FGMシリーズの開発にはお前の力が必要不可欠だからな」

岡部はキュウべえと今後の方針を話す。
やるべきことは沢山ある。
だからできるところから、今のキュウべえに話して大丈夫なラインギリギリまでを見極めて、確実に未来を勝ち取るために前進する。

『そういえば昨日マミは知恵熱で早退したって言ってたよ』
「知恵熱?」

よく分からないがそれが原因で彼女は・・・・・・・?昨日?

「・・・・・俺が原因か?ていうか俺だ」
『?』

昨日はマミに要らぬ誤解から迷惑をかけた、自分ではちゃんと謝罪をしたつもりだがそれがより状況を悪化させたようだ。あの後結局倒れたマミは教室に戻ることなく家に帰ったと聞いたが・・・・・うん。

「それもふまえて全部話そう」
『よくわからないけどキョ―マはマミに告白したんだよね?一昨日マミから相談されたんだ』
「コクハク?・・・・告白・?・・・ああカミングアウト」
『いろいろ相談されたんだけど知っての通りその手の事(恋愛うんぬん)にはうとくてね』
「頻繁に(男の魔法関係者との接触が)ある事ではないしな」

岡部は未だにこの世界線のマミに自分が魔法関係者であることを伝えたと勘違いしていた。

『マミの返事は?昨日は結局よくわからないまま寝込んじゃってさ』
「まだもらっていない・・・・・そうだな、次の休み時間の間に返事を――」
『念話があるよ』
「授業中だろう・・・・・・次の休み時間に返事を聞きに行くと伝えてくれ」
『うん分かったよキョ―マ』

どこまでも平行線のままの会話はそのままマミに伝わった。
ゆえに――

『マミ』
≪どうしたのキュウべえ?≫
『キョ―マが次の休み時間に告白の返事を聞きにくるから待ってて欲しいだって』
「きゅっぷい!!!?」

三年の教室で突如奇声を上げる少女が生まれた。
巴マミは知らない。
岡部が魔法の関係者であることも、魔女と戦った事も、キュウべえの姿を視認でき昨日から会話を続けていた事を、現在進行で岡部の頭の上でくつろいでいる事を、一昨日の告白は本気だったのかと混乱する頭で、クラスメイトと教師から視線が注目されている巴マミは何もかもが分からなくて顔を真っ赤にしてプルプルと突然の情報に体を震わせていた。




岡部は間違えたのかもしれない
間違いなのかは分からない、その先の未来は誰も観測していないのだから。
ただ、未来視を持つ少女の観測した未来で

今日いろんな女性・・・・・少女達を勘違いさせたまま、地雷原を歩く事になることを、今の岡部には知るすべが無かった。






とある教室にて


かしゃん

その音を聞いた生徒達は喉に溜まった唾をゴクリッと飲み込んだ。

「・・・・・・・・」

授業の準備をしていて筆記用具を落としたまどかは無言でそれを拾う。

――ひっ
――ばかッ動くな
――どうしてこうなった
――・・・・こわい

その動作一つに教室各所で小さな悲鳴、それを抑える生徒達の小声の会話が聞こえてくるが鹿目まどかは気にすることなく落ちたシャーペンをいじりながら暁美ほむらと美樹さやか、そして志筑仁美に尋ねる。

「・・・・・ねぇ」
「「「はいなんでしょうかまどかさん!!!」」」
「ええ?なんで敬語なの三人共?」

一瞬前まで普通に会話をしていたのに急に敬語になった友達に戸惑うまどか。
だが真に戸惑っているのは彼女のクラスメイトだ。
一瞬前まで、まどか達はケータイのボイスレコーダーをONにした仁美から昨日何があったのかをアレコレ聞かれていてソレドレと答えていた。
岡部討伐ミッションを失敗した生徒も戻ってきていて、一限目の授業の先生が遅れているので皆それぞれのグループに分かれて気ままな時間を過ごしていた。それは何処にでもある普通の学生の光景で――――しかしそれは突然やってきた。
鹿目まどかが志筑仁美からの質問を周りのクラスメイト全員から聞かれている事に気づかぬまま答え、授業に使う教科書や筆記用具を取り出したその時――――

後にクラスメイトはこう答えた

――――ゾッ としました
――――いきなり空気が固まった
――――気温が下がったんです
――――ええ“あれ”です

「え~・・・・と」
「・・・・?」

まどかのきょとん、とした顔を見てさやかは視線を逸らす。
さやかはどう言うべきか分からなかった。なにせ彼女は皆の様子が変わった事に、変わった原因に気づいていない。いやもしかしたら周りの皆の変化にも気づいていないかも知れない。それほど彼女はいつも通りだからだ。

「?」

さやかの視線を追って周りに視線を向けるまどか、そこには―――――

―――ポケモンってさー
―――なにー?
―――最初は小動物っていうか昆虫みたいのが多かったじゃん
―――うん
―――でも今は怪獣みたいのが多いよな、あんなのが街の外にいたらヤバいだろ?
―――確かに、一歩も外に出れないね!・・・・ときにピカチュウの進化なんだけど
―――うん?
―――私あれは認めないわ、あれは進化じゃなくてメタボよ!
―――・・・・なんて危険な台詞を・・

いつも通りのクラスだった。
彼らは瞬時に別の話題にシフトして難を逃れる。
まどかは首を傾げながら視線を三人に戻す。

「・・・・?どうしたの?」
「いや・・・・・なんでもないよまどか」
「・・・・?あっ、そうだ!ちょっと聞きたい事があるんだ」
「・・・・なに?お手柔らかに頼みよ」

さやかが代表して答えた。どうせ彼が何かしたんだろう、まどかが反応するくらいの事を。
いいかげん慣れよう、今に始まった事じゃない。今回はどんな事をした岡部倫太郎。

「オカリンを『ヒキリン』と『ショタリン』にするならどっちがいいかな?」

・・・・…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・意味が分からなかった

彼は何をしているんだろうか?






未来ガジェット研究所


室内をウロウロしながらどうしようかと考える。
初告白初デートだ、何を如何すればいいのか分からない。
どんな服を着ていけば?会話は?いやそもそもデートするべきなのか?
アレコレ三十分以上は悩んでいる。

(・・・・・こんな時ユウリなら)

悪ユウリ―既成事実で一生アイツを下僕にすればいいんだよ!アイツも戦えるし使えそうだし良い買い物っしょ!あいりドーンとやっちまいな!

天ユウリ―ダメだよそんな事!いいあいり?デートコースは男に任せてどっしり構えておくんだ、がっついちゃダメ!最初は優しくボディタッチから

頭の中で二人のユウリがそれぞれの意見を伝えてくれるが過程は別だが結果が同じに収束していた。
悪魔と天使のユウリが半端に結託しているから私の理性が孤独に別の可能性を支持している。
違うのユウリ、私が聞きたいのはゴールまでのプロセスじゃなくて返事の仕方とか着ていく服とかどんな話をすれば場を濁すことなくいられるかを教えてほしくて・・・・・・・・じゃなくてデートに行くか行かないかを――

悪ユウリ―このご時世に社会的信用を盾にとれば全てはあいりの思うがままだよ!使えるうちは使って用が済めば貯金箱にすればいいよユウリ!

天ユウリ―経済面も大切な要素!向こうから誘ったんだから確かめるためにもこっちから財布を出しちゃNG!イケルイケル!

悪・天ユウリ―あの雰囲気ならイケルイケル絶対大丈夫!

「うぅ・・・・」

天使と悪魔が完全に同盟した。とりあえず行くべきなのか?最悪貯金箱にする?生きるのにはお金が必要だし・・・・・

悪・天ユウリ―そうそうヤッちま―――

「そうだ素行調査だ!アイツが信用できる奴か隠れて調べるべきだよね!?そうだよね!!?その通りだよそうときまればさっそく潜入だ!!!」

幸いユウリ(あいり)の魔法には潜入等には有効なものがある、見滝原中学校の制服も簡単にコピー出来る。
ユウリは頭の中の雑念を振り払い立ち上がる。
行くべき場所は鳳凰院凶真がいる見滝原中学校。

悪・天ユウリ―チッ

ユウリは頭の中の雑念を振り払い立ち上がる。
行くべき場所は鳳凰院凶真がうる見滝原中学校。
頭の中の友人が舌打ちをした事は無理やり聞こえなかった事にした。






前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.025656938552856