『アトラクタフィールド理論』世界は、世界線と世界線収束範囲【アトラクタフィールド】でできている。世界の構造は“より糸”のようなもの。いくつもの可能性世界線が重ね合わせの状態になっていて、それらは常に無限個に枝分かれしている。それら一つ一つが違う世界。似ているけど違う別の世界。世界線。より糸を全体からみると一本に見えるが、ミクロなレベルで見るとより細い糸が絡み合うように世界を構成している。そして、最終的にそれらの細い糸は一つに収束する。経過は違うが結果は同じになる。世界線の収束。分岐はするが結末が同じ。そして、その収束範囲内にある世界線の束(無限個に枝分かれしたより糸)が、アトラクタフィールド。そして、そのアトラクタフィールドもたくさんある。まどか達のいる“本来”の世界はアトラクタフィールドμ。範囲内にあるのはμ世界線。岡部がいた元の世界はアトラクタフィールドβ。範囲内にあるのはβ世界線。今、岡部とまどか達のいる世界はアトラクタフィールドχ。範囲内にあるのはχ世界線。それぞれμ世界線やβ世界線やχ世界線を、範囲内にたくさん内包している。それこそ何億個、無限個という数を。μ、β、χのアトラクタフィールドそれぞれのより糸を絡み合わせる。アトラクタフィールドも世界線同様に、重ね合わせ状態になっている。それぞれのアトラクタフィールドごとでは、起きる事象も収束する結果も違う。干渉性は損失している。それぞれが独立をたもっている。元を辿れば一つ、アトラクタフィールドもさらにマクロな視点で見れば収束はするが、そのスパンは何百年というレベル。より大きな分岐点といえる。χ世界線0.091015朝食のカップ麺。これはいい。昨日の夜と同じだがラボには基本的にはインスタントラーメンしかない。ちゃんとした材料があればご飯を作ってあげようと思い日々忠告しているがいまだに改善される事が無い。冷蔵庫にはドクターペッパーと調味料、私が作った“飲み物”しかない。飲み物だが『女の子の手料理には価値がある。それを手にするためなら全てを賭けよ。無償で手には入らない、勝ち取れ、努力せよ。それは数に限りがあり相応の対価が必要である。手に入れたものは英雄であり勇者であり先生兼師匠。今後の学校での安泰と引き換えに得る青春。妨害よし、共闘良し、策略よし。この聖戦には年齢性別環境全て関係無し。女の子の手作り。青春とは、恋愛とは勝ち取るものだ!ただし上条!!テメエはダメだ!!!』それが私達クラスの見解だ。いかなる困難にもめげない精神が必要らしい。『女の子の手作りのためなら新大陸発見してくるよ!』『たとえ火の中水の中、空の上でも!』『金神片発掘してくる!』『パンツ!』『最強の魔導書を見つけてくる!』『てけり・り!』『手始めにラピュタから――――』『バルス!』『巫女の封印を解いてくるよ』『ゼロ時間!』・・・・・・ウチのクラスの男子(一部女子)ならかぐや姫もビックリな事も成し遂げそうだ。(クラスの男の子は女の子の手料理のためなら全力で全開で頑張るって言っていたけど、オカリンはちがうのかな?・・・・・・・食べたくない?)視線を横に、彼は五人分のカップ麺にお湯を注いでいてこちらの視線に気づいていない。ご飯は彼が用意してくれているので自分は飲み物を準備するために此処にいる。「うんっ・・・しょっ」「まどか?」「ん~・・っと、みんなの分の飲み物の準備」「ドクペしかないぞ?」「いいの」小さな踏み台を使って台所の上にある戸棚から飲食店で使われる水差し、ピッチャーを取り出す。身長が低いので踏み台を使ってギリギリで手が届いた。それに満足し冷蔵庫から昨日持ってきた飲み物をピッチャーに投入し、ヤカンに残ったお湯を少しだけ入れよくかき混ぜる。(これなら喜んでくれるよね?)「・・・・・まどか?」「特製!」笑顔を彼に見せ自作の、父・和久にも内緒で作った自信作。冷蔵庫から彼の好きなドクターペッパーを数本取り出しピッチャーに入れ軽く混ぜる。ここで気をつけなくてはいけないのは炭酸がぬけないように軽く混ぜることだ。「うん!―――完成!」大変良くできました。「ねえオカリンこれね―――」「ふっ、真のドクターペッパリアンは別の容器に移したりせずダイレクトにそのまま飲むのだ」こちらの言葉を遮るように宣言した彼の言葉、それはつまり私の飲み物は要らないという事。こっちに視線を合わせることなくテーブルにカップ麺を運ぶ彼。「・・・・・・・せっかくがんばって飲み物作ったのに」「・・・・飲み物?」「いいよもう、みんなに飲んでもらうから、オカリンはそのままでいいよ」せっかく作ったのに!と、その様子から『私怒ってます』というオーラが漂っているが岡部はそれについて何も言わない。それがいっそうまどかの反感をかっているのに気づいていながらだ。(せっかく夢の中のことについては見逃してあげたのに・・・・・もうしらない!)夢の中の出来事である。岡部には責められる謂れもないのだがそれはそれ。しかし岡部の態度、仮にも自分を慕う幼馴染の手料理をないがしろにしてしまったが許してほしい。何せ彼は近くで見てしまったのだから。彼女の手料理(?)を。岡部視点まどかは取り出したピッチャーに冷蔵庫から“何か”をつまんで投入し、余ったお湯をピンポン玉サイズの“何か”が沈む程度まで注ぎかき混ぜた。「・・・・まどか?」「特製!」いい笑顔だった。怖くて聞けなかった。そしてそのあと再び冷蔵庫から我が愛しの知的飲料水。20種類以上のフルーツを使ったフレーバーなドリンク、ドクペをピッチャーにいれ“何か”とフュージョン、シンクロさせ未知なる存在をこの世に創生した。ドクペの本来の色、黒い“何か”、あとはお湯を入れただけなのに何故かその色は琥珀色。その見た目はとろみをつかったのかタプタプと弾力があるように見える。「うん!―――完成!」嬉しそうな自身に満ちた幼馴染たる少女の声。もはやとるべき道は一つ。戦術的撤退である。チンッ!ほむらが電子レンジからキュウべえを取り出す。『暁美ほむら 体を乾かすのに電子レンジは違うんじゃないかな』「知らないの?昨今の電子レンジで出来ない事は無いのよ」『確かに日本の電子レンジで作れない料理は無いと言われているけどこれは違うよね』「綺麗に乾いているわよキュウべえ、そのまま湯たんぽとして―――――踏むわ」『君は僕の事を踏むのが好きだよね』「勘違いしないでちょうだい、私が貴方を踏むのはちゃっかりまどかとお風呂に入ったからであって別に好きで踏んでいる訳ではないのよ」『ツンデレ?』「ふん!」べしんッ!「踏むわ」ぶぎゅるッ!!!フローリングの床に叩き付け、抉りこむように捻りを加えながらキュウべえを踏むほむら。「気持ち悪いわね、何処でそんな言葉おぼえたのかしら」『昨日キョ―マから“勘違いしないで”って言う少女の事はツンデレと思えばいいって聞いたよ』「・・・・・・貴方達そんなくだらない事話してたの」『だいたい僕をお風呂に叩きこんだのは君じゃないか』「だから?それが貴方を踏んではいけない理由になるの?」『え?原因は君なん―――』ぶぎゅッ「憶えておきなさいキュウべえ、人は感情で行動する生き物よ。貴方はまどかとお風呂に入った。だから踏むの。理屈じゃないわ」『人間が争いを止められない原因だよね』「例え間違っていても人は守るべき人のために戦わなくてはいけないのよ」そう、例えそれが間違った、誰かを傷つけてしまっても戦わないといけない事がある。『それが感情?』「ええ、それが感情よ」美樹さやかは思う。転校生の性格が変わりすぎだ と。最初は状況の分かっていないハムスターみたいにオドオドしていたのに今は気力ゲージがビンビンでブートキャンプをやり始めた皇帝ペンギンのようだ。男子三日なんたら、出会いは人を、経験は人格を と言うがほむらは女子だし僅か一日足らずでこのありさまである。(クラスの連中驚くだろうなー、・・・・・・いや割と受け入れられそうだ)あっさりと、なんせあのクラスだし。あんなクラスだし。あと宇宙人に誤った真実を教えないでほしい。間違ってはいないんだろうが何かが間違っている。このままでは宇宙の人(?)に間違った認識をもたれてしまうような気がする。使いどころを間違えている。・・・・・・・間違いが多い子になっていた。「ああもうっ!ほむらが暴走してるし早く起きなって!」ゆさゆさと目の前の毛布に身を包ませている女の子の体を揺らす。流れる金髪、自分達と同じ年齢ほどの小柄な少女、憶えていないが命の恩人、魔女と戦う運命の魔法少女。なかなか起きない少女にさやかは眠る少女の頬に手を伸ばす 伸ばして そのまま「ほんとに気持ちよさそうに寝てる・・・・」触れることなく、その顔に視線が引き寄せられる。ユウリ。小さな女の子。昨日簡単な自己紹介のときの第一印象は不気味だった。彼女は何もない空間から鹿・・・・・牛?を召還した。漫画やアニメ、ゲームのように。普段ならきっと歓迎した、感動した。現実にはあり得ないと理解していながらきっとどこかに存在しているんだと。子ども心に夢見ていた。そしてそれは現実に。タイミングが悪かったとしか言えない。知ってしまったから、魔女を、悪意を、人の死を。あれが―――奇跡。あれが―――夢見た現実。漫画やアニメ、ゲームの中だけにあった、夢見た現実の片割れ、奇跡。ヒーローがいるなら悪党もいる。正義があれば邪悪もある。ヒーローがいるから悪党がいる。正義があるから邪悪もある。そんな、バカみたいな事を考えてしまった。そんな、どうしようもない逃避を一瞬でも感じてしまった。あの魔女と、化け物と同じ非現実そのものだから。(だから最初はこの子の事も得体が知れなくて怖かった・・・・でも)魔法。奇跡。祈りの代償に魔女と戦う事を選んだ人。あの化け物と戦う力を持つ人。怖かったのは、不気味に思ったのはその一瞬だけ、あとは尊敬と、少しばかりの憧れ。魔女と戦う事に対し恐れていない堂々とした姿勢、強い意思を感じる瞳。恰好良かった。聞いた話になるがあの魔女を苦戦することなくあっさりと倒したらしい、それを当然と、たいした事ないと言う自信。岡部が教えてくれた魔法少女の事、人生を一生魔女と関わって生きていく事になんら臆することなく平然としていた精神。(私もそんなふうに、恰好良くて勇気があればな・・・・)美樹さやかには想い人がいる。上条恭介。美樹さやかの幼馴染にして、世間から将来を有望されたヴァイオリニスト。まどか達と同じクラスメイトだが現在彼は事故により入院している。命に別状は無いが事故の後遺症として左手の指が動かせない状態である。さやかからの好意には気づいていない。子どものころからの付き合いのためその手の意識、異性としての意識に乏しい。容姿鍛錬、中性的な顔立ち。女の子にモテるが、さやか同様その好意に気づいていない。アタックしてきた少女達の想いを単純な友達としての好きと勘違いする朴念仁。対価なく、代償なく女の子の好意を、手作りを得る者。クラスメイト曰くリア充。主人公。岡部曰く某メサイアパイロット。「本当はあたし、キュウべえに言われた時に、恭介の手を元に戻してほしいって・・・・そう祈ろうとしたんだ、だけど・・・・ね」魔法少女の人生は過酷だ。岡部の話を聞くまでどこか楽観していた、簡単に考えていた。祈りの、願いの対価に悪い魔女を倒す。魔女は分かりやすいほど悪い奴で人の敵。たしかに怖いけどキュウべえ曰く不可能を可能にしてくれる奇跡と引き換えなら、誰かのため、魔女と戦う事ができるなら、ヒーローのように、アニメに出てくる魔法少女のように悪い魔女を倒す事が出来るならそれはとてもいい事だと思ってしまった。まどかもいる、ほむらもいる、岡部倫太郎もいる、だから大丈夫だと思っていた、話を聞くまでは。「やっぱり・・・・怖かったんだ・・・・・・・それに気づいて」幼馴染の怪我を治す願いに躊躇している。だって彼は言った。一生関わる事になる。戦い続ける。ソウルジェム。平穏ではいられない。守りたいほど孤独になる。死ぬ。周りの人達にも。生活。一人。お金。祈り。願いの対価。グリーフシード。身捨てきれるか。人生。まだ中学生。躊躇ってしまった。人生全てを捧げることの重大さに気付かされた。「だから・・・・・・さ」そんななかでさえ、まるで動揺することなく、変わらぬ態度のままであるユウリに、その強さに、その姿勢に、その精神に美樹さやかは強い尊敬と、憧れを抱いた。「あたしはアンタの事が――――」「惚れたか?」「ほぇ?」突然後ろから岡部の声。「さっきから呼んでいるのだが・・・・・のびるぞ、ラーメン」「あっ、あれ?」気づけばずっとユウリの横顔を見ながら考え事をしていたらしい。「ユウリちゃんまだ寝ているの?」「うん、ありゃ全然起きる気配ないわ」まどかの問いにさやかは左手を振りながら答え右手でカップ麺をすする。もう起こすのは諦め四人でカップ麺をすする。キュウべえは残りの、余った麺だけでいいらしい。ユウリの分の残ったカップ麺は岡部が食べる。ユウリは岡部、キュウべえ、まどか、ほむら、さやかと順に起こしにかかったが一向に起きる気配が無い。「寝かせてやろう、せっかく気持ちよさそうに寝ているのだから」毛布に包まれながら身を丸め、幸せそうに眠る彼女を岡部はそっとしておこうときめ、皆に無理に起こす必要はないと伝えた。岡部は思う、彼女は普段どんな生活をしていたんだろうかと、別の世界線にて岡部はラボ(または仮の寝床)に泊めた少女達のことを思い出す。少女達のなかには帰るべき場所が無くずっと一人で過ごしていた者もいた。そんな少女達のほとんどは最初は岡部に対し警戒はするが、いざ寝るときになると決まってぐっすりと眠りにつく。ときに悪夢に、ほとんどが悪夢にうなされている少女もいたが次第に岡部との、自分の事を、戦っている自分の事を見てくれている人の存在に気付くと、岡部がヨコシマ(ただのロリコン野郎)な奴ではないと分かると安心して、幸せそうに眠るものが大半だった。孤独な人生で、生活で、誰かがいてくれる場所。自分の事を分かっていてくれる人がいる場所。その存在と有り方を認めてくれる。此処にいてもいいんだと思える――――居場所。そんな安心していられる所での睡眠は、ある特別な意味もあるのかもしれない。「――――未来ガジェット研究所はそのためにある」安心して安らげる居場所を。あの頃のラボがそうであったように。かつての巴マミの自宅がそうであったように。一時的でもいい、安心して休める場所を、その役割を果たせるなら是非もない。寝室で今も眠るユウリの方に視線を向け小さく呟く。「ん?オカリンどうしたの?」「いや、なんでもないさ」「岡部さんニヤけて・・・・・あの子に欲情したとか?」「失礼な事を言うな!」「・・・・・オカリン?」「手伝うわ」『キョ―マ、ほむらが☢マークの入った時計をまどかに渡してまどかが君の背後に立つまでの動作を流れるように行ったよ』「はやっ!」「そら見たことか!落ち着くんだまどか、この俺が中学生ごときに欲情などするものか!」「オカリンは魔法少女が大好き!」「はあっ!?」『そうなのかい?』「「・・・・・うわぁ」」まどかの発言に岡部が驚きキュウべえが訪ね、ほむらとさやかが引いた。「いきなり何を言い出すんだまどか!?違うぞみんな!俺はいたってノーマルだ!」『キョ―マ、魔法少女は魔力である程度体調、プロモーションが維持できるから君達で言う綺麗所が多いよ―――』「それは何のフォローになるんだキュウべえ!」「あたしは信じてますよ岡部さん、今まで彼女を作らなかったのは好みの人がいなかったんですよね?そりゃなかなかいませんよね、ええ普通は」「信じているのか!?それは俺を信じての発言なのか!」「そうやって知らない振りしてオカリンは沢山の女の子に貢がせるヒモ野郎になるんだ!そうなんだ!オカリン私にはオカリンの事が分かっているんだからね!幼馴染の私に隠し事なんかさせないんだから!!!・・・・・・・ほむらちゃんヒモってなんだっけ?」「この世のクズよ」「幼馴染なのに信用度が最悪だと!?くっそ昨日のミス・カナメといい親密度が高い関係ほど信用してもらえないというのか?どんだけ俺に厳しいんだこの世界線!」「ちなみに岡部さんエロ本とか持ってんの?やっぱり少女モノ?」「・・・・・あるんですか、まどかが来る家にそんなものが」「よし!まどか、ほむら、せっかく男の人の家に来たんだからお約束なイベント!エロ本探そうよ!」(ふっ、なにを馬鹿な事を、紳士にして狂気のマッドサイエンティストの俺がそんな低俗な物を所持している訳が無いだろう)「馬鹿め!女に見つけきれる訳がないだろうが!」「オカリン、きっと本音と建前が逆だよ」「しまった!?」「「しまった?」」「いや違うんだよ君達、決して俺はロリコンではないし魔法少女が好きという変態でもないしそもそもラボにエロ本など無い!」「過去にオカリンはトイレの貯水タンクに袋に入れた・・・・・女の人が裸で移ってる本を、天井の照明の裏に・・・・女の人の水着の人のえ・・・・・エッチな本隠してた!」「どういうことだ世界!!!」ばれてんじゃねえか!どういうことだ世界!!朝から女子中学生にエロ本の存在を知られた!!!・・・・・・というかどうして見つけきれるんだろうかこの幼馴染。そしてエロ本の行方は?未来ガジェット研究所は朝からにぎやかなスタートをきった。限時刻AM6;10「ねえねえほむらちゃん、私が作ったジュースどうだった?」「え・・・・・と・・・」『「「・・・・・・」」』視線を周りに向けると全員から逸らされた。彼女の味方はどこにもいない。世界は一人で戦う事を彼女に押し付けた。「どうだった?まどか印特製『芋サイダー』」大切なまどかから、純粋な無垢なる期待に満ちた求める答えを欲しがるとても可愛らしい罪悪感が欠片も感じられない笑顔、ほむらに残酷な質問を問う笑顔だった。「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・新たな味覚の開拓に雄々しく挑戦して華々しく散っていった英雄的ドリンクな感じがして・・・・・とてもおいしかったわ」「ほんと?やったー、まだいっぱいあるから沢山飲んでね!」「・・・・・・うん、楽しみにしてるよ・・・まどか」岡部、さやか、キュウべえから見たほむらの後ろ姿は嗚咽するように、口元を押さえていた。ちなみにそのドリンク、キュウべえが食したさい・・・・飲んだ際に「ごふっ!?」とむせた。『ごふっ!?』ではなく「ごふっ!?」である。お分かりいただけるだろうか?インキュベーターたる彼(彼女?)が念話ではなく己の口で「ごふっ!?」とむせたのだ。発音、発声したのだ。これはほむらの記憶にある限り初の快挙(?)である。『芋サイダー』なる存在の破壊力がどれほどか分かってくれるだろうか?ちなみに各コメントにて「甘いとか辛いとかじゃなくて・・・・・辛かったわ」「急に視界が暗くなってきてとても怖かったんだ・・・・」『訳が分からないよ』「俺の選択は間違っていなかった。これがシュタインズ・ゲートの選択だ」「おいしいよね」「「『「!?」』」」まどかの曇りなき眼での発言に全ての者が驚いた。閑話休題。寝ているユウリに書き置きを残し、岡部達は朝早い時間からラボをでていた。理由はさやか。彼女の制服は昨日の魔女騒動で使い物にならない。なので自宅に帰り予備の制服をとりに行くのだ。また、ラボに泊って制服紛失の言い訳、否、“外で”遊んでいたら汚してしまったなど言い訳をしっかりと考えてもらいたい。ご両親に誤解を与える訳にはいかない。教師職業の人間が肩身狭い時代なのだ。それはまあ別として。「必殺技?」「うむ、魔法少女には必殺技が、それの名前が必要だ」「やっぱ必殺技は叫ばないと駄目ですよね岡部さん!」「その通りだ!」「必殺技かぁ」「・・・・・・・・厨二病乙」「「「え?」」」「はっ?いえなんでもありません!」「ほむらちゃんやっぱり――」「貴様は――」「@ちゃんね――」「まどか美樹さん違う!―――そう私は@ちゃんとかそんなんじゃ――!」『ぬるぽ』「がっ!」「「「・・・・・・・・・・・・」」」「・・・・・・キュウべえ?」ぎぎぎっ、と首だけを動かし岡部の頭の上にいるキュウべえに視線を向けるほむら。その視線には怨念とも殺気、いやそれを通り越して殺意を抱いていた。『・・・・キョ―マがこう言えば君とのコミュニケーションが円滑になると――』「なるかーー!!!」閑静な住宅街に中学生の叫び声が響いた。AM7;00「・・・・・落ち着いたか?」「ぜえ、ぜえ・・・・ええ、なんとか」事情により手が出せないので足で岡部を蹴ろうと切磋琢磨していたが事情ゆえに余り動けずそのまま息切れを起こしたほむら、ギロッと視線で睨みつけるが岡部は呆れるだけだった。「“その手を”――」「いやです」宣言。キュウべえは首をかしげ、岡部は呆れ、まどかとさやかは苦笑した。「まあいい、話を戻すが魔法少女が必殺技を叫ぶのは意味がある」「「だよね!」」「・・・・・そうですか?」まどかとさやかは同意し、ほむらは半信半疑だ。「魔法少女の魔法はテンションによって変化する、それは昨日は話した通りだ」要するに魔法少女達が使う魔法の使い方、それは―――「気合いだ」「「「気合いなの!?」」」「ああ、テンション問題だからな魔法は、それが全てでは無いはずだが大雑把にいえば大部分は気合いだろう」「「確かに」」「・・・・・二人とも納得するの?」先日まどか達は「だから必殺技には名前を叫ばなければダメだろ、常識的に考えて」と論議したばかりであり、岡部の授業を受け続けている。その手の理解は早いかもしれない。「『うおー』とか、『おりゃー』とかでもいいが・・・・・ふむ、魔法少女は厨二病の方が優秀なのかもしれんな、あと変身のポーズとか決め台詞とかあったほうが魔力の流れとかにいいんじゃないか?」たぶん、そう言う岡部の言葉にほむらはこれまでの繰り返しの時間軸で思い当たる事がある。ほむらの脳裏に一つ上の少女が浮かび上がる―――ティロ・フィナーレ!!!(・・・・・・思い当たる節がありすぎる)彼女はとても優秀な魔法少女で尊敬する先輩でとても強かった。(言われてみれば杏子も割と叫んでいたし美樹さんも『これでとどめだー!!!』とか叫んでいたような)思いかえしてみれば魔法で戦う皆叫んでいたような気がする。逆に自分は実弾兵器、マシンガンとか手榴弾にRPGなど、叫んでも威力に意味の無い物を使っていて・・・・・・・?(・・・・・・叫ばないから攻撃用魔力が無い?)いやいやそんなまさか・・・・・だがしかし―――あれー?「ほむらちゃん?」「なんで急にう~う~言ってんだ?」“事情”により己の手で頭を抑える事が出来ないほむらはう~う~唸っていた。「では諸君、英雄殿の自宅に着く前に一つレッスンだ」「わかりました!」「うわわ!?」「ほッ、ほむら!?」ほむらにとって岡部はどこか気に食わない存在だが言っている事には納得できる部分もある。自分がこの先どうなるかまだ分からないが聞いていて損は無い、ならば学べることは学ぶべきだ。それは結果的に大切な人達を守る力になるはずだから。「では三人共思い浮かべろ。フリルのついたスカート、ふわふわな装飾の着いた淡い色のガウン、そのなかには黒のインナー」岡部の言葉に三人はそれぞれの想像を固めていく。ほむらはもちろん、まどかとさやかは奇跡を、魔法の存在を知ってから少なからず興味があったので割と真面目にイメージしていく。そして――「某超時空シンデレラのポーズを決める――― 上条恭介の姿を」―――――見滝原の平和は僕が守る! キラッ☆「「「ぶほぉッッッ!」」」吹いた、しかし三人の中の想像で生まれた彼は割と似合っていた。さやかの自宅に到着し、さやかが拳骨一つで親からの制服損失の件の許しをもらい皆で登校中のこと。「あらあらまあまあ?」「おはよー仁美ちゃん」「おはよう、仁美」「おはようございます志筑さん」「え~と、鳳凰院先生“これ”は?」「・・・・いろいろあったのだ」「まあ!それはまさかでまさかですの!?」志筑仁美。まどか達のクラスメイトの彼女はまどか達三人にケータイのカメラのフラッシュを連続でたきながらテンションを上げていた。三人の“状況”ゆえに。「一晩でそんなにも三人の仲に進展が?」「あ~、仁美実はさ――」「暁美さんの雰囲気が 状況の分かっていないハムスターみたいにオドオドしていたのに今は気力ゲージがビンビンでブートキャンプをやり始めた皇帝ペンギンのようですわ!」どっかで聞いたことが有る様なフレーズだった。「それはつまりなにがあれでこれがあれ?何か人格に変化が訪れるほどのあれこれが?」「いやいやちょっと落ち着きなよ仁美―――」「一緒にお泊りしたんだー」「やっぱりですのー!」まどかの証言に一気にテンションが上がり「そんな女の子同士でなんて――!それは禁断の!」「だから落ち着きな―」「女の子だけじゃなくてオカリンもいたよ?」「禁断がさらに同時で同期で同日同意でー!!?」「まどか少し黙っててー!」「あとユウリさんもいたわね」「倍プッシュがきましたのー!!!」まどかに続きほむらの不必要な不誠実な発言により志筑仁美はお嬢様にあるまじき大声を上げ走り去った。誰も見た事が無いほどの、とてもとても良い笑顔で。すんげぇいい笑顔で。「いきなりが4・・・・5Pだなんてハイレベルでハイリスクでハイテンションでとても輝いていますわー!!!」「ちょっと待て仁美!!アンタ朝っぱらからとんでもない誤解をばら撒くなー!!!」ハイテンションでハイリスクにハイレベルで暴走している少女がいた。残念ながら自分達の大切なクラスメイトで友達だった。見滝原中学校の廊下美樹さやかは正直困っていた。唯一フォローしてくれそうな岡部は今はいない。職員会議だ。役に立たない。「・・・・・ねぇほむら」「なに美樹さん?」さやかは“このまま”教室に入ろうとしている朝から“デレた”ほむらに一応確認するが彼女は分かっていないようだ。まどかにいたっては―――「さやかちゃんどうしたの?」まるで気にしていない、“この状況”に対しまるで違和感をもっていない。仁美があんなに暴走したのだ、このクラスは基本的にアレなのでおそらく同じ反応をする。さやかは左手を、まどかは右手、ほむらにいたっては両手を動かせない“状況”。それにいたったほむらの“事情”。「入るよ?」「え?まっ――」さやかの静止は間に合わず がらっ と教室の扉を開けたまどか、教室内にいた生徒、クラスメイトが自分達に振り返り挨拶を―――「「「はあ!!!?」」」「「「ええええええ!!?」」」「「なんぞー!?」」「やっぱりあれでこれでそれでどれですのー!」「「「きゃー!!」」」「「「「ガッッデーム!!!!」」」」視線と共に驚愕の叫びの嵐。「一晩で何があったんだ!」「そんなー!俺密かに狙っていたのにー!!」「私も狙っていたのにー!!」「どっちをだー!!!」「くっそ、たった一日で二人を攻略しただとー!!?」「転校生があんなに積極的だったとは!」「不覚!不覚でゴザルー!!」「昨日は状況の分かっていないハムスターみたいにオドオドしていたのに今は気力ゲージがビンビンでブートキャンプをやり始めた皇帝ペンギンのようになっているし!!!」やっぱりどこかで聞いたことのあるフレーズだった。「いやこの場合むしろ美樹達が手を出したんじゃ!?」「「「「「混ざりたかった!!!」」」」」「私もよー!」「「「さっきから誰だー!?」」」あんまりな混沌に他のクラスの生徒達も廊下に出てきて様子を窺う。「さらにそこに昨日は金髪の女の子と鳳凰院先生を含めた禁断で禁句で言葉にするのも禁則事項の禁書な禁止で危険なあれでこれでそれだったんですのよーー!!!」『きゃあ―!!!』 女子『ぎゃあー!!!』 男子まどか達はユウリの容姿について教えていないハズだが第六感を超え第7感【セブンセンシズ】で予測した未だに良い笑顔で悦に入っている暴走お嬢様の言葉でさらに混沌は加速し駆け上がる。『『オオオカカベェええええええええ!!!』』―――ヴォン!―――キイイイイ!―――ぎちぎち―――10・・・9・・8・・―――ヴヴン!―――スタンバイ・レディ?―――ギュイン!―――ヒュィィイイ!男子(一部女子)は各製作の未来ガジェットをロッカーから取り出し起動させ、それぞれが岡部がいるであろう職員室に駆け出す。この感情は憎悪の空きたりて、正しき怒りを胸に、彼らは唯一殴れる存在を襲う。彼ら彼女らは行く。分かっている。彼らは皆理解している。これはただの八つ当たりかもしれない。やっかみかもしれない。間違っている。道理に非ず。理解しているのだ。分かっているのだ。―――だがこれとそれは別だ。彼らは理屈で動いているのではない、心で、感情で動いているのだ。人は感情で動いている。「快」「不快」の違いがあろうと人はそれで動く。例え間違っていても、敵わないとしても“戦うべきときは戦う”。彼らは知っている。“奪われる事は悪なのだ”。失うことは―――諦める事は悪なのだ。だから―――いく。その感情に嘘はつけないから。どこまでも間違いまくっている彼らは教室から飛び出した。彼らは皆教室から飛び出す前にケータイのカメラを3人に向けていた。状況の分かってなくて戸惑うまどか、どこか此処じゃないどこかを夢見るさやか、“二人の間に入り腕を組んで指を絡める・・・・恋人繋ぎで仁王立ちするほむら”。ラボを出た時からずっとこの状態だ。どういう訳か暁美ほむらはデレた。まるで、長らく友達と過ごしていなかったのが反動で爆発したように。この様子だとHRまで(もはや行う事ができるか定かではないが)このままかもしれない、ほむらと繋がれた小さな、柔らかい手は未だにしっかりと繋がれている。さやかはさすがに恥ずかしくてほむらに尋ねる。「・・・・・ほむら、もういいだろ」「・・・・・やっ」そんなほむらが、ちょっと可愛いと思ってしまった美樹さやかだった。この世界に岡部は存在していなかった。いまの岡部の因果は世界により設定されている。“岡部倫太郎がこの世界にいたらこうなっていたハズ”。それが世界が岡部に与えた設定。世界の対抗処置。因果をもたない、しかし持たないゆえに未来に影響を与えるまどか達魔法少女に、世界線に多大な影響を与える。世界線の収束。過程が変わろうと結果は変わらない。あらゆる因果がそれに収束させるために動かされる。世界が決めれば死ぬべき人間はその時まで絶対に死なない、捕まるべき人間は何をしても絶対に捕まる。例え小石だろうと落ち葉だろうと、それらが銃弾をはじき足を滑らし逃走を許さない。あらゆるものが操られる。しかし岡部は因果を全く持たない。持たないから世界の意思に囚われない。世界の収束に逆らえる。それも凡人より多大な因果をもつ魔法少女達に。未来に多大な影響を与えるまどか達に。時にそれは世界の分岐点で。決められた未来の道筋が大きく変動し続ける。本来は内気な女の子が自身に満ちているように。未来を予知する巫女が別の未来、『別の世界線を観測』したように出会う事がなかった少女達が出会うように。岡部が存在するだけで世界線は刻一刻と変わっている。岡部が持つリーディング・シュタイナーが反応を示さないほど小さくだが、確かに世界に影響を与えている。リーディング・シュタイナーが反応しない。本来なら世界の再構成が起きる分岐点。それがこの世界線。本来のμ世界線――――では無い。アトラクタフィールドαとβに存在し、μには存在しない岡部倫太郎が存在することで生まれた世界線。交わることの無かった世界線が交差した世界線。アトラクタフィールドχ。世界が岡部にとった世界の応急処置。岡部倫太郎に因果を与える事。世界が収束するように、世界には抑止の力がある。外敵に対し拒絶する力がある。因果の無い岡部は常に世界から弾かれる。ふわふわと存在があやふやだ。“過去が無い、未来が見えない”。“タイムリープ先に過去の自身がいない”。世界が収束するように、世界には抵抗力がある。ウイルスに対し世界には抗体の力がある。幾度も繰り返すうちに学習する。世界の収束を、因果を狂わせないように与えていく。いきなりでは駄目だ、世界への影響が大きい。彼の関わる人物は皆未来に影響を大きく与える者ばかりだから。徐々に与えていく。世界は学習する。岡部倫太郎はどんなに排除してもアトラクタフィールドμに戻ってくる。誰かが彼をここに送り込んでくる。ここに留めようとしている。だから生まれた世界線。アトラクタフィールドχ。“岡部がアトラクタフィールドμにいた場合の世界線”。未来が決まっていない世界線。生まれたばかりの世界線。岡部がいることで存在する世界線。岡部がいないと存在できない世界線。世界線μと隣り合わせの世界線。いまだに脆く儚い、壊れやすい世界線。常に、文字通り無限の可能性がある世界線。岡部は未だに世界から弾かれ続けている。存在を否定されている。世界線χそのものの存在がまだ薄いから。岡部はタイムリープしようとすれば、その瞬間世界から弾かれる、ただでさえ因果が無い身、世界はここぞとばかり岡部を世界から拒絶する。今いる世界線から弾かれ別の世界線へ。タイムリープ先は別の世界線μ。初めてこの世界線に来たように岡部はそこで目覚める。岡部が存在しない世界で、存在しないはずなのにタイムリープできる。“タイムリープは記憶を過去に転送する”。記憶だけ、肉体は違う。だが岡部はタイムリープすることができる。“記憶の転送先に肉体が準備されている”。恐らく岡部をこの世界に招いた存在。“NDメール”、失われた過去の哀愁【ノスタルジア・ドライブ】を概念兵装にした存在。何故かは分からない、誰が何のためか分からない、岡部はあの“連中”の目的が分からない。――――いや、うすうすと分かってきた。そして岡部が世界線μに跳んでくる度に生まれる。世界線χ。繰り返す度に世界は岡部を拒絶しながらも受け入れる。繰り返すたびに岡部には徐々に因果が生まれる。世界から設定される。まどかの幼馴染という役を 与えられた。未来ガジェット研究所が 存在した。いつの間にか、徐々に、世界に影響を与えないように。世界に岡部を取り込んでいく。アトラクタフィールドχは強固になっている。世界は、存在は『観測』される事で現実になる。未来視で数多の別の世界線χを観測する事によってそれは加速している。複数の可能性世界線を観測することでアトラクタフィールドχを補強していく、してしまう。世界は因果を持たない岡部に因果を与える。矛盾を生まないように、バランスを崩さぬように。繰り返すたびに岡部倫太郎は世界に捕えられていく。世界に捕まる。そして問題無く収束していく。世界は 『鹿目まどかが魔法少女になる』 ことに収束していく。あとがき当方の作品に対し考察検証、ご自分の考えを教えていただき心からの感謝を やる気が出てきて本当に助かっています。人数は増えてきた説明文は大抵出てきた、ならば後は行くのみ!当物語に最後までお付き合いいただけるよう努力いたします。