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No.28292の一覧
[0] 【ネタでしかない】とんでも少女王(十二国記×???)[流印](2011/06/11 09:06)
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[28292] 【ネタでしかない】とんでも少女王(十二国記×???)
Name: 流印◆3f7abc8f ID:4e91d614
Date: 2011/06/11 09:06
 本作はネタです。
クロスオーバー作品は最後に分かると思いますが、捏造設定満載です。
TS要素あり









 芳国に一声――峯王即位。


 先王仲韃によって荒らされたものの、彼の暴虐の王を討った元恵州侯月渓により王無き長い時を耐え抜いた芳に麒麟旗が上がった時、誰もが月渓こそが峯王になるに違いないと思われていた。
 それほどまでに彼の仮朝によって芳は良く纏まり、沈みゆく国を保っていたのだ。
自分は王の器ではないと渋る冢宰を仮朝の者たち全てがなだめすかし、昇山を行わせた。
これでいよいよ芳の陰陽の理が整う、これからの芳の未来は明るいと誰もが思っていた。
 だがしかし、実際に王位に就いたのは月渓ではなかった。
それどころか、芳の民とも言えぬ海客の少女だった。
それは酷く気配の薄い少女であった。
外見は銀糸の如き流れる白銀の髪と紅玉の瞳を持つ美少女であるにも拘らず、その少女は奇妙なまでに印象に残らなかった。
 単体で見れば美しいと言わざるを得ない紅玉の瞳は茫洋として、ピクリとも動かぬ表情は作り物めいた違和感を覚えさせた。
いうなれば幽鬼、屍が無理やり行動しているようにしか思えなかった。
麒麟でなくとも分かる、この少女に王器などという物は存在しえない。
 だというのにこの少女が王だと峯麒は言う。
何たる不幸、天は芳を見放したもうたか。
皆がそう嘆いた。
結局、朝の者たちへの謁見の間、新王が物を語ることは一度もなかった。

 朝議が終わって、月渓に与えられた部屋に次々と客が訪れ、芳の未来にについて不安を皆が語った。
月渓にはしばらく様子を見てみようとしか返すことができなかった。
そうして慌ただしく時が過ぎ去り夜半となり、やっと人の訪れが止まった。
嘆息を一つ。
「これから芳はどうなっていくのだろうか」
 誰にも明かすことができなかった月渓の本音。
百官の長である彼もまた唯人に過ぎず、それ故に現状に対し諸人と同じく不安を感じていた。
 そんな時だ、彼の部屋に新たな客人が訪れたのは。
「冢宰、起きていらっしゃいますか?」
 その真から善良なるものでなければ出せないような柔らかな声、芳麒だ。
慌てて、自ら扉を開けて宰輔を出迎えれば彼は恐縮したように言った。
「夜分遅くに申し訳ありません」
「いえ、かまいませんよ、台輔。それで、このような夜更けにいかなる御用ですか?」
「その前に、冢宰、時間に都合をつけることができますか?」
「それは可能ですが……、どういう御用なのでしょうか?」
 少々きな臭い。
そう思う月渓の内心を知ってか知らずか、芳麒は言った。
「どうか主上とお会いになって頂きたい」

 灯の明かりすらない暗い回廊に二人分の足音が響き渡る。
月渓と芳麒だ。
彼らは無言のまま、新たなる峯王が待っているはずの廂房に向かっていた。
 ただ足音のみが響く中、無音に耐え切れなくなったのか、先に話を切り出したのは月渓だった。
「何故――、何故朝議では何も語られなかったのに、今主上は私を呼び出されるのでしょうか?」
 それは疑念。
良き官吏が多い中、それでも悪漢が潜む宮中を生き抜いた者が備える危険への言及だった。
 それに気づいているかいないのか、軽い口調で芳麒は返す。
「あの時主上は居られませんでしたから。とりあえず、先ほど参られて、芳の現状について知りたいと言われたので、冢宰に御労足を願っているわけです」
「朝議に主上が居られなかった……? そんな馬鹿な。では台輔、朝議にて御身が礼を取られた相手は誰だったというのです。あれが影だというのならば、貴方は礼を取ることなどできないはず。それができるようであれば、貴方は麒麟ではありえない」
 先行していた芳麒が月渓に向き直る。
彼は笑った。
「確かに、あれもまた私にとっては主上であることは否定しません。もっとも、主上にとっては代えに利くものらしいが」
「……。どういうことか伺ってもよろしいですか?」
「ええ、構いませんよ」
 百官の長の問いかけに麒麟は軽く返した。
「あの場にいらっしゃったのは主上そのものではなく、主上の玉体だったというだけの話なのですが」
 月渓には芳麒が何を言っているかが理解できなかった。
玉体、それが主上の体のことを指していることは分かる。
だが、宰輔の言っていることの意味が分からない。
それではまるで、朝堂にいた主上は抜け殻に過ぎなかったとでも言いたいかの様に聞こえてしまう。
本来、人の精神と肉体は不可分だ。
それを分かつことなどたとえ神仙になろうとも人の身でできる所業ではない。
それができるというのならば、芳の玉座に着いた少女は人ではありえない。
「ええ、そうです。私が王気を感じたあのお方は元より人ではありませんでした。蓬莱の仙、その中でも人の身から昇華した存在であると伺いました」
 驚きに振り返る。
「主上は人ではないと、人でないものを主上につけた、そう台輔は言われるのですか」
 何かが腹の裡でむくりと頭を上げた。
それは黒々とした何かだ。
どろどろと灼熱に溶けるそれに急かされるように月渓は峯麒を睨み付けていた。
「台輔、貴方は芳の民がどれほど新王の登極を望んでいたのかをご存じない。どれほど彼らが真摯に祈り希ったのかをご存じない。知っているのならば、そのような得体の知れぬ者を登極させるなどという無道できる筈も無い!」
 気付けば罵声を投げかけていた。
それに対し、峯麒は項垂れる。
それを見てますます、腹の裡の黒蛇が暴れ狂おうとする。
 負の循環が始まろうとする最中、鈴の音のように澄んだ声が二人の間に割って入った。
「ああ、全く以ってその意見は正しいと思う。正直、俺も王になんてなりたくなかった」
 そこに王がいた。
外見的特長は長堂で見たときとまるで変わるところは無いというのに、明らかに違う。
あの時は人であるようには見えなかった。
けれども、今は明らかに人以外の何者にも見えない。
外見からは想像出来ないような、荒い動作が加わっただけだというのに、この場において誰よりも存在感があった。
「でも、それはそいつの所為でも、ましてや俺の所為でもない。強いて言うなら、天とか言うあやふやなものの所為だろう? あまり攻めないでやって欲しい。そいつは何度も俺以外の王を探したんだ」
 知っている。
芳の神獣は国中を駆け巡り、王を探した。
そして、彼女以外に王に相応しいと天が認める相手はいなかったのだ。
「まあ、いなかったらしいけどな。ホント、困った話だよ。俺にはこんなことをするより大切なことがあるんだけどな」
「……それは?」
「主上!」
 芳麒の制止を無視して王は告げる。
「妻を護ることだよ。彼女が言わなければ王なんてものにならなかった」
「…………」
 正直、馬鹿にされているように感じた。
けれども同時に彼にはそれを否定できなかった。
芳の民草を見捨てるには、余りに小さい理由だがけれどもそれは当たり前すぎる心の動き。
 元よりこの世界の住人であれば王の家族もまた仙籍に入ることができる。
だが、この少女が存在していたのは蓬莱、王ならば虚界を越えることができるが、仙でもない者は超えることなどできないのだ。
 そこでふと疑問を覚えた。
では何故、彼女はここに居るのだと。
その妻――蓬莱の仙は同性婚もあるのであろう、恐らく――を護ることが王になることよりも大切だというのならば、最後まで彼女は王になることを拒否した筈だ。
彼女はきっと一番大事なことを見失わない、そのような強さを持っていると月渓はこの短い対話の内に察していた。
 では何故――彼女はここに居るのだろう。
それを問いかけると彼女は申し訳なさそうな顔をした。
「そうだ、俺にとってこの国よりも妻の方が重い。だから、俺は普段彼女の元に居る」
 ?
どういう――まさか!?
 疑問が月渓の心に浮かび、そしてすぐにその回答が出た。
―――あの場にいらっしゃったのは主上そのものではなく、主上の玉体だったというだけの話なのですが
―――蓬莱の仙、その中でも人の身から昇華した存在であると伺いました
 ならば、通常では考えられない方法がある。
その肉体はあくまでも王そのものではなく、王の器に過ぎないというのならば、あるいはその器が複数あっても良い。
 そして、どういう術かは分からないが、この主上の本体は蓬莱と芳の器を行き来しているのだ!
 それは驚異的なことであると同時に――余りにも、芳の民草にとって酷い仕打ちではないのか。
この蓬莱の仙である王は、峯王としての職務を片手間でしかやらぬと言っているのだ。
怒りが五臓を焦がす。
それが逆流してくる前に、王は言った。
「まあ、やるからにはこちらも疎かにするつもりはないよ。けれど、お前が俺を王として認められないなら、俺は王をやめよう」
「はっ?」
「主上、それは!!」
「嫌だったら、いつでも言ってくれ。そうしたら俺はいつでも辞めるからさ」
 余りにもあっけらかんと少女は言い放った。

 だから、月渓は様子を見ることにした。
基本的には主上はほとんどの時間を初めに見た時の様に幽鬼の様な状態で過ごす。
政治の体制は旧来と同じく、月渓を頂点とした構成で動いている。
だから、官僚のほとんどが王を役立たずの様に見ている。
――それがとんでもない間違いであることに気付きもせず。
 確かに王は芳にいない為に自発的にほとんど何もできない。
けれども、蓬莱と芳を自在に行き来できるために、芳の現状と蓬莱の歴史を照らし合わせ、対応策をいくつも導きだした。
王本人は政治家としてはあくまでも素人でしかなく、その計画案にはいくつも穴があったが、しかし月渓を主とする芳の官僚の添削を通ればそれは非常に現実的な対策となった。
元々が、既に行われた実例であり、それを元にしているのだから完全に一から始めるよりも余程即効性が存在したのだ。
 更には、王そのものが蓬莱の仙であったためか、またたく間に芳の陰陽を整え、妖魔のほとんどを国から排除したのだ。
通常であれば年単位の時がかかるそれを、僅か半月でそれを成した。
もっともそれを成した本人曰く、どうしてこんなことになったのか分からない、鷹隼宮の結界が解れていたのでそれを何とか直しただけなのにということらしいが。

そして、五年が経過した頃にはかつての芳では考えられないほどに国が栄えていた。
もはや、その頃には少女王を侮る者は誰一人おらず、誰もが王を讃えていた。
もっとも、王は相変わらず、特別な日を除き夜半にしか器に降りないのが玉に瑕だが。

 皆が讃えるその王の名を衛宮士郎という。



あとがき
 とんでもチートになってしまったクロスオーバー物。
HF ture後の士郎が十二国記の王様になりました。をしたかっただけ。
少女の器の正体はイリヤの体です。
原作で明言されていませんが、人形に入る以前使っていた何者でもない体はイリヤのそれであると作者は解釈した為です。リサイクルですね。


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