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No.28234の一覧
[0] 【ネタ・習作】この世界はあなたに優しくない【血と汗と泥にまみれるVRRPGモノ】【更新再開】[大豆](2011/11/20 12:26)
[1] スコップを持ち、森を出よう/魔犬の森1 ※言葉使い修正[大豆](2011/06/08 01:02)
[2] 魔犬の森2/山賊 ※誤字修正[大豆](2011/06/08 21:25)
[3] 廃墟/新しい武器 ※誤字修正[大豆](2011/06/09 11:52)
[4] おまけ ※ちょっと修正[大豆](2011/06/14 21:15)
[5] 魚人の隠れ里/退場[大豆](2011/06/09 21:20)
[6] 雷蹄山のボス/魚人のゾンビ ※スキル欄修正[大豆](2011/06/11 19:59)
[7] 合流への布石/賞金首 ※ここから修正[大豆](2011/11/20 12:19)
[8] 馬のマッハ/行商人[大豆](2011/11/20 12:26)
[9] 膝枕/君に届け[大豆](2011/11/20 12:27)
[10] 土を掘れ2/ケイ[大豆](2011/11/20 12:28)
[11] ステータス/挟撃[大豆](2011/11/20 12:29)
[13] 外からのメッセージ[大豆](2011/11/20 12:32)
[14] ミミズ天国[大豆](2011/11/26 08:26)
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[28234] 廃墟/新しい武器 ※誤字修正
Name: 大豆◆c7e5d6e9 ID:2e564c12 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/09 11:52
<七/廃墟>



盗賊たちは結構な量の水を持っていたが食料を一つも持っていなかったので、チュンは馬を食べた。
血抜きをすると良いことは知っていたので、首を持って振り回したせいで絶命していた馬の首を切り、血を牛乳の入っていた瓶へとためる。
なんか動物の血には栄養がありそうだったからだ。
それらの作業の後、肉を食べたのだが……それが旨過ぎた。
食糧庫とはこういう意味だったのか、と納得したものだ。

肉を食べ、血を飲む。
必要な栄養は全てここにある、とばかりに体が活性化し始めたのを感じた。

馬の肉を保存用に切り分けて取っておくことも考えたが、どうやら袋の中でも容赦なく腐るらしく断念した。
というか剥ぎ取った土佐犬モドキの心臓の、腐敗臭が凄かった。袋の中の臭いはお陰で極悪である。
心臓は問答無用で捨てたが臭いは取れない。その内消えてくれればいいな、と願ってやまない。

という訳で、非常食として二匹の馬を引き連れている。
背負い袋に押し入れようとしたが、生きている生物は入らないようだったので、そのまま引っ張っている。

「ブルッヒ!」「ヒヒン!」
「おーよしよし。そんな嫌がらなくても、すぐには食べないから」

馬たちは逃げ出そうと必死である。
上に跨ろうとして振り落とされたので、今では二本の手綱を束ねて引きずっている状態である。
筋力が上がっていて、今では二馬力以上ということなのだろう。
しばらく引きずっていると諦めたのか、大人しくついてくるようになった。しかし良く見ればレイプ目である。

「ふーむ」

それはさて置き、馬の食べ方について思いをはせる。
馬はガリガリなので、出来ればもっと太らせてから食べたいところだ。幸いそこらに草は生えまくっている。存分に食べてもらおう。それまで大事に育てることにした。
食べ方はどうしようか。塩は手に入れたので、火があればとても満足する料理が出来上がるだろう。フライパンなら、スコップで代用可だ。

「しかしスコップは凄い。掘って良し切って良し叩いて良し、おまけにフライパンにまで使えるなんて」
<アーミースコップていうのがあって、折りたたみ式のそれはさらに多機能なんだって>
「それはぜひ一本欲しい」



馬を引っ張りながらぐだぐだ会話していると、ついに北西の街が見えてきた。
街は遠くから分かるほど、人気がない。
チュンはためらいなく足を踏み入れた。罠などはないと、ケイに聞いたからである。

街は、城壁に囲まれた要塞都市だ。地図によれば外周は数キロにわたる。
都市の向こうには大きな川が流れており、肥沃な大地であったと思わせる。それを反映してか、城壁の覆う範囲はかなり広い。
打ち捨てられた家財に混じり、ところどころに祠がある。何か宗教でも信仰されていたのだろうか。
城壁は民族ごとの紛争に備えて作られることが多いのだが、さて、この世界ではどういった経緯で作られたのか気になるところである。
モンスターに備えるため、であればこの付近に強力な魔物が居るのかもしれなかった。

「そこらへんどう?」
<えーとね、この世界、というか大陸には人型の種族が3つあってね……>

魚人と翼人、あとは普通の人間。

三者は互いに差別し合っており、始めてから3か月後には大規模な戦争も起こるらしい。
それを止めたアバターは、名声ポイントを3000ポイントほど手に入れたとか。
しかしすぐに翼人の戦争推進派に暗殺されてしまったので初のクリア者とはなれなかったとケイは言った。

とにかく、ネットの掲示板によると、この都市はちょっと前に滅んだ都市の様で、結構色んな遺物が発見されるとか。
遺物の中には生活を感じさせる物もあり、プレイヤーの間で様々な憶測が飛び交っている。
魔物が襲ってきたとか流行り病で死んだとか色々と言われているが、現在主力なのは種族の紛争による滅亡である。
少し前は三つ巴の戦いでは無く、4つ巴の戦いだったのではないか、という推測だ。
他の地域で同じような建築様式の廃都市が見つけられていることも、推測の根拠となっている。
つまり現在残っている3種族は他の種族を淘汰してきたのだろう。
そして領土を拡大した結果が、現在の、大陸を三分するような巨大な勢力なのだった。

ただ、種族紛争だけでは無く、モンスターが絡んで壊滅したとみられる都市なんかもあって、VR世界とは言えども複雑に事情が絡み合っているらしい。

<ただ、開拓されている土地は大陸の半分くらいだから、まだまだ未知の種族が居るかもしれないね。大陸も一つじゃないかもだし。>
「壮大すぎて訳が分からないよ」

ちなみにその3つの種族も各々、領土に数か所城塞都市を築き上げている。
潜入出来れば詳しいことも分かるかもしれないが、余所者が入ると即殺されるため潜りこめたプレイヤーは非常に少ない。
例え人間の要塞都市にであろうとも、宗教的な挨拶とかを学んでいかなければ排斥されるらしいのだ(そして学んで行っても反応は冷たい)。

「今さらだけど、文明レベルってどれくらい?」
<えーと、紀元前だよ。とりあえず>
「えぇ……分かりません」
<とりあえず、鉄砲はないよ>
「それは安心だね!」
<私は君の頭が心配かな>

実はボクも結構心配です。

「よーし、えーと馬夫と馬子。君たちはここに繋いでおくから、好きなだけ食べてください」

チュンはレイプ目の馬たち(♂と♀だった)に声をかけると、石の壁にスコップを突き刺し、それに馬の手綱を固定する。
その辺から伸び放題の雑草をもっさりとむしり取って、二頭の前に置いた。

「じゃあボクは都市探索してきます」

そう言って、チュンは廃都市へと繰り出すのだった。



チュンの体力はちょっとしたマラソンランナー並になっているので、休むことも無く廃都市を歩き回っている。
崩れた家具や、時たま見つかる祠など、色々と興味を引かれる物があるが、冒険に使えそうなアイテムは中々見つからなかった。
そろそろ、ケイ経由でネット情報に頼ろうかな、と考えていると、そのケイから声がかかった。

<そう言えばさ、石板手に入れたんだって?>
「広場に埋まってたやつのこと?」

掘りまくって地下2.5メートルくらいの穴の底から掘り出した石板なら持っている。
背負い袋の中、心臓の腐ったにおいがこびりついていてあまり取り出したくはないのだが。

<実は石板見つかるのって結構珍しいことなんだよね>
「なんで? 他の人が見つけたところにいけば有るんじゃないの?」
<それが……>

このゲームはネットで互換されているらしく、石板は一枚発見されると、その場所では以後手に入らなくなるらしい。
既に発見されている石板はどっかの洞窟に行けば読めるようになっている。
賢者の祠と勝手に名付けられている洞窟だ。

<だから、その石板は新しいんだよ。お役立ち情報が載ってることもあるから、発動してみれば?>
「発動?」

スイッチはついていなかったはずだけど。

<刻まれた文字を全部なぞればいいんだよ。右から左に、上から下に、って順番で>
「ネットが無かったら解けない謎が多過ぎる……まぁいいけど」

発動できるならやってみようではないか。
取り出してみると、臭いは随分マシになっている。良いことだ。
ケイに言われた通り、アラビア文字とくさび型文字で作られた横書きの文をなぞっていく。最後の文字をなぞり終えると、石板の文字がうねうねと動き、日本語になった。

「情緒もへったくれもない」
<読めるんだから良いじゃない。チュンは碌に英語も読めないんだから>
「確かにそうだけど」

書かれていた文はとても短かった。



『魔犬の森のボスの弱点は木材である。ダメージ倍率880%』



「………は?」

読み返してみても文面は変わらなかった。
木材て。角材で殴れと?

<……ん? えと。待って……?>

ケイが少し慌てたようにカチカチとマウスを動かし始め、そしてチュンの目の前に文が出現した。

『賢者の言葉を入手しました。名声ポイントを取得しました。「0」→「100」』

えぇー……石板なぞっただけなのに。

「おーい、ケイー? 今月どころか何ヶ月間分もノルマが終わっちゃったんだけど?」

今月10ポイント必要で、来月20、その次は40。つまり三ヶ月間はダラダラ過ごしても死ななくて済むようになった。
ぶっちゃけ運で手に入れたので、感動は少ない。

<ん? ああ、石板発見したら名声ポイント入るから。そうじゃなくて、ちょっと待って。今調べたんだけど、その石板の情報凄いよ。今まで弱点が分かったボスって一つもないみたい>
「………おお、ということは低レベルでもボスを撃破できるかもしれないという……」
<もしかしたらね!>
「ロマンがあるね!」

テンションが上がって来た。
ケイも同意してくれた。

<うん、次の目標は決まったね!>
「いやいやすぐには行かないよ!?」

今すぐ魔犬の森にもう一回行くとかタダの自殺じゃない!? 無理無理! 角材振る前に鎧袖一触で蹴散らされちゃうよ!

「もうちょっと強くなってからじゃないと。」
<馬鹿ね…低レベルでのボス撃破って名声ポイントボーナス半端ないんだよ? ここで余裕を得て、後々楽をしてほしいと言う私の心は分かってくれないのかな……>
「いやしょんぼりされても」

全然分からんわ。

<ヒーローになれるのに……腰ぬけチュン太郎>
「BTFのマーティじゃあるまいし、そんなんで行かないよ」
<……>

ケイはしばらく考えてから言った。

<じゃあ、チュンが行かないんだったら君のデータ消すかな。アタルには、なんかバグったって言うね>
「は!? ちょ、やって良いことと悪いことが」
<あるよね。知ってる。でも私には時々その境が分からなくなるんだ…>

この女……最低だ!

<さぁ、私の娯楽のためにキリキリ働いておくれ!>
「ぐぐぐ……血も涙もない……」

さっきチュンのためとか言っていたのは建前だったらしい。
しかしこいつ、ホントにケイか……? 悪魔でも乗り移ってるんじゃなかろうか。

<ていうのは冗談だよ。というか、勝手にデータは消せないから>
「そ、そう……」

冗談かよ。全く心臓に悪い。

<でもチュンの召喚獣居るし大丈夫じゃない? 巨人の指でパーンてやれば。今なら80パーセントの魔力ダウンでも、たったの4しか減らないし。>
「……まぁ、それはそうだけど」

魔力5しかないからね。でもできればまともに召喚したい。気絶しちゃうし。

<それに、魔犬の森のボス倒せたら、私のアバターと強さが近づくから協力プレイに誘いやすいの。ここはぜひ頑張っていただきたい!>
「うむむ………」
<それに食料の残り、少ないでしょ? そこから一番近いの魔犬の森だよ>
「ぬぬぬ」
<ほら、私のアバターが偶然見つけたアイテムの場所を教えてあげるから>

まぁそこまで言うならやってみようかな。

「わかったよ。賭け事は嫌いな方じゃないしね」

という訳で、次の目的地が決まった。







<八/新しい武器>

廃都市で手に入れたアイテムは意外と有用な物が多かった。

正門から入って、城壁伝いに右へ歩き続けると、4軒目に平凡な意匠の建物がある。
その床板のある位置を押しこむと、地下通路に通じているのだ。
そこには雑多なアイテムが置いてあるが、一つしか持ちだせないようになっているらしい。
すでにケイのアバターが色々試したようで、投げ出そうとしたり、違うところに穴を開けて取り出そうとしたりしたが、全部だめだったとか。

武器も防具もあったがチュンが選んだのはスリングショットだった。
持ち手だけでも50センチあり、ゴム紐の長さもそれに見合った分だけある。かなり大きなものだって飛ばせるだろう。
Y字の枠は黒い光沢のある金属で、殴ればとても痛そうである。
重さも2キロほどあり、石畳に叩きつけると石が砕けるほどである。
ゴム紐が硬くてチュンの筋力でもまともに引けないが、使いこなせれば遠距離攻撃が出来るこれはとても有用な武器だろう。
防具と迷ったが、魔犬の群れでは囲まれたら多分防具があっても意味がないだろうと、遠距離武器にした。

<もっと強そうな武器あるのに>
「直接攻撃するのはスコップがあるからいいんだ」

実際、銀色のスコップ以上の切れ味を持つ武器は無かった。
この銀のスコップ、実は凄い掘り出しものではなかろうか。

<そう? まぁいいか。じゃあ次は、これは掲示板に載ってたやつなんだけど……>

大きな布やら、火種やらを手に入れる。
取得可能なアイテムだけがキラキラ輝いている、などといった演出は無く、ここにある物は何でも拾えるし拾っても罰則はないので、チュンは使えそうなものを片っ端から背負い袋に詰め込んだ。
中に入れた物は衝撃で壊れることもないようなので、割れ物も一緒である。

<その袋、便利そうだねぇ。私のアバターが買ってたのは体積の制限付きだったよ。協力プレイする時はきっと羨ましがられちゃうね>

ケイのアバターが購入したのは行商人かららしい。魔法のアイテムを取り扱っている行商は少ないらしいけど。
良い物はやたらと値が張るのが魔法のアイテムの特徴だとか。

「よし、そろそろ良いかな」

というか袋が重くなって、これ以上は動きに支障が出そうである。
背負うとずしりとくる。
背の重みを確かめながらチュンは歩きだした。

いざ、魔犬の森へ!












その前に。

「ふんぬぬぬぬ……!」
<もうちょっと!>
<あと少し!>

宿題を終えてきたらしいアタルとケイに応援されながら、チュンはスリングショットのゴムを引いていた。
弾は廃都市で拾いまくった瓦礫である。

「!?」

もう少しでマックスまで引き絞れる、というところで指が滑り、瓦礫が恐ろしい勢いで飛び出していく。
その行き先は地面であり、直径5センチほどの瓦礫は地面に暗い穴を掘って見えなくなった。

<全部引っ張って無いのにすごい威力だ!>
<……やっぱり使い勝手悪そうじゃない? 交換してきたらいいのに>
「……スキルとか出ないかな……」

30分ほど頑張って未だに上手く使えないが、その間に筋力が上昇し、上半身がさらにマッシブな感じになっていた。
やっぱり成長速度が異常である。

<……私、筋肉男ってダメなんだよね。暑苦しいって言うか>
<ええ!?>

少々気になる会話も聞こえてきたが、チュンはスリングショットを使うと決めたのである。
今さら投げ出したくはない。
手の汗を拭い、練習に励むのみだ。



それから上空に5つ、地面に8つほど瓦礫を飛ばしたところで、ファンファーレと共に目の前に文字列が出現した。

『スキル:パチンカーを取得しました。』

<来たー! ぱ、パチンカー!? ええっと、狙いが定まるって!>
<名前の割には意外とまともだね>

「よ、よぉし……はぁ……はぁ…」

正直疲労困憊である。ゴム紐かてぇ。
巨大なスリングショットを引く動作は弓を引く動作とほぼ酷似しており、お陰で背筋がカチカチである。
ヒッティングマッスルが超鍛えられる。鬼の顔が浮かび上がる日も遠くはないかもしれない。

スキルを試すためにもう一度瓦礫をセットしてゴム紐を引いてみる。やっぱり硬い。
しかし、筋肉の痙攣でフラフラしていた照準が少し取りやすくなったような気がする。
ギリギリ戦いに使えるかも知れないレベルである。



とりあえず、あとは成る様になれである。
チュンは汗を拭うと、今度こそ、魔犬の森へと歩き出した。



ちなみに結び方が甘かったのか、壁に突き刺さったスコップを残して馬子と馬夫は逃げていた。






魔犬の森に到着する頃には、大分日が陰っていた。
このまま突入するのはいかにもまずい。暗い中で獣と戦うのは愚か者のすることだ。

(今日はやめにして木材の武器でも作ろ)

水の残りは心もとないがすぐになくなると言う訳ではない。
明日は確実に森へと挑む必要があるだろうが、今少しばかりの猶予があった。


それはさて置き、まずは寝床を作る必要がある。
この世界では山賊も出るし、森から魔物が来るかもしれない。
安全な寝床が欲しい。しかし都合よく洞窟などはない。

「そこで活躍するのが、このスコップですよ!」

なかったら作ればよいのだ。
筋力の上昇と銀のスコップにより、掘る速度は昨日の倍以上のはず。そう時間は要らないだろう。

ちなみに今のは独り言だ。暗くてさびしくてテンションがちょっとアレなのだ。
ケイは既に帰宅しており、アタルは母親に「一日3時間までって言ったでしょ!」と勉強に追いやられてしまっていた。受験生の辛いところである。

草原に生える草は、白い小さな、綿みたいな花を付けた植物である。それに混じって、イネ科の、葉っぱがすらりと長い草が生えている。公園とかに生えていて、抜いたら穴がぽこっと出来る、繁殖力旺盛な草である。

それらをスコップが無造作に裁断する。ズシャァ! 断たれる命。哀れ雑草。強く生きろ!

生産性のないことを考えつつ、チュンは穴を掘る。
瞬く間に身長ほどの深さの穴ができ、いつの間にか穴掘りスキルがパワーアップしていた。
パワフルさが増したチュンは、いちいち袋に土を入れて持って上がることをせず、穴の底から地上に向けてスコップに乗せた土をぶん投げていた。
そして、日が沈む頃、スコップの刃先が何かを掘り当てた。

(んん? もしかして……)

土をかき分けると、やはり埋蔵物である。
出てきたのは、石板だった。
背負い袋に放り込んである石板と同じやつである。

「え、えぇー……また出てきたんだけど……」

見つかりにくいんじゃなかったのだろうか。
とりあえず表面の文字をなぞってみると、日本語になった。

『アバターの血液 + アバターの唾液 = 万能薬 ※アバターには効きません』

「つ、唾!? 一体何に使うの!?」

チュンは思わず叫んでいた。

(あ、あー……もしかして召喚獣とかに?)

それなら分からないでもないような……。
うんうんと使い道を考えていると目の前にまた文が出現する。

『賢者の言葉を入手しました。名声ポイントを取得しました。「100」→「150」』

「なんだか勝手にモリモリ溜まっていくなぁ……」

文を見て呆れる。当然ながらありがたみはゼロだ。
なんかその辺の地面を掘ったらモロモロ出てきそうな予感がするのである。

ただ、今回習得できた名声ポイントは先の半分。同じことをしても得られるポイントは減っていくとケイが言っていたことを、チュンは思い出した。

「半分になるってことでいいのかな……? まぁいいや、穴を掘らなきゃ」

背の袋に石板を投げ込み、サクサクと掘り進んで行くと、ここには結構なミミズが居ることに気がついた。
大抵スコップで切断されているのだが、運良く無傷な奴もいる。

(そういえば土の下にはモンスターっていないのかな?)

そう思いつつチュンがスコップを突き刺した時、スコップが土を貫通して何もない空間に出た。
そして、チュンの足元が崩れる。

(うお!?)

チュンは土砂と共に10メートルほど落下し、水しぶきを上げて着水する。
地面の下にあったのは地下水脈であった。

岸など無いトンネルのような水路である。
流れが速いそれに、チュンは抗えずに流されていく。
いつしか、彼の意識は途切れていた。





チュン(18歳 ♂)
レベル4
召喚獣:Hecatoncheir
身体能力(277/300)
体力:65 ……16 up!
筋力:110 ……30 up!
敏捷:13
器用:42 ……16 up!
魔力:10 ……5 up!
感覚:37 ……10 up!

所持金:280円   ←山賊の所持金をパクった
モンスター撃破数:3
名声:150/10
グランドクエスト進行率0%

○スキル(8/9)
ネガティブガード
性欲ガード
排泄ガード
ドリル男 ……… 穴を掘ることを生きがいにしてもいいかなって思うようになる。穴を掘っても全然疲れません。(2枠必要)
牛乳大好き
グロ耐性
パチンカー ………スリングショット? 違う!誰が何と言おうとパチンコだ! 狙いが定まりやすくなります。


――――――――――
ここまで読んでいただいて……ありがたい! 読んだ人が楽しんでくれるのが一番の喜びです。
れ、恋愛小説に見えますかね!? とはいえ、投稿した時からこのss見つけにくいなぁと思っていたので、いい機会ですし題名長くしました。
とがりさんありがとう……! ていうかまた とがりさんだ! ありがたい!
二三師さん、slさん、ドライバーさんも感想ありがとう!

明日も投稿します。また21時ぐらい。よろしければ来てやってください。


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