この世界には古代文明の遺産が存在している。
既に明確な形では残っていないが、天高く聳え立つ塔などはかつての文明の名残だと言うのは定説だ。
また別の説では、この世界に存在する巨大なモンスターもそうした文明の落とし子だ、という学者もいるそうだ……。
俺はG級ハンターに分類される一人だ。
G級ハンターとは一般には凄腕のハンターとしか知られていない。いや、同じハンターにもそうとしか思われていないだろう。
……当然だな。G級ハンターはある種の規格外だ。最悪その実態が外に洩れれば、恐怖の対象になりかねない。
G級ハンターとは単独ないし少数で大型モンスターをも狩る者達だ。
多数で狩る相手と真っ向戦う……白兵型ならば、ドドブランゴと真っ向力比べが出来る程だ。いや、向こうが片手なのに対して、こっちは両手だから本当の意味での真っ向勝負ではないんだが……。
G級ハンターも古代文明の遺産的存在かもしれない、とはハンター協会お抱えの学者の説だが、何でもかんでも古代文明のせいにするのは、正直どうかと思う。とはいえ、人間型の大型モンスター並の戦闘力の持ち主が街中を闊歩してるなんて一般に知られたら、まあ、一般人としての生活は厳しいだろう。
中には力に溺れる馬鹿もいるのも事実なんだが……ギルドナイトって暗殺者だ、と言われるのはそういう馬鹿が何時しか消えてるからだろうな。
「さて、自己紹介をしよう。ここにいるのは全員がG級と考えて良いんだな?」
ハンター協会の奥にある個室。
そこに三人の男と一人の女が集まっていた。
全員が黙って頷く。
発言した男は一回り年齢が上の男だ。名前はガラム。三十代前半といった所だろうか?この仕事はそう長くは続けられる仕事ではないから、そういう意味ではベテランの域に既に突入している。装備はレックスメイル。武器は轟刀【虎徹】。ティガレックスの討伐を行った事があるのだろう。最低でも五人以下の少数で一度は竜の討伐がなければG級ハンターとは認定されない。
一般的には竜の存在は少ないと言われてるし、少ないのも事実だが、間違いなく存在している。奴らは。
見た目的にも巌のような渋いおっさんを思わせる顔にがっちりした体躯と一番G級ハンターと言われて納得出来る外見の男だ。
ちなみに自分はグラビドメイルにブラックゴアキャノン。名前はシュウ。年は25。
……見た目は一応優男、と呼ばれる部類らしい。どうにも緊張して女性と上手く話せないから無口でストイックな男とか思われてるし、もてるって実感がないから優男と言われても首をかしげてしまうが。
あと一人の男はガンナーだ。
こちらは武器は龍頭琴。防具はガノスメイルだ。……正直、女性が着てる方が見た目にはありがたいんだがな……うん。名前はラジーで……正直、何でガンナーなんかやってるんだって言いたくなるような筋肉ムキムキのマッチョマンだ。ちなみに体も一番この中ではデカイ。
そして最後の女性だが……。
実は彼女が最強の一角だ。
武器は何と大剣ブリュンヒルデ。これはまあ歴代の積み重ねと言えなくもない。
が、防具は各自にあったオーダーメイドだから誤魔化しようがなく、ある意味着ている防具こそが当人の実力を示すと言えるんだが、彼女が着ているのはリオソウル。すなわち空の王リオレウスの亜種を狩った事があるという証でもある。
ちなみにこちらは一番小型で、可愛らしい少女だ……。多分まだ二十歳になってないだろう。名前はエナ。
見た目があてにならないのもG級ハンターの特徴ではあるんだが。この面子はある意味それを如実に示していると言えるだろう。
「さて、今回の討伐対象はリオレウスだ」
ガラムの言葉に誰もが頷いた。
「ただ、聞いた限りでは通常のリオレウスとは異なる性質を持つようです」
これを言ったのはエナだ。
リオレウス亜種を倒した経験のある彼女の言葉は重い。
確かに伝え聞くリオレウスのそれとは異なる部分が多い。
まずはいきなり放ってきたというビーム状のブレス。
俺自身が以前に対決したグラビモスが使っていたのと同じような、けれど威力は攻城戦用の兵器すらまとめて粉砕するような規格外。
更にその行動からして、知性も相当に高いと思われる。
それは単純な罠では気付かれる可能性がある、という事でもある。
「それに空からの攻撃に徹底した、というのも厄介じゃな!」
声がでかいのはガンナーのラジーだ。
もっとも、それには全員が同感だ。
俺達が戦った竜は装備から推測するに、ティガレックス、グラビモス、ガノトトス、リオレウス亜種。
……お気づきだろうか?最後を除けば飛行しないか飛行を苦手としている竜ばかりだ。
つまりはこの面子。飛行型の大型モンスターとの戦闘経験が少ない。
「……どうにかして、地上に落とす必要があるか」
そうしないと、全員の力をフルに活用出来ない。
だが……地上に降りてきてくれるだろうか?
「……方法としては洞窟に誘き寄せるか、奴の巣で待ち構える、しかないか?」
だが、どうやって?
全員が唸った。
洞窟に誘き寄せるにしても、果たして素直に入ってくれるだろうか?知能が相当高い、という事は自分にとって不利な環境も理解しているはずだ。余程やむをえないような状況でもない限り、無理だろう。
では巣で待ち構える?
巣はどこだ?
飛竜の行動範囲は広い。
その広大な範囲をこの四人で探すのか?
これが普通の竜ならば、キャンプを張って待ち構える。
彼らは野生動物であり、水場だったり獲物が豊富な場所だったりに必ず訪れる。
そこに場合によっては一月以上に渡ってキャンプを張って待ち構え、戦うのが基本だ。
だが、今回の場合、水場も大きな川がある以上却下だ。
そのどこに来るかなぞ予想がつくはずがない。
獲物にしたって、広い草原だ。そんな草原で頭の賢い空を飛ぶ大型飛竜なんぞと相対する程、彼らは命を捨ててはいない。
ああでもない、こうでもないと意見を交わす彼らの下にある急報が入ってきたのは作戦会議が始まった翌日の事だった。
『隣国の軍隊がリオレウス討伐に出撃!派遣軍が壊滅し、リオレウスによって王宮が襲撃を受けた!』
【あとがき】
まあ、片方ばかりが痛い目を見てもらっては反対側が止まらない訳で……
次回はチートリオのぶち切れの回です