『庭園』。
そう呼称される土地がある。
竜王と呼ばれる強大な飛龍が統治する領域だ。かつてはリオレウスという事で飛竜、とされていたが、何時しかその余りの力故に、そして通常のリオレウスと余りに異なるが故に何時しか古龍に分類されるに至った。故の飛龍。
その最初はハンターや軍隊が撃退された事から始まったという。
手出しが出来ぬが故に、相互不干渉の約定が結ばれたのだという。
その後、人の技術は進んだ。
戦術も進み、飛竜種の討伐も以前よりスムーズになった。
古龍種も、人の領域が広がるにつれて接触するようになったが、それすら討伐が行われるようになっていった……だが、その中でも、人の領域の只中にありながらこの領域だけは人が手出し出来ないそのままであり続けた。
相互不干渉は人が代替わりする時に。
或いは、結ばれた後でもそ知らぬ振りをして破られた。
その全てが打ち砕かれた。
このような事があった。
古龍のブレスすら防ぐ盾による陣形をもって、前衛で防ぎ、砲撃を加えようとした事があった。
前衛は真っ向からのブラスターブレスによって盾ごと消滅、そのまま後衛まで一直線に最後尾までぶち抜かれ、総大将までが綺麗に消滅して壊滅状態に陥った。
無論、その後で街が反撃を喰らい、王宮が壊滅。王も王家も消滅し、国自体が崩壊した事があった。
そうして何時しか世界に人が広がるにつれて、その領域は保護区として認められる事になっていった。
人の手が加えられぬが故に、古来よりの自然がそのままの姿であり続けるその領域は、人が手を入れない保護されるべき領域、聖域として各国共同での声明で開発を放棄するに至ったのである。
そうして、更に時は流れ……。
「……おい、逃げ切れたかな?」
こそこそと森の中で囁く者がいた。
彼らは密猟者だった。
この自然保護区は遥かな古代から人の開発の手が全く入っていない為に、希少な自然が今尚豊かに広がっている。
その領域に君臨するのは【竜王】。
彼ら密猟者達は、この地に入るまではその存在を甘く見ていた。
伝説は所詮伝説。
大昔のトカゲの討伐に失敗が連続した事から話が大きくなり、その後は運良く手出しされる事なく、気付いたら保護区になっていたのだろうと……。
それ故に、彼らは希少な素材を狩る為に、この保護区に侵入したのだ。
何故か、この保護区では監視の軍隊などが中にいない為に……。
もっとも、その原因を彼らは自分達の命を代価に悟る事になった。
土地を荒らしていた彼らが持つ発展した竜種の鱗すら貫く火器。それらを全く無視して弾き飛ばし、襲い掛かってきた飛龍によって、彼らは自信も、足も失い、仲間の半数以上を失い、必死で逃走した。
「……わかんねえ。とにかく、隠れておいて、明るくなったら早く逃げよう」
もう、彼らはこの場所に留まる気はなかった。
正に王。
今尚、人が手出し出来ぬ存在というのを思い知ったからだ。
武器も彼らは放り出して逃げ出していた。
武器は威力が高くなると、どうしても嵩張るようになっていった。
それこそ、小鳥を撃つならもっと小型の武器もあっただろうが、この領域には飛龍を頂点に、今では数が減った小型の竜種が当り前のように存在している。
彼らは小型ではあっても竜種。
小型の武器で傷つけられる程甘い相手ではない。だからこそ大型火器の出番であり、だからこそ嵩張る為に【竜王】の前では、そんなもの放り出して逃げるしかなかったのだ。
「……?なんか音がしなかったか?」
とにかく、散々な一日だった。
そう思った彼らだったが、まだ一日は終わっていなかった。
「……!?ら、ランポス!」
「ドスランポスもいるぞ!!」
そう、ランポスの群が静かに忍び寄っていたのだ。
昼間なら問題なかった。
彼らぐらいなら撃退出来るだけの武装を彼らはしていたからだ。
だが、今は違う。
装備を失った今では、彼らはランポスですら退ける力はなかった。
「ひ、ひいい!来るなあ!!」
「た、助けてくれええええええ!!!ぎゃああああああ!!!」
今や狩る者と狩られる者。ハンターと獲物との関係が逆転した彼らの悲鳴は森の中に響き、けれど木々に吸い込まれ、誰にも聞かれる事はなかった。
……そして、密猟者故に。
彼らの存在は本当に誰も知らないままに消えていったのである。
『庭園』。
そこは人の世界が広がった今尚、自然がそのままで残り続ける地。
ただ一体の【竜王】によって、人が立ち入れぬ領域である。
【とある大学】
「……以上で今日の授業は終わりだ。この自然保護区は現在では極めて希少な金属素材や植物が多数眠っている。少量ならば【竜王】との盟約によって持ち出しが可能だが、大規模な採屈、採取は禁止されている。学者の中にはここに長期間用の拠点を設けて、観察を行いたいという意見もあるようだが、【竜王】が領域の中に人工物を設ける事を嫌う事、かといってテント程度では小型の竜種などの襲撃を受けた際に危険だし、大規模な兵器を持ち込む事は【竜王】の攻撃を受ける事になるからそれも適わないでいる、というのが現実だ」
【とある軍人養成校】
「うむ、今では速度だけなら人は【竜王】を上回る速さの兵器もある。けれども、ミサイルも機関砲弾も弾き飛ばす相手だからな……。そうだ、現行の航空機に載せられる最大口径の機関砲弾でも全然効かんらしいのだ。正に竜の王だな。おまけにブラスターブレスは射程は長いは火力は戦車でも一撃で蒸発するわで、どうにもならないのが……」
【あとがき】
これにて本編は終了です
以後は外伝となります
遥かな未来、人の技術は、欲望は発展しましたが、それでもチートは全開です
正確には、年を重ねるごとに体もでっかくなった上に、当然それに伴って装甲とかもアップされてったので、人の技術が発展しても、それを上回り続けたというか……
現在のこの地域をイメージするならば、【ジュラシックパーク】が比較的近いと思われます
あっちと違って、全然手出し出来ませんが……
これからは外伝として、色んな龍種との出会いや対決を書いていきたいと思います
とりあえずは……希望が多かった、アマツマガミかなー?