G級ハンター壊滅。
その報はハンター協会を大混乱に陥れた。
幾度か会議が行われたが結論は出ない。だが、それと同時に……。
「……」
どこか急激に年を食ったような声でハンター協会の長が呻いた。
好き勝手を言う幹部らに疲れた、といった風情だ。
手を抜いたのではないか、油断したのではないか、そもそも彼らの力量が下手だっただけではないか、と言いたい放題だ。
議長もいい加減にしろ、と言いたい。ハンターギルドの切り札であるG級ハンター達を何だと思っているのだ、こいつらは。
議長はG級ハンター達が手を抜いたとは思わない。
今回送り込んだ四人のハンターの内、二名が死亡し、残る二人も重傷を負った。
この事実をハンター協会は隠そうとして、物の見事に失敗した。
理由は単純。
堂々とガラムとエナが他のハンターらからの問いかけに答えたからだ。自分達が完敗した、という事実を。
一旦漏れ出してしまえば、人の口に戸は立てられない。あっという間に拡散していった。
無論、慌てて呼び出した上層部は二人に「何故話したのか」と問い詰めたが、「別に口止めされなかったからな」と平然と答えられてしまった。
重傷を負っていた為に、帰還後そのまま治療に直行した結果として口止めが遅れたのは確かだったが……。
「それに、どのみちどうやってあの化物を倒す気だ」
「………」
公聴会の場で、周囲を殺気染みた雰囲気に包まれながら、ガラムもエナも平然としていた。二人とも覚悟を決めているから、容赦がない。
所詮、今この場にいる面々はハンターから足を洗って長い上に、G級ハンターだった経歴の者が一人を除いていない。彼らはハンターとしては並だったが、上手く政治の世界を泳ぎきって権力を手にした者達だった。
そんな人間に睨まれても、凶暴な竜種と対決してきた彼らからすれば、そよ風に等しい。
ましてや、今は死んだ二人の為にも、これ以上の戦力投入を防がねばならなかった。
「一つ良いかな?」
「何でしょう、副議長」
その唯一のかつてのG級ハンター。
ナンバー2を務める副議長は淡々とした口調で問いかけた。
「奴と戦ってみてどうだった?」
「戦闘力はティガレックスを赤子扱い、ブレスの一撃で大剣ブリュンヒルデすら破壊する程。痺れ罠も全く通用する様子はなし。龍琴弓で関節狙ってすら弾き、竜撃砲の直撃にも僅かによろけるのが関の山。よしんば弱い所に攻撃を当てても瞬き程の一瞬で再生してしまう。知能は歌というものを理解して、自分で鼻唄を歌う程バカみたいに高い。正に化物中の化物。周辺の住人が崇めるのもむべなるか、ですな」
成る程、と副議長は笑った。
殆どの連中が尻で椅子を磨いてきた連中だから、それがどの程度の脅威なのかよく理解出来ていなかった。
結局の所、ハンター協会の上層部に文官が多かったのが今回の原因だったと思う。
実感がないから、無謀な事も命じる。
こうして、不満顔もする。だから。
「成る程、確かに無謀だな。ならば討伐は以後禁止するしかあるまい」
「「「「「「副議長!!!!」」」」」
一斉に非難の意を込めた怒声が上がった。
冗談ではない。ここで終わったら自分達の面子が立たないではないか!!
そんな意を込めた視線で副議長を睨んだ彼らだったが……ゆっくりと副議長が視線を合わせてゆくと、誰もが自然と目を逸らした。
そうして、会議室にいる幹部七名全員の視線が逸れた確認してから、溜息をつきながら言った。
「納得がいかない。討伐は成し遂げられねばならん、か?」
一斉に賛成の声が上がった。
誰もが副議長と視線を合わせる事なく、互いに「やはりそう思うか!」だの「当然だ、我らの誇りにかけて」などと言い合っている。
それに対して、副議長もG級であるガラムもエナも無表情になっていた。
長である議長は、というと、どこか哀しげな表情をしていた。
「ならば仕方あるまい」
.
副議長の言葉は、そこまでは幹部達も望むものだった。
だが、そこからが異なっていた。
「ガラム、エナ。申し訳ないが、彼らを連れて行ってもらえないか?リオレウスの所へな……」
誇りというならば、彼ら自身に行動で示してもらおう。
そう断言する副議長に驚愕を浮かべた幹部達だったが、その言葉を合図として即座に会議室に駆け込んできたギルドナイツ達に、或いはガラムとエナに瞬く間に取り押さえられた。
「ふ、副議長!これは一体!!」
「は、離せ!離さんか!!」
「や、やめろ、何をするか!!」
口々に叫ぶ彼らに副議長は冷ややかな視線を向けて告げた。
「分かっておらんな。ハンターズギルド本部はG級ハンターの喪失にこれ以上は耐えられんという事だ」
この地域のリオレウスがむやみやたらと人を襲わない、共存出来るというなら。
依頼がないなら、放置しておけばいい。
G級ハンターに至る人材は希少であり、世界のあちらこちらでその手は求められている。
そんなG級ハンターが二名も死んだ。この状況は中立都市に居を構えるハンターズギルド総本部にとって看過する事は出来なかった。
ましてや、この少し前、王宮が討伐依頼を引っ込めていた。早い話が、この幹部達の主張は既に依頼も何もない、ただの自分達の面子だけを考えて、しかもその癖をして金はギルドに出させようという……ギルドにとっても害しかない主張だったのだ。
元よりハンターの事を考えない発言が目立っている連中だった事もあり、今回の騒動になった訳だ。
まだ、G級ハンターの率直な意見を聞いて、引くなら見逃す予定だったのだが……。
「それでは手はずどおりに頼む」
「了解しました」
そして、人間達の動きもまた最終段階に至る。
【あとがき】
なかなか上手くいかない……
不満はあるけど、一旦あげ
次回はリオさんです
尚、リオさんが軽いのはどうにもじゃれつかれてるような、本気にならなくてもいい相手が長年続いてきたせいです
この人間だけじゃなく