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No.28146の一覧
[0] 【改訂】トトトトトリップ!~錬金釜で萌知魔エ!~(オリ世界多重クロス)[ミケ](2011/12/10 15:08)
[1] エルーシュ・ディガー1[ミケ](2011/06/02 00:22)
[2] フーデル・フォン・デルフィン1[ミケ](2011/06/02 15:45)
[3] カリュート1[ミケ](2011/06/03 20:57)
[4] 櫻崎萌子1[ミケ](2011/06/05 08:32)
[5] それぞれの原作[ミケ](2011/06/06 20:52)
[6] 閑話 1[ミケ](2011/06/06 08:22)
[7] エルーシュ・ディガー2[ミケ](2011/06/06 20:49)
[8] フーデル・フォン・デルフィン2[ミケ](2011/06/07 17:32)
[9] カリュート2[ミケ](2011/06/12 12:24)
[10] 櫻崎萌子2[ミケ](2011/06/13 01:18)
[11] 閑話 2[ミケ](2011/06/14 08:32)
[12] フーデル&エルーシュ&雅[ミケ](2011/07/06 00:12)
[13] カリュート&萌子&浩太[ミケ](2011/07/18 23:53)
[14] 閑話3[ミケ](2011/07/19 23:56)
[15] 【エピローグは】最終回【頑張ります】[ミケ](2011/07/20 20:11)
[16] 俺達の冒険はこれからだ![ミケ](2011/07/20 21:38)
[17] 設定[ミケ](2011/07/20 22:13)
[18] 改訂予告 2[ミケ](2011/12/10 13:59)
[19] 改訂版 プロローグ[ミケ](2011/11/29 13:01)
[20] 改訂版 エルーシュ1章[ミケ](2011/12/07 21:23)
[21] 改訂版 暫定最終話 プロローグ[ミケ](2011/12/10 13:37)
[22] 改訂版 暫定最終話 1話[ミケ](2011/12/10 13:37)
[23] 改訂版 暫定最終話 2話[ミケ](2011/12/10 16:59)
[24] 改訂版 暫定最終話 3話[ミケ](2011/12/10 22:20)
[25] 改訂版 フーデル・フォン・デルフィン 一章[ミケ](2011/12/17 21:59)
[26] 改訂版 フーデル・フォン・デルフィン 二章ー1[ミケ](2011/12/18 10:59)
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[28146] カリュート2
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:9a8f54f5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/12 12:24
 萌子の姿が頭から離れない。フーデルは絶対に枯れている。エルーシュは絶対におかしい。
 誰だって、女の子のあんな姿の絵を見たら興奮するはずだ。俺は正常なのである。
 萌子、ああ萌子。
 俺は一人悶々としていた。
 俺は萌子が好きなのだろうか? わからない。
 けれど、萌子が出来ると言ってくれたのだから、俺は頑張ってみようと思う。
 世話を頼んだ植物も、そろそろ実った頃だから受け取りしないと。
 俺は目深なローブを着て、魔術師ギルドへと向かった。

「頼んでいた収穫物が欲しい。これに詰め込んでくれ」

 身分証明と魔法の鞄を渡してそう頼むと、受付の人間はパラパラと台帳をめくり、頷いて奥に消える。
 それを待っていると、ギルド長から肩を叩かれた。

「戻ってきたか、カリュート」

「……考えてみれば、何故私が逃げなくてはならないのか疑問に思いまして。旅にも疲れましたし」

「……すまなかったな。まさかお前が古代の魔術師だったとは……」

「どんな噂が流れているんだ……。俺はそんなんじゃない」

「では、どんなものなのだ、お前の知識とは。お前の知識があれば、魔術師ギルドは更に発展できる」

 俺は、しばし考える。

「表舞台に出ると決めた。けれどそれは、誰かれ構わず知識を垂れ流すって事じゃない。家を改装して、店を作ろうと思うんだ。そこで研究しながら品物を作って売ろうかと思う」

「魔術師ギルド内に住まないと、危ないぞ。お前は少し有名になり過ぎた」

「護衛を雇うさ」

 なおも引きとめるギルド長を置いて、俺は大工に家の改装を頼んだ。
 その足でレンジャーギルドへと向かう。ちょうど、酒を飲んでいるサバランがいた。

「サバラン。この通り、戻ってきた」

「おお! 随分有名になったじゃねーか、カリュート」

「そんな大した物ではないんだがな。それなりに信用出来る人間を雇いたい。交代でも、同じ者がずっとでも構わない。契約更新は一か月単位で、護衛任務だ」

「戦士ギルドか魔術師ギルドの方がいいような気がするが……」

「お前は人を見る目がありそうだし、人脈も広そうだったから頼らせてもらったんだが……迷惑だったか?」

「いや、かまわねーぜ」

「頼む」

 しばらく待って現れたのはガーバスと魔術師集団だった。その筆頭がレイフォンである。
 もっと言えば、レイフォンとそのハーレムである。

「帰ろう」

「待て待て待て待て! レイフォンがあんたを追っかけていたのはわかるが、そんなの魔術師を雇う上じゃ誰でも同じだ! 弟子にする条件は避けられん。その中じゃこいつが一番信用置けるんだって」

「その取り巻きはどうなんだ!? 俺はこんな大人数を雇うつもりも、無制限に弟子を取るつもりも無いぞ。ソロで信頼のおける奴はいないのか」

「なによ、けちんぼっ 私はレイフォンの弟子で、あんたの弟子なんかになる気はないわよ」

「あ、あたしはレイフォンを見張らないと……」

 女達が口々に言うのを、レイフォンが宥める。

「まあまあ。今回は俺だけ依頼を受けるって事で……な? 埋め合わせは後でするからさ」

「その埋め合わせは俺の錬金術を教える事ではあるまいな」

 俺は警戒した眼差しで言う。
 図星だったらしく、レイフォンは駄目かな、と頭を掻いた。
 別に、広めた場合著しい損害が俺に生じるわけではない。
 それでも、俺を出汁にしてレイフォンが錬金術の始祖となる事を考えると、許容できる物ではない。そしてそれは作中で例がある事である。レイフォンは将来、魔術師学校の校長にまでなるのだから。もちろん、カリュートは始祖ではない。始祖ではないが、それでも二十年かけて得た技術を安売りしたくはなかった。

「わかりましたわ。これは王女からの命令です」

「嫌だ」

 神速で答えて、しまったと思う。
 レイフォンのハーレムの一人……カトレア王女は、目を瞬かせた。
 
「あ、貴方、命令に逆らいますの?」

「何の代償も示す事無く、人が積み上げた物を一瞬で横から奪い去る。そんな人間が王女である事が恐ろしい。知らないと思ったか。レイフォンには魔術師学校の長になる話が持ち上がっているのだろう。そこで、錬金術がどう扱われるか考えたくもない」

 そこで、カトレア王女は気付いたように首を傾げた。

「ああ、貴方も教師になりたいのですね。よろしい。貴方の腕前によっては、教師の一人として加えてあげてもよろしくてよ」

「その条件が最初から出てこない時点で、交渉に値しないと言っているんだ。言っている事がわからないか? 最初から相手を尊重するつもりのない、最低限の事も交渉で引き出さないといけないような相手と契約をしたくはない。知らない所で「それは契約に無かった」とどんなとんでもない事が行われているかわからないからな。今の返事だって、初めから錬金術を俺に無断で広めるつもりだったと認めている事がわからないか。俺は俺に地位を与えるつもりが無かった事を怒っているんじゃなくて、俺の意志自体を全く考慮しない事を怒っているんだ。こういう交渉は、普通だったら錬金術を学校で使いたいから教えてくれと言う所からスタートする話だ。護衛してやる代わりに教えてくれなんて所からスタートする話じゃ絶対にない」

「うーん……。腕は文句なしだし、身元もこれ以上ないくらいしっかりしているぜ、レイフォンは。恩を売って悪い相手じゃないし……。技術ってのは秘匿しきれるもんじゃない。俺は便利になった方がいいと思うが……」

「そもそも恩義に感じる物か。命じたら言う事を聞いた。それで終わりだ。適性者がいないなら、魔術師の護衛はいらない。俺は確かに弱いが、転移が使えるんだし、護衛がいないと絶対に身を守れないってわけじゃないんだ」

「わかりましたわ。後日、武闘大会があります。そこで勝った方が負けた方の言う事を聞くというのはどうでしょう」

 さすがにサバランとレイフォンがこれは不味いという顔をした。

「……馬鹿にしているのか?」

「悔しかったら、勝ってみる事ですのね」

「……話にならん。そんな大会は出場しない」

「なっ! なんて意気地なしなんですの!」

「……帰る。お前達とは絶対に交渉しない。ガーバス、護衛を頼む」

 俺は踵を返し、そしてふと振り返った。

「実は俺は、お前が嫌いなんだ。魔術の神に愛されし男、レイフォン。初めてだろ。お前を嫌いな奴がいるなんて」

「おい、カリュート。今のは不味かったんじゃないのか」

「構わんさ。処刑されそうになったら逃げればいい」

 俺は家に帰って、荒らされた部屋を綺麗に整える。ガーバスも手伝ってくれた。
 大工も来て、忙しく店を整えていると王家からの使いが来た。
 もう、俺は逃げるつもりはない。だから、軽く身支度を整えると、ついて行った。
 謁見の場で、王は人の良い笑みを浮かべて言った。

「その方が古代の魔術を復活せし魔術師か」

「違います。俺が使うのは、全く新しい学問で、俺が始祖と言うわけでもありません」

「しかし、魔法の鞄や絶対に破けない布、その他の不思議な道具を作れる。そうだな?」

「絶対に破けないという事はありませんが……はい」

「余の魔術師の学校を作る計画は聞いているそうだな。単刀直入に言おう。そなたの技術が欲しい」

 俺は迷った。表舞台に出るとは言った。学生時代の輝くような日々に、憧れもある。しかし、大勢の生徒をさばき切れるとは思えないのだ。
 
「錬金術は、俺が老いた頃に一人二人の弟子を取って細々と伝えていこうかと思います。ただでさえ、俺はまだ若く、未熟です。まだ弟子を取るのにも早いかと思います」

「古い考え、だな。それで失われた魔術の知識は、あまりに多い。一つの場所に知識を集め、解放し、切磋琢磨をする事こそ重要なのだ。カリュート、そなたも魔術師ならば、他の者の知識に興味を持たんか?」

「……興味が無いと言ったら嘘になりますが……あいにく、私は根暗で人とやって行く自信がありません」

「レイフォンやカトレアとぶつかったそうだな、あれらと手を取る事は出来ぬというか」

「陰と陽が交わらぬのと同じように、彼らとは交わる事は出来ません」

「残念だ。気が変わったら、いつでも言って欲しい」

 王の部屋を辞す時、子供が二人走ってきてぶつかる。

「いたっ無礼者」

「無礼者!」

 王族……それ以前に原作キャラだという事に気付き、助け起こすと後からお付きの者が走ってきた。

「冒険ごっこなど、危ない真似はおやめ下さい! 殿下達は魔力も無く、お身体も弱いではありませんか」

「カトレア姉上はやってるじゃないか!」

「カトレア様には才能がおありなのです」

 子供達は、途端に顔を歪める。

「才能、僕達にだってあるもん!」

「そうよ、きっと……きっと何かの才能が……だって、でないとずるいじゃない!」

 必死に言い募る子供達。双子のマロイとマリーだ。彼らが魔物の手に掛かって死ぬ事が、カトレア王女の成長イベントとなる。
 気になってはいたが、他人が手を出せるものでもない。その時はそのまま別れた。
 そして、次の日。
 大工たちが作業を終えるまで町の外でガーバスと素材集めをしていた時、カリュートは驚いた。
 魔物に二人が襲われていたからだ。
 魂具を出し、雷撃をセットする。
 落ちた雷に魔物は倒れ、ガーバスとカリュートは子供達に駆け寄った。
 怪我をしていた子供達に回復効果のある食事を食べさせ、さすがに注意をする。

「子供がこんな所に来るものではない。死ぬ所だったんだぞ」

「嫌だ! 僕達も冒険者になるんだ」

「冒険者になるよりも、王族としての勉強をする方が、よほど民の役に立つ」

 そう言いつつも、冒険者として名を上げたカトレアが次代の王国を継ぐ事をカリュートは知っていた。最も、カトレアが王国を継ぐ事について、カリュートは苦々しく思っていたが。

「でも、父上はケルト兄上より、カトレア姉上を王として選ぶつもりだ……」

 目を見開くカリュート。そうだ。当事者である子供達が知らぬはずはない。
 しばし考えた後、カリュートはこう答えていた。

「……俺の試験を受けるつもりがあるか」

「試験?」

「そうだ。それに受かれば、そしてちゃんと国の偉い人としての勉強を学ぶのであれば、冒険者としてのノウハウを教えてやってもいい」

「受ける!」

「受けるわ! ケルト兄上も受けていい?」

「国王としての勉強をサボらないのであればな。一週間後、準備をしておくから俺の家においで。カリュートの家と言えばわかるはずだ。……何、冒険者にも色々いる。適性があるのも、一つくらいあるだろう」

 子供達と別れ、ガーバスの方を振り向く。

「忙しくなるぞ。ちょっとダンジョンの方にも足を延ばして薬草採集に付き合ってくれ」

「お前、カトレア様と敵対するつもりなのか?」

「そんなんじゃないさ。ただ、このまま見殺しにするのも後味が悪い」

 俺は、せっせと素材を集め、わかりやすい調合探しを開始した。
 一週間後、マロイとマリー、それに手を引かれたケルト、お付きの者、レイフォン達が家に勢ぞろいしていた。
 秘密にしろと言わなかった自分に腹が立つ。

「……部外秘の技術を使う。関係のない者は出て言ってもらおう」

「そうはいきませんわ! マロイとマリー、ケルトお兄様を変な儀式に使われては困りますもの。ここで魔術の知識を持つ私達が、確認させて頂きますわ」

「……勝手にしろ」

 ため息をついて、床に描いた魔法陣の上にまずマロイを誘った。

「心を静かにして……大丈夫。怖い物はない」

 そう言いながら、儀式を行う。フーデルの世界では、赤子が産まれた時にする儀式である。これで、魂を分割するのだ。
 魔法陣が発光し、風が吹く。

「カリュート、熱い。苦しい」

「産みの苦しみだ。心配はない。赤子でも出来る事だ」

 五分ほど待っていると、光が収束した。

「少し長かったな。手を、こちらへ。一つ言っておくが、この儀式では、その者の心の形がわかる。それによっては、俺はマリーに物を教える事が出来ない。冒険者としてふさわしくないものが出たら挫折するだけだし、まだ心が固まりきっていない子供に危険な業を教えるのは怖い」

マリーは真剣な顔をして頷き、手を伸ばしてきた。
 その手を繋ぎ、魂具を引きだす。
 それは、大きな弓だった。スロットルも十分な数がある。
 カリュートは、それにいくつか宝玉を嵌めては外した。

「結構レベルの高い物も問題なく嵌められるな……。一次試験は合格だ、その中から一つ好きな宝玉をくれてやる」

「これは、何? 私の心は弓なの? 宝玉って何? 嵌めると気持ちがいいわ」

「色々教えるのは全部の試験が終わってからだ。気にいったのを選ぶといい。そうだ、これだけ。これは大切な弓だ。命と同じと思って、絶対に壊さない様に」

 マリーは視線をさまよわせ、氷の宝玉に目を止めて、それを嵌めた。
 マロイは双剣。ケルトは空の甲冑だった。試してみた所、着て戦う事も戦わせることもできた。

「凄いな! こんなタイプの魂具は見た事がない!」

 俺は思わず声を上げる。それぞれの手を握るついでに錬金術に必要な魔力も測ったが、三人とも問題はなかった。
 萌子から貰った夢想石は使う必要が無いな。

「次は私の番ですわね」

「じゃあ、次の試験だ。そこに小さい鍋が三つあるな?」

「私の身で試してみなくては、安全かどうかわかりませんわ!」

「それなら最初に言えば良かっただろう。安全かどうか確かめる? ケルト様達がもうしてしまった後で、どんな意味があるんだ?」

「まあまあ、カリュート。試験ぐらい、試しに受けさせてくれたって構わないだろ? 俺も自分の心がどんな形なのか興味がある」

「……私がマロイ様達に術を教える意味を、本気で理解していないのか?」

 その言葉に、レイフォンは気付いたらしい。

「カトレアと敵対するつもりなのか? そんな事をしなくても、ケルト様が国王になるのは自明だと思うが」

「何の話ですの?」

 カトレアが可愛らしく小首を傾げる。

「とにかく、これ以上邪魔をするなら出ていってもらうぞ」

 そして、レシピを王子達に渡す。

「回復薬のレシピだ。このレシピにそって作ってみるんだ。分量は絶対に守る事」

「わかったわ」

 彼らは食材を混ぜ、鍋で調合して行く。
 魔力の塊を粉にした物である魔力粉を入れると、慎重に鍋をかきまぜた。

「その粉が溶けるように念じて……そうだ。うまいぞ」

 完成した回復薬を小瓶に入れ、効果を試した後に三人に配った。

「試験は合格だ。俺が教える内容はこんな所だな。興味を持ったなら、更なるレシピを教えよう。道具は貸してやる。……ただし、技術は門外不出だからな」

「回復薬とは随分簡単に作れるのだな」

 ケルト王子の言葉に、俺は苦笑する。

「レシピを見つけ出すまでが大変なんだ。その道具も、全て特殊な物だ。しかし、素材集めを部下に任せれば、王宮から出ずとも錬金術は探究できる。戦闘訓練は城でも出来るのだし、マロイ様もマリー様も、しばらく王宮で鍛錬を積まれてはいかがか」

「貴方がついていれば、魔物退治も問題ないのじゃないの?」

「基礎を積まれてからの方がいい。それともマリー様は、弓矢を獲物に当てられるのですか?」

 俺の質問に、マリーはうっと言う顔をして首を振った。

「俺で良ければ、王宮でなら相手をする。問題なく強くなったら、素材の採集に行こう。それまではお付きの者無く王宮の外に出ては駄目だ」

「うん!」

「私は城を開けるわけにはいかないが、それでも出来るだろうか」

「もちろんです、ケルト様」

「それで、お前の秘術を教わる礼はなんとすればいい?」

「調合方法を守る、俺の許可なく錬金術を広めない、危険な事はしない。この三点で十分です。……対価を貰えば、錬金術に値段をつける事になる」

「カリュートは本当に錬金術を大事に思っているのだな。わかった」

 そして俺は、魔力粉といくつかのレシピを渡す。
 レイフォンは、それを興味深く見ていた。俺はこの時、原作キャラを甘く見ていたのだ。
 王宮に戦闘学を教えに行った時に、マリーは困惑した顔で言った。

「魔力粉が少ないの。ちゃんと管理してたのに……盗まれちゃったかも」

「ならば、レシピも書き写された可能性があるな。まあ、その内動きがあるだろう。次からはレシピは渡さず、口伝にしよう。覚えきれるか?」

「頑張る!」

 二ヶ月後、回復薬は暴落して、俺の店に魔法薬を作っていた薬師達が殺到した。

「錬金術とやらのせいで俺達の商売あがったりだ!」

「俺も王族にしか教えていない。それも、限られた生産しか出来ない形でだ。約束を破る方達でもないし、誰かが王族から盗みを働いて、解析したんだ。錬金術だが、どういう形で広まってる? 犯人探しに協力してくれ」

「犯人捜しなどどうでもいい。俺達にも錬金術を教えろ!」

「あのな。錬金術で扱うのは回復薬だけじゃないんだ。犯人を見つけない限り、暴落は他の商品にまで及んでいくぞ。俺も王子達に一般に害を与えうる錬金術を教えるのは一旦ストップするが……」

「いいから錬金術を教えろと言っているんだ!」

「……誰か、高貴な方か高名な冒険者にでも頼まれたのか? そう言って俺を脅して知識を奪い取れと。確かに、奴らならやりかねんな」

「何をわけのわからない事を言っていやがる!」

 薬師達が手を上げる。
 俺はコクエイを呼び出し、その場を逃れた。
 マロイ達の所へ行って匿ってもらう。後で、俺の家が燃やされた事を聞いた。
 一か月もした頃、レイフォンが、駆けこんでくる。

「カトレアが倒れた! なんとかしてくれ」

「暴落しまくっている回復薬があるだろう」

「どんな回復薬も効かなかったんだ!」

「俺に何の関係がある。俺は医師じゃないんだ」

「魂具を作る術の最中に倒れたんだ!」

「尚更知るか。何故俺が盗人のフォローをしなくてはならん」

「カリュート! そこまで俺やカトレアが嫌いか!? 俺達がお前に何をした!?」

「技術を盗んだ。回復薬の技術を勝手に広めた。お陰で薬師達に俺は殺されかけた。ちなみに家は全焼だ。大体、未知の技術を盗むなら、それなりの覚悟をするのが当然という物だ。盗んだ相手に泣きつく? 馬鹿も休み休み言え。お前達は今まで全てに愛され、何でも許されてきたがな。俺はそうはいかんぞ」

「カトレアは……! あいつは、そこまでするつもりじゃ……」

「やっぱりカトレアか。そんなつもりがなければ何をしてもいいのか? もう一度言う。カトレアが王女など、ぞっとするな。俺達がお前に何をした、か。笑わせる」

 そこで、マロイとマリーに袖を引かれる。

「カリュート……お願い」

「俺と王子達以外の全ての者達から錬金術と魂具の儀式の知識を抜く事が出来たなら、許してやるが?」

「カリュート……頼む。俺達は、魂具の知識も広めてしまったんだ。そこまですれば、観念してお前が教えるはずだとカトレアが……」

「下種が。一つ教えてやる、あれは、魂の一部を裂いて道具とする儀式だったんだ。それほど難易度のある術じゃないが、だからって素人が使っていい業じゃない。間違えて裂いたり、何度も裂くと死に至る上、転生も出来なくなるからな」

「さ、最初から教えてくれていれば、俺達も……」

「そういう事をするお前達だから、教えなかった。断言するが、教えていたら教えていたで何か問題を起こしていたろうな。学校で錬金術を教える事は既定路線だったようだし」

 レイフォンと言い争いをしていると、王から呼ばれた。その場には、ケルト王子や王妃もいた。
 王は、頭を抑えて言った。

「カトレアが倒れた。錬金術でどうにかなるか」

「恐れながら。それは王女でありながら危険な術を試みた事が原因と聞いています」

「治す方法はないというのではなく、治す気が無いという事か」

 ケルト王子の言葉に、俺は頷いた。

「症状にもよりますが、治すのは難しいのです。高価な薬と高度な治療が必要となってきます。しかもカトレア王女は、その危険な業を一般に広めた様子。全員を助ける事が出来ない以上、その元凶たる方を助ける事もまた、出来ません」

「……カトレアの所業は、聞いている。技術が安価になる事の弊害など、考えてもいなかった。それはそれで考えなくてはならないが、全員を助けられないから一人も助けないという理屈はあるまい」

 ケルト王子はため息をつく。

「カリュートは、カトレアが勝手に技術を、それも危険な技術を広めた事を怒っているのです。そうだろう、カリュート」

「……取り返しのつかない事です。半端に成功するのがまた、悪い。後は広まって行く一方でしょう」

「今回はワシの顔に免じて許すつもりはないか」

「恐れながら、そんな段階は通り越しています」

「カリュート。カトレアの罪は罪で、明らかにし、裁こう。一般の者達の治療代も責任もって城で払い、別に報酬とお前に対する慰謝料も払う。これは錬金術の対価ではなく、カトレアの暗躍で燃やされたお前の家の保証だ。それでどうだ」

 ケルト王子の言葉に、俺は考えた。

「カトレアの罪を裁くとは……カトレアは臥せっているのだぞ」

「では、カトレアは全く悪くないと? そう思うなら、今ここでカリュートを説得して下さい。カトレアは王族だから、勝手に物を兄弟から盗もうが、人から盗んだ危険な業をそれとしらせず民に広めようと罪ではないのだと」

 俺とケルト王子の視線を受け、王は渋々頷いた。
 早速魂具を作る儀式は危険な業であり、カリュート以外の使用を禁ずる、また命の危険があるから診察を受けるようにとの城の交付がされた。
 早速俺は薬を調合する。
 カトレア王女に薬を飲ませ、特殊な儀式を行って体の中の魂具を全て出す。
 すると、出るわ出るわ、魂具の山が。
 その全てから宝玉もどきを外し、分解してカトレア王女に戻す作業をする。
 もしもの時の為に、フーデルに対処法を学んでいて良かった。
 しかし、それでも難しい術に、俺は汗を流した。
 レイフォンは我儘を言ってカトレアの傍にずっとついている。

「いいか、これはもっと難しい儀式なんだから、間違っても真似するなよ」

「……わかってる。けど、お前一人に大勢の治療が出来るのか?」

「お前達が原因だろうが! あまりふざけた事を言うと本当に怒るぞ」

 どうやら、原因不明の奇病と民の間では取られていたらしく、交付が広まるに従って城に人が溢れた。関係のない病の者もいるから、選り分けるのに大変だ。
 人々をそれぞれ診断していると、卵を投げつけられた。

「カトレア様を騙した悪い魔術師! 皆を治療したら、この国から出て行け」

 慌てて卵を投げた子供を下がらせようとする周囲の者。しかし、俺は子供に視線を合わせ、問うた。

「城下町ではどういう話になっているのか、聞かせてくれないか。一応、俺は被害者なんだが」

「嘘だ! 皆言ってるもん。聖母カトレア様が、技術を独占する悪い魔術師にお願いして、回復薬の画期的な作り方と武器の作り方を広めて下さったって。でも、魔術師は悪い奴で、欠陥のある術をカトレア様に教えて、それを広めたカトレア様に罰を受けろ、お嫁さんになれって迫っているって」

「はっはっは。あんな性悪女を嫁にするなどごめんだな。盗みがお願いだと初めて知った。……それは正式に広められているんだな? 俺に約束した罪を明らかにするというのは、そう言う事なんだな? ちょっと待ってろ、カトレアの魂を切り刻んで以前と同じ状態にしてやる」

「そうは行きませんわ! よくも私を罪人にしましたわね」

 カトレアが、杖を構えてそこに立っていた。既に元気なようだ。

「盗人猛々しいとはこの事だ。予想していたが、命を助けられて感謝のかけらも無いとはな」

 俺も大鎌の魂具を出す。

「待て、カトレア。たった一人しかいない医師と事を構えるなど、正気か。お前も自分の罪を自覚して、大人しく罰を受けろ」

 ケルトがカトレアの杖を抑える。

「だって! 私はレイフォンが……! こんな奴の夫になるなんて!」

「待て、夫となるのは既定路線なのか? 俺がカトレアに惚れる事なんてありえない」

 キャンキャンと吠える俺とカトレアに、ケルトは爆弾を落とした。

「それがいちばん良いんだ。カトレアのやった事が、カリュートの責任になるから」

「ふざけるな! 何故こんな女の悪行の責任を俺が取らなくてはならない!」

「こんな女ですって!? 悪行ですって!? 侮辱は許さなくってよ!」

 ケルトは頭を抑えた。

「カリュート。もう、広まった知識を回収するのは不可能だ。危険だとわかっていても、人々は新たな技術を探求するだろう。ならば、犠牲者を増やさない為には正しい知識を広めるしかない。魂具だけじゃなく、錬金術での事故の報告も相次いでるんだ」

「なんで俺が!」

「そこで、カトレアを嫁にする事で責任を発生させるわけだ」

「俺には好きな人がいるんだ。それは出来ない」

 咄嗟に言って、わかった。俺は萌子が好きだ。

「安心しろ。カトレアは第二夫人で良い」

「なんですの、それ!?」

「良しわかった。ケルト様、貴方に俺の知識を授けます。そして俺は逃げます」

「旅に出るのはいいが、あまり妻に寂しい思いをさせるなよ。父上には先手を打たれたが、真実はちゃんと記録しておくから。……結婚は既定路線だ。さすがに今回は城内でも問題になってね。カトレアは人気も高いし。反感を最小限にしつつ罰を受けさせる。これが唯一の解決方法なんだ。別に、レイフォンと駆け落ちしても構わないよ? それでもカリュートが王家の親戚になった事実は変わらないし、この場合、レイフォンの校長の話は立ち消えになるだろうし、カトレアの王位継承権は剥奪されるけど」

 ケルトの言葉に、カトレアは蒼い顔をする。
 
「確実に浮気するとわかっている妻などいるものか。俺の財産がレイフォンとカトレアの子の物になるなど、ぞっとする。暗殺されるかもしれないし、嫌だ」

「そこら辺は僕が何とかするからさ。学校に銅像も建てるし。不出来な妹を頼んだよ」

 逃げる。俺は絶対に逃げてやるからな。今すぐ患者を置いて逃げると言えないあたり、悔しいが。
 後日、公衆の面前でされたこの言い争いが広まり、俺への憎しみは、そうか、こいつ暗殺されるんだ……という同情に変わったが、そんなの全然嬉しくない。
 余談だが、翌年から立ち上がるという魔法学校の生徒名簿にガーディも載っていて脱力した。もちろん、魔法学校の専攻科目に錬金術があるのは言うまでも無い。


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