将軍職も、領主の座も、全て失っていたと知った時にはやはり寂しかった。けれど、それ以上に元気そうな陛下を見ると涙が滲み、今まで頑張ってきたかいがあったと思った。
「陛下。私は陛下がお元気な姿を再度見れただけでも無上の喜びでございます。夢の世界に囚われて以来、案じるのはいつも陛下の事ばかりでした。これ以後、私は陛下の為となる次代を育てる為に力を注ぎましょう」
陛下に平伏してそう告げると、陛下は若干気まずそうな顔をして言った。
「元将軍のお前が、訓練官になるというか」
「いえ、見込みのある子供達を選び、小さな孤児院を開きたいと思います。水里の村で」
ざわざわと広がるざわめき。
「師であるフーデルにこういう事を言う事になるとは思わなかったが、孤児院の経営は、貴族であるフーデルに出来るような簡単な物ではないぞ。そもそも、村で生活など、出来るのか? フーデルが?」
陛下の言葉に、私は笑った。
「やってみなくてはわかりません」
そして、早速必要な物の準備に入った。家を継いだ弟からは、心配そうに声を掛けられ、強がりはやめろと説得された。けれど、強がりではない。
萌子は、私に原作知識という物を授けてくれた。
いきなり錬金術とかいう技術の発達した世界に転生させられた事。
同じく転生させられた三人の仲間。
私を創作世界の人間だと言って腰を抜かした萌子。
お伽噺に出てくるような魔法を使ったカリュート。
そして、超科学文明とか言う、進んだ科学の所に住まうエルーシュ。
最も、萌子の世界もエルーシュの世界も、私からしたら科学が進み過ぎているという点では同じである。
あまりにも文化が違いすぎて、学ぶ点が無い。カラオケ装置など、いくつかの娯楽物と萌子の原作知識は別だが。
とにかく、原作知識では、こうだ。魔物を統括する魔王を、水里の村の少年カラーレンが退治する。カラーレンは凄まじい才能を秘めており、彼は様々な人の助けを借りて成長して行く。私も彼に手を貸す一人らしい。
そして、私は敵の手に掛かって死ぬ。
私の命を奪うのが、魔王に魂を売ったパジーという少年である。
最後に、カラーレンとパジーは力を合わせて魔王を退治するのだが、このパジーという少年の境遇が泣ける。
パジーもカラーレンも、長らく魂具のエンチャントが出来なかった。
しかし、それはレベルの高いエンチャントしか装備出来ないという制約があったからなのだ。
魂具とは、文字通り魂の一部を使った人それぞれの道具である。これには力の籠った宝玉を埋める事が出来、それによって様々な能力を自身に付加できるのだ。これをエンチャントという。
魂具がどんな形でどんな大きさなのか、宝玉は何を埋め込めるか、いくつ埋め込めるかは人によって大分違う。これが才となるわけだ。
私の魂具は剣で、そこそこ大きく、宝玉を込める穴も多数ついている。
とにかく、カラーレンは運命の導きにより、強力な宝玉を手に入れ、冒険へと出立し、その力ゆえに認められていった。
対して、パジーは魔王に魂を売り渡すしか生きてゆく術すらなかったのだ……。
ただ一回、誰かに抱きしめられた記憶さえあれば道を誤りはしなかったという言葉は泣ける。
だが、今なら十分間に合う。
パジーとカラーレンを強化しておけば、後の魔王退治もスムーズに進むだろう。
すなわち、陛下の治世が平和になるという事だ!
陛下の治世の為、私の死亡フラグをへし折る為、今更栄光の階段から転げ落ちる事になっても私は構わない。
そういう事で、私は色々と買い込み、萌子の世界で一旦カラオケボックスとやらで帰還祝賀会をして、プレゼント交換をしてから、孤児院を作る準備を始めていた。
パジーなど、原作で現れた才ある子供達も確保せねばならない。
心配そうに皆が見守る中、私はせっせと物を買い集めて行った。
そして、原作に書いてあった日時。パジーの最も最悪な思い出。
初めて人を殺した日、人買いに捕まりそうになった所に行く。
果して、そこには抑えつけられる少年と数人の大人がいた。
「何をしている」
私の魂具を掲げると、そこから雷の雨が降る。
人買い共を衛兵に引き渡し、私はパジーに手を伸ばした。
「大丈夫ですか? 少年」
少年はその手を叩き落とす。
「同情なんていらない!」
「同情ではありません。この国の平和を守るのは私の義務です。そして、君を保護する事も。……怖い思いをさせて、すみませんでした」
ひょい、とパジーを抱き上げる。よし、パジーを抱っこというノルマ突破。
「怪我をしているでしょう。元気になる食事を食べさせてあげます」
「放せ、放せよっ」
「子供はやんちゃが一番ですね」
パジーを屋敷に連れて行くと、パジーに蒼い顔をされた。
いかにも観念したという顔で大人しくなる。
風呂に入れている間、私は台所に向かった。
料理を錬金する為だ。台所に行ったら何故か慌てられたが、コックたちを追い出して小型の錬金鍋に水を入れ、火に掛ける。
さて、と。……。ああ! こっちの世界の材料で作る時は一から錬金術が考え直しなのか!
となるとまだ買い物が必要だな。
とはいえ、初めの印象はいい方がいいだろう。
私は今回に限り、向こうの世界から持ってきた食材を使う事にした。
品数は五品目で良いか。本来なら一品で良いのだが、それはいかにも寂しいし、腹が膨れない。
という事で私は、慎重に調合して行く。
剣にかなり強力な料理上手のエンチャントをつけているので、失敗はない。
出来た物を少年の所へと運んでいくと、死んだような目で見返された。
「どうぞ、少年。私の手料理です。それで、少年を私の孤児院に入れようと思うのですが。水里の村を知っていますか? あそこに立てる予定なのですが」
「お前、お貴族様じゃんか」
「ならば、君が手伝ってくれればいいでしょう。あそこで、私は陛下の為の人材を育てようかと思うのです」
「嫌だって言っても連れて行くんだろ」
「まあ、そうですね。食べなさい」
パジーは、料理をじろっと睨んだ後に頬張る。その後、凄い勢いで食べ始めた。
私も食べる。自信作だ。もちろん美味しかった。
「明後日、君のような子達を集める旅に出ます。戻る頃には、水里の村の孤児院も完成しているでしょう。子供には辛い距離を歩く事になります。ゆっくり休んでおきなさい」
「……お貴族様が孤児院経営なんてどういうつもりだよ。子供だからって、甘く見るなよ。もし食い物にしようとしてるなら……」
「私は、この事業が陛下の為になる事だと確信しています。そして、陛下の為に行った事を穢すような事はしません。絶対にね」
その言葉に、パジーは首を傾げた。その後、彼なりに納得したらしく、頷いてくれた。
お付きの者をつけなくてもいいのかと、弟の心配する声をよそに旅支度を整えて出かける。
旅は六カ月ほど掛かる予定だ。その間に、じっくりと錬金術を試して行こう。
そうして、水里の村についた時には、指示した通りの建物が出来ていた。
管理してくれた者に礼を言い、手紙と食物や追加の物資の調達をお願いして送りだす。
そして、六人程に膨れ上がった子供達と共に掃除をした。
孤児院だが、お店としても使えるように注文した。食べ物も出せるよう、食堂も用意する。
外には訓練用の人形や畑などもあって、至れり尽くせりだ。
一か月ほどして、物資が届いたのでお店の品を作る事にする。あまり目立ちすぎる事はしない方がいいと言われていたので、治癒系統のは弱い物しか置かないようにしよう。
その代り、疲労回復、目覚めの薬、睡眠薬、精神力回復の薬、各種装備品……。
一応、錬金術師としての誇りとして、錬金術で作った物しか置く予定ではない。
割高になるが、質はいいのだから仕方あるまい。
パジーを初め子供達は料理に興味があるらしく、日がな一日私の料理の様子を眺め、真似をしている。だが、見よう見まねで錬金術は真似できる物ではなく、私の作った物との出来を比べて首を傾げている。
錬金術世界で貰った魔法の鞄はかなりの量のアイテムを収納し、時を止めていてくれるので食料の作り置きも出来る。
準備が整うと、今度は子供達の修行だ。これが本来の目的である。
村の少年達……もちろん、狙いはカラーレン……を誘い、特訓をつける。
カラーレンは訓練に食いつき、村の大人達も加わって必死で学ぶようになった。
だがしかし、心配な事がある。原作知識では戦闘狂だった子供達が、戦闘訓練を嫌がるのだ! そして料理を教えろと迫って来る。
ままならない。凄くままならない。
彼らの言い分としては、使えるエンチャントが無いのだし、それよりは料理や裁縫、鍛冶を覚えたいとの事だが、私としては彼らがエンチャント無しですらいっぱしの騎士と戦えるだけの才能を持っていると知っているので、引くわけにはいかない。
前に指を怪我させたら、料理に支障が出ると凄く怒られた。
そして、そんなある日の事である。
「パジー、凄いよなぁ……俺も料理人になろうかな。戦う料理人とか、格好良くないか?」
「ああ、カラーレン。そうなると、俺達はこれからライバルだな!」
そうして、主要な登場人物は全員他の生きる道を覚えたのだった。
「聖騎士ナイトダンス」――完――
フーデル先生の次回作にご期待ください!
「戦う料理人コックダンス」――新連載――
いやいやいやいや、魔王はどうするんだ!?
私は凄い勢いで首を振り、宣言した。
「魔王を倒すまで、私は料理の奥義を教えません!」
カラーレンとパジーを筆頭に、子供達が凄い勢いでブーイングする。
「俺とパジーはエンチャントも出来ないのに、どうやって魔王を倒せって言うんだよ」
そこで私は考える。水里の村が襲撃されて、祠に追い詰められたカラーレンがそこに収められていた光の宝玉を使うのが物語の始まりだ。
そして、パジーの宝玉は魔物から得た物を自力で進化・浄化させた物。
一応パジーの為の宝玉は用意してあるのだが、彼らにはまだ早すぎる。
彼らには、幾多の危機が訪れる。それを救うのは、エンチャントが無かった時代に培った技量なのだ。
「……エンチャントの事は考えておきましょう。しかし、貴方方はまず、エンチャント無しでエンチャントした私に勝つ事が重要です。……そうですね。私に勝てた子には、ちょっぴり教えてあげますよ。戦闘以外の事をね。多少は卑怯な真似も構いません」
「マジか!」
言ってカラーレンとパジーが襲いかかって来る。もちろん、私はそれを雷のエンチャントで迎撃し、再度盛大にブーイングを受けた。
子供達のブーイングに耳を塞いでいると、隊商がやって来る。
商品はあまり減っていないけど、一応買い足すか。
……むぅ。お金が無い。
旅人があまり来ない為、物が売れないのだ。ここの村人は疲労回復の食事をしょっちゅう出来る程裕福ではないし。
すると、商人の方からこちらにやってきた。
「フーデル元将軍のお店兼孤児院とはここですか」
「ああ、何か買っていく物はありますか? 食事処もやっていますが」
「そうですね。何を売っているのか、興味があります」
そして商人達は品物を一つ一つ見て行く。
「割高ですね」
「質が良いですからね。子供達が作った物なら安くしてありますが」
ひとまとめに纏めてある品を指し示して言う。
「ほう、これを子供達が? 確かにこちらは安い。しかし、私は将軍が作ったという物を買いに来たのですよ」
「私のネームバリューを使うなら、尚更割高でも我慢して下さい」
「はは、確かに。この薬は? かなり高いですが」
「私の経験上、かなり効く薬ですよ」
商人は武具防具と薬をいくつか買い、パジーが食堂の方に客が来た事を告げる。
子供達の格安料理を使用人が、私の割高料理を商人たちや傭兵の何人かが頼んだ。
疲労回復系統の料理を作って出す。
そして得たお金で、新しい金属や村では手に入らない食料、布などを買い取る。
品は商人達を満足させたらしく、定期的に買い物をしてくれるようになった。
旅人も寄ってくれるようになる。
パジー達は全員揃ってなら私から一本を取れるようになり、錬金術の初歩の初歩の初歩を教えた。
魔力を込めた粉を隠し材料として、それを溶かし入れながら料理を作る方法だ。
「こんな隠し味、使ってたっけ?」
「腕が上がれば、これを使わずとも出来るようになります。……これを、錬金術、と言うのですよ。誰にも教えてはなりません。私も、貴方達以外には教える事はないでしょう」
ちょうど子供達が上手く粉を溶かして錬金術が使えるようになった頃。かつての部下、ルークスが買い物にやってきた。
「フーデル将軍……! すっかり所帯じみてしまって……。今なら陛下も許してくれます。大人しく謝った方がいいのでは」
「失礼な人ですね。子供達はすくすくと順調に育っています。エンチャントはまだ行っていませんが、その内立派な物を見つけてあげる予定です。陛下はきっと彼らの事を喜んで下さいますでしょう」
パジーの頭を撫でて言うと、ルークスは胡散臭げな顔をする。
「この汚い平民の子が?」
「パジー、カラーレンに祠にある宝玉を使うように言いなさい。良いでしょう、それならば貴方とカラーレンを決闘させてみましょう」
「え、でも……」
「早くなさい」
私の手塩にかけた子供達を、汚いだと? 汚いだと!?
私はいらっとしてパジーを送りだした。
パジーは戸惑った顔でカラーレンを呼びに行く。
カラーレンはおどおどとしていたが、魂具である剣に光の宝玉をきちんと嵌めていた。
「この子は……! これほど強力なエンチャントを!?」
「カラーレン。勝て。絶対に勝て。勝たねば殺します」
「でもフーデル。フーデルは時が来るまでエンチャントはしないって……」
「今がその時です!」
「カラーレン、諦めろ。フーデルにもきっと意地とか色々あるんだよ」
パジーが諭す。その瞳は、羨ましそうに宝玉を見つめていた。
いいんです、そろそろ魔物の襲撃時期だし!
とにかく、決闘が始まった。
技量はまだまだカラーレンが劣る。しかし、カラーレンの持つ光の宝玉の力は凄まじかった。
完全な力押しで圧勝。
その後、カラーレンは力尽きて倒れた。
「わわ、大丈夫か、カラーレン!」
「良し勝った」
そこへ、新たな騎士がやってきた。
「ルークス様、フーデル様に食事のテイクアウトは承諾して頂けましたでしょうか……る、ルークス様!?」
「なんだ、買い物に来たのか。今ちょうど決闘をしていてな。食事はすぐに用意する。何人分だ?」
「五〇〇人分です」
なんですと? 演習か何かか!?
「それを早く言いなさい! パジー、手伝ってもらいますからね。カラーレンはベッドに運んでおきなさい」
そして、ふと思いついて料理上手の宝玉をパジーに投げ渡す。
「料理上手の宝玉です。装備出来ますか?」
パジーは大釜の魂具に料理上手の宝玉を嵌め、顔を輝かせた。
え。意味がわからない。パジーの魂具は物騒で禍々しい大鎌のはずだが。かまはかまでもかまちがいではないか。
ええい! このままでは戦う料理人コックダンスが始まってしまう!
これが終わったら絶対に鍛え直さねば。
そう心に決めて、足早に食堂に入り、子供達を呼んで手伝わせる。
一時間くらいして起きて来たカラーレンも容赦なく手伝わせて食事を運ばせた。
そこで見たのは、溢れる怪我人と苦笑して手を振る陛下だった。早く教えろ、馬鹿ルークス!
何か知らない間に強力な魔物が付近に来ていたらしく、私が滞在する村が近くだという事で陛下が様子見がてら兵を出して下さったらしい。だからって、御自らがいらっしゃらなくとも!
そういう事情があるならば、こちらとしても礼儀を尽くさねばなるまい。
カラーレン達に命じ、薬や食事を持って来させてかたっぱしから治療して行く。
目立つからと使用を禁じていた癒しの宝玉も、子供に渡してふんだんに使わせた。
ついでに、魔物が残っていると危ないので子供達に渡す予定の宝玉を配ってしまう。
後の事など、考える暇はなかった。
もちろん、陛下には疲労回復と傷を癒す効果を込めたフルコースを献上した。
治療を終わらせれば、今度は夕食の支度をせねば間に合わない。
孤児院に置いていた食料の貯蔵量ではとても足りないので、今までこつこつためていた食料、餞別として貰った種を除いた異世界の食材、作り置きしてある食事、異世界で大量に買いだめしていた食料を開放する事にする。
本当は、魔王退治に使ってもらおうと思っていたが……。
大体の調合方法は確立してあるし、また作りなおすしかないだろう。
薬に関しては残す事にするし。
子供達をフルに活用して、夕食を運び、明日の夕食の仕込み。
全てが済むと、陛下やルークス、お付きの者達がこちらに泊まるとの事で、やってきた。
「陛下! 私は心臓が止まるかと思いました。貴重な玉体を危険に晒すような事は、断じておやめ下さい」
「まあ、待て。フーデル、馬鹿にしていて悪かった。お前にこんな才能まであるとは、思わなかったのだ。食事、美味しかった。旅の間に珍しい宝玉を沢山手に入れたらしいな。子供達と少し話したいが、いいか」
「話を逸らしますか。……まあ、いずれは陛下にお仕えさせたいと考えている者達です。どうぞ」
陛下は、私が光のエンチャントで照らす中、子供達の戦う姿をご覧になり、どこまで学んでいるか質問なさった。
「よかろう。フーデル。お前の忠誠の証、確かに受け取った」
「は?」
「ん? この子達は余に献上するのだろう?」
「いくらなんでも、あまりに早すぎます。私は子供達にほんの一握りしか教えておりません。いずれ、この子らは魔王討伐軍を組ませ、魔王討伐の後、教育をして陛下に献上したいと考えております」
「魔王退治……そんな事を考えていたのか? それは子供達に夢を見過ぎでは……」
「この子達なら、出来ます!」
「わかった、わかった。ならば、王都で育てるがいい。……いい加減、帰って来い」
「陛下、私の試みはまだ始まったばかりではないですか。せめて十年は様子を見て頂かなくては。収穫が楽しみな作物もまだ実のってはいませんし、この後も色々とこの子達を鍛える計画が」
「駄々をこねるな。お前ほどの人材を遊ばせておくわけにはいかんのだ。どうやったか、癒しの宝玉まで手に入れていたそうだな。余の為を思うなら、その力、国の為に使え。騎士の子らを教育し、兵の食事を作ってやり、装備を作れ。お前の作った食事は疲労を吹き飛ばし、装備は異様なまでに頑丈だと聞いているぞ。実際に見るまでは信じられなかったがな」
「しかし、王都だと些か目立ち過ぎます。私のレシピが漏れでもしたら……」
「……あまり、心配を掛けるな。余が何故こんな田舎にまで遠征したと思っている」
それを言われては、反論できない。私は平伏して、承諾した。
カラーレンのご両親に話を通し、カラーレンは王都に行けば英雄になれるのだと諭す。
ご両親はカラーレンの未来に半信半疑だったが、なんとか頷いてもらえた。
そして、私は王都へと店を移す事となった。
王都に行って、全く同じ作りの店がある事に驚く。付き人と世話をする貴族で騎士団入団前の子供も既に用意されていた。
カラーレン達は昼は騎士達と共に訓練し、夜は孤児院に戻ってくる事になった。ちょっと待て、教育は私にやらせてくれるのではなかったのか?
作物も後で届けてくれるというし、集められた子供に偶然原作キャラもいたし。全く誰も芽が出ないという可能性は消えたのだから、頑張ってみるか。
ああ、そろそろ一年だ。萌子達は元気だろうか。また、贈り物の準備をしないとな。